みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(9点検索)】
5.《ネタバレ》 冒頭、馬の姿と、馬を見つめる少年の視線とが提示され、やがて馬と少年とを同じショットに収めるシーンが提示されることで、両者の距離が縮まっていくことが表現される。なんてのは、映画の定石なのかも知れないけれど、全編にわたって、登場人物たちが、馬への視線を介して何らかの形でつながっていくというのが、やっぱり感動的なんだな。しかも、馬があくまで生き延びていくのに対し(そりゃ途中で死んじゃったら映画が繋がらないので)、人間たちは戦争下、アッサリと、実にアッサリと命を落としていく、この残酷さ。馬が生き延びていくことが、我々に残された数少ない希望となります。少年もやがて兵士として戦場にやってきて、毒ガスにより目を負傷してしまう。愛馬と距離的には近づいていながら、少年はかつて愛馬に注いだ眼差しを一時的に失っている、というハラハラさせられる場面で、今度は「音」が効果的に使われるのが印象的です。そしてまた、包帯で目隠しされた彼の代わりに、周りの者が、そして我々が、泥まみれになった馬の汚れを落とし、馬への視線を送る役目を担うことになる、というクライマックス。怖い場面はひたすら怖く(『プライベート・ライアン』と同じ撮り方はしない。“同じ”は、怖くないから)、それだけに優しい場面がどこまでも優しい、この素朴な計算高さが、スピルバーグの魅力だなあ、と。このヒトには逆らえん……。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2014-12-30 06:43:31) 4. 『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』以降四半世紀に渡り、いかにして悪趣味描写を娯楽作に持ち込むかという難題に勝手に挑戦し続けてきたスピルバーグですが、本作ではついに悪趣味を卒業し、かつての健全な娯楽映画に回帰した内容としています。同時に製作した『タンタンの冒険』も同様の趣旨でしたが、そちらは初のアニメ作品ということもあってやや失敗した感がありました。しかしスペクタクルの巨匠スピルバーグ、実写では外しません。90年代以降のスピルバーグ監督作品としては間違いなくNo.1の面白さであり、この人は映画を撮るのが世界一うまい人であることを再認識させられました。。。 主人公は馬。ディズニー映画のように人間の言葉を喋ることも、誰かがその気持ちを代弁することもなく、本当にただの馬を主人公とした映画なのですが、この馬のキャラがきちんと立っていることに驚かされます。擬人化の名人スピルバーグが久しぶりにその腕前を披露したわけですが、演技部門でオスカーにノミネートされてもよかったんじゃないかと思うほど馬が素晴らしすぎます。そんな馬を囲む人々も基本的には良い人ばかりで、良いドラマを観たなぁという気持ちを存分に味わわせてくれます。。。 最近仲良くしているピーター・ジャクソン(第一次大戦オタク)に影響されてか、本作の舞台は第一次世界大戦。これが実に独特な戦争で、初期には職業軍人による伝統的な騎馬戦が主流だったものの、後期には大量破壊兵器と大人数の素人兵士がその主役となり、開戦時と終戦時とではまるで違った様相を示すこととなった戦争でした。大量破壊兵器の登場とともに、かつての戦場には確かに存在していた「戦いの美学」というものが失われ、戦争はただの殺し合いとなったわけですが、本作はそんな時代背景をきっちりと内容に反映させています。当初は軍馬として大事に扱われていたジョーイが、後には交換可能な運搬手段としてこき使われることとなるのですが、戦場における人道のあり方と主人公の扱いを丁寧にリンクさせている脚本には感心しました。。。 不満点を挙げるならば、ヨーロッパ人が当然の如く英語を喋る点と、ドイツ帝国が一方的に悪者にされている点でしょうか。ユダヤ人弾圧のあった第二次大戦ならともかく、三国同盟と三国協商のどちらに正義があったのかについて議論の割れている第一次大戦においてこの扱いは無神経であると感じました。 