みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
252.《ネタバレ》 「ストーリー」ではなく「世界観」を楽しむ作品です。 リサは言います。 「不思議な事がたくさん起こるけど、今は何も考えなくてもいいの」と。 その通りに細かい事を考えずに見て、楽しめたもん勝ちの作品だと思います。 ナウシカ・ラピュタ・もののけ姫のような、メッセージ性を含み 壮大かつ重厚で疾走感のある、世界の存亡をかけた冒険活劇を望む人には『×』で トトロ・魔女宅・千尋のような、主人公の等身大サイズの ミニマムな世界で広げられる、良い意味で”ヘン”な世界観に没入できる人なら『○』でしょう。 千尋~ポニョまでの作品の特徴として 各キャラクターの魅力と、そこから広げられる世界観を楽しむのが第一意義になっていて ストーリーは、それを彩るための演出の一つになっている点があり、そこが物語性を重視する人には不快なのだと思います。 (((物語として完成度の高い物(バックトゥザフューチャーのような)を求めるなら 「カリオストロ」や「ラピュタ」を繰り返し視聴して満足するくらいしかないのかも? これらを超える壮大なストーリーは宮崎氏にももう作れないだろうと思われますし 作れたとしても、本人ももう同じ方向性のものは作らないし、作りたくもないのではないかと))) あいかわらず映像も曲も美しく、テーマ曲もキャッチーな割には飽きにくいです。 恒例のおいしそうな食事シーン、浮遊感のある演出などもニヤリとできます。 出目金のようで下ぶくれしてるポニョも、見るにつれてかわいく見えてくるから不思議。 所さんのフジモトもいい味を出してまた。「BAKA BAKA BAKA…」では場内大爆笑でした。 不満としては、これはポニョだけではなくハウルと千尋にも言えることですが ハッピーエンドへ向けての終盤の流れが、予定調和的で御都合主義すぎるとは思いました。 ---「ポニョ、そうすけ、すき!」「ポニョは、僕が守ってあげるからね」--- これは宗介が不思議な友達ポニョと出会って、永遠の友情(愛情?)で結ばれるまでの、小さな小さな物語です。 宮崎監督の初期作品の幻影を取り払い、ぜひとも頭をカラッポにして見てみてください。 小さい頃、机の引き出しを開けて毎日ドラえもんが来るのを待っていた無邪気な記憶がよみがえりました。 今日は緑のバケツを持って水辺でポニョが来るのを待ってみようと思います。 【渡部シンイチ】さん [映画館(邦画)] 9点(2008-07-21 15:45:34)(良:6票) 251.あえて言わせてもらう。近年まれに見るクソ映画だ。作者の言いたいことが全く不明。宮崎氏は、もうアニメを作るべきではない。以前、ご子息の作ったアニメ映画をけなしたそうだが、自分の感性も疑った方がいいのではないのか。これをほのぼのしたアニメと褒め称える勇気は私にはない。 【へろへろ】さん [地上波(邦画)] 1点(2010-02-06 01:23:21)(良:5票) 250.物語の構成が破綻しています!各キャラの役目も無く起承転結も無くカタルシスも無く・・監督は故意にやったのかそれとも本当に才能が劣化してしまったのかわかりませんが、スタジオ内で宮崎監督の指示に誰も異議を申し立てることが出来ない状態であることは間違いないでしょう・・ジブリは黄金期は完全に終わっていることを自覚して若い監督に様々な制約を与えて苦しみながら作品を産み出しその上で血の通った作品を発表してもらいたいです。 【人面猫】さん [DVD(邦画)] 0点(2009-08-23 23:11:19)(良:5票) 249.この映画で最も面白かったのは、エンドクレジットが50音順だったことである。これには吹いた。しかし、残念ながらそれ以外に見るべきところは何も無い。 