みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
42.《ネタバレ》 冒頭から結婚披露宴での佐分利信の普通のスピーチと遠慮がちに起こる笑い声、もうこの時代のムードやテンポ、色彩と空気、そして人と会話、相槌、挨拶、空返事。どこをどう切り離して繋ぎ合わせても素晴らしすぎる、僕が追い求め、夢に描くシーンばかり。この極上のスープに詰まった味わいは、映画の出来さえも冷静に判断できないほど、自分にはたまらない妙味。娘が嫁いだ広島行きを、背中押されて決めたにも関わらず、"いや、まだはっきり決めた訳じゃないんだけどね" この台詞のおかしみ、"何笑ってんだ、何がおかしい?" はは、そりゃあ胸が熱くなるほどおかしいです。この台詞を言う側と聞く側が言葉の奥に互いが読み取る感情に、夫婦の年輪を感じる。 そういった味わいが随所に溢れでている、まさに気持ちさえ浄化されるほどの極上のスープです。 【よし坊】さん [DVD(字幕)] 10点(2007-06-11 06:35:59)(良:1票) (笑:1票) 41.『彼岸花』という「映画」の楽しみ方って何だろう? 「映える」。例えば、画面奥の玄関口に置かれた真っ白な陶磁の花瓶や、いつも部屋のどこかに配置されている真っ赤に塗られたやかんやラジオなどの小道具のさりげない存在感を、さらには、襖に映し出される(見えない)庭の池の揺らめく反射など小津独特のこだわりの空間を楽しむことではないか? 「画く」。例えば、これら隅々まで目の行き届いた色彩豊かな空間において、男たちは、酒やタバコを手に、座敷あるいは会社や飲み屋の椅子にどっかりと腰を下ろし、手前勝手な理屈と淋しき本音をぼそぼそと口にするしかまるで能がない。これに対し、女たちは、感情を露にし、早口でまくし立てるだけでは飽き足らず、画面の手前から奥へと配置された廊下を小走りに嬉々として行き来する(その優美で艶やかな躍動感!)。そんな男と女の関係のアイロニカルな転倒を楽しむことではないか? しかし、なぜ、本作には原節子が出てこないのだ? その謎を解明する楽しみだけでも、本作は、最低3回は観返すことが出来る。ああ、小津の映画って、楽しくて奥が深いよなあ。←などと調子に乗って書いていたら、今夜の『秋刀魚の味』の放映を観逃してしまったよ!なんてこったい。 【なるせたろう】さん 10点(2003-12-11 20:28:27)(良:2票) 40.佐分利信演じる主人公は結婚を肯定している。夫婦愛も信じている。親子愛も信じている。 しかし自分の子供が結婚するまでの有り方を用意していなかった。 認められない現実とは裏腹に物事はどんどん進んでいく。 自分の口から発せられる言葉と腹の底との葛藤。 娘の幸せには自分の成長も必要であるということをしぶしぶ認めていく。 小津監督はそれらを美しくテンポよく個性的な登場人物を使ってすばらしいローアングルの風景におさめている。 【ぺんぎんうさぎ】さん [DVD(邦画)] 9点(2008-04-18 23:43:07)(良:1票) 39.夕べ授業で見ました。私はアメリカの映画学部専攻なのですが、アメリカ人だらけの教室で、英語字幕付きの小津映画を見るとは何とも新鮮な気分になりました。最初は英語字幕を読みながら、ほーほーこうやって訳すのか、なんて考えながら見てましたが、途中からもう字幕なんて読まず、久々に聞く日本語の独特の柔らかさや響きに耳を傾けて見始めました。こういった京弁というのは本当に心地の良いものです。さて、ストーリーは本当にどうってことのないファミリードラマなんです。娘を嫁にやりたくない頑固親父と彼を取り巻く周りの人たちの話。別に派手なことが起こる訳でもないし、どんでん返しの結末が待っている訳でもない。本当に日常的な題材。しかし、どうしてこんなにも温かい気持ちになるのでしょうか。アメリカにいるから日本の和の文化に久々に触れて心がポカポカしたというのも一理あるかもしれない。でも、そんなことよりやはりこの映画には愛がびっしり詰まっているからだと思うんです。私が一番心打たれた人物はお母さんです。授業後のディスカッションであるアメリカ人の学生が“母親はいつもニコニコ笑っていて瞬きもせず表情は同じでつまらない”と言っていましたが、私はそこがいいんじゃないかと突っ込みたくなりました。母はいつも娘想いで、それでいて頑固な夫を立てて、凛と母と妻の二足のわらじを履いている。