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《ネタバレ》 “Johnny Got His Gun”『ジョニーは銃をとった』。映画の主人公はジョニーではなくジョー。
第一次大戦の志願兵の募集広告“Johnny Get Your Gun”『ジョニーよ銃をとれ』に対する、その結果どうなったか?を表したとも言えるタイトル。 “鬱映画”とか“救いのない映画”として、ネットで度々目にしていて、あらすじから結末まで知ってしまってからの視聴。観終わって気分が悪くなる映画(=いわゆる“胸糞映画”)って、私の中ではあまり評価が高くありません。でも本作は私が思っていたような作品とは違ってて、確かに救いは無いけど、嫌いではなかったです。結末知らないで観た方が良かったかな。 負傷して視覚を奪われたジョーが、腕が無い事、足が無い事、顔が無い事を、徐々に理解していく過程が残酷。心の中で叫んでも誰にも聞こえない恐怖と絶望感。 現実のモノクロの世界に対し、カラーで表現されるジョーの回想と夢。死者を運んでいく列車に兵士たちを乗せるキリストと呼ばれる男。これは夢だろうな。「私が社長、これはシャンパン、メリークリスマス!」鎮静剤の副作用か、恐らくバグってる回想。どこか幻想的な夢の表現が印象深い。 外界との繋がりを持てない中、日の光を肌で感じて昼夜を知り、メリークリスマスの文字から、今日が何日か判る喜び。どうにか接触方法を探るジョーの努力と、献身的な看護婦の触れ合いは、こんな絶望的な状況でも希望を感じさせ、映画の先を観たい気持ちにさせてくれます。うん、観続けるのがシンドイ映画じゃないんですね。 結末が恐怖です。遂に訪れた意思疎通の場。そこには、ジョーのうなづきがモールス信号だと気が付いた士官、従軍牧師、ジョーを生かすことにした軍医、献身的な看護婦、そして軍の責任者が居ます。 でもここが軍の病院で、ジョーは軍の研究のために生かされています。軍はジョーの回復具合を見るのではなく、この植物状態で、人間がどれだけ生きられるか?だけを観るのが目的だったので、彼が意思疎通の図れる、感情ある人間だとは考えていなかったんですね。 この映画の怖いところは、戦争で手足と顔を奪われた事はもちろんだけど、ジョーが意思疎通が出来た事実を闇に葬る軍の決定にあると思います。見て見ぬふりを決める責任者と、それに反対しない・出来ない軍属たち。巨大な組織の隠ぺい体質には、いま話題のテレビ局の問題に通ずるものを感じます。 日の光すら奪われ、死ぬことも許されないジョー。あまりに残酷な『銃をとった』結果に、言葉を失ってしまいます。 【K&K】さん [DVD(字幕)] 8点(2025-01-27 09:28:04)(良:1票)
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