はっきり言って、ちっとも面白いとは思わなかった。では、面白くなかった理由は何か?と聞かれたら、あれがダメとか、これこれこういう理由でダメ、とかそういうのはないのだ。しかし、逆に「いったいこの映画のどこを面白いと思えばいいの?」という感想しか残らない。つまり、作品の中に何も楽しむべき要素が見つからないのだ。 少年とポニョが出会って、その後、出かけていったお母さんのいるところへ行った。そしたらなんだかよく分からないけどポニョは人間になってハッピーエンド。このストーリー、どこを楽しめばいいの? 千と千尋から続く、最近の宮崎アニメはずっとこんな感じである。本作について宮崎は次のように言っている。「出会って事件が起きて、小山があって、最後に大山があってハッピーエンドというパターンをずっとやってくと腐ってくる、こういうものは捨てなきゃいけない」。つまり、こうすれば面白く作れる、という既存の物語のパターンを打破したかったということだろう。その心意気はいい。 しかし、結果としてできたものがこれではダメである。こんなモノを大金かけて作るくらいなら、物語の王道パターンを踏襲していようと、普通に楽しめる映画を作ったほうが断然いい。 制作者も、歳をとって、何度も物語を作り続けると、どんどんヒネた作品を作りたがるようだが、今の宮崎はまさにその典型といえる。そのくせ、商業主義に走ってるのは今回もご健在で、相変わらず、ネームバリューがあるだけで演技力のない芸能人を声優に起用し、作品の質を落としてでも話題づくりを優先している。 宮崎よ、お前はいったいどこに向かっているのだ? 【椎名みかん】さん [地上波(邦画)] 4点(2010-09-26 18:40:26)(良:4票) 248.正直なところ、よく分からない。宮崎氏自身が「子どもたちのために作った」と公言しているのだから、分からなくても文句を言うべきではないのかもしれない。いずれにしても間違いないのは、僕にとっては面白くも何ともなかったということ。 この程度の映像であれば、それだけを見て大人が賞賛するほどではない。ストーリーは無いも同然。宮崎氏の、ほのぼのとしたファンタジックな世界観を表現しただけ。 宮崎駿は世界最高のアニメーション作家であり、世界最高の映画監督の一人であると思う。しかしながら、残念なことに世界最高の脚本家ではない。<改行> すでにかなりのお年寄である。この巨匠が映画を作れる時間は、無限にあるわけではない。早くナウシカ、カリオストロ以上の、いやせめてそれに次ぐ傑作を。切に求める。 そういえば宮崎アニメの、というかジブリ作品について他にも文句があったのを忘れていた。声優以外のタレントを使うのをやめてほしい。有名人の集客効果を期待しているのか。しかし日本映画において、「宮崎駿」というブランド以上に集客効果があるものなんぞ、無い。タレントは声優ではない。しかも観客は顔を知っているから、顔をイメージしてしまって映画に入り込めないことが起こりうる。ただの邪魔なのだ。 【佐吉】さん [映画館(邦画)] 4点(2008-08-27 18:15:17)(良:4票) 247.《ネタバレ》 面白いじゃないですか!!ここでのレビューに厳しいものが見受けられたので覚悟して見たのですが。過去の作品がすばらしいため完璧を求めすぎているファンもいらっしゃるようですが、個人的には「もののけ」、「千と千尋」、「ハウル」などの作品よりもよっぽど(「カリオストロ」や「トトロ」といった万人が思い浮かべる宮崎アニメのイメージに近い)宮崎アニメらしい作品になっていると思います。映画評論家の批評を読むと「子供を乗せているのに車の運転が乱暴」とか「親を名前で呼び捨てにするのは教育上良くない」などと(この映画にとっては)枝葉末節にこだわっている方がいたり、ポニョの両親や世界設定に詳細な説明がなくわかりづらいなどと書かれていたりしますが、あまり気になりませんでした。