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《ネタバレ》 子供を取り違えた場合に起こるであろう親子の機微がすべて起こる 父親が自分に似ていない子供に対する不信 母親が愛する子供を本当の両親に返さなければならないための心身症を伴うストレス 交換された後に子供が感じる、親に捨てられてしまったんじゃないかという元の親への不信感 新しい親を心から愛せない子供 返してしまった子供を忘れてしまうんじゃないかと思う親の恐怖 話は福山雅治演じる野々宮家を中心に進む 取り違えられたもう一つの家族、斎木家の方の家族の思いはほとんど描かれない テーマが薄まってしまわないためにはしかたがなかったのかもしれないが、ちょっと寂しい 斎木家にも長男を渡さなければならなかった葛藤があったはずだ 劇中ではくせがある斎木家のリリーフランキーが、むしろエリートの野々宮よりもいい父親、いい家族であるという描かれ方だが、自分には野々宮も仕事中心で家庭を見ている時間がないまでも、良い父親としてある程度努力しているように見えた ピアノを一緒に引いたりゲームしたり子供の誕生日を祝ったり、父親としては一般的であると言う所をちゃんと描くのは是枝監督はたいしたものだと思った 普通ならもっとわかりやすく福山雅治を鼻持ちならない嫌な奴に描いただろう その場合はわかりやすいが、日々の家族のリアル感は失われる 私には子供の取り違えが発覚する前から、野々宮は充分いい父親に見えた 対して野々宮の妻の方がむしろ問題がある様に思えた 野々宮の不注意な一言を後々までトラウマとなっているような妻の言い方はむしろ怒りを憶えた 子供を交換する直前に息子が固辞した一眼レフから息子が撮った父親の姿が出て来た時はおもわず涙が出た ふた家族がそろった河原のキャンプで、新しい両親が息子の事を好きだと言うと、息子が「パパよりも?」と聞いてきて、ちょっと間があって「そうだ」と答える おもわず息を飲んだ 息子・慶多にとっては衝撃だっただろう しかし子供のためを思う野々宮の気持ちを思うと、それはそれで人間としては立派であると思ったが、父親としてはどうかなと思わざるを得なかった その帳尻を最後の最後に自分で償うエンディングは、父親としてエリートのプライドを捨てた野々宮の見事な「そして父になる」にふさわしいラストシーンだと思った 傑作だと思う
【にょろぞう】さん [ブルーレイ(邦画)] 9点(2014-05-10 13:43:50)
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