【ザ・チャンバラ】さん [ブルーレイ(字幕)] 9点(2012-08-10 17:43:31)(良:1票) 3.《ネタバレ》 ジョン・フォードやハワード・ホークス、ラオール・ウォルシュをはじめとした伝説的監督たちは、何もただ傑作・名作を創り続けてきたから偉いのではない。彼らは、“「(アメリカ)映画」はかくあるべし”という《規範》を、その作品によって指し示し“体現”してきた。それゆえに「巨匠」と呼ばれるのである。 その《規範》とは、言葉にすればとてもシンプルなものだ。それは空に浮かぶ雲、風にそよぐ草原の広がり、柵を取り囲む人々の佇まい、ぬかるむ大地に降りしきる雨、見つめあう眼差し、それがふと伏せられる瞬間の表情・・・そういったものたちを、ただフィルムに写し取り、映し出そうとするだけのことなのである。しかし、その“単純[シンプル]さ”こそが、彼らの作品にあっては奇跡のような美しさを産み出すのだ。いや、端的にそれはひとつの「奇跡」以外の何物でもない。 そしてスピルバーグがここでやろうとしたことは、間違いなく、そんな往年の巨匠たちと“同じように映画を撮る”ことだった。彼らのように、空を、草原を、雨を、丘の一本道を、走る馬たちを、どこまでもシンプルにフィルムに映し出すこと。それは、現代にあってなお映画がひとつの「奇跡」たり得るかという問いであり、挑戦だといっていい。なぜなら、もはやほとんどの「アメリカ映画」が、そういう「単純な美しさ」からはるかに隔たった場所に“在る”からだ。 今日にあってフォードやウォルシュのように映画を撮ろうとすることは、ほとんど困難な「不可能事」なのである。 けれど例えば、フランスの少女が主人公の馬に乗って草原の丘の稜線に消えていく場面や、負傷して目が見えない青年が愛馬と戦場で再会する場面などに、ぼくという観客は「ああ、フォードだ!」と感歎し、思わず涙する。まさしくそれらは、そういった「奇跡」をまのあたりにする瞬間に他ならなかったからだ。スピルバーグはあえてそんな無謀さに挑戦し、すべてに成功しているわけではないけれど(・・・馬にヒロイックな擬人化風の心理描写(!)を施したりもする本作に、往年の『名犬リン・ティン・ティン』シリーズのような「アナクロニズム」を指摘するのは簡単だろう)、 この作品で「(アメリカ)映画」を真に継承してみせた。そう、これが本当の意味での「A級映画」なのである。 【やましんの巻】さん [映画館(字幕)] 9点(2012-03-29 16:07:02)(良:3票) 2.《ネタバレ》 期待値低かったけど意外に面白くてびっくりしました。スピルバーグにはそもそもこの作品自分の家族のために撮ったみたいで賞とか気にしてなかったみたいですね。そもそも戦争がテーマではないと本人もいってますしそう言う意味ではプライベートライアンが悪く働いちゃった感はあるかな。兄弟のシーンやお爺ちゃんと孫娘のシーン。そしてドイツ兵とイギリス兵のシーンはそれぞれの絆を感じて非常に好きなシーンです。 【とま】さん [映画館(字幕)] 9点(2012-03-20 21:50:14) 1.《ネタバレ》 馬を見つめる青年から始まるこの映画は、冒頭から、見ること、を提示している。 そう、まなざしである。まなざしを操ること、それが映画である。 見ること 見られること 見えなくなること 見えなくとも気付くこと そして見ないこと 見ることを奪われる青年が、見ずともわかること。 ラストのジョーイの視線は、家族を見ていない。 見ていないから良いのだ。 ジョーイは見ないのだ。見なくてもわかることもあるから。 そして、帰ってくる、という意味の重さと尊さ。 帰ってきたよ、という帰還した者のまなざしではなく 帰ってきたのかい、という帰還した者を受け入れるまなざしで描ききること。 アメリカ映画とはこういうことだろと。 【すぺるま】さん [映画館(字幕)] 9点(2012-03-07 01:31:41)
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