むしろ車の運転に関しては「カリオストロ」や「ラピュタ」のような冒険活劇を求めるファンに向けてのちょっとしたプレゼントに思えたし、名前を呼び捨てにするのは日本が舞台なのでちょっと違和感を感じたのは確かですがそういう教育方針の家庭もないわけじゃないだろうし、設定の説明が省略されていても子供の頃に古典児童文学や童話、民話などを普通に読んでいればそれらの物語に類推してある程度自分の中で想像して補足することはできると思いますし、それでも話の展開が理解できないほど脚本が破綻しているとは思いませんでした。この映画は童話「人魚姫」が下敷きになっていますが、もともと童話では世界設定などの描写を省略したり、誇張表現があったり、現実ではありえないことがあったりなどということはよくあることです。この「ポニョ」も絵本や童話の拡大と思えばそんなに枝葉にこだわらなくても楽しめるのではないでしょうか。いろいろ批判めいたことを書きましたが、最後に一番に言いたいのは、ポニョがかわいい!その一言です。 【MASS】さん [映画館(邦画)] 7点(2008-08-13 02:29:53)(良:4票) 246.《ネタバレ》 2歳10ヵ月の娘が、「ポニョ、観たい~」と言うもんで(どこまで本気か不明)。映画館に連れて行くのは『ゲド戦記』以来2年ぶり(って、0歳だもんな)、などと言ってる私自身、映画館に足を運ぶのはそれ以来、という、実にお恥ずかしい次第……と言う訳で、久し振りに味わう劇場の興奮に、モハヤ冷静さの欠片も無く、感動の連続、涙腺緩みっぱなしでした(例えばバケツが風に飛ぶシーン…)。ああどうして、絵がここまで動くのか? 背景はいかにも“手書き”っぽく、言わば「動く絵本」。絵をどこまで本物っぽくリアルに描くか、よりも、線で描かれた「図形」としての絵を、どのようにオモシロく動かすか。音楽でいえば、濃密なオーケストレーションよりも、一見素朴なメロディが、これでもかと絡みあう強烈な対位法の世界(まるでマーラー5番の第五楽章!)。自分の視覚が認識できる以上に、複雑に動きまわる絵、これが人の手でなされているという事に恐ろしさも感じれば、その一方で、まだまだ自分が汲みつくしていない魅力がそこに残り続けているという、安心感もあるわけです。とか何とかゴチャゴチャ言ってる私だけど、一番気になったのは娘が途中で飽きないか、だったりする訳で。で、どうだったかと言うと、ちゃんと最後まで、それこそ身を乗り出して観てましたよ! 意味が判ったかどうかなんて、どうでもいい。何しろ私にだってよくワカランのだし(笑)。で、どういう話だったかと言うと、少年の前後を弁えぬアサハカな“決断”の話でして。ポニョを何がなんでも守る、いや、ポニョは魔法を使えるもんだから、守ってるのやら守られてるのやら。とにかく彼は頑張る。そしてラスト、ポニョは半魚人だけど引き取ってくれるか、との問いに、深く考えもせずOKする。こんなワガママ娘と、この先長い人生、うまくやっていけるワケが無い、不幸の始まり。とは言っても、童話のシンデレラと王子様だって、あんないい加減な馴れ初めで、その後幸せになれたハズもない。結局我々の人生だって、過去の誤った決断のせいで、何と面倒なことになっていることか(笑)。でも、それがもし無かったなら、人生そのものが成立しなくなる! 悩むのは良い、だけど、気にし過ぎるなかれ! 時には宗介クンのように、ストレートに、信じる道に向かってエイヤッと、決断することも、必要なんでしょうなあ(もちろん相変わらず、私は自信が無いのだけど)。 【鱗歌】さん [映画館(邦画)] 9点(2008-07-27 18:15:51)(良:4票) 245.