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《ネタバレ》 これは掘り出しものでした。この映画をビデオスルーした配給会社のなんと見る目のないことか。同じ日本人ながらあまりのセンスの無さに驚きを通り越して呆れるばかりです。
本作「ハイウェイの彼方に(原題:Adopt a Highway)」は、人によっては地味な映画に見えるかもしれません。しかしなぜか私は非常に奥深い映画だと感じ入ってしまいました。それはおそらく人として不変的であろう親子の愛を描いているからに他なりません。赤ちゃんがフューチャーされた予告動画を見ただけではこの映画の本当の内容は理解できません。両親の墓前で「思うような人生ではなかった」と告白する男、20年の刑期を終えインターネットすら使ったことがない40代の独り身の男が乗ったバスの向かう先に、この男の新しい人生が待っています。 【ここからはネタバレを含みます】 一瞬何も入っていないと思わせておいて、、一通の粗末な手紙が出てきます。内容は、世間から取り残された独身息子に向けた父からの変わらない愛を綴った手紙ですが「小さなこの子は私に愛を教えてくれた」という文面の通り、親として我が子にいかに無条件の愛を注げたか?という親から子に向けた愛の物語にもなっています。 終盤までの70分がほとんど前置きですが、その前置きに沢山の伏線・理由・意味といったものが散りばめられています。「何でも分け合う優しい子だった」とか「父が嬉しそうに開ける茶封筒が届くと子供ながらに嬉しかった話」、墓前で座り込む絵面の素晴らしさなどなど、、シンプルで静かな映画なだけに後で思い返すと「なるほどなぁ~」と妙に染み入ってきます。とにかく、亡き父からの手紙が非常に良い。あれほど感動させられる文面には滅多にお目に掛かれません。(ここでやっと前半部分の赤ちゃんとの触れ合いが生きてきます) ちなみに「三振法」とは1990年代にアメリカで実際に州法として運用が開始された法律で、前科が2回以上ある者が3度目の有罪判決を受けた場合、犯した罪の重さにかかわらず極刑(スリーストライク=アウト)となる非常に厳しい法律。 また、原題である「Adopt a Highway」は、Adopt-A-Highway Program というアメリカの州間をつなぐ幹線道路をそれぞれ関わっている州が分担して清掃やメンテナンスなどを行うプログラムのことを指しており、各州が道路の一部区間を「養子」として引き取って面倒を見るという意味合いから、捨て子を養子として引き取りたい主人公の心情を掛け合わせた題名となっています。「ハイウェイの彼方に」ではこういった深い意味合いまでは汲み取れていないようです。 ラストで人生を取り戻せと託された「チリアン・プラム(切手)」ですが、これは非常に高価な物で評価額が15万ドル以上(今の日本円で2,000万円近くにもなる!)の非常に貴重なものだそう。主人公(イーサン・ホーク)の目で訴えかけるような渋い演技も含め、とにかく本当に素晴らしい映画でした。これがビデオスルーだなんて信じられません。 【アラジン2014】さん [インターネット(字幕)] 9点(2022-10-02 12:42:15)
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