みんなのシネマレビュー |
|
|
|
ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
2.シェイクスピアの戯曲を、現代を舞台に蘇らせる。ってのは良いとしても、よりによって「シンベリン」を選ぶというのが、実に冒険的、いや、実に無謀。実にアナーキー。原作はシェイクスピア晩年の「ロマンス劇」期の一作。荒唐無稽。特にこの「シンベリン」は近年まで失敗作とみなされていたらしい。 こういう作品を、そのまんま、ギャング映画に仕立てちゃってます。ちくま文庫のシェイクスピア全集で読めますけどね(ヒロインの名前が版によって2つの説があり、ちくま版はイモジェンではなくイノジェンを採用)。いやホント、そのまんま。って言うか、この内容でオリジナル脚本だったら、ビックリしまっせ。 という訳で、あくまでコレ、シェイクスピアをやってるんですよ、というのがわかるように、いかにも演劇調のセリフ回し。元のストーリーが不自然な上に、セリフ回しも不自然で、もはやヤケを起こしているような映画ですが、ある意味、バランスが取れてると言えば、取れてます。 セリフが多くなってしまっているとは言え、映像はしっかり陰影に富んでいて、雰囲気、悪くありません。ヒロインが森を歩く場面なんかも鮮やかで、いいですね。 劇冒頭の紳士の会話は、映画ではテロップ表示に置き換えられ、断片的な映像が示された後、舞台は一週間前へ。夜の雰囲気。ここで流れる音楽が、おや、これは、ジョン・ケージ作曲の「ある風景の中で」、じゃなかった、これは「夢」の方ですね。どうもこの2曲、ごっちゃになる。ここでジョン・ケージの曲が使われているということは、もしかして、我々が気づいていないだけで他にもケージ作品が劇伴に使われてたりして。例えば、劇伴が流れていないと思しき場面でも、実はケージの「4分33秒」が流れている、ってことなんだろうか、んなアホな。 それはともかく、この作品。どうしてこんな作品を作ろうと思ったのかが最後までナゾなんですが、それでも何でもちゃんと見応えがあるもんだから、狐につままれた気分になる。悪い気分ではありません。 【鱗歌】さん [インターネット(字幕)] 7点(2023-12-24 18:06:55) 1.ストーリーテリングの技術とは常に進化していくものであり、発表当時には斬新だった名作も、時代と共に陳腐化していくことは避けられません。シェイクスピアもその例外ではなく、現在の目で見ると突飛な展開、薄っぺらな人物描写が気になります。 『シンベリン』を原作とした本作は、舞台こそ現代のニューヨークらしき都市に置き換えてはいるものの、内容や固有名詞、言葉使い等は原作そのままであり、盛り付けを変えることにより古典文学の印象がどう変わっていくかという点が興味の対象でした。この点、脚本・監督を担当したマイケル・アルメレイダ(過去に現代版『ハムレット』にも挑んでいる)は驚くほど何の工夫も施しておらず、残るのは違和感のみでした。現代劇でありながら時代劇調の台詞を登場人物に喋らせることの違和感をどう中和するか、現代の観客には受け入れられ難い突飛な展開にどうやって説得力を持たせるかという努力をまったくしておらず、古典の悪いところがドバっと出てしまうという結果に終わっています。古典の舞台を現代に置き換えるというそもそものコンセプトがまったく活かされておらず、これならば、年代設定までを原作に合わせた時代劇として製作した方が、まだマシな作品になったのではないかと思います。 数年前にレイフ・ファインズが監督・主演した『コリオレイナス(邦題:英雄の証明)』が古典と現代劇の折衷に見事成功したことと比較すると、本作は完全な失敗と言わざるをえません。 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(吹替)] 3点(2016-05-17 18:20:23)
【点数情報】
|
Copyright(C) 1997-2025 JTNEWS