ごめんなさい、これの良さが理解できません。「よくわかんないけど楽しい」という意図の映画なんでしょうか。「宮崎駿」「スタジオ・ジブリ」がブランド化して久しい感がありますが、なんでも手放しにメディアが持ち上げる様子は、宮崎作品なんだから面白いと言わなければいけないのがお約束という風に見えてきます。コレに至っては、果たして宮崎監督のやりたい事であるのか、もしかすると「鈴木敏夫監督作品」ではないのかとすら思えます。宮崎監督にとってジブリってなんなんでしょう。創作に没頭できるホームグランドであり続けているのか、いまや足かせ以外の何物でもないのか、もしジブリを飛び出したらどんな作品を作るのか等、色んな事を考えてしまいます。私は「未来少年コナン」以来の宮崎ファンでしたが、今は寂しく悲しい思いをしています。今後のジブリ作品が鈴木敏夫監督作品の如き映画でしかないなら、申し訳ありませんが用はありません。 【由多】さん [地上波(邦画)] 3点(2010-03-25 01:21:33)(良:3票) 244.5歳の男の子が朝起きてきて「おかーさん!今日すんごくおもしろい夢みたんだよ!あのね、海に金魚がいてね、ポニョって名前なの。そんでね、その子が人間になってぼくとお船に乗るの。そんでね・・・」てな感じの子どもの奇想天外な夢物語をそのまま映像化した感じ。展開は支離滅裂だしキャラは破綻してるしエンディングも唐突だしとにかく無茶苦茶なストーリーなんだけど、そんなことお構いなしに子どもは目を輝かせ、どんなにスゴクてキレイで楽しかったか夢中になって話してて、嬉しくて仕方ない様子。そんな幼い子どもの無邪気な興奮状態に共感できる人だけが素直に楽しめる、という意外とハードルの高い作品。ちなみに、ああこれは子どもの夢なんだな、というのがよく分かるのが母親の描かれ方。リサは小さな男の子が夢見る「こんなお母さんだったらいいのに」を100%体現していて、だからこそ普通の母親だったら絶対やらない無茶をするし、息子の無茶も絶対叱らない。普通の母親の私から見ると、「んなわけねーだろ!」と突っ込みどころ満載で笑える。 【lady wolf】さん [地上波(邦画)] 7点(2010-02-15 22:11:02)(良:3票) 243.《ネタバレ》 宮崎&ジブリの凋落ぶりを改めて感じた映画。 それなりに礼儀正しくできる子供が両親の名前を呼び捨てにすること、「人面魚は津波を呼ぶ」と正しいことを言ったおばあさんに対するフォローがないこと、水没して避難しているはずの赤子づれの夫婦があまりにのんびりしていること、などなど、ちょっと思い出すだけでもあまりに行動が不自然な登場人物が多すぎる。 細かい違和感がそこここに残り、冗長に感じるシーンがあるのに説明不足な感が否めない。 そもそも、宮崎監督は子供が嫌いなんじゃないかと思わせるようなようなシーンさえあるのも相まって、「子供をだしに映画一本でっち上げた」感すらある。 こんな映画がいつまでも興行収入上位にいてはいけないと思う。 【修某】さん [映画館(邦画)] 3点(2008-09-22 23:19:33)(良:3票) 242.《ネタバレ》 ●力強くて、表現力豊かなギタリストの、ギターソロのような映画。●天才・宮崎駿の、豊かな描写力と、素晴らしい造形力が、大爆発していました。●ネモ船長シリーズなどの海洋文学、昔の恐竜図鑑、それから現実世界の海と、海辺の風景に対する想い…が、映像の中に溢れかえっておりました。●宮崎駿は、混沌とした現世に対する、やり場のないキモチを、ポニョやソウスケに託して、ぶつけてる感じ。●そーいうのって、オトナとしては語れないんだよね。コトが複雑すぎて…ひとことじゃ言えない。●テレビで、地球環境を大切に♪なんて、臆面もなく言えてるヤツは、ほんとおめでたいバカモノだ。