みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(8点検索)】
21.《ネタバレ》 静かだけどすごい映画だ。ついつい2回連続で見てしまった。 ユトランド。海と草原しか無い寂しい土地。常に灰色の雲の掛かった重たい空。そこで育つ美しい姉妹。高貴な士官との恋愛や、パリの大舞台の歌姫を夢見ることもあっただろうけど、人生を謳歌すること無くただ年老いていく。姉妹も村人も、まるで生まれた時から死ぬ準備をしてきたような敬けんな信者だ。干したヒラメと乾いたパンを、水に浸して戻して煮るだけの質素な食事。この質素な食事が、まるで彼らの味気ない人生のように見える。 そんな村人も、普通の人らしく浮気をしたり人を騙したりもしていたようだ。年老いて人生の幕引きを間近に控えて、お互いにいがみ合う。質素で敬けんな彼らの歩んだ人生は正しかったんだろうか? 野心のまますべての夢を叶え将軍にまでなったローレンスは、人生に虚しさを感じていた。かつて喝采を浴びた歌手パパンは世間から忘れられ、寂しい老後を過ごしている。フランス随一のレストランの料理長だったバベットは、革命で夫と子を失い辺境のユトランドに流れ着いた。華々しく夢を実現してきた彼らの人生の末路。自分の選んだ人生、その選択は正しかったのか? 宝くじはバベットにとって、フランスとの唯一の繋がりである。一晩の晩餐会にその全額を投じたバベット。 村人にとって生涯たった一度であろう豪華な料理が、彼らの心を開かせ、過去の罪を許しあい、輪になって神への感謝の歌を歌う。 かつて無言で村を立ち去ったローレンスは、あれからおよそ50年ののち、マーチーネに告白する。その気持ちを受け入れるマーチーネ。 ヨボヨボだったレーヴェンイェルム婦人が最後、杖も使わず背筋を伸ばし、馬車に飛び乗る。 ローレンスのスピーチ、神の恵みに条件など無い。選択したものは手に入った。拒否したものさえ与えられた。 デザートのいちじくを手掴みで頬張る村人も、丁寧にナイフで切って口にする将軍も、口に広がる味は同じ。どちらの人生も正解だ。 自分で選んだ人生なら、どんな人生にも間違いはない。 タイトルの晩餐会、-Gæstebud=Feast-は“入念に準備したごちそう”だそうな。その晩餐会にバベットは顔を出さない。 この映画のタイトルは、料理を食べることではなく、創ることを表しているんだろう。料理は目で見て味わう芸術を作ることであり、人生も芸術。 神のもとに逝くのが人生の集大成=テーブルに出されるごちそうだとしたら、この長い人生はキッチン=入念な準備と丁寧な調理なのかもしれない。 キッチンで格闘して、料理という芸術作品を作り出す姿こそが、バベットの人生そのものなんだろう。 【K&K】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2021-11-03 10:40:29) 20.洋の東西を問わず、宗教の本質が自己を肯定することならば この映画はささやかに大事なことを教えている。 若き軍人もオペラ歌手も惚れた女に対する己の推しの弱さに何度なく後悔しただろう。 しかし想いは永遠に活き続ける。姉妹はあの日の出来事を胸に敬虔を貫く。 バベットはなぜフランス料理を作ったのだろうか。過去との決別か、 自分が誰か知る為か。しかし、この映画はその理由を何も意図していないような気がする。 【michell】さん [DVD(字幕)] 8点(2017-05-10 00:00:16) 19.《ネタバレ》 ケチな人生を送っている私のような者には、「高級料理」というものがナントモ恐ろしく感じられてくる作品。そう、あの村人たちみたいに、「なんか知らんけど美味しかったな」とつぶやいて帰るのが花。値段を気にしたり、裏で料理人がどんな真剣勝負を演じているかを知ってしまったりしたら、もう、落ち着かないったらありゃしない。 何しろ、食べたら、終わり。 どんなに珍しい素材を、どんなに手間暇かけて料理しても、食べたら、終わり。 という、ナントモ恐ろしい世界というか人生観というかを、詩情たっぷり、ユーモアなんかも交えて、実に魅力的に描いてます。