みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
2.《ネタバレ》 “宗教”と“学問”という難しい題材を扱っている割には、古代のエジプトで活躍した一人の女学者の生涯を通して比較的分かりやすく感じ取りやすい作品に仕上がっている。 ただ、“宗教”と“学問”を中立的に描くわけではなくて、“宗教”には人を救う力、人を導く力があり、貧者にパンを与えるシーンを象徴的に用いて宗教の優れた面を描いている一方で、“宗教”を“争い”“対立”“偏見”の種のようにかなり否定的に捉えており、“学問”を非常に高貴なものと捉えすぎているような気がする。本作には、宗教にしがみつくことを否定するような啓蒙思想的な面がみられる。 もっとも歴史的に見ても、宗教が“争い”“対立”“偏見”の引き金になっていることは否定しようがなく、キリスト教徒とユダヤ教徒が争い合い、そして同じキリスト教徒同士も争い合う姿を見ると、宗教とは何かということを考えざるを得なくなる。宗教は人を幸せにするものであり、宗教自体を否定することは難しいが、なぜ信仰する神が違う者同士が共生することができないのかと思う。 宗教は、貧者を救うことは出来ても、愛する者や一人の女性すら救うことは出来ないということが、本作の伝えたい大いなる“矛盾”といえるだろうか。ただ、元奴隷のダオスは彼なりの方法において、あのような形となっても彼女の魂を救うことが出来たといえるのかもしれない。“愛”は“宗教”を超えるということか。 “宗教”を醜く描く一方で、“学問”を追究しようとするヒュパティアの姿勢がより美しく描かれている。醜い宗教間の争いとは離れた次元において、一人(仲間がいるが)宇宙の真理を探究しようとする姿には心が打たれる。地動説や、ケプラーの楕円軌道の法則を常識的に知る我々にとっては、ややもどかしいところがあるが、当時の学者や哲学者の苦心する姿をしのぶこともできる。宗教に固執する人間をアリのようなちっぽけな存在、宇宙の片隅の小さな小さな場所における醜い争いとして描き、宇宙からのシーンを多用することで、宇宙規模の大いなる真理や法則の大きさを対照的に象徴的に描き出している。 通常の歴史作品という見方もできる一方で、一人の女性が生きた証というヒューマンドラマや“宗教”と“学問”という現代の我々にも身近に感じることができるような深い作品にも仕上がっているといえるだろう。他の作品とは異なるようなアプローチは評価できるかもしれない。 【六本木ソルジャー】さん [映画館(字幕)] 7点(2011-03-27 23:04:04) 1.《ネタバレ》 フリッツ・ラング監督の『メトロポリス』を見て、人間というのは100年経ってもあまり変わっていないものだと思いましたが、それどころか1600年前から同じことをしているというのが、この映画。宗教上の対立、他の宗教の信者に対する攻撃・排斥運動、権力闘争など、現代劇でも通用する内容です。ヒロインのヒュパティアは、天文学者・数学者にして哲学者という才媛ですが、主人公というよりは狂言回しの印象が強かったです。 彼女が天文学者であるためか、しばしば宇宙に浮かぶ地球が映し出され、そこからアレクサンドリアにズームして物語が始まるというパターンが見られるのですが、これはいわゆる「神の視点」として働いているのでしょう。それ以外にも、空中から地上の群衆を捉えた場面が目立ちます。特に前半のクライマックス、図書館で狼藉を働くキリスト教徒は、早回しの効果もあってまるでアリのようです。人間を虫けらのように描いたこのシーンは、本作でも特に印象深いところでした。 また、すでにアリスタルコスが唱えていた地動説が紹介され、ヒュパティアによって検討されています。ここで面白いのは、ヒュパティアは地球の軌道を「完全な形」である真円だと考えていたこと。しかしそれでは説明のつかないことが多く、その結果軌道が楕円ではないかと思い至ります。つまり、人間は「完全でない」軌道を描いている地球の上に生存しているわけで、これは人間の不完全さを示唆しているように思われます。こうしたところにも、天から見た人間批判という面が読み取れます。 ただ、数多くのエキストラを使った暴動シーンや豪華なセットなど、お金と時間をかけた映画だと思いますが、内容がそれに見合っているかというと「?」な部分もあります。主要人物であるダオスの行動に、いまいちよくわからないところがありました。力作であることに間違いはないと思いますが。 【アングロファイル】さん [映画館(字幕)] 7点(2011-03-16 19:59:59)
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