●オレも、そーいうのっていっぱい抱えて、すっきりしない、うまくしゃべれない気分のまま、いつも生きている。●たとえば、この映画を鑑賞してるときも、となりの家族連れの中の2才児がひっきりなしに泣き叫んでいて、母親が連れ出さないんだな、もう最低。●「出てけクソヤロー!」って言いたいんだけど、言えない。なぜなら、その家族の持つ雰囲気が、オカシイから、病んでるから。言っても聞かなそうだし。●だけど、ポニョならば、やつらの顔面に水鉄砲をかけていただろね。ソウスケなら「外に行ってください」って、まっすぐに言えただろう。●ストレートってステキです。惹かれます。この映画がココロに響くヒトって、ストレートに飢えてるのかもしれません。●ラブストーリーとしても秀逸なデキバエ。オチもカワイイ。理想の恋だねー(笑)●この映画には、フナムシとか、海のゴミとか、おぞましい描写もたくさん出てくるのだが、それらは、現実世界の汚れをあらわしてるのだろう。この映画のレビューを見てるとほんともう世の中ゴミだらけさ♪(ココのサイトのレビューは良心的な部類)●そして、そんな汚れに負けないのは、ポニョやソウスケみたいなコドモたち。あるいはリサみたいなコドモのココロをもったオトナなのかな。コワイモノ知らずのウツクシサだね。●映画のデキバエとしては、荒々しいツクリなので8点だけど、海の生物たちへの思い入れと、カタに縛られない反骨心がじつに気に入ったので10点デス。●宮崎監督、お疲れさまでした。ストーリー型のナウシカや、カリオストロとは比較できないけど、近年の作品ではダントツだよー^^ 【ワルモノ】さん [映画館(邦画)] 10点(2008-08-31 07:03:38)(良:3票) 241.《ネタバレ》 本作には、子供を乗せた車でのスピード違反など、無意識な児童虐待を行うシーンが肯定的に挿入されている。こうしたことは、親としてとても腹立たしい。現実に、車に残した子供が死亡するなどの無意識な児童虐待による事件が、何度も起きているのだ。また、子供に自分を名前で呼ばせる親、街破壊をしからない大人たち、金魚鉢に水道水を当たり前のように使わせるなど、「しつけ」を放棄しているとも思える本作への制作者たちの姿勢が気になる。米国では子供を家に置き去りにする行為は、違法となる。欧米市場はこうした児童虐待に敏感で、編集、改編なしに本作を輸出するのは無理なのではないだろうか。 本作の設定は、かねてより他社が企画している「金魚姫」に共通する部分が多い。「砂の惑星」の設定から多くをいただいた「風の谷のナウシカ」もそうだったのだが、ジブリは知的所有権に関してずさんなところがある。「ゲド戦記」の歌詞の引用問題も記憶に新しい。一企業として、もっと配慮すべきなのではないか。 大人の事情を棚上げすると、本作の価値は子供が楽しめるかどうかに委ねられる。試写会での子供の反応は、微妙なものだった。しかし私は、ポニョの主題歌を歌う子供たちの声を何度も聞いているので、子供が楽しめないアニメと真っ向否定する気はない。変化に乏しい本作がどう受け入れられるかは、子供たちのその日の体調とご機嫌にかかっている。 【DONG】さん [映画館(邦画)] 5点(2008-08-04 11:35:25)(良:3票) 240.《ネタバレ》 宮崎駿という監督をそれほど高くは評価していなかったが、鳥肌が立つほど宮崎駿の恐ろしさを味わった。 本作を作ることができるのは、恐らく世界を探しても宮崎駿一人しかいないだろう。 ひょっとしたら子どもには作れるかもしれないが、大人には作れない映画だ。 何かを悟ってしまったかのような境地だ。 CGアニメが精緻にリアルに描かれた西洋の油絵ならば、手書きのアニメは日本の水墨画のような仕上がりだ。 CGアニメは画面から得られる情報しか与えてくれないが、手書きのアニメはシンプルではあるが、見たものの想像を駆り立てるチカラを持っている。 