いやホント、これだけのグルメを、観る者をワクワクさせる描き方をしつつも、あんまり食べてみたいとは思わせない点、稀有の映画でしょう(笑)。 ところで本作の音楽、映画の内容に対してやや辛口かなあ、という気もするのですが、担当してるのがデンマークの現代作曲家Nørgårdというヒト(正しく表示できますかね)。名前の読み方は「ノアゴー」でよろしいのですかねえ???10年以上前に買った弦楽合奏のCDに、本作の音楽が一部収録されていたことに、さっき気づいた(笑)。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2016-03-22 22:27:11) 18.《ネタバレ》 美食を切り口として宗教や芸術を語り、人生そのものを描いた映画だと思う。蝋燭の灯りを活かした撮影で、陰影に富む映像が見事。 前半は海辺の寒村を舞台に静かな時が流れる。牧師一家に生まれ、信仰を守りながら質素な暮らしを続ける老姉妹。過ぎし日に親交のあった音楽家から亡命女性の保護を依頼され、家政婦として雇う。宝くじが当たった彼女はお返しに晩餐会で料理をふるまう。老姉妹にとっては「鶴の恩返し」「情けは人のためならず」というところ。 後半は流れるような調理シーン・料理芸術の連続で、観る者を圧倒する。バベットが調達した数々の食材・・・新鮮な果物をはじめ生きたウミガメやウズラ、牛の頭部等。人はすべて生物(動物だけでなく植物も)の命を“いただいて”生きていることがよく伝わってくる。瑞々しい断面を見せるイチジクは生命の象徴であり、性の象徴でもある。 見慣れない食材を前に、警戒して好奇の目を向ける村人たち。晩餐会に招待された将軍が料理の価値を解説*し、彼らの心を解きほぐしていく。年老いた村人たちは過去のいざこざを想起するものの、美味なる料理の前で諍いは無用とばかり徐々に食事を楽しんでいく。村人たちにとって“命を維持する”ための食事が“芸術を味わう“喜びに変わる。最適な食材と腕前で料理は芸術となる。「芸術家は貧しくない」「食事を恋愛に変える」・・・バベットが味わうものは芸術家としての満足感だろう。 宗教的な意味づけの部分は難しいが「最後の晩餐」をモチーフにしたものと思う。村人たちは12使徒であり、将軍は“異端者としてのユダ”(*広義の解釈をすれば村人に対する裏切り)、バベットは“聖霊”の比喩というべきか。 コトコト煮込んで作った料理のような味わいのある映画である。わが人生において食欲よ永遠なれ、だ。 【風小僧】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2016-03-20 16:14:37) 17.どうってことない話ですが、清貧な人たちの心情を無駄のない淡々とした描写がしっかり伝えてくれます。質素な暮らしと贅沢な飲食のコントラストを観ながら人生にはメリハリが大切との思いを強く抱かせてくれる映画です。 【ProPace】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2015-02-17 22:27:21) 16.《ネタバレ》 二人の老姉妹に助けられて今がある家政婦のバベットが、村の人も招いて恩返しの晩餐会を開く物語。しかし、準備段階でのあまりの物々しさに警戒感を抱く人々。「味覚など持ってないふりをするんだ」と誓いあい、その時を迎えたが、ここからが圧巻。人は美味しいものを食べてる時は幸せになる。これは本能のレベルであり、逆らえない。いや、それどころかその光景を見ているだけで何となく幸福感があるではないか。バベットは黙々と料理を作り、それを爺さん婆さんが黙々と食べているだけなのに… 不思議なものだ。満たされて帰っていく皆を見送った後、二人はバベットが宝くじの当選金すべてを使ったと知る。カフェ・アングルでは12人分が1万フランだったという偶然は神の介在を感じさえ、信心深い者にとってはこれが一つの理由になりえるが、バベットの場合それだけではなかった。「一生貧しく暮らすの?」と心配する二人にバベットは「芸術家は貧しくありません」と返す。12人の心と舌に残る芸術品を作れたことが喜びであり、この域に達した天才料理家の誇りでもある。温かさと気高さをまとった見事な作品に出会えた。 