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《ネタバレ》 気持ち良く意表を突かれた逸品。
「ブレックファスト・クラブ」(1985年)的な「学校に取り残された子供達」が主人公の話かと思いきや、実は「彼らの見張り役となる教師」のハナム先生も主人公であり、問題児のアンガスと絆を深めていく物語と判明する流れ、かなり良かったです。 改めて観返してみると、序盤からハナム先生の出番が多く、彼が主人公格である事は示唆されていたのですが、見事に騙されちゃいましたね。 正直、初見の際には戸惑いが多かったし「ミスリードの尺が長い」「最初は喧嘩してばかりだった子供達が仲良くなる流れを期待したのに、そちらに関しては裏切られる形になる」って辺りは、欠点と呼べそうな感じなのですが…… ここまで面白かった以上は、素直に脱帽する他無いです。 本作に関しては「嫌な奴かと思われたデナム先生が、実は良い奴だった」と判明する種明かし的な面白さを重視せず「生徒のアンガス共々、デナム先生も少しずつ変わっていく」という成長物語のような形で纏めたのも、上手かったと思いますね。 生徒達が喧嘩した際に、学友を売るよう誘導している場面とか、ハナム先生の憎たらしさも序盤で丁寧に描いていたからこそ、カタルシスが生まれてる。 他者に対し「行く所の無い哀れな孤児なんだから、多めに見てやれよ」なんて皮肉ってたアンガスが、後に「クリスマス休暇にも実家に帰れず、学校に残る破目になる」って顛末を辿る辺りも痛烈で面白かったし、そこから更に踏み込んで「ハナム先生と共に過ごすアンガスは、決して一人ぼっちの孤児なんかじゃない」と観客に感じさせる辺りも、見事な構成でした。 ハナム先生と、生徒のアンガス、どちらに偏るでもなく、両者を好きになってしまうような作りだった点も良い。 こういう映画の場合、普通なら「子供の頃に観ればアンガス側、大人になってから観るとハナム側に感情移入させられる」って形になりそうなものなのに、本当に等しく、二人とも主人公だったんですよね。 それまで生意気だったアンガスが、父と面会出来た際には子供らしく嬉しそうな顔になり、その後に現実を悟って悲しげな顔になる場面。 気難しいハナム先生の「停学は目の前に迫ってる」「私は手を引く」なんて台詞が伏線になっていて、前言を撤回するように、終盤でアンガスを庇う場面。 どちらにも見せ場というか、大いに心揺さぶられる場面が有り、ダブル主人公物として、理想的な出来栄えだったように思えます。 最後はハナム先生が学校を去るという、悲しい結末を迎えてしまう訳だけど「前々から書きたかったモノグラフを完成させる」という目標が有るので、暗くなり過ぎず、前向きな希望を残している形なのも、これまた素晴らしい。 別れ際「君なら出来る」と伝えるハナム先生に、アンガスが「俺も同じ事を言おうと思ってた」と返すのも良かったし…… その後の「またな」を言い合う場面といい、教師と生徒という関係性では無くなったとしても、二人には確かな絆が残ってると感じさせてくれるんですよね。 「仲良くなった二人が別れてしまうだなんて、可哀想」という悲劇を描いた映画では終わらずに、そんな悲劇を乗り越えるだけの強さを感じさせる映画でもあるのが、本当に良い。 此度、時間をおいての再鑑賞という形になったのですが、上述の「ハナム先生が前言を翻してアンガスを庇う場面」といい、伏線の巧みさや、構成の緻密さには、改めて驚かされましたね。 感動させるだけでなく、積み重ねの大切さを教えてくれる、良い意味で教科書のような…… 観客に対する先生のような映画でありました。 【ゆき】さん [インターネット(吹替)] 8点(2025-06-02 17:42:48)
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