みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(7点検索)】
8.現代では科学vs宗教、哲学vs宗教は別問題として扱われるが、昔は哲学者≒科学者だったということがわかっていないと少々混乱するかもしれない。その他、宗教と政治、主人と奴隷、師弟関係、男女関係、親子関係等々が複雑に絡み合った重厚とは言えないまでもそれなりに見応えのある作品になっている。「宗教は信じるもの(真理は啓示されるもの)、哲学は疑うもの(真理は探究するもの)」という違いが明確に描かれる中、越えられない身分制度という不遇を宗教が救ってくれるというのもまた事実。他方、昨今では政治と宗教はあまり問題にはならなくなったが、原発やコロナ等々政治と科学が問題になっている。とはいっても、現代では資本主義という宗教が蔓延しているわけで、という意味では政治と宗教の問題は引き続き大きなテーマになっているとも言えるのかもしれない。そういったロゴス的なテーマとは別に、師弟関係、男女関係、親子関係といったエロス的なテーマもあるわけで、人生はその相反するテーマのバランスをどうとるのかが問題となってくる。本作ではそういった両者のある種の矛盾が悲劇的に描かれており、現代人にも訴えかけてくるものがある。 【東京50km圏道路地図】さん [CS・衛星(吹替)] 7点(2022-07-01 14:14:15) 7.宗教の凄まじさと、パワーを、まざまざと見せ付けられた..ある意味、恐ろしかった..西暦4世紀、エジプト、アレクサンドリアに実在した、女性天文学者 ヒュパティア..物語は、史実どおりの結末になってしまうのだが..冷静に考えると、誰も知らない、普通の中年おばさんが、主人公 ヒュパティア を演じていたら、ここまで感情移入するだろうか..そう、レイチェル・ワイズ が演じることで(彼女の美貌があってこそ)、本作が映画として成り立っている..それから、奴隷の ダオス が、よく効いていた..単調で、堅く、重くなってしまうところを、見事に払拭し、観るに耐え得る内容に仕上がっている..脚本の出来、演出がすごくイイ、秀逸..私的には、アレクサンドリアの歴史をまったく知らなかったので、当時の情勢、文化、宗教観、それが垣間見れて良かった... 【コナンが一番】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2015-05-02 16:05:22) 6.ひと続きの物語ではありますが、前半と後半で2部構成のような作品になってます。そのどちらもが、宗教に基づく人々の対立。それもキリスト教徒が迫害者として描かれ、結果的に迫害される側となるのが、主人公である女性学者。彼女はただ「真理」を追い求め、それが完全な合理性からは外れたところにある(動く船の上で物を落としても船上の人間から見て後ろ方向に落ちない・地球の公転軌道は円ではなく楕円である)ことに気づくワケですが、要するに人間の感じる合理性なんてのは、その時々によるモノなんですな。真理に貫かれたこの宇宙は、彼女が何かに気づこうが、人々が対立し殺し合おうが、微動だにしない。ただそこに冷たく存在し、小さな我々を冷たく見守り続けることを示すように、作品の中に宇宙からの視点、あるいは地面に小さくうごめく人々の姿が、再三登場します。最後に、主人公が見上げる、小さな空。ちっぽけな人間には決して手の届くことのない真理が、遠くに垣間見える・・・。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2015-04-18 09:45:59) 5.《ネタバレ》 封切り時観てたのですが、ブックマーク等をすべて失ってしまうという大惨事に見舞われてましたので今頃レビュー… このヒュパティア(英語だとハイパシア)という人の存在、1969年(多分)から知識としてありました。角川書店から出てた「科学史物語」という本にこの件について記述があり、そこには「キリスト教徒によって石打ちにされ、肉片は骨から削り取られた」となっていたのでかなり鮮烈に覚えています。その本は父親が購入したのですがそのまま放置、当時中2で無線マニア&フォーク・クルセダーズ・ファンだった私がそれを読んだのですが、記憶の隅に置き去りになって40年。その間、中学高校の世界史、大学の西洋史(カトリックだったからここでこれに関する講座は当然ないか)では思い出すこともなく過ぎていって、朝日新聞の沢木耕太郎氏のコラムでこの映画の存在を知ったわけですよ。 