みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(10点検索)】
5.《ネタバレ》 しみる映画。静かなドラマの中で、法廷画家という要素で世相と時の流れを表現してるのがいいアクセントになっている。 リリー・フランキーが描いた娘の顔がエンディングで再び映し出されて泣けた。 【ブラック武藤】さん [インターネット(邦画)] 10点(2019-10-09 08:53:50) 4.愛を「お互いが分かりあうこと」だと思っている人にとっては、この映画の描く絆の形ほど分かりづらいことはないだろう。この作品は、「お互いが分かりあえる」という幻想によって愛を捏造するのではなく、「人間はお互いに分かりあうことなどできない」というありのままの事実にしっかりと気付いていながら、それでもなお、お互いを大切にするためにはどうするかというテーマを描いている。この着眼点の鋭さによって、この作品は、2008年の邦画の中ではぶっちぎりの傑作であるように僕には思えた。お互いを大切にするということは、二人でしかできないことをするのではなく、一人でもできることを二人でやることから開けてくるのではないか。この映画はそのように問いかける。そして僕はこの問いかけを出した精神に最大級の敬意を表する。ひょうひょうと、あるいは淡々と生きたいと願う人にとってこの作品は一つの答えを見せてくれるだろう。 【wunderlich】さん [映画館(邦画)] 10点(2009-12-28 23:11:03) 3.《ネタバレ》 現代日本の問題と希望を法定画家という視点を通して描いた作品。橋口監督が得意とする感情の細やかな描写が冴え渡る。これまでの橋口作品の印象は、短歌のように感情の機微を描写したシーンの集合体であり、悪く言えば寄せ集めの歌集のようなイメージが拭いきれなかった。しかしこの作品は、それぞれの歌が総合的に共鳴し、一体となって感情のうねりのようなものを生み出している。鑑賞後、あたたかい涙が流れる素晴らしい作品だった。この監督の眼差しが心に沁み込むのは、自身が患った鬱病や同性愛者として社会から受けた偏見、それらによる実体験に基づいて、真摯に人間と向き合ってきた結果なのだろう。本当に沢山の人間の美しさや汚さを見てきたのだと思う。そしてこれ程までに、日本人の美点と欠点、その両方を鋭く描写できる監督は、僕にはあの小津監督以外に浮かばない。小津は省略が上手い監督であるが、橋口はその逆の長回しでその場の空気感を伝えるのが上手い。両者に共通するのは日本を愛する心と繊細さとユーモア。そして、この映画では、監督が今の日本を憂いていて、どうしてそうなったのかを、失われた10年を振り返ることで問題提起しているのだなと思った。どこまでも日本というものに拘って撮った作品であるのは間違いない。個人的に印象に残ったのは、日本人の愛情表現を描写したシーンの美しさ。欧米の方が見たら、こんな感想を持つだろう。なぜ彼女を強くハグしないんだ、なぜキスをしないんだ、なんで愛してると言ってあげないんだ、等々…。こういった疑問には、こう答えるしかない。「これが日本人である」と。最後の方のシーン。二人で完成した天井画を見つめ寝転がる。そっと手をつなぐ。そして、足でお互いを蹴りあう。素晴らしい日本的な愛の表現方法だと思う。しかし、悲しい哉、時には直球で表現することも必要なんですね。それは日本人の欠点。白黒つけず曖昧なままだったから、カナオを女好きなだけな男だと勘違いして、ショウコは勝手に妄想爆発して病んでしまったのでしょう。段々分かってくるが、彼は"ヒト"が好きなのである。その眼差しは、どこまでも多角的であたたかい。ところで、この夫婦は、死んだ老婆のようにスケッチされた女性の心も救ったのでしょうね。大事に持っていたカルキ臭い壺が割れたのは爽快だった。はからずも、小津の傑作『晩春』の壺を思い出した。 【Nujabest】さん [DVD(字幕)] 10点(2009-07-22 21:11:14)(良:2票) 2.《ネタバレ》 子どもが死ぬまでは、非常に退屈な映画です。そこまで30分、危うく途中放棄するところでした。・・・・この映画、男性の見る目と、女性の感想とでは、もしかしたら、かなり違うのかもしれない。というのも木村多江の感情の動きが、確かに、こういうのはあるだろうけど、自然なものには思えないから。・・・・・ということで、リリーフランキーにしてみると、仕事は最低、自分の態度も最低、奥さんも最低、奥さんの母親も薬事法違反の行為で金を稼いで最低、奥さんの兄も殆どヤクザで最低、兄の嫁も最低、法廷画家の仕事も最低の内容、そしてこうした犯罪者も最低なら、それを生み出す社会も最低。・・・こんな最低の周囲に対して、どう接したらよいのだろう。木村多江は、最低の部下に対して、結局自分が破壊され、仕事を辞めた。フランキーの父は、自殺した。・・・・この映画、そうした態度を「逃げる」と表現し、逃げてはならない、と説く。最低の周囲環境から逃げることなく、無理に戦わず、適切な関係を取って生きて行けば、木村多江の失踪した親父のように、最後にこの上のない微笑みを保つことができるのでしょう。拒否するのでもなく、かといって、全面的に受け入れるのでもなく、最低な周囲の存在を承認するけど、自分はそれに染まるわけではない。・・・・それにしても、こんな大人の日本映画があり得たのだ、とびっくりしました。 【王の七つの森】さん [DVD(邦画)] 10点(2009-03-29 23:32:19)(良:2票) 1.人と人の結びつきなんて、とても“あやふや”で、脆いものだろうと思う。 結ばれることも、離れることも、実際紙一重で、ギリギリな状態。 でも、だからこそ、今一緒にいられることが、愛おしく素晴らしいものなのだと思う。 ふと一緒になった夫婦が、愛し合い、傷つき、泣き、笑いながら、それでも共に生きていく。 特別に劇的なわけではない。 普遍的だからこそ、その当たり前の“結びつき”が、キラキラと光り輝いて見える。 なんて素晴らしい映画だろうと思った。なんて人生は素晴らしいのだろうと思った。 木村多江+リリー・フランキー。 何とも味わい深い配役によって、とても魅力的な夫婦像を見せてくれた。 特に、木村多江の存在感が素晴らしく、10年という歳月の中で、子を亡くし深く落ち込んでいく繊細さと、そこからまた浮かび上がっていく力強さを、とても魅力的に表現してみせてくれる。 また、リリー・フランキーも、陰惨な数々の事件を法廷画家という視点で触れながら、心揺れる妻を静かに支える朴訥な夫を好演したと思う。 そして「ハッシュ!」以来の待望の監督作品となった橋口亮輔の繊細な人間描写が冴え渡る。 人間が傷つくことに、明確な理由なんて存在しない。 だから、そこから立ち直っていくことにも、理由なんてない。 どうするべきだとか、何をしてはいけないなんてなくて、それを求めようとしても難しい。 ただ一つ、ヒントがあるとすれば、それは、「時間」だと思う。 「時間」さえ経ることができれば、人間は大抵のことは消化できる。 そういう、人間の根本的な“つよさ”を描いた映画だと思う。 【鉄腕麗人】さん [DVD(邦画)] 10点(2009-03-29 10:54:18)(良:2票)
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