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《ネタバレ》 オリジナル脚本による時代劇であるが、こうの史代にポスターイラストを依頼しているあたり、
幕末版『この世界の片隅に』を意識しているのは明らかだろう。 激動の時代でありながら平穏と隣り合わせで、突然抗い難い不条理がヒロインの大事なものを奪い、 それでも慎ましやかに市井の人々の生活は続いていく。 短めのエピソードがオムニバス形式に並べられているのも共通している。 2020年代になって何故モノクロで撮られたのか不思議に思ったが、 汚穢屋を題材にしていることもあり、糞尿ネタが多く、流石にカラーで描くには厳しいのは納得した。 とは言え、章の終わりのワンシーンだけカラーで映されているのもあり、 当時と現代への橋渡しとして描くには視聴に集中できなくなるのは確か。 全編モノクロで突き通して欲しかったなと。 いつの時代も社会には必須だが、誰もがやりたくもない仕事を生活のために誰かが請け負っている。 汚穢屋だけでなく、屠畜業も、皮革業も、葬儀屋も、「不浄」とされる仕事は全てそう。 そして、そうしてもらうことが当たり前の意識へと変わっていき、搾取して、差別する流れに変わっていく。 彼らみたいに存在しないような扱いの人間は大勢いたし、現在でもさして変わらない。 この"クソ"みたいな現実でささやかな楽しみと喜びを見出すしかない。 それが世界だ、いや正しくは苦界なのかもしれない。 明確な着地点もないまま映画は終わりを迎える。 林道の中、"あっち"に歩いていく3人はいつかは一周して"こっち"に戻っていく。 それは1年後かもしれないし、明治時代を迎えた10年後かもしれない。 そのとき彼らはどのような世界を歩いているのだろうか。 【Cinecdocke】さん [インターネット(邦画)] 6点(2025-06-27 23:39:53)
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