みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(8点検索)】
5.中学に入る前後くらいの頃に、世の中に文庫本なる廉価なものがあるのを知って途轍もなく世界が広がったような気がしたものですが、当時読んだ2つの戦争文学が妙に心に引っかかってて、というか、それらの小説の主人公・「田村一等兵」と「木谷一等兵」の存在が、妙に心に引っかかったのでした。おそらくそれは、彼らの存在が、人間が生きていく上で受けねばならぬ束縛、不自由さみたいな、普遍的なものを反映しているように感じられたから、かも知れません。後者は勿論「真空地帯」の「木谷」であって、彼は軍隊組織の中で抜き差しならない立場に置かれている訳ですが、一方、本作の主人公である前者の「田村」は、戦場で極度の飢餓状態に追い込まれており、いわば人間が肉体を持つが故に束縛された不自由な状態となっています。 そういえばこの「野火」という小説の中では人肉食がテーマの一つとなってますが、手榴弾で負傷した木谷が自分の肉片を口にし、その行為は明らかに自分の自由だ、なんて言う場面があって(映画ではかなりアッサリと描かれてます)、このエピソードが何だか作者の主張を無理矢理に挿入したみたいな違和感を昔から感じていたのでした。が、確かにこれもまた「自由」の問題であって。小説の木谷は、肉体の束縛だけでなく、神の視線という束縛、いやむしろ、「神の視線を意識している自分自身」にこそ、束縛されているのかのような。 というような観念的な部分は、映画の中で語ろうとすれば、独白に頼らざるを得なくなっちゃうので、本作では直接には描かれません。途中、他の兵士から「お前は自由だ」なんて言われる場面こそあるものの、この作品における木谷には自由など持ち合わせておらず、未知の島を彷徨う自由、死を身近に感じる自由なんてものもない。 死は恐怖。肉体という厄介なものを抱えた人間は、それ故に飢餓に苦しみ、またそれが故に敵の攻撃で肉体を損壊させ、のたうち回る。 そういう恐怖が、この映画では徹底して描かれています。映画前半で目を引いた花の「赤さ」が、終盤、友軍兵士の血に染まった舌の「赤さ」として再現し、我々の目に突き刺さってくる。この何という恐ろしさ。 そういう視覚的な怖さの一方で、劇中のセリフは抑制され、主人公の内面は封印されていますが、奇怪なラストで彼の内面が一気に噴出して、ドキリとさせられます。 【鱗歌】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2019-10-26 12:14:29) 4.原作を読んだのは高校生のころだったか?すごい衝撃を受けました。それ以上の衝撃はないだろうと思いながら鑑賞。予想以上の映像でした。補給も作戦も何もない敗戦国の悲しさと、日本人としての無力感と、人間としての怖れがありました。 【木村一号】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2016-09-13 20:50:44) 3.《ネタバレ》 「ザ・パシフィック」を観た後だけに、観終わった後の精神的なダメージは相当なものが有る。 これが戦勝国と敗戦国の、同じ戦争に対する気持ちの違いなのか。 観ていて辛いシーンばかりだが、目を背けてはならない。 全国の小中学校で日本史授業の一環として観せる様にした方が良いのではないか。 8点はこの様な戦争賛美では無い、真実に最も近いと思われる作品を世に残した功績に対して。 【たくわん】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2016-08-29 12:54:26) 2.日常で目にする空よりより青く、雲はより白く、樹々はより青々と生い茂る。 血はより赤く、暗闇は全てを飲み込むかのように暗い。暗闇に照らされた光は、無機的な明るさを放つ。そうした色が混ざり合い、全てが主張する事が、世界の混沌を作り出す。 音は増長され、視覚(カメラ)は混乱を起こし、時間は感覚を失う。敵が、さらには自分すらどこにいるのか、どこから弾が飛んでくるのかもわからない。 色彩も状況も感覚も、全てが方向性を失い麻痺したとき、飢えが極限をむかえ、人間が道徳や倫理観を超える。 そこでは、観客が画面の向こうで、安心して出来事を見る事を決して許すことはない。 【ちゃじじ】さん [DVD(邦画)] 8点(2016-06-09 03:18:05) 1.《ネタバレ》 ほぼ自主製作である。製作から撮影、編集までこなした上で飢餓状態の主人公の役作りは尋常ではあるまい。 ロケによるジャングル撮影はみるからに過酷そうで、画面からは作り手の気迫と執念がありありと解る。 ハンディカメラによる荒々しい画面の揺れ。熱帯の太陽に焼かれ、乾ききった肌と顔貌の鬼気迫る凄み。 人体の損傷への拘りにあるのは誠実さだ。 モノクロの市川版からデジタル・カラーの塚本版へ。 炎のオレンジ、口角にこびりついた血の赤はより鮮烈であり、深い緑と空の青は対照的に美しい。 岩山だったクライマックスのロケーションはより原作のイメージに近い泉となり、「狂人日記」の章にあたる戦後のトラウマ描写も映像化されたが、 この後遺症のシークエンスが、現代ではより大きな意味を持つだろう。 書斎で「儀式」にふける主人公の後ろ姿が、凄惨な戦場シーン以上の恐ろしさでもって迫る。 【ユーカラ】さん [映画館(邦画)] 8点(2016-02-21 23:49:19)
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