西洋の美術は全てを描こうとするが、日本の美術は全てを描くことをあえて止めて、「余白」を上手く利用して、見たものに奥行きを与えている。 どちらが優れており、どちらが劣っているという問題ではないが、本作は非常に日本的な味わいが感じられる作品に仕上がっている。 手書きスタイルだけではなく、ストーリーにおいてもこの「余白」的な仕上がりを感じられる。余計なストーリーを一切廃しており、恐ろしいほどのシンプルさが逆に凄みを感じる。余計なストーリーがないというよりも、ストーリーらしきストーリーも存在しないが、それでも全く飽きることがない。 そういう映画を作ることははっきり言って難しいと思う。 映画に毒されている人ならば、ソウスケとポニョを引き離そうとする父フジモトの悪だくみを描いたり、ポニョを人間にするためにソウスケに試練を与えようとするだろう。 そういったことをあえて描こうとしていないのが恐ろしい。 この描き方は、観た者の想像力を喚起させるのではないか。 本作に描かれているのは、ソウスケがポニョを想う気持ち一つだけだ。 宮崎駿は鑑賞してくれた子ども達に特別なことは必要ない、気持ち一つで十分とでも言っているのだろうか。 また、誰も死なない、誰も傷つかない(ソウスケがガラスで指を切ったのは除外)、人間の悪意がほとんど描かれていない(ゴミで汚れた海は描かれているが)、優しさに満ち溢れた映画である。 これほど澄んだ映画が、他にはあっただろうか。心が洗われる想いがした。 子どものために、子ども目線で作られている映画であり、宮崎駿はストーリーよりも何か別のものを重視したのかもしれない。 【六本木ソルジャー】さん [映画館(邦画)] 9点(2008-07-21 00:49:52)(良:3票) 239.タイトルの「ポニョ」という言葉の響きからイメージする通り、ちんまりとした、小さくて優しい、そんなストーリーでした。 簡単に言ってしまうと「おじいちゃんが可愛い孫のために作った映画」という感じです。 この厳しい現実社会でハッピーエンドに飢えている大人はOK、 人生そんなに甘くない…が生活信条の大人は、物足りなくてNOという評価に分かれそうですね。 この映画の性善説に満ちた世界観は、 監督が総ての作品で訴えてきた「人間の価値は心だ」という想いを、 実にシンプルに力強く表現しています。 私は見終わって、なんだかちょっと、安心しました。 もし7歳の時に見ていたら、きっと大好きになった映画だと思います。 だからこれから鑑賞する人には、どうぞ子供に戻って、 まっさらな気持ちで見てくださいとオススメしたいです。過剰に期待しちゃダメ。 【サカナカナ】さん [試写会(邦画)] 6点(2008-07-14 21:44:40)(良:3票) 238.先日の大災害が示すように、家々が海に呑み込まれたら本作のような状況では無くなるでしょう。そこの考え方は甘いと思いますが、あくまで後付けの意見です。 「千と千尋」や「ハウル」は面白いと思えなかった。色々なことを考え過ぎ、詰め込み過ぎ、迷走していたと思います。でも、本作は良い出来栄えだと思いました。子供たちが観る映画としてです。 正体不明の変な生きものが友達になって行く過程に、子供たちはみんなワクワクしたんじゃないかと思います。そこを大切した作り方だったと思います。劇場用の長編アニメーションって、元々は子供のために作られていたのですよね。 そんな作品を大人目線でとやかく言いたくはありません。 【アンドレ・タカシ】さん [ブルーレイ(邦画)] 8点(2013-05-12 22:23:01)(良:2票) 237.《ネタバレ》 前作『ハウル』に若干の違和感を感じ、『ポニョ』に到っては「何じゃこりゃ?」