みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(7点検索)】
6.我々を熱狂させる芸術作品は、作者も熱狂のうちにそれを作り上げたと思いがちだけど、実際は冷静な推敲作業のもとにそれは作り上げられるのだ、とかいう意味の文章をどこかで読んだ気がします。その意味では、最たるものの一つが「映画製作」で、到底、一人の人間が勢いだけで作れるものではなく、一種のプロジェクト運営の側面がある訳で。 ところがこのドキュメンタリを見ていると、大勢の人間と莫大な投資が関わるが故に、「うまくいかなくなった映画製作」ほどオソロしいものは無い、ということがよくわかります。熱狂、というより、底なしの狂気。まさに、闇の奥。 ってか、コッポラというヒトに映画作らせるのが、そもそも危険、ということで。この危険人物が、周囲を巻き込んで(あるいは周囲に巻き込まれて)危険領域に足を踏み込んでいく様が、この作品に捉えらえています。最近はともかく、この頃のコッポラというと、映画で一発当ててはそれをつぎ込んだ次の作品で興行的に大コケして経済的に追い詰められる、ってなイメージがありましたが(?)、そりゃこんなコトばっかりやってたら、そうなるわなあ、と。 『地獄の黙示録』という作品が何ゆえ、魅力があるのかは、このドキュメンタリを見てもよくわからないけれど、何ゆえああいうイビツな作品になってしまったかは、感じ取ることができます。作品の魅力と完成度とは、必ずしも正比例しないんですね。このドキュメンタリが作られた段階ではまだ『特別完全版』は公開されておらず、本編には無かった「はず」のシーンが幾つも登場します。その『特別完全版』は盛り込まれたエピソードの多さ、羅列感がカフカの作品を思わせ、本来は、カフカの長編小説同様に「終わることのない迷宮」だったんじゃないか、とも思えてくる。しかし、事業としての映画は、「完成」はともかく「完結」させないといけない中、もつれたアリアドネの糸をほどくのではなく、その迷宮にスタッフ、役者ともども、入り込んでいってしまう。 ベトナムでの撮影はできないということで、選ばれた撮影場所が、フィリピン。軍隊の協力は取り付けたものの、内戦状態なもんで、撮影に使うヘリが出動してしまう。『地獄の黙示録』という映画自体はフィクションとは言え、登場するヘリは、まさに現在進行形で「戦争中」のもの、なんですね。オープンセットは作り物であっても、台風による破壊は、本物。カーツ大佐の規格外ぶりも本物で、誰の云う事も聞かないマーロン・ブランドは、まさに「企画外」の存在、制御不能。 そして、現場に広がるドラッグの使用。そりゃ、あかんでしょ。 当時を振り返るインタビューに登場するジョン・ミリアス、ジョージ・ルーカス、そしてコッポラ本人。前者2人の余裕(「闇の奥」に足を踏み入れる前に引き返せた余裕?)と比べ、コッポラには未だに「あかん人」のニオイがプンプンと。 この人を先頭に、迷宮に足を踏み入れ、制御不能の一歩寸前か、もしかしたら絶賛制御不能中、という中で、完成と言っちゃってよいかどうかはともかく一応の完結をみた『地獄の黙示録』。結局、この作品の魅力が何だったのかと言うと、もはや「闇鍋の魅力」としか言いようが無い気もしますが、鍋に入れてみたいもの、不本意ながら入ってしまったものが、ゴッタ煮となって、それでもなぜか食えるものに仕上げられている、という奇跡。こんな奇蹟は二度と起きないんじゃないか、という、まさに究極の闇鍋の一杯、ですよ、これは。 このドキュメンタリ映画の元になっているフィルムは、ロケに同行したコッポラの妻が撮りためた記録映像が使われている、ということで、もし最初からドキュメンタリ映画を撮るつもりだったら、また別の撮り方があったのかも知れませんが、とは言え、これ、面白い。映画の裏側ってのはやっぱり気になるし、それが特にこの奇妙な作品の裏側だとなお一層。それを90分あまりにまとめ、テンポよく見せてくれて、興味が尽きません。 たぶん、このドキュメンタリは、コッポラ自身には作れないと思う! 【鱗歌】さん [インターネット(字幕)] 7点(2024-04-21 08:32:36) 5.《ネタバレ》 本来、映画や写真は撮影した時には出来上がりが確認できず、フィルムに現像してから初めて映像確認できるのが当たり前でした。(まあこの時代はVTRで撮影直後に確認はしているハズですが) そういった意味では、映画がいわゆる元来の意味での”映画(フィルム)”だった時代の超大作映画の裏側が垣間見られるドキュメンタリー映画が「ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録」です。 1970年代に2000万ドル(今の日本円で40~60億円以上!)の私財を投入し、これだけの規模の映画を準備したこと自体が恐ろしい行動で、真面目な話、普通の人間なら気が変になるのが当たり前の状況でこの映画の撮影はスタートしました。 