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七人の侍というタイトルでありながらこの映画のキモはメインの侍たちにむしろ侍らしくない人物が揃っているところです。勘兵衛(志村喬)は僧に擬装した坊主頭、平八(千秋実)は初登場シーンで薪割りをしておりいざという時には人を斬らずに逃げ出すとまで公言する、勝四郎(木村功)はまだ未熟な子どもで花畑で少女のように花を摘みさえする、菊千代(三船敏郎)は勘兵衛に侍なら正気を失うほど酔いはせんと言われたそばから泥酔している、この彼らの侍らしくなさこそがむしろ時代と国を超えて多くの人間に愛される要因ではないでしょうか。まあ久蔵(宮口精二)はいかにも侍らしい侍ですけど、周囲が侍らしくない人物に囲まれているからこそかえって彼が魅力的に見えるのだと思います。しかし七人は金にも出世にもなるわけでもないのに戦う理想化された人物で彼らこそ本当の侍であるような描き方になっているため、結果としてこの映画は侍という神話を再生産する作品になってしまいました。悪役が野武士であり、農民が侍を雇うプロットを見ても本来ならば侍なんて飯を食うために仕事をしているだけで立派でもなんでもないただの人間だという侍という神話の解体がこの映画のテーマになるはずなのに、黒澤明は劇中の侍たちを人間として好きになりすぎているんですよね。いくら台詞で農民を持ち上げたところで侍側こそ真に偉大だったという印象が残ってしまいテーマと人物描写が食い違ってしまっています。そのためこの作品はキャラクターが魅力的なだけの娯楽映画以上のものになれていないと思います。そのことがこの映画の人気に繋がっているのでしょうからこれはこれで正解なのかもしれませんが、私は黒澤明監督作品を、そして映画という表現をただ面白ければいいエンターテインメントとしてのみ評価する見方はしたくないのです。
【Сакурай Тосио】さん [インターネット(邦画)] 6点(2023-07-01 16:57:45)
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