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《ネタバレ》 親を殺された主人公が、歌舞伎役者に拾われて、住み込みの弟子として、同い年の歌舞伎役者御曹司と一緒に、厳しい稽古を積んで歌舞伎役者を目指すところから始まり、人間国宝に至るまでの一代記です。同じ道を志した2人の男の立場が二転三転し、各々がそれぞれ苦悩しつつ、少し道を外れつつ、それでも、歌舞伎役者として生きる以外の道も無く、それに縛られ、その高みを目指すしかない、単純に好敵手とも言えない、単純に戦友とも言えない、二人の関係が、なんとも味わい深いですね。実際のところ、そんなにうまいこと二転三転するかよと思いますが、芸事とは別の、個人の能力ではどうすることもできない、様々な有象無象によって、物事は簡単にひっくり返り、人生は大きく流されるものであること、どちらに転んでいてもおかしくなかった人生の綾を、わかりやすく効果的に見せるために、うまく考えられた構成だと感じました。最終的にまったく異なる対照的な人生となったことも感じ入るものがありました。本作は、題材が題材だけに、まじめに取り組まなければ、伝統芸能を貶めてしまいかねないという縛りがあるので、ハードルは高いのだけれど、制作陣や役者陣皆が作品の質を上げる面で同じ方向を向いていて、すべてのシーンに意味があって、役者が皆、実のある演技をしていて、それが束になってぶつかってくる、凄味のある作品になっていると思いました。歌舞伎の演目の映像美も素晴らしいのですが、冒頭の1960年代のヤクザの宴会と殴り込みのシーンの作り込みの細かさに、ガッツリ持っていかれ、それ以降、時間を気にすることなく見入ってしまいました。
【camuson】さん [映画館(字幕なし「原語」)] 10点(2025-07-11 15:52:44)
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