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《ネタバレ》 “日本を襲う破壊の象徴”として誕生したゴジラでしたが、度重なるシリーズ化により“怪獣と戦う怪獣の王”のイメージに落ち着いていました。日本でのゴジラシリーズは終わり、再度海外進出したけど、やっぱり怪獣と戦う作品でしたね。そんな当時、ゴジラを使って記憶に新しい原発事故と大震災を落とし込むのは、まさに原点回帰でした。
圧倒的な力で破壊されていく日常風景。次々起こる大惨事。徐々にわかってくる被害の実態。この日本で想像もしなかったまさかの原発事故。今後日本がどうなるか解らない恐怖。戦争を体験していない私たち世代に、東日本大震災はリアルタイムな恐怖でした。 地域を破壊する困った存在から、日本の武力では太刀打ちできない脅威へ。ネットやテレビの他人事から、徐々に自分の身に降りかかる危機として迫ってくる描写は、現代社会のリアルを感じます。そう、現地の人以外の多くの人にとって、最初は他人事なんですよ。 第2形態と呼ばれる目の大きい弱々しいゴジラが、車や建物を押し退けて進む様子は、記憶に新しい震災の津波被害を連想させます。震災から僅か5年後ということもあってか、生々しい被害者の様子はほとんど描かれません。日本政府vsゴジラという大きな話にすることで上手く受け流したとも言えるし、隣近所のミニマムな情報より、ネットや報道で知るグローバルな情報の方が、自分にとって近く感じる現代社会の歪さも感じさせてくれます。 首相ほか日本を動かしていた中心人物たちが呆気なく事故死し、次世代を担う若い政治家。たまたま生き残ってしまった地味な政治家。専門分野の中でもはみ出し者が活躍する展開は、個性と多様性の今の時代にマッチしていたと思います。 作中何度も出てくるエヴァ臭。会議や兵器登場で出てくる、目で追いきれないテロップ文字群に序盤圧倒されるけど、徐々に“特に気にしなくて良いんだろうな”って切り捨てることに。政治家や専門家が早口で話してグイグイ進んでいく今後の展開も、結構置いてけぼり感を感じたけど、そこもあんまり気にしなくて良いんだろうな。漫画チックなカヨコ。リアルであんな特徴的な日本語を話すのは矢沢くらいだろう。まるでアスカ(エヴァのキャラ)がそのまま大人になったよう。どっから出てきた?ヤシオリ作戦って作戦名。とどめは会議で掛かるエヴァの曲… エヴァが賛否両論の“Q”で止まったまま4年。こんな寄り道してた事に、当時は「何をしてるんだ父さん!」状態だったけど、今では当時の庵野さんの状態を飲み込めてます。 中心となる登場人物が多いのと、端役にまで有名人を起用したため、毎度私は、どの立場でこの映画を観ればよいのか迷ってしまいます。矢口が主役なんですが、日本を守る政治家としての公(こう)の顔は出ていたけど、私(し)の顔?家庭や家族を守る身としての一面は描かれません。矢口に限らず登場人物全員。こんな大災害のなか、ここまで対ゴジラの事に集中できる彼らのメンタルって凄い。 こんな描き方も、災害に遭遇した自分というリアリティより、SNSなんかでゴジラに破壊される世の中を、俯瞰して観ている自分…という微妙な立場で映画を観てしまいます。それもまた、ネット化した現代社会を反映しているのかもしれませんね。 最後の人型の尻尾は、ネットで知るまで意味が解りませんでした。もう少し作中で説明(矢口たちがアレをどう解釈するか)が欲しかったです。 【K&K】さん [映画館(邦画)] 7点(2025-06-01 10:01:50)(良:1票) 《新規》
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