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《ネタバレ》 無重力を表現した宇宙空間の映像美は見事で、TDLの「スター・ツアーズ」を体験した時のような快感を味わった。技術先行の画面に、2人の会話劇で人間関係が描写される展開は秀逸。無音(?)の大宇宙では軽口をたたくことも重要なコミュニケーションと映る。
娘を亡くし夫と別れた女性宇宙飛行士が宇宙に一人取り残され、一時は死を覚悟しながらも、帰還に向け生への気力を取り戻すという設定に現代性をみる。マットの生還(幻覚)からラストに向けての展開はハリウッド映画の王道であり、悲惨な結末を迎えるリアリズムよりずっといい。 ライアンとマットのロープでのつながり(へその緒のような)やISS内部での胎児ポーズ、そして涙の粒が浮遊するシーンはそれぞれ印象深いが、強調し過ぎの感あり。 地球に帰還し、カプセルが着水した湖でライアンが脱出した際、水中でカエルが彼女の前を横切る。さらに虫が飛び鳥がさえずる芸の細かさ。その後、彼女は陸に上がり、四つん這いから徐々に立ち上がって大地を踏みしめ(彼女の再起を暗示)、最後に2足歩行する。ここで原題「Gravity」の意味する重力の体感が示される。駆け足で生命の誕生~進化を表現したような感じだ。着水場所を湖にしたのは「猿の惑星」を意識したのだろう。が、むしろ子宮形状の入り江(海水≒羊水)に着水し、ウミガメ(4足)の登場、そして陸上へ、さらに2足歩行となった方が胸にストンと落ちる。カエル君の登場は唐突な感じだった。 無重力の宇宙空間、女性の自立、中国の人工衛星の役割、数々の障害を乗り越えて危機からの脱出等、マーケティング・リサーチはバッチリ(若干の皮肉込み)。「生」と「死」、「進化」や「再生」をめぐる91分間で、過去の映画に対するオマージュや生命をめぐるメタファーの詰め込み過ぎも感じる。終盤は生き残ったS・ブロックの一人芝居を見る思いだったが、彼女に魅力を感じないんだよなあ。 【風小僧】さん [地上波(吹替)] 6点(2016-07-03 12:41:18)(良:1票)
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