【リーム555】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2015-02-09 17:32:14) 15.《ネタバレ》 料理の食材をみただけで恐れおののくというのが、飽食の国に生まれた私にはピンとこなくて、菜食主義なのか?いやいや魚やベーコン買ってたよな、とか、豪華な食事は罪だと考えているのか?などと、トンチンカンなことで悩んでしまいました。オーバーな演出が一切なく話は淡々と進んでいき、姉妹にフラレる男二人も潔く去り、タイトルにもある「晩餐」も、もう少し盛り上げてもいいんじゃあないか、と少しじれったく感じるくらいでしたが、観終わって、ああ、これでいいのだ、と思いました。静かな映画です。心が洗われました。 【la_spagna】さん [DVD(字幕)] 8点(2014-10-02 22:35:38) 14.《ネタバレ》 とっても地味ながらも独特の余韻の残る印象深さがありますね。突然降ってわいたようなバベットの晩餐に、村人はおびえ、晩餐会の間は料理について無言でいることを約束し合います。しかしその村人たちがバベットの創った料理を食べていくうちに、無言ながらも徐々に高揚していく様は演出のうまさもあいまってとても面白い。まぁやっぱりおいしい料理はいいってことですよね~口に出さなくともおいしさは十分に伝わってきました。そんな一見直球な内容に見えつつ、人生の深さや命の尊さをさりげなくみせる構成力の高さも高評化の一因だとオモイマス 【Kaname】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2014-08-18 13:31:25) 13.《ネタバレ》 バベットの料理を味わい、心までも癒されていくような寒村の人々と同じく、見る者の心までもじんわりと温めてくれるような映画。控え目に挿入されるユーモアのセンスも良かった。彼らは「料理の話は一切しない」と誓い合い、度々将軍が料理の感想を求めても天候の話などではぐらかす。しかし、彼らが心から料理を味わい、食事を心から楽しんでいるのが伝わってくる。それは料理のおいしさだけでなく、バベットの心からのおもてなしの気持ちが彼らに伝わったからでしょう。村人から尊敬されていた牧師とその娘である姉妹だけでなく、若かりし頃にこの村にやってきた将軍やパパンといった登場人物の心もとても美しい作品でした。 【とらや】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-12-16 22:42:43) 12.ひさしぶりに見ました。何度見ても心にジワ~と沁みてくる、良い絵画を目にした時のような静かな感動をおぼえます。いつも寒々しい部屋で口論しているみんなが、美味しい料理を口にすると、「料理の話はしない」のに、心が温かくなって、ムードまで温まる。そういう雰囲気が素晴らしく素敵でした♪ ゴテゴテした余計なドラマ色を排しながらも観る側を飽きさせない大人向けの作り、傑作だと思います。 【ramo】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-12-13 21:50:03) 11.《ネタバレ》 敬虔なクリスチャンである老姉妹と亡命してきて家政婦となった未亡人バベットの交流を描いたデンマーク映画。これはすごい掘り出しものの隠れた名作に出会ってしまった気がする。自分でもなぜなのか分からないけれど終盤のあたりから涙がこみ上げてきて堪えるのが大変だった。小汚いジジィとババァが飯食ってるだけのシーンなのにどうしてこんなに感情を揺さぶられるんだろう。小気味よい手際のバベットの“もてなし”が猜疑心や虚無感に満ちた人々の意識を鮮やかに塗り替えていく。この上ないほど地味で素朴だけどとても強くて奥深いメッセージを持つ作品だと思った。「貧しい芸術家はいません」、迷いなくそう言い切ってしまえる情熱とプライド。これは料理人に限らずすべての作り手に通底する普遍的なテーマなんじゃないかな。いやー傑作です。良いもん観せてもらいました。 【オルタナ野郎】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-12-06 00:16:33)(笑:1票) 10.