あなたが幸せなら私はそれで嬉しいわ、という嘘偽りない言葉と笑み。この映画でこの母の存在は、父や娘に比べると割と地味でありながらもとても大きなものだと思います。頑固親父が“お前はどう思っているんだ、言え言え!”と無理強いした時にこそ出た本音。その時こそは笑顔は消え、一対一の人間として同等に話をしていました。その時の母の目の強さ。いつもは夫の一歩後ろでものを言う彼女が発した強い言葉には思わずよく言った!と拍手を送りたくなりましたよ。この母の存在が私はとても好きですねー。もう半世紀近く前に作られた映画なのにものすごく楽しませていただきました。こうやってアメリカで良い日本映画に出会うとは思いませんでしたよ。私の映画学部先生たちは小津監督の大ファン。これから私ももっと古い日本映画を開拓していきたいです。 【未歩】さん [DVD(字幕)] 9点(2006-11-30 15:35:00)(良:1票) 38.いいですねー、京ことば。主人公一家と京都の親戚母娘の会話の両極端なテンポがもたらす絶妙なリズム。両者ともに、より際立っていました。静かなる紳士ぜんとした男が唐突にわいた娘の結婚話しにイライラし、物分かりの良い妻にも意見され、「おい!うるさい!ラジオ消せ!」と怒鳴るシーン。怒鳴られたことによる困惑のなかで、夫の心情を察して微かな笑みを浮かべる妻。ウチだったらギロッてにらまれて1週間は口を聞いてもらえないことまちがいないだろう、、ということで、苦々しくも羨ましい、でもやっぱりいいなぁと思えるシーンでした。小津の他の作品のように、同じ部屋でも色々な方向から撮っているんですが、赤いヤカンに代表される小物たちの存在が混乱を避ける目印となり、またその可愛らしい自己主張が心を和ませます。誰もいない廊下の片隅にある赤い座布団の敷いた籐の椅子が、場面の切り替え時に度々映し出されますが、静かな余韻に浸るいい間(ま)を作り出すとともに、最後の最後に妻がその椅子に座る画の伏線にもなっているのには驚きました。小津の映画はこういう驚きに溢れています。 【R&A】さん [DVD(字幕)] 9点(2005-06-23 18:20:29)(良:1票) 37.《ネタバレ》 今まで観てきた小津作品は、全てがお気に入りの作品なので、この『彼岸花』も以前から漠然とした期待があり、とても観たい作品の一つでした。さらに小津作品で初のカラー作品という事で、期待は膨らみました。冒頭はいつも通りの小津作品の穏やさで僕を和ませ、白黒作品となんら変わりのない静けさに安心して画面に食い入る事ができました。ストーリーは派手に言って見れば結婚に至るまでの考え方の“新旧対決”という風に感じました。やはり、まだまだ子供で最近の考えの強い僕の感情は当然のように娘さんに移入しました。その為、中盤では父親のわからず屋で頑固な態度と意見にとても腹が立ち、画面に向かって唾を吐きまくっていましたが、ラストでのあの電車に揺られ、緩やかな表情を浮かべる父親の姿を見たとき、何とも言えない爽やかな気分になりました。それはどことなく春の爽やかな風のような温もりに満ちていてすごく気持ちが良かったです。やはり小津作品は素晴らしい、と心から感じさせてくれる作品でした。 【ボビー】さん [DVD(字幕)] 9点(2005-01-15 00:48:03)(良:1票) 36.どうしても達者な関西弁を自由自在に操る浪花千栄子や、大輪の花の如き美貌の山本富士子に視線が行きがちになってしまうが、ここでは敢えて田中絹代の控えめながらも力強い演技を僕は声を大にして褒め称えたい。佐分利信と芦ノ湖のベンチに座り、戦争中防空壕の中で家族が一緒だった事を回想するシーン、ゴタゴタが一件落着して電話口で「良かった、ほんとに良かった」と娘の幸せを心から祝福するシーン等はその中でも特に絶品といえる。長年役者を続けてきた人だけが出せる、たおやかな気品とでもいったらいいか。最近こういう女優さんいないよなあ・・・。 【放浪紳士チャーリー】さん [映画館(字幕)] 10点(2004-09-26 15:19:24)(良:1票) 35.小津初カラー作品だけど、よかった。構図とか小道具とか絶妙でした。「色があって、色がないかのごとく色がないようにして、どこかにある」とても美しいと思った。出演者では浪花千栄子が一番印象に残る。京都弁で喋りまくるのが面白い。 