みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(9点検索)】
10.《ネタバレ》 愚直の体現のような浪人・海野又十郎が終盤の宴会で「毛利様が狼狽えておりましたか」と、ほくそ笑むシーンが醜悪で、ゾッとした。 止められた酒に酔い、ご近所の評判も落とし、内助の功・おたきにへらへらと嘘までつく始末。 ここで、酔い潰れている又十郎の前にスッと懐刀を取り出すおたきの所作に、またもやゾッとした。 「おや、またかい?今度は心中だとよ」と、長屋は今日もズルズルとした日常に塗り潰されていく。この展開の見事さに、ゾッとする。 名作というよりかは、怪作の部類ではないかと、思う。 こんな悲話を遺作にしては遺憾だろう山中貞夫。「チトサビシイ」どころではない、どうにかならんか。(どうにもならんのだが) 【aksweet】さん [DVD(邦画)] 9点(2018-05-28 03:42:11) 9.《ネタバレ》 無言で懐剣を抜くおたき。その背中は泣いているかのようで鬼気迫る姿に息を呑みました。ひたすら媚びへつらう又十郎の姿と併せて考えさせられる武家のプライド。小悪党新三や長屋の面々のしなやかな力強さとの対比が鮮やか。巧みな展開と見せない演出の見事さと、おたきの意地の象徴が流れ去るラストショットに感服です。 【The Grey Heron】さん [DVD(邦画)] 9点(2014-06-01 01:47:27)(良:1票) 8.《ネタバレ》 山中貞雄は何を成し、何をやり残し戦場に散って行ったのか。 この「人情紙風船」にはそんな山中貞雄の死を感じさせる描写が散らばっている。 生きるか死ぬかの博打の日々を送る新三、 士官先を求めて何度も頭を下げては断られ続ける浪人の又十郎。 それを取り巻く女たち。 何度袋叩きにされようとめげない新三、何度断られようと通い続ける又十郎。 そんな二人の物語が交錯していくドラマの厚み。 二人は「共謀」を図った。 一時でも良い、死んだって良い。どうせ明日は無いんだ。一瞬でもいいから何かを成してから死んでいきたい。 金でも地位や名誉でもない。 意地が彼らに行動を取らせた。 酒屋での宴会は最後の晩餐か。 死んだことにも気づかず逝った男、死んだか生き残ったかも解らない男。 皮肉にも山中貞雄は己の死と向き合ってこの世を去っていった。 だが彼の代わりに、この作品に出演した俳優たちは息の長い活躍を続けた。 まるで亡き監督の魂を受け継いだように・・・。 【すかあふえいす】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-01-31 11:09:17)(良:1票) 7.天才とまでいわれている若き映画人、山中貞雄氏の演出作品をやっと拝見する事ができました。凄いの一言!! 残りわずかに現存すると言われている作品全部なんとしても生きているうちには必ず観ておきたいと思いました。 【白い男】さん [地上波(邦画)] 9点(2012-02-02 23:52:54) 6.全編通して全く古さを感じさせない重厚なドラマですが、圧巻はやはりラスト5分。タイトルや冒頭の通夜のばか騒ぎなどからもっとお気楽で心温まる物語を想像していたのに、まさかあんな結末を迎えるとは…。昨今のヘタな自称どんでん返し映画などより遥かに勢いよくひっくり返される衝撃の結末にはただただ悶絶。 【とかげ12号】さん [DVD(邦画)] 9点(2008-08-20 20:53:06) 5.《ネタバレ》 山中貞雄の現存する三作のうち一番最後に観た作品。遺書に「人情紙風船が山中貞雄の遺作ではチトサビシイ」とあるけどほんと寂しい作品です。日本映画史上に残る傑作というのも確かにと思う。ただ言われるほど暗いとは思わないし名作だと思うけど、三作の中では「百万両の壷」のほうが好きかな。 【バカ王子】さん [DVD(邦画)] 9点(2006-06-11 00:08:13) 4.《ネタバレ》 しょっぱな、動機不明の○○で始まる。「一体どうしたんだろう?」「お侍も色々あんだよ」と、長屋の人たち同様、我々を惹き込む。人の死すら酒の肴にする、活き活きチャキチャキとした長屋のにぎわい。現代って、近所づきあいとか難しいです。公園の草むしりに出てくる人、来ない人。来ない人に対しては、「○○さん来てないわよ、やぁねぇ」などと陰口をたたく。この映画では、いまの時代では見かけることが不可能になりつつある、裏表のない近所づきあいが、前半、正に下町の人情をほのぼのと展開していく。一方で、どこにでもいる浪人・海野、無頼・新三にスポットを当て、仕事の無心などの生活が苦しい事情を、鬱々と映し出しています。山中監督が仕掛ける陽と陰のコントラスト。そしてラストの海野家の○○。冒頭の○○がここでフッと記憶に蘇る。ぞっとします。どの家庭に不幸があろうとも、長屋(ご近所)はいつも通り、活き活きチャキチャキとにぎわうもの。監督が当時感じていたであろう世相を映画化したのに、なぜか現代に通ずるものがあり、不思議な印象でした。結局、あの二人は駆け落ちしたのかなぁ? 【どんぶり侍・剣道5級】さん [DVD(字幕)] 9点(2005-09-18 21:58:03) 3.幸運にも図書館で借りることができ、鑑賞しました。戦前の日本にこれだけ完成度の高い群像劇映画が存在していたとは、ただただ驚愕の極みです。ぜひ山中貞雄監督の他の作品も観たいのですが、現在ではフィルムがほとんど散逸しているということで、残念でなりません…。この映画の存在を教えてくれた他のレビュアーさんたちに感謝の気持ちでいっぱいです。 【K】さん 9点(2005-03-24 10:10:53) 2.山中貞雄をただ早逝の天才という知識だけで、初めてこの作品を見た時には、正直、うわーなんと厭世的、諦観的な作品なんやと。山中貞雄=ペシミスティックと勝手に式化してました。ところが・・・『丹下左膳餘話 百萬両の壺』『河内山宗俊』を見ると、ありゃりゃーー。さらに評伝などを読むと『街の入墨者』の脚色にはルビッチの『私の殺した男』、演出にはキャプラの『或る夜の出来事』を取り入れた、らしい。『人情紙風船』の憂色の濃さを時代に見るのはたやすいかもしれません。しかし三村伸太郎の生き生きとした脚本を全く反対にしてしまった山中の心情はいかなるものだったんでしょう。空と流れゆく雲のカット、金魚売りの長閑な声、ラストの紙風船。うーん、切ない。特にラストの紙風船、静かに向こうへ流れていく姿、あれはもう山中そのもの・・・。10点はいつか見ることができると信じて『街の入墨者』『国定忠治』にとっておくとしよう。 【彦馬】さん 9点(2004-05-25 01:01:38) 1.江戸時代の長屋における「チトサビシイ」お話。浪人夫婦の境遇が「チトサビシイ」。ラストの紙風船が転がり落ちるシーンも「チトサビシイ」。紙風船の如く、才能を「膨らましていた」山中監督にとって、この作品が遺作となったことも、やはり「チトサビシイ」。そして、戦争の所為で、その紙風船が割れんばかりに「膨らみきった」姿を見せることなく萎んで落ちたのは、「非常にサビシイ」。それだけに紙風船のシーンがいつまでも目に焼き付いて忘れられない。 【STYX21】さん 9点(2003-11-27 00:08:26)
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