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《ネタバレ》 また素晴らしい作品に出合った。「人に影響を及ぼすのは常に人である」。そんな内容だ。本作で描かれるのは白人至上主義、人種差別問題であるが、それ自体は表面であり、本質はもっと深いところ、人の深層だ、と言っているように感じた。
現代日本でも、デレクやダニーのような人は身近にいる。主張が正しいとか正しくないとかそういうことではなく、「自分が絶対的に正しい」と信じて突き進む人。この場合問題なのは本人の中では理屈が成り立ってしまっていることと、それ故に方向転換が非常に効き辛いということだ。故に、発想は「周りが間違っている」であり、そこから自力だけでベクトルを移すのは容易ではない。とすると、つまるところ、自分もデレクやダニーと同じということを否定しきれない。デレクの場合は刑務所という強制力によってベクトルをずらすことに成功したけれど、特殊事例だ。つまり、逆に大多数の人はそれに気付けないことになる・・・。 ラストシーンで黒人が白人を射殺する描写は、いわゆる「黒人だって同じ人間なんだ」「人類皆友達なんだ」という、ありがちなある意味上から目線なテーマを退けている。黒人かどうかなど関係なく、結局重要なのは「人との相互作用による変化だ」と言っているように思える。まあ相互作用による良変化の結果行き着く先は、「人類皆友達」なのかもしれないけど。とにかく、シーツのシーンに集約されるように、荒っぽく(本作でいう「怒り」)だけじゃなく柔らかさをもって接しよ、というのがこの映画の主張なのだと思う。 本作では、白人主義や人種差別という、「潜在的自分主義」が最も顕著に表面化される(映像化し易い)イベントを描き、同時に人が人に影響を及ぼす過程を綿密に描くことで、入り込みやすく、考えさせられる作品に仕上がっていると思う。時にプライドを捨てて、納得できなくても他人の意見に耳を貸すこと。わかっていても、これが中々に難しいんですよね。 【53羽の孔雀】さん [DVD(字幕)] 8点(2015-03-07 03:24:36)
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