みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(8点検索)】
6.なんだか、終始見ているのが辛かった。ケン・ローチとしては、自分がイングランドの人間であるからこそ、アイルランド目線で描くことに拘ったのだろうな、と思う(公開時、イングランドでは監督に対しかなり批判があったというが)。そして、一つの地方に焦点を当てることでより不毛性を描くことに成功しているように感じる。戦争時に、一市民、一兵士が大局を見極めているとは到底思えない。そういう、目先のことや断片的な情報に右往左往して、結果、自分たちにとっての大義が見失われて行く様が実によく描かれている。条約批准後の両者の本音の討議シーンは圧巻。どちらの言い分も共感する。けれども、もっと大きな流れは、違う所で勝手に決まって動かされて行くという、この不毛さ。弟を処刑する兄を見ていて、新撰組の山南と土方を思い浮かべてしまった・・・。別に新撰組フリークでは全くないのだけれど。結局、組織のためには規律を重んじざるを得ない。けれども、その組織自体が、大局で見れば、既に駒の一つにさえなっていないかもしれないという点で勝手に共通するものを感じてしまった。こういう、一市民たちの流した血と涙を丁寧に描ききったことに敬意を表したい。 【すねこすり】さん [DVD(字幕)] 8点(2010-08-29 22:37:25) 5.まるでその場にいる人間の視界をそのまま切り取ったかのようなカメラワークが絶妙。たとえばあの焼き討ちされている家をなすすべもなく傍観している場面の臨場感は凄まじいし、条約案が持ち上がったあとに大勢で議論する場面もすごい。どこをとっても過剰な演出が一切なく、当時のアイルランドの人々の記憶そのものを編集して観せられたかのような生々しさがある。それでいて美しい映像なのだから驚く。 ただ、脚本に登場人物の人間味を感じさせるような「余分」がないので、感情移入するのがやや難しい。鑑賞中はどうかと思っていたけど、最後まで観るとこれはこれでありかなと思わされた。仮にデミアンのちょっとした癖や、テディの好きな食べ物でも教えてくれたなら、もっと彼らに身を重ねて観ることができたかもしれない。でもケン・ローチが目指したのはメロドラマからかけ離れた世界なのだろうから、これできっと正解なのだろう。 誰もが正しいことをしようとして、何もかもが間違っていく。人の営みの中で必ずついてまわるそうした悲劇(何も戦争に限ったことではなく)の成り立ちを、この映画は巧みにとらえているように思えた。 【no one】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-11-05 02:07:19) 4.未だに完全なる独立を果たしていないアイルランドの悲しい歴史を描いた作品。 物語はイギリス軍とアイルランド人の対立に始まり、やがてアイルランド人同士が憎み合うようになるという皮肉な展開。 段階的な独立を目指す穏健派の兄と完全なる独立を目指す強硬派の弟。 どちらが正しいと言い切れない難しい問題なだけにラストの悲劇は避けようがなかったと思える。 世界一暮らしやすい国とまで言われるようになった現状を見ると兄の方が正しかったような気もするし、未だに北アイルランド問題を抱える現状を見ると弟が正しかったような気もする。 作品としては、面白いといったものではないけど、1つの歴史的事実として映像化したことに大きな意義があるのかも知れない。 【もとや】さん [DVD(邦画)] 8点(2007-09-08 23:18:49) 3.アイルランドの自然に囲まれた風景が、あまりにも美しいせいで、そこでドンパチと銃撃戦が行われている様子が、不謹慎にも、美しいと感じました。印象に残ったのは、アイルランド共和国議会の民事裁判で、金持ちの地主が裁かれるシーンです。あれは裁判というよりも、裁判ごっこでした。そのシーンが、アイルランドと英国との力の違いを、兵力の違い以上に、表現していたように感じます。私の浅はかなアイルランドの知識といえば、アイルランド=IRA=テロリスト、という偏見があったことですが、この映画は、テロ集団「IRA」の前身となるアイルランド義勇軍の話のようです。ところで、テロリスト、と一方的に我々は言いますが、アイルランド人にとっては、テロをしているつもりはなく、英国と戦争をしていると思っている。