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《ネタバレ》 本作に登場する二人は、見た目や口調その他の「外見」は男性だが男性愛者、という性的マイノリティである。この二人を主人公にして、LGBTをテーマとする種々のトピックス(社会啓発的な内容を多々含む)をかなり広範に取り扱ってゆくが、トピックスも多いぶん全体的な描かれ方はだいぶオーソドックスで分り易い「初学者向け」な風にも感じられるし、また率直に演出が少しクサいor大仰だと感じる場面が部分的にあったのも確かである。しかしそれは、このテーマに対する製作者のマジメさ・真剣さを表しているように思う。少なくとも、映画のコンテンツの一つとしてこのテーマを「消費」するような作品では確実になかった。
幾つかの社会的な、またはプライベートな困難を乗り越えて、物語は比較的穏やかに進行してゆきつつも、やがてそれは一人娘の親権を争う離婚調停へと収束してゆく。この場面は相当にシリアスであると同時に、一作品の枠を超えて非常に考えさせられる内容であった。つまりはそれが、性的マイノリティのカップルが母親と同じように社会で子どもを育てられるのかという答えの出ない問いに帰着してゆくからだ。例え社会的認識が確実に向上しつつある現在であっても、これも確実に差別意識も残存している中で、子どもが本当に幸せに為れるかどうかという冷徹な現実は理想論とはかけ離れた次元に存在すると思うし、作中でもそのことは(いくぶん差別意識への批判を交えつつも)明確に描かれていた様に思う。最終的な彼の決断は、恐らく自身の「唯一の子」となるだろう娘との生活を手放すという極めて重いもので、そこには、感動するとか泣けるとかそういう感覚を超えた(共感したくても出来ないという様な)筆舌にし難い感情を覚えた。 愚直な映画であると思う。クソマジメだし、重いし、それを飾らずそのままぶつけてくるかの様な作品だと感じる。でも、そこに感じる青臭い真摯さは個人的にとても好きだし、素直に観て良かったと思う。 そして、本作のテーマ面の出来からすれば些末なことではあるが、まず離婚調停での葛藤を最大化している緻密な人間関係の設定は、色々とかなり良く出来ていたと思う。演技面でも、宮沢氷魚と藤原季節の主演二人は自然な演技で違和感もなかったし、また、実は葛藤という意味では、主演二人よりも種々の場面でより複雑な演技を要求されているようにも思われる母親役の松本若菜も、二人以上に素晴らしかった。 【Yuki2Invy】さん [映画館(字幕)] 8点(2020-01-26 04:26:41)(良:1票)
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