【バカ王子】さん 9点(2004-03-31 21:02:18)(良:1票) 34.頑固親父、父娘の関係をとりなそうとする優しい母、自分の結婚観を押し通す子供、戦後の新しい時代にはどこの家庭でも繰り広げられる光景なんでしょう。コミカルさとシリアスさがどちらも実にリアルであり、ズシズシと心に響きます。両親の気持ちが痛いほど解かるんですよ、解かるけどウーン、痛い。父親が広島へ行くと聞いた後の母親の表情といったら、もうマジ泣けたッス。 【亜流派 十五郎】さん 10点(2004-02-25 15:33:59)(良:1票) 33.《ネタバレ》 50年代後半の時代性がよく反映されている。まだ家庭における父親の権限の大きさ(家長制の名残)が感じられる。 佐分利の親父は娘や妻に強権的で矛盾だらけのキャラクター。それを指摘されると「人間は矛盾だらけなものだ」と開き直る始末。 只、騒動の原因は娘の恋人がいきなり娘の親父の会社を訪問し、娘と結婚させてくれと願い出る無茶な展開から始まる。 いやいや、仕事中に、アポイント無しで、しかも恋人に内緒で、こんな暴挙はありえないでしょ?こんな非常識な行動をされたら、さすがにこの男大丈夫か?と思うよね。男前やから許される問題ではない(笑) そんな強権的な佐分利の親父も、友人や知り合いの娘の恋愛問題を通じて、結婚は親の意思ではなく本人通しの意思が大切なことに少しずつ気づいていく。 作品中、佐分利の親父と部下の近ちゃんのバーでのエピソードが一番笑える。サラリーマンの辛さはいつの時代も一緒です。 あと、親父の同級生3人と割烹店のおかみのやり取りは、そのまんま後の作品「秋日和」につながっているのは面白い。 余談ですが、山本富士子と私の母親が女学校の同級生で、母親の若い頃はこんな時代やったのかと感慨深いものがありました。 【とれびやん】さん [インターネット(邦画)] 6点(2023-08-20 18:01:46) 32.最近、大昔に観た小津の「秋日和」「秋刀魚の味」、そして本作を続けて観直しました。小津の作品は、ある意味ハリウッドの冒険スペクタクルと同じ、絶対に映画でしかありえない映画です。観ていると段々映画の世界の中に入り込んでいくのが分かります。それが心地良いです。 3作ともそれぞれ味がある良い作品ですが、他の2作と比べて本作は「岡田茉莉子ロスト」でした。どうも他2作を見てすっかり岡田茉莉子がお気に入りになっていたようです。監督が彼女を1番バッターと読んだのも納得です、と出ていない女優の話を書いてしまいましたw 【amicky】さん [インターネット(邦画)] 8点(2023-01-28 18:08:12) 31.《ネタバレ》 なんだろうね、この満足感。 小津監督の映画、まだ四本しか観てないけど、東京物語より好きかなあ。 娘の結婚を認めてやるべきだと外堀を埋められていく平山。 他人の娘なら許せても、自分の娘にはなかなかうんと言ってやれない哀しき父親。 うまい演出だなあ。 家族の時間が濃密で、それでいてくどくない。 これはひとえに、田中絹代の存在感ではないかと。 ピンポイントの久我美子さんの圧倒的な美しさにも惹かれるけど、この映画の田中絹代は本当に素晴らしい。 夫を立てながらも、言うべきことはきっちり言う。夫をたしなめる迫力は凄まじいばかりだった。 脇を固める京都の母娘も、いつもの同窓会のメンバーも、ゆったりしてて落ち着いて映画を楽しめた。 テレビがない時代の昭和を描いた映画、いいもんだなあ。 【roadster316】さん [インターネット(邦画)] 9点(2020-10-25 23:10:18) 30.《ネタバレ》 なんか私も年頃の娘を持つ立場として、父親に非常に同感だなーと思った。妻や妹娘、友人の幸子が父親の頑固を打ち崩しにかかり、父親も最後はまんまと軌道に乗せられてしまった感じで、中盤はピリピリしてるが終盤ほのぼのととした感じである。終わってみると笠智衆の娘は特に何の伏線もなく、何だったんだ?と不思議に思う。 【SUPISUTA】さん [DVD(邦画)] 7点(2018-05-27 20:51:15) 29.《ネタバレ》 おぉ!小津映画がカラーになってる。でも基本、白黒と変わらぬ演出。強いて言えば、赤の色が有名な映画。もう、小津節の人情喜劇、全開!って感じで、頑固親父と、その彼を結局手綱づけてる周囲の女性たち。小津映画の女性たちはみな初々しい。