しかし両者の力の差があまりにもかけ離れているために、英国では戦争とは受取っていない。アイルランド人に無差別殺人をされていると思い込んでいる。本作では、英国側の兵士が非常に残酷に描かれているために、客観性が損なわれていますが、本当は英国兵士も政府に命令されて、国に家族を置いて、このアイルランドにやって来ただけなのです。そして異国の地で、アイルランド人のテロ行為に、気が狂うほど怯えていたのだと思う。アイルランドからの撤退を心から喜んだのは、英国兵も同じなはずです。この撤退で英国にいる兵士たちの家族も泣いて喜んだでしょう。それが本作からはあまり伝わってこなかった。もう少し英国側の苦悩も描いてくれれば、深みが増したかと思いますし、そういう意味では少し一方的な見方をした映画だと思います。この映画はイラク情勢を、連合国側の視点ではなくて、イラクの武装勢力側の視点で見たようなものと似ている。戦争は、どちら側の視点で見るかによって、真実が変わってくることがよく実感できました。 【花守湖】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-12-25 18:55:26)(良:1票) 2.カンヌ・パルムドール獲得の際のインタビューでケン・ローチは「英国が帝国主義的な過去から歩みだす小さな一歩になれば、、」と言っている。あきらかに現英国のイラク派兵に対し、いまだ同じ過ちを繰り返す母国への批判を含んでいると思われる。作品自体も英国に対する擁護など一切無い。今尚続く北アイルランド問題という英国にとって最も重い題材を実に辛辣に描き出す。しかしこの作品の凄さは、ケン・ローチの作品がいつもそうであるように、重々しい題材が描かれる、その背景の美しさにこそある。けして戦争を、また戦闘を美化しているのではなく、『シン・レッド・ライン』のように対比の対象としての美でもなく、ただただそこに美しさがある。もう一つ、複雑な問題をすべて見せようとはせずにピンポイントで描いているので、劇中混乱することもなく鑑賞できるのも好印象。映画で語られる物語は全くといって救いがありません。あるとすればこの映画で語られない部分を想像するしかない。そしてその想像の余地だけを残している。 【R&A】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-11-29 11:53:51)(良:1票) 1.私は英国好きで映画も好んで観るのですが、正直なところアイルランドという国についてIRAで紙面を賑わせたことぐらいしか知りませんし、イギリスと呼ばれる地域がどのように成り立っているのかも不明です。そもそも日本ではイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドをひっくるめ便宜上〝イギリス〟という呼称を使っていますが、UKと呼ばれることからも分るように正式名はグレート・ブリテインおよび北アイルランド連合王国(辞書で確認してしまった;)であり、イギリスというのはイングランドから派生した言葉なのでイングランド以外の人々は気分を害すかもしれません。現在の状況ですらその程度の認識しかないのに歴史的背景はさらに複雑なはずです。まして本作は政治家でも軍人でもない市民目線からの描写なので社会全体の動向や彼らの行動の位置付けが把握しにくくアイルランド史を知らないと理解しづらいです。ですから両国の関係に造詣が深くないと本作を咀嚼したとは言えないと思いますし、また自国の人々がどう思ったのかが気になるところです。しかしその一方で、一般市民の兄弟が軸となった物語なので等身大であり感情移入などはし易いです。その結果、暴力から生まれる惨劇の数々に、どのようなバックグラウンドであろうと報復にしても武力行使は悲劇しか生まないのだという事と、醜い連鎖に終止符を打てぬ人間の愚かさ、哀しさが痛いほど伝わってきます。あらゆる場面が濃密であり、目を背けたくなる場面ですら瞬きするのも忘れそうです。 【ミスター・グレイ】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-11-24 18:19:50)(良:1票)
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