最初、近所では公開されなかったので、ちょっと離れた大きな街で観ました。ヒュパティアが先進性があったことを示すため地動説+ケプラーの法則を組み込み、また古代の奴隷制からの解放と初期キリスト教がリンクしたように話を作って、現代の人々にもわかるようにしてますが、ちょっと無理があるんじゃないでしょうか。ただ、宗教がそのときの体制、人民を飲み込み、大きな流れとなって全く違った世界を作ってしまうってことは、この辺では2~300年のあいだに2回発生し、その後というか現代にまで影響をおよぼしているわけですから、その原初のエネルギーの一端が映像化されたってことは評価すべきだと思いますね。「ネロの迫害」から「ミラノの勅令」まで250年間のキリスト教徒のことは、日本に住む私たちはほとんど知りませんから。つけた点数は、古代アレクサンドリアを様々な文献・伝承からできるだけ再現しようとした熱意と、このまれな女性学者(次に学者として女性が出てくるのはキュリー夫人、つまり19世紀)を主人公に据え、古代における科学と宗教という問題を映像作品にしたことに対してです。 ところで、ネルソン・ミンゲラの息子マックス・ミンゲラ、ライティングによっては「小島よしお」に見えませんでした? 【shintax】さん [映画館(字幕)] 7点(2012-04-25 19:26:17) 4.《ネタバレ》 アレハンドロ・アメナーバルは僕の大好きな監督さんです。本作は一見するとかなりのお金がかかった大作に仕上がっていますが、どうやら興行的には失敗したそうで、なによりも真面目な内容で娯楽色が乏しいのでそのへんは致し方ないのかなと思います。でも、個人的には「アメナーバルはやっぱり凄いな~」と、期待を裏切らずに楽しめた次第です。主人公ヒュパティアが、太陽の周りを回る地球は楕円軌道であることを発見したシーンの鮮やかさ、そしてまたラストの教え子が自らの手で彼女を殺めるシーンの切なさ等、実にぐっときちゃいましたよ~。その当時、円軌道は完璧であり、世界は完璧に出来ているから円軌道以外考えられなかった。人間というのは、自分に都合良く考えてしまう癖があるわけですよね。この作品で取り扱われている宗教戦争というのも、やはり「神の言葉」とやらを振りかざして、自分勝手に解釈したり作り上げたりして人々を分断し争わせていく。この作品は、一見すると宗教は嘘偽りでどうしようもなく、学問は崇高なもののように対比されて描いているように思いがちだけど、そういう対比がテーマではないと思うんです。宗教とか学問とかじゃなく、むしろその先にあるものですよ。例えば科学というのは、長らく宗教を駆逐するものだとして二項対立に考えられてきたわけだけど、科学っていうのは、要するにこの現実をそのまま受け止めて、世界がどのようにして出来たかをありのままとらえようとする姿勢なわけでしょう。その姿勢というのは、この世界が神の手による創造物なのだとしたら、その神に対して最も真摯な態度だと思うんですよ。この世界をしかと認識しようとせず言葉というものを都合良く解釈するだけの姿勢と違って、学問的姿勢こそが実は最も神に対して忠実ではないのかと。だから、キリスト教を受け入れなかった天文学者ヒュパティアは、実は誰よりも神に真摯な姿勢だったと言えるわけです。最後まで信念を曲げずに絶命し、やがては讃えられる彼女の存在は、まるでイエスの生涯に重なるものがあるように思えてきます。前述したように派手さはなく、観客受けするアクションシーンもありませんが、間違いなく良作だと個人的には思います。 【あろえりーな】さん [DVD(字幕)] 7点(2012-04-13 20:45:42)(良:2票) 3.《ネタバレ》 本作ではヒュパティアが地球が楕円軌道であると発見したことになっているが、もしこれが事実だとすればケプラーより1000年以上前に発見したことになる。記録も残っていないから脚本家の願望(妄想かもシレナイが)の域を出ないが、しょうもない宗教戦争によって優秀な人材が失われた事は確かなのだろう。 イギリスの論理学者・数学者のバートランド・ラッセルは「私は宗教を恐怖から生まれた病気として、また人類への無限の惨めさの根源であると考えます。」と語っている。このラッセルの言葉は、本作に出てくる宗教者を的確に表現していると言えるだろう。 宗教は、人類が発明したものの内、愚かな物で上位にランキングされるのだろうね。 【あきぴー@武蔵国】さん [DVD(字幕)] 7点(2011-09-16 01:33:26) 2.