《ネタバレ》 映画もそうなんだろうけど、食べ物もお客さんに喜んでもらおうという、作り手の姿勢が分かりやすく伝わる文化だよね。お客さんは、そういう姿勢にも感動して、みな幸せになる。これがお店だったら、店も繁盛する。素晴らしき哉、食文化! 【トント】さん [DVD(字幕)] 8点(2010-03-29 21:41:32)(良:1票) 9.淡々と進むお話の最後にあったオチは、ひとつの真理です。うまい食い物は人を幸せにする。 【アンドレ・タカシ】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2008-12-18 05:49:25)(良:1票) 8.晩餐会の準備からがこの映画の真骨頂。ホントにみんな旨そうに食うので、思わずニヤリとしてしまいます。スッキリとした後口の、素敵な映画です。 【Fukky】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2007-05-09 03:48:56) 7.《ネタバレ》 こんなに淡々としたつくりなのに、晩餐会の準備が始まる頃から一気に話に引きずり込まれる。村人達の悪意のない無知さから生まれる一挙一動の滑稽さから本当に美味しそうな食事シーンを通して、全てを包み込むような優しさを感じられるラスト。鑑賞後は自分の気持ちも何か優しいもので満たされる。 【bizen】さん [DVD(字幕)] 8点(2006-04-24 00:34:12)(良:1票) 6.前に教育テレビかNHKかでやっていたのをたまたま観ました。 淡々としていて派手さのない映画でしたが、目が離せず最後まで 観てしまいました。ビデオでなら多分借りていなかったと思うので 運が良かったです。良作。(TV) 【なみこ】さん 8点(2004-09-19 00:09:59) 5.《ネタバレ》 これは、素朴でおっとりとした、味わい深い映画。北欧の海辺の村で慎ましく信仰心厚く暮らす人々が、召使いバベットの計らいにより晩餐会を開く、とストーリーはいたってシンプルだ。晩餐のシーンにたどり着くまで、青みがかった海辺の村での抑揚の無い人間関係が続き、多少の退屈は否めない。しかし、神の教えにより最低限の質素な食生活を送る彼らが、心のこもった料理を口にするシーンは本当に素敵だった。ろうそくの火の中でみんなの顔が輝いている。目が美味しいと言っている。台詞はあまり無いけれど、みんなの心が料理によって満たされていくのが手に取るようにわかる。バベットの心づくしが豊かな時間を生み出す様子は、派手さは全くないのにギュッと引きつけるものがあった。また、テキパキと料理を作り、背筋を伸ばして空いた皿を片づけるバベットがとても凛として見えた。ラストも、感動という感じではなく、暖かい空気を送ってもらったような、押しつけがましさが無いのが良かった。小さいけれど見つけると嬉しい、早春の草花みたいな映画。 【のはら】さん 8点(2004-03-21 02:28:38)(良:2票) 4.登場人物と共に映画を観ている私も料理の素晴しさに圧倒され、そしてバベットの力強さ、心意気、想いにやられたのでありました。 【じふぶき】さん 8点(2003-12-17 10:55:50) 3.いい映画を観たな~と余韻に浸れました。 だれでもやっぱり美味しいものが好き。仲たがいしていた人々も生まれて初めて食す美食の数々に心和み、お互いを許し認め合う。彼らは明日からまたお粥とコーヒーの質素な食事。それが死ぬまで続くのね。 【envy】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2003-11-26 00:49:33) 2.アイザック・デネーセンの原作が素晴らしいんだろうなあ(まだ読んでないけど)、と思わせる映画。ただただ美味い料理を作ってもらって食べるというだけのことなのだが、それがこんなにもすごいお話になってしまうなんて、もう脱帽です。格調高い1作です。 【大木眠魚】さん 8点(2003-05-27 01:09:25)
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