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残念ながらジャンルと時代の壁を超えて評価される作品ではないと思います。三島由紀夫がギリシア悲劇のようだと評したらしいですが、悲劇として見ると金子信雄というわかりやすい悪役がいるのはダメだと思います。例えば、ギリシア悲劇の代表作オイディプス王がどういうお話かというと主人公オイディプスが父親殺しの犯人を捜していたが、その犯人は自分自身であったと突き詰めてしまい自分の眼を潰すというストーリーです。悲劇として成立するためには外部からの介入により苦境に落とされるのではなく、主人公の内部にこそ罪が潜んでいるというのが重要だと思います。悪役を退治すれば解決してしまうならば、人の業や運命を描いた作品とは言えないでしょう。一応鶴田浩二は任侠道という自分自身の規範によって破滅していくのですが、金子信雄が裏で策謀しなければこのような破綻は起こらなかったわけでそこが悲劇としては弱いのです。単純に今の日本人にとっても任侠道なる価値観が共感しづらいというのもあります。しかし一方で悲劇として十分に成立しなくともそれはそれで十分という気持ちにもなります。鶴田浩二と藤純子はこれ以上にないはまり役でとても美しく撮られています。あくまで二大スターの美しさを堪能する時代がかったメロドラマとして観れば悪い映画ではないです。
【Сакурай Тосио】さん [インターネット(邦画)] 5点(2023-03-19 23:43:14)
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