みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(8点検索)】
5.《ネタバレ》 仕事熱心で真面目な兄を思って、自分もタイピストとして、貧しいながらも真面目に働いて、ろくに恋愛をしてこなかった桐子。…兄思いでキーパンチャーだった寅さんのさくらと被るなぁ。殺人犯の妹として熊本で働き続けられなくなり、銀座のスナック(※BAR海藻とあるが、同僚「表の明かりを消して12時過ぎまで営業云々」って、ちょっぴり違法な店)に身を落とす。 さて、熊本の田舎から遠路はるばる東京まで(しかも終始鈍行列車で)、電話の1本も入れず弁護士事務所に直接訪問する桐子。こんな常識外れな桐子に、大塚弁護士は直接会って断るという、誠心誠意、紳士的な対応をしています。弁護費用は約80万円。当時の初任給が約17,000円~20,000円、ラーメン1杯は80~100円の時代、およそ今の1/10と考えると、20歳そこそこの娘に払える金額じゃありません。それでも『費用を1/3にまけろ』と言うから、桐子はそれなりの金額は払う覚悟はしていたんでしょう。 大塚は弁護を断ったがために逆恨みされます。桐子のしつこい性格から考えて、もし引き受けて、裁判で負けても、やっぱり逆恨みされたんじゃないでしょうか?この時の大塚に非があるとしたら、断る口実の一つに『多忙』と言っていたのに、愛人の経子に会いに行っている。特に説明はないですが、川奈(ゴルフのメッカらしい)と聞いて、桐子は察したんでしょうね。 推理好きは、サウスポー山上の登場と『犯人は左利き』って情報を結びつけます。観るものに『こいつが真犯人だ』と思わせます。更に桐子の前で2回もライターをいじって、そのライターが経子の事件現場に。 兄の事件と経子の事件は良く似ています。兄も経子も犯人じゃないのに、嫌疑を恐れて現場を逃げています。桐子が、山上こそ2つの事件の真犯人だったって証明する結末こそが、復讐劇の王道展開です。でも桐子は死んだ兄の汚名を晴らすのではなく、大塚の因果応報に結びつけたんでしょう。お金が払えないから兄を救わなかった大塚を逆恨みし、自分は復讐のために愛人経子を救わない。また大塚に対し仕事外(ツン)と仕事中(デレ)のTPOの使い分けを徹底しているのも、結末を考えると計画的で恐ろしい。 タイトル『霧の旗』。「霧は音を立てて流れる」…じゃあ旗は?霧は=桐子でしょう。旗は…昔は女の生理日を“旗日”と呼んでいました。当時白が多かった女性下着の一部が赤く染まる様子から生まれた隠語です。桐子は憎い大塚に自分のもっとも大切な処女を捧げ、それが大塚を陥れる動かぬ証拠となりました。水商売の桐子が処女だったという予想外の結末が、意味不明だったタイトルに結びついたようで、モヤモヤが晴れるとともに、改めてゾッとしました。 【K&K】さん [DVD(邦画)] 8点(2024-10-26 11:09:19) 4.《ネタバレ》 松本清張の原作・橋本忍の脚本だけあって、見事な出来でした。原作は読んでいませんが、映画としての面白さを充分に発揮していたと思います。それにしても、大塚弁護士、かわいそう・・・ 音楽は、林光だったんですね。いま初めて知りました。次回観ることがあれば、今度は音楽にも耳を傾けて鑑賞したいと思います。 【ramo】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2011-08-30 16:04:05) 3.《ネタバレ》 松本清張の推理小説は学生の頃よく読んだ。「点と線」「眼の壁」「ゼロの焦点」「霧の旗」「砂の器」など、それらの多くは映画化された。中でも「霧の旗」は私が最初に見た松本清張映画として、鮮烈に記憶に残っている。 松本清張の推理小説は、奇抜なトリックや犯人捜しをするいわゆるミステリーものとは違って、社会派推理小説と言われるもので心情面を特に重視している。犯人の動機に重点を置くことによって、現実社会の矛盾や非条理を追求している。 この「霧の旗」はそういう社会派推理小説の代表みたいなもので、殺人容疑の兄の無罪を信じて奔走する妹が主役となる。 両親を早く亡くし貧乏な生活の中で、どうやって兄を救うことができるのか、また、汚名を着せられたまま死んでいった兄の無念をどうやって晴らせばいいのかを、私たちに投げかけている。 この桐子を演じた倍賞智恵子は本当に素晴らしい女優である。 【ESPERANZA】さん [映画館(邦画)] 8点(2011-02-11 12:25:59) 2.山田洋次監督には珍しい松本清張原作によるサスペンス映画。果たしてどんな作品なのだろうと興味深々で見たのだが、見ごたえ充分な仕上がりでとても面白かった。山田監督がてがけた作品とは思えないほどにタッチがクールで乾いていてこれまで見てきた「男はつらいよ」以前の山田作品の中ではいちばん新鮮に感じた。また主演の倍賞千恵子といえばなんといってもさくらのイメージが強く、復讐に燃える悪女役というのは見ていて違和感があるのではと思っていたが、実に見事に演じきっていて素晴らしかった。それから全体的に暗くシリアスな物語の中にあって三崎千恵子が登場するシーンは「男はつらいよ」シリーズを先に見ているとつい微笑ましくなってしまう。 【イニシャルK】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2006-05-25 15:45:41) 1.《ネタバレ》 イニシャルKさん、すいません。お先に書かせてもらいます。山田洋次監督による何とも残酷であり、人間の持っている恐ろしさ、やるせなさとでも言うべきか?裏切り、裏切られた者の悲しさ、やるせない気持ちというものをモノクロの画面から漂う無情感のある映像美で見せ、無実の兄をお金の為に救わなかった弁護士に対する一人の女性の恨みというものを見事に描いている。脚本が何とあの橋本忍だけあって、見事なまでに計算された仕上がりになっていて感心させられました。倍賞千恵子のこんな恐ろしい演技、冷たい態度を初めて見ました。 【青観】さん [DVD(邦画)] 8点(2006-04-08 18:27:19)
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