という感想しか浮かばなかった。『ナウシカ』や『ラピュタ』のファンである我々は、かつてのような作品を求め、それに応じない監督を「終わった…」と思った。しかし、還暦を過ぎた監督が、20年以上も前の作品と同じようなものを果たして撮るだろうか?長い歳月を経て、監督も変わっただろうし、世の中も変わったし、ジブリという会社の体制も変わっただろう。そして何より、我々自身が変わったのではないか?変わらないのは、その時代時代に残された作品であり、我々はただノスタルジーに浸るばかりで、怯むことなく新たなことに挑戦する監督の速度について行けないだけなのだ。人間の姿になったポニョが、荒波に乗って疾走するあのスペクタクル場面は、宮崎監督にしか描けないものであり、この作品が唯一無二の傑作であるという証なのではないか?3度目の鑑賞でやっとレビューを書くことができた。 【フライボーイ】さん [映画館(邦画)] 8点(2010-07-18 21:51:35)(良:2票) 236.真に子供向け。子供向けを謳いながら実は親が子供に見せたいと思わせるような道徳的なものだったり、たんに幼稚だったりというものでなく、真に子供向け。そこにウキウキがありドキドキがありワクワクがある。ただそれだけ。いちいちそのドキドキに意味を求めるなんてナンセンス。ドキドキはドキドキなのだ。トンネルは怖い。ただそれだけなのだ。インスタントラーメンってなぜか子供はみんな大好き。そこに意味なんて見つける意味はない。お父さんは仕事で昼間はいないので子供たちのドラマに登場しないもんだ。物語的には重要と思える母親同士の話だって子供には聞こえない。ストーリーが破綻?我が家の三歳児に物語を語らせたら最初に登場するお姫様は二度と登場しなかったりするという素晴らしい破綻ぶりを見せてくれるのだが、それに比べりゃ・・って比べるなってか。でも大人向けの映画にしたってそこで辻褄合わせやってちゃ面白くなくなっちゃう。この映画は子供向けにしたことで本来映画が持ち得る「自由」を得た。もし嘆くのであれば子供向けにしないと「自由」を得れない映画環境こそを嘆くべきだ。波の躍動感、その上を走るポニョの疾走感はアニメーションならではの醍醐味に満ちている。公開初日に映画館を地元の子ども会で貸しきって鑑賞したのだが、みんな楽しんでましたよ。一部高学年男子はガキっぽかったと言ってたけど(ガキのくせに)、まあ大人ぶりたいガキンチョどもには照れが邪魔してなかなか入ってゆけない世界ではあろう。 【R&A】さん [映画館(邦画)] 7点(2010-03-12 18:15:41)(良:2票) 235.《ネタバレ》 宮崎駿は黙って作品を作ればよい。何を考えて作ろうと、娯楽作品となって出て来たものが観賞に堪えればいいのだ。子供が楽しめて、大人も(大抵は)退屈しない、映画としては合格点だ。もう、それでいいだろう。 人魚姫を元にキリスト教色を排除して云々とは宮崎駿の弁。だからどうした。 神経症と不安な時代に立ち向かおうというものであるとは宮崎駿の弁。ふざけるな。 未完成の時期にTVドキュメンタリーの取材を受けていた時には、最初のつかみの絵のイマジネーションの創造に四苦八苦していた。ポスターにも使われる、クラゲの上で幕の透き間から顔を覗かせるポニョ。でも、できあがってみればその絵は最初のシーンではなく案外後ろの方に動いていた。 同時に関係者は語っている、主題歌を聞いて映画を見終わって楽しいと思ってもらいたいと監督は語っていたと。あの主題歌を最後に持ってくることを起点に映画として構成したと。この話はわからんでもない。この歌は明らかにちまたで流行っている。口ずさんでもらうことを意識しまくった歌詞とメロディ。商業的に言えば映画の主題歌としては最高の出来だ。 