《ネタバレ》 “宗教”と“学問”という難しい題材を扱っている割には、古代のエジプトで活躍した一人の女学者の生涯を通して比較的分かりやすく感じ取りやすい作品に仕上がっている。 ただ、“宗教”と“学問”を中立的に描くわけではなくて、“宗教”には人を救う力、人を導く力があり、貧者にパンを与えるシーンを象徴的に用いて宗教の優れた面を描いている一方で、“宗教”を“争い”“対立”“偏見”の種のようにかなり否定的に捉えており、“学問”を非常に高貴なものと捉えすぎているような気がする。本作には、宗教にしがみつくことを否定するような啓蒙思想的な面がみられる。 もっとも歴史的に見ても、宗教が“争い”“対立”“偏見”の引き金になっていることは否定しようがなく、キリスト教徒とユダヤ教徒が争い合い、そして同じキリスト教徒同士も争い合う姿を見ると、宗教とは何かということを考えざるを得なくなる。宗教は人を幸せにするものであり、宗教自体を否定することは難しいが、なぜ信仰する神が違う者同士が共生することができないのかと思う。 宗教は、貧者を救うことは出来ても、愛する者や一人の女性すら救うことは出来ないということが、本作の伝えたい大いなる“矛盾”といえるだろうか。ただ、元奴隷のダオスは彼なりの方法において、あのような形となっても彼女の魂を救うことが出来たといえるのかもしれない。“愛”は“宗教”を超えるということか。 “宗教”を醜く描く一方で、“学問”を追究しようとするヒュパティアの姿勢がより美しく描かれている。醜い宗教間の争いとは離れた次元において、一人(仲間がいるが)宇宙の真理を探究しようとする姿には心が打たれる。地動説や、ケプラーの楕円軌道の法則を常識的に知る我々にとっては、ややもどかしいところがあるが、当時の学者や哲学者の苦心する姿をしのぶこともできる。宗教に固執する人間をアリのようなちっぽけな存在、宇宙の片隅の小さな小さな場所における醜い争いとして描き、宇宙からのシーンを多用することで、宇宙規模の大いなる真理や法則の大きさを対照的に象徴的に描き出している。 通常の歴史作品という見方もできる一方で、一人の女性が生きた証というヒューマンドラマや“宗教”と“学問”という現代の我々にも身近に感じることができるような深い作品にも仕上がっているといえるだろう。他の作品とは異なるようなアプローチは評価できるかもしれない。 【六本木ソルジャー】さん [映画館(字幕)] 7点(2011-03-27 23:04:04) 1.《ネタバレ》 フリッツ・ラング監督の『メトロポリス』を見て、人間というのは100年経ってもあまり変わっていないものだと思いましたが、それどころか1600年前から同じことをしているというのが、この映画。宗教上の対立、他の宗教の信者に対する攻撃・排斥運動、権力闘争など、現代劇でも通用する内容です。ヒロインのヒュパティアは、天文学者・数学者にして哲学者という才媛ですが、主人公というよりは狂言回しの印象が強かったです。 彼女が天文学者であるためか、しばしば宇宙に浮かぶ地球が映し出され、そこからアレクサンドリアにズームして物語が始まるというパターンが見られるのですが、これはいわゆる「神の視点」として働いているのでしょう。それ以外にも、空中から地上の群衆を捉えた場面が目立ちます。特に前半のクライマックス、図書館で狼藉を働くキリスト教徒は、早回しの効果もあってまるでアリのようです。人間を虫けらのように描いたこのシーンは、本作でも特に印象深いところでした。 また、すでにアリスタルコスが唱えていた地動説が紹介され、ヒュパティアによって検討されています。ここで面白いのは、ヒュパティアは地球の軌道を「完全な形」である真円だと考えていたこと。しかしそれでは説明のつかないことが多く、その結果軌道が楕円ではないかと思い至ります。つまり、人間は「完全でない」軌道を描いている地球の上に生存しているわけで、これは人間の不完全さを示唆しているように思われます。こうしたところにも、天から見た人間批判という面が読み取れます。 ただ、数多くのエキストラを使った暴動シーンや豪華なセットなど、お金と時間をかけた映画だと思いますが、内容がそれに見合っているかというと「?」な部分もあります。主要人物であるダオスの行動に、いまいちよくわからないところがありました。力作であることに間違いはないと思いますが。 【アングロファイル】さん [映画館(字幕)] 7点(2011-03-16 19:59:59)
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