更に問題は次々と発生し、西洋の常識が通用しない東洋の僻地での撮影とベトナム戦争や各国内戦の余波などに晒され、映画産業の頂点であるハリウッド系企業や世界の報道関係者などからの厳しいプレッシャー、多数の撮影クルーや現地人たちを統率しながら超一流俳優たちのワガママを聞き、度重なる脚本の手直しや作り直しetc、そんな無理難題が山積みの過酷な状況を自前のお金で230日以上撮影を続けるという、まさに地獄のような作業を監督自ら進んで行っている異常性がこのドキュメンタリー映画ではシッカリ記録されています。(なんとほとんど妻が撮影している!) 当時は現在のようなCG技術やデジタル機材も無かったので、このような厳しい状況に陥ることが割と当たり前だったと思いますが、映画の過渡期ともいえるこの時代に大博打を打ったコッポラはやはり偉大だったといわざるを得ません。この厳しい状況下でよくここまで映画を仕上げたものだと褒め称えるべきなのかもしれませんが、まあしかし、裏を返せばそれくらい大作映画の撮影は難しいということだし個人的には153分の劇場版の編集は最悪だったとは感じています。また、元々ロジャー・コーマンを師匠とするコッポラ監督は沢山のパーツを撮影する作風で、必要があるのかないのか、訳も分からず様々なシーンを撮影していることも現場の混乱の一因としては関係していそうな気もします。 私個人としては「202分の完全版」にマンセーしており、この「ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録」はお宝エピソードの宝庫、常人にはおよそ理解不能な仕事の数々が記録されている貴重な作品としてかなり楽しめました。惜しいのは前述の通りコッポラは編集が下手で、何となくうまくまとまっているようでよくまとまっていない仕上がりには少々残念ではありました。 【アラジン2014】さん [ブルーレイ(字幕)] 7点(2022-08-10 12:27:05) 4.「事実は小説より奇なり」とはこのドキュメンタリーのためにあるようなフレーズです。よく『地獄の黙示録』でのM・ブランドのモンスターの様な我がままぶりが語られますが、本作を観て真の怪物はコッポラだったのが良く判りました。まあ、良くぞ完成させたと褒めてあげたい。 L・フィッシュバーンが撮影当時は14歳だったと知ってちょっとびっくりしました。 【S&S】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2012-10-29 20:51:00) 3.創造するということ自体がホラーなんだ。関わる人間が作品に取り込まれていってしまう。未知の領域に入り、得体の知れないものが膨らんでくる。そして現実が映画の中に吸い取られていってしまう。コッポラはカーツに、マーチン・シーンはウィラードに、限りなく近づいていく。ドロドロになってるマーチンのシーンなぞ、映画の場面を越えてもろにベトナム戦争がダブってくる。本物の虎(一週間エサやってないんだ)をけしかけられたフレデリック・フォレスト。実際のゲリラ討滅に帰っていってしまうヘリコプター。デブデブになって撮影現場にやってくるマーロン・ブランド。収拾のつけようがなくなっていくエンディング。M・ブランドをデニス・ホッパーと対決させようか、いやいやそれこそどうしようもなくなってしまう、などと、何とか結論めいた方向を探るも、作品自体がそれを拒んでしまう(たぶん物語としてだけなら、ウィラードがカーツを殺して新しい王になる、ってのが一番納まりがいいように思うが、その納まりのよさを作品自体が承認してくれないんだ)。つまりこれは小説なら「未完」となって初めて落ち着く作品だったのだな。ときどき映画では、本来未完となるべき、とめどなく膨らんで収拾がつかなくなってしまう怪作が誕生し、ガンスの『ナポレオン』とかシュトロハイムの『愚なる妻』とか、不気味に映画史の中で輝いている。『地獄の黙示録』もそれに連なる赤色巨星となった一本なんだろう。没になったフランス植民地シーンに興味をそそられたが、それは後に完全版によって目にすることが出来た。コッポラが何度も何度も「俺の金で作ってる」って言うのは、あの国ではプロデューサーの力が強いんでしょうな。面白いのはこの『ハート・オブ・ダークネス』という映画、監督が妻を退屈させないぐらいのつもりで始めさせたのが、だんだんと夫の狂気を記録する姿勢に腰が入ってきてしまうところ。こっそり録音までして。まったくフィルムというやつは、関わる全員を狂わせていく。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 7点(2012-03-16 10:13:55) 2.本編より面白い。 【カイル・枕クラン】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2006-02-25 13:40:47) 1.裏も地獄だね! 【k】さん 7点(2004-02-16 13:00:29)(笑:2票)
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