設定には人魚姫だの小川未明だの夏目漱石だのワーグナーだの海底二万マイルの影響を監督自身や関係者が語っているが、そんなことはどうでもいい。 現代と魔法世界の混沌を混ぜた映画。ポニョが可愛くてなんかよくわからんが退屈せずに最後まで見られてハッピーエンド。それでいいじゃないか。 トトロの後で監督が言っていたではないか、「トトロは一回見て、なんかわからないけど面白かったね、不思議だったね、とそれでいい」。この映画も出来たものだけ見れば同じである。理屈でこの作品と対峙すれば突っ込みどころは満載だ、しかし、そんなことは無意味だ。トトロのように世代を超えたすさまじい社会的影響力を残す作品にはならないだろうが、久方ぶりに映画史に残る作品を作ったと、それでいいじゃないか。 【SUM】さん [映画館(邦画)] 8点(2010-01-12 14:53:06)(良:2票) 234.《ネタバレ》 好きな歌手の新曲が 「曲や演奏はいいけど、歌詩が、ちょっと…」 それに近い感覚でした。 「ライブで聴いて好きなった、ギターソロは好きだけど」 のように、 時々は好きになる。 【がらんどう】さん [DVD(邦画)] 6点(2010-01-11 14:48:12)(良:2票) 233.《ネタバレ》 劇場公開当時、久しぶりの宮崎作品と言うことで、座席でワクワクしながら上映開始を待っていた時のことです。僕の左手からジュースを載せたトレイを手に、一人の女の子が僕の方に近づいて来ました。その子は僕の右隣の席を指定されていたのですが、そのトレイを持つ手が何とも危なっかしくプルプルと震えているのです。 「あの子大丈夫かな」と思った瞬間、その子は僕のズボンに派手にジュースをぶちまけました。 すぐに「うわっ、ごめんなさい!」とその子は謝ってくれたのですが、ズボンも座席もビショビショで気持ち悪く、正直言って返答する気には全くなりませんでした。それを見かねたのでしょう、僕の左隣に座っていたカップルのうちの彼氏さんが、「これ良かったらどうぞ」とポケットティッシュを手渡してくれました(本当に有難かったです)。その後重ねてその女の子から「本当にごめんなさい」ともう一度謝罪の言葉がありましたが、さすがに無視する訳にも行かなかったので今回は一応返答したものの、それも「あ~ハイハイ」という素気ない響きでしかできませんでした。 「よりによってこんな時に。ホント最悪だ」とムシャクシャした気持ちで上映開始を迎えました。そして上映開始からしばらくして、そんな自分の状態の全てが吹っ飛んでしまう程に、作品に圧倒されることになりました。 もう本当に、映画の中で展開される、「原初的」としか表現しようのない純粋な喜びやイメージの奔流を前に、「空いた口が塞がらない」という状態を初めて経験しました。僕自身は浅く短い映画鑑賞歴しか持ち合わせていませんが、それでも僕は、これまで見てきた映画の中でも、これだけシンプルに心を動かす力強い作品には出会ったことがないと、そう言いたい気持ちになります。物語の後半、グランマンマーレが海に戻っていくあの感動的な場面に至っては、正直な話僕は涙を堪え切れず、手に持っていたポニョの団扇で顔を隠していたこともよく覚えています。 前置きの部分が長くなってしまいましたが、自分にとって色々な意味で思い出深い初鑑賞の日だったので、色々書かせてもらいました。ちなみに上映終了時には、僕の機嫌はすっかり治ってしまっていました。あの女の子に対する態度についても、ちょっと素気無さ過ぎたかなとも思いました。手元にある『ポニョ』のDVDのイラストを見たりすると、その子のことも少し思い出したりします。 【マーチェンカ】さん [映画館(邦画)] 10点(2009-10-03 13:11:14)(良:2票)
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