これが日本映画の良さなんだね。山本富士子のお母さんのお喋りは勘弁してほしいが(笑) 【トント】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2016-09-19 12:32:29) 28.ちょっと心があたたかくなる作品。母の「親は、子供が幸せになったらそれでいいのよ」が印象的なセリフだった。 【ホットチョコレート】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2016-04-14 06:08:11) 27.「心理描写に優れた映画」ってやつだったらきっと、主人公のオヤジは娘の結婚に表向き反対しつつも、ああでもないこうでもない、どうしよう、と苦悩の表情を、映画を観る我々の前にこれでもかと見せつけるんでしょうけれども、この映画はそうじゃない。佐分利信は映画の冒頭で堂々と、恋愛結婚はスバラシイ、と述べてみせ、その直後には堂々と娘の恋愛結婚に反対して見せる。頑固で理不尽であればあるほど、面白い。そんで、彼の娘を含めた3人の若い女性が入れ代わり立ち代わりチクチクやって、彼の妻も控えめながらチクチクやって、トドメを刺すように中村伸郎がすました顔でチクリとやる。ホントは佐分利信の内面を、各登場人物が代弁しているのかも知れないけれど、それを一人の男がウジウジ悩む姿ではなく、軽妙な人物関係に投影して描いて見せる。これぞコメディ。 【鱗歌】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2016-01-21 22:38:19) 26.《ネタバレ》 登場人物の誰もが同じような台詞の同じような芝居、どのシーンも同じような撮り方。これで面白いわけがない。唯一おっと思ったのは、終盤、肝心の娘やその結婚相手をまったく見せない場面構成、そして電報を出した時点でさらっと切り上げるラスト。 【Olias】さん [CS・衛星(邦画)] 3点(2015-12-12 23:55:05) 25.「人生は矛盾だらけなんだ!」と開き直る佐分利信。自分は娘を持つ父の気持ちは永遠にわからないだろうが、生涯独身を貫いた小津安二郎だからこそ、矛盾だらけの父親を哀れみ、茶化す事ができるんだろうな。人情味があるというより、ある意味冷徹ですらある。 【東京50km圏道路地図】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2015-12-10 11:06:31) 24.佐分利信、田中絹代のお二人の貫禄が見事なのでまだ50前だったのが意外。男女問わず口癖のように発する「ちょいと」、ラジオしかない居間、ハイボールのあるバー、家長たらんとする父親、清く正しいお付き合いのカップル、みんな1958年を感じさせるが、価値観が変っても子供の時の「子の心親知らず」と親になっての「親の心子知らず」みたいな親子の葛藤の本質は変らないのだろう。 【ProPace】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2015-12-10 00:17:12) 23.小津映画初のカラー作品ということで、タイトルテロップも白黒に加えて赤文字が挿入され、冒頭のカットは東京駅の赤煉瓦がまず映し出されます。なんか、巻頭カラーページに載ったマンガみたいに、無邪気にカラーを楽しんでる感じがします(笑)。赤いヤカンやラジオも印象的でした。内容的には、父親のほうに感情移入しちゃいました。「お父さんには言ってもわからないわよ」と蔑ろにされたら、そりゃイラッとしますよ。だから、「お父さん(お母さん)は全然私の気持ち分かってくれないのよ。勝手なのよ」と女性陣が言うたびに「それはお前自身のことだろー!」と突っ込んじゃいました。ただ、そのままの勢いでいつまでも結婚に反対していると、田中絹代母さんからの手痛い反撃が!いかん、やりすぎた!とお父さんも思ったことでしょう。阿修羅のごとく表情を変え、服をパタンと床に落とすお母さんのあの迫力は圧巻。田中絹代の凄みを見て、思わず「ウホッ」となってしまいました。 【ゆうろう】さん [DVD(邦画)] 7点(2014-07-13 02:51:08)
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