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《ネタバレ》 イタリアの世界的な自動車メーカー、フェラーリ。その創業者であるエンツォ・フェラーリの人生の一大転機となった1957年を濃厚に描いた伝記映画。監督は、これまで男臭い映画を数多く撮ってきた、まさに漢の漢による漢のための映画監督マイケル・マン大先生。いやー、基本はレース映画なんですけど、ここまで暗くて重苦しいレース映画は初めて観ました(笑)。『ラッシュ/プライドと友情』や『グランツーリスモ』みたいなレース映画の醍醐味であるスカッと爽快感や手に汗握る迫力の展開とかはほぼ皆無、ずっとこの一人の金持ちの正妻と愛人との確執、隠し子を認知するかどうかみたいなどろどろ展開がひたすら続き、自分はいったい何を見せられているのだろう感が半端なかったです。それなのに最後までちゃんと惹き込まれて観られたのはやはりマイケル・マン監督のもはや匠の技のような卓越した演出力によるところが大きい。どんなに美辞麗句を並べようと、やはり経営の実態は金と権力と欲望がモノ言う汚い世界。そんなリアルな経営者の苦悩と矜持をアダム・ドライバーが見事に演じておりました。ライバル企業との競争に競り勝つため、レーサーに「私の車に乗るなら死ぬつもりで走れ、それが無理なら去れ」と冷酷に言い放つフェラーリはまさに狂気紙一重。それがのちのあの凄惨な大事故に繋がるところは皮肉めいていてガツンときましたわー。一人息子を亡くしたことを未だ引きずり、愛人との間に隠し子を設けた夫に狂気にも似た嫉妬をあらわにするペネロペ・クロスも素晴らしかった。肝心のレースシーンも添え物にならず、ちゃんとクオリティ高くて自分は普通にドキドキしちゃいました。あんな普通の公道で猛スピードでレースしたらそりゃ大事故にもなるって!世界的大企業を一から作り上げた経営者の栄光と苦難の遍歴を重厚に描いた、なかなかの良品でありました。
【かたゆき】さん [DVD(字幕)] 7点(2025-07-18 10:04:16)(良:1票) 《更新》
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