みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(9点検索)】
6.《ネタバレ》 どこかの批評で「PTAは映画に愛されてる」「映画を撮るために生まれてきたような監督」という論を読みましたが、正にその通りだと思います。とにかく各シーンが強烈なインパクトを有していて上映後も何度も反芻してしまう。この辺りの感覚はキューブリックの映画に近いと個人的には思っていて、全体的にシンメトリックな画作りに拘っている点が両者に共通しているのも面白い。 本作では特に前半部の長回しが強烈で、フレディの働く写真屋(ブティック?)をコートを纏った女が歩き回る場面や、"マスター"ことトッドがフレディに催眠(あえてそう呼びます)をかけフレディが過去を吐露する場面は、計算され尽くされた画と役者の卓越した演技力に目を釘付けにされます。 前作の『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』と同様に役者の狂ったような暴れっぷりも本作の魅力の一つで、特にホアキン・フェニックスのリビドーが溢れ出した様な演技は圧倒されつつもついつい笑ってしまう名演だったと思います。 ストーリーは獣の様に生きていた男、フレディを新興宗教の教祖であるトッドが治療しようとするという話で、そのお話自体もフレディが最終的に宗教と決別する展開などは実に良いのですが、この映画のストーリーはある種現代社会の縮図として作られていると思います。何時も猿のようにセックスのことしか頭にないフレディは大衆(愚衆)の象徴で、それを自らの道に導こうとするトッドは所謂近代的国家の象徴。だから彼は説法で「人はこう生きるべきだ」と明確に人の価値観を定義する。そこにトッドの奥さんが絡んでくる。トッドの奥さんは鏡の前で彼のアレを処理する場面で分かる通り彼の手綱を握っている。トッドと奥さんは二人で一つの国家を象徴しており、自分の宗教に難癖をつけてくる男に「誰もがそれぞれの考え方を尊重すれば良い」と言うトッドは所謂ハト派、「難癖をつける奴は戦って叩きのめせば良い」と言う奥さんは所謂タカ派。だから奥さんが次第に大衆を象徴しているフレディを得体の知れない理解不能な存在として疎み追放しようとトッドに進言する点も合点がいく。 映画の最後でトッドはフレディに「君は誰にも支配されずに生きる初めての人間になる」と言い彼を送り出しますが、大衆を象徴するフレディの成長(アル中の時と顔つきが全く違う)を"支配から逃れ自由に生きること"としているのも素晴らしいと思います。 【民朗】さん [映画館(字幕)] 9点(2013-06-09 16:19:34)(良:1票) 5.毛皮の女の長回し、まるで水が静かに流れているかの様な躍動。 そしてただただバイクが疾走するだけの躍動。 それらがスクリーンに投影されている。 それを観ているだけで思わず涙しそうになる。 もうそれだけで、この映画は充分に素晴らしいだろうと。 映画とはそういうものだと思うからだ。 なんだか久し振りにこんなにも映画を観ながら熱を帯びて痺れてしまったもので、何よりも最高の光をフィルムに定着させている。あの絶妙な薄暮の中を走る船であるとか、本当に見事なまでに豊かな映画であったと思う。 そして、何よりも、ホアキン・フェニックスがフィリップ・シーモア・ホフマンを睨むように見つめ微笑むあの顔の美しさったらない。彼の熱や精気が徐々に失われ、顔面の脂も抜けて、ただの骨と肉と魂の塊へと姿を変えていく美しさよ。そんな骨と肉と魂の塊が彷徨い、両の眼を涙でギラつかせ、口許を歪ませているだけのクローズアップ、そしてその陰影。 映画は、物語などを超えて、観るという体験として身体に刻み込まれるものだ。 【すぺるま】さん [映画館(字幕)] 9点(2013-04-22 01:16:46)(良:2票) 4.《ネタバレ》 主役二人の演技に圧倒されました。ひとつひとつのシーンもそのまま切り取って写真にしてしまいたくなるほど美しいです。そしてジョニーグリーンウッドの、もはやギタリストの枠組みではとらえきれないような音楽も素晴らしいです。自分にとってはこの点によってだけでも傑作にしてしまいたいくらいです。 しかし、自分にはこの映画のテーマがいったい何かがつかみきれません。主役二人の演技には圧倒されましたが、彼らは少なくとも共感とは程遠い存在です。その一方で両者ともにどこか人間臭さを感じました。フレディは少女に対する純粋な恋心を持ち、マスターは自らの宗教の教義に関する妥協を選択するのです。 マスターとフレディはいったいどのような関係だったのでしょうか。少なくとも、シンプルな師弟関係ではありません。それを示すようなラストの二人の会話。劇中では誰よりもお互いを理解し合っているようでしたが、一方で最大の敵同士にも成り得たのです。マスターのもとを離れ、最終的にどのコミュニティにも属していないフレディに今後平穏は訪れるのでしょうか。 新興宗教ものの映画と思って見に行くと肩透かしを食らうかも知れません。おそらく人とのかかわりあいや集団に属することについての、何かより普遍的なテーマを感じました。なんだか村上春樹の小説を読み終えたような気持ちになりました。 正直、一回見ただけではよくわからなかったので、時間をおいて再度鑑賞したいです。 【やっぴーK】さん [映画館(字幕)] 9点(2013-04-16 23:26:46) 3.またPTAはとてつもない映画をつくってしまった。そのことはよくわかる。正直いまは頭の整理がつかない。 とりあえず9点にさせてくれ。 【ideko】さん [映画館(字幕)] 9点(2013-04-03 18:08:23) 2.《ネタバレ》 初めに述べておくと、これは傑作である。しかしどうにもつかみどころがなく、この映画を映画に即して観て考えることは非常に困難だ。様々な観点からのこの映画の批評を期待するところである。私は二つの表面的な点だけを指摘しておきたい。まずオープニングから、海。元はふかい青、緑のような色であった海に、船の立てた泡が白く混ざり、何ともいえぬ淡い青になっているオープニングから心をつかまれる。これはオープニングだけでなく、劇中で三度ほど出てきているので、恐らく重要なシーンであろう。船も何度か出てくる。そして被写界深度の浅さである。非常に浅い。特にフレディが最初にコーズの船に乗り込むシーンは、まず手前のフレディ、そしてフレディがぼやけて船、そしてまたフレディ、というように被写界深度の浅さが効果的に使われており、意図を感じる。後半はそれほど浅さを感じることはなかったのも一つのポイントだろうか。全体として、この映画はなんだかよくわからない。宗教団体コーズを描いているが、この映画から宗教的な香りはしない。では世俗的な人間ドラマなのだろうか。恐らくそれも違う。事態はもっと複雑で、恐らくこれは宗教的ならざる神秘性のようなものを描いているのではないだろうか。これは振り返ると「マグノリア」のテーマであったようにも思う。そしてこの映画におけるその神秘は、フィリップシーモアホフマンでも空から降ってくる大量のカエルでもなく、フレディ自身なのである。 【Balrog】さん [映画館(字幕)] 9点(2013-03-28 19:06:54)(良:1票) 1.1950年代の狂ったアメリカが物凄く怖い。 緊張と解緊を繰り返す二人。胸苦しい不安で耳を塞ぎ目を堅く閉じたくなる。 それでも終わって席を立てないほど涙がとまらない。 【mimi】さん [映画館(字幕)] 9点(2013-03-28 16:26:40)
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