みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(9点検索)】
2.《ネタバレ》 ジャームッシュが綴る心穏やかで美しい日常の一篇。彼の作品は映像で表す「詩」であると、改めて認識させられる一本です。 生活の一つ一つに、それこそパートナーからマッチ箱に至るまで愛と関心を抱いて日々を送るパターソン市のミスター・パターソン。運転するバスの故障を除けば波乱らしい波乱の無い彼の一週間。だけど無味なんかじゃなく、彼のフィルターを通して、淡々と過ぎる日常の豊かで尊いことが饒舌に語られます。 出会う詩人仲間は深夜のランドリーでラップを刻む男だったり、10歳の女の子だったり。双子の乗客や通行人らが作品のリズムを生みます。 静かで何気ないこの世界観に大きく貢献しているのがアダム・ドライバー。大げさな表情やアクションを要求されない本作において、アダムの繊細な役作りは見事です。優しく温厚なパターソン氏、静かだけれどその表情が多彩なのです。モノトーンに凝る彼女には譲歩しっぱなしにも見えるかな。でもお互いにこの上なく優しいカップル。カップケーキ売れてよかった。 そしてこの映画、小さく笑わせてくれるシーンがたくさんあるのです。会社の配車係であるインド系同僚の愚痴(もはやボヤキ芸の域)には笑ってしまうし、毎日かしぐ郵便受けの謎が解けたときは「オマエかーい!」と誰もが突っ込むことでしょう。 そうそう、本名はネリーというワンちゃん、亡くなってしまったのだとか。名演技でしたねえ。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2020-05-03 23:45:05) 1.“パターソン”とは、バス運転手の朴訥な主人公の名前であり、彼が住む街の名前。 この映画は、“彼”と“彼が住む街”の「7日間」を極めてシンプルに映し撮っただけの映画、のように見える。 何か“特別なコト”が巻き起こるわけではない。慎ましく、平凡に生活する男と妻と愛犬の日常が、淡々と綴られる。 でもね、と、この映画を観ていた多くの人々はふと立ち止まり、思うだろう。 「“特別なコト”とは何だろうかと」 大災害に遭遇してサバイバルを余儀なくされるコト?殺人事件に巻き込まれて無実の罪で追われるコト?宇宙人襲来に脅えるコト?大恋愛をして人生を変えてしまうくらいに感情を爆発させるコト? 数々の映画的娯楽の中で表現されてきたそれらのコトは、無論“特別なコト”に他ならないだろうけれど、果たしてそういうことだけが「特別」なのだろうか。 裕福でもなく、貧困でもない普通の小市民が、何気ない日常生活を決まったルーティーンで繰り広げるということ。 決まった時間に起床し、たまに寝過ごし、妻にキスをし、シリアルを食べて出勤し、同僚の愚痴を聞き、決まったバスルートを運行し、帰宅し、妻の料理を食べ、愛犬を散歩させつつ馴染みのバーに立ち寄って、一日を終える。 そんな当たり前のことが、「特別」であるということを、この静かな映画は雄弁に伝えてくるし、今この世界の私たちは、事程左様に深く感じ入る。 そして、そんな普遍的な「生活」の中で、忘れてはならないことは何か? それは「表現」をするということだ。 「表現」とは、何もこの映画の主人公やその妻のように、「詩」を創作したり、「アート」や「料理」や「音楽」に没頭したりするような“クリエイティブ”な活動に限ったことではないだろう。 「愛してる」「美味しい」「ありがとう」「大丈夫?」「お前なんか嫌いだ」……生活の中の様々な事象に対して、ちゃんと自分の感情を相手に伝えるということ。 それが、もっとも大切な「表現」だと思えるし、そういうことを積み重ねていくからこそ、代り映えなく見える「生活」そのものが、何にも代えがたいものになり得るのだろうと思う。 半ば強制的に自らの「生活」に対して向き合わざるを得ないこのご時世。 ささやかな生活の中のささやかな喜びや多幸感を感じ、それを表現するコト。 このさざ波のような映画には、今この世界にもっとも必要なコトが満ち溢れている。 【鉄腕麗人】さん [インターネット(字幕)] 9点(2020-05-02 23:26:13)
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