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【クチコミ・感想】
2.3巻足らずの短編に意欲的に詰め込まれた技法、そして喜怒哀楽の感情の諸相。
表札や鍋やポートレート、蛇口の水滴はことごとく落下することで無声映画の中に音を創出し、対比的な夫婦像・つましい暮らしを示す靴底の穴・模型飛行機・交通事故・金銭といった成瀬流意匠の諸々も巧みにユーモアとペーソスを形づくる。
前半の背景でのどかな風情をみせていた電車が後半には不吉を呼び込み、また前半の子供の喧嘩や居留守中の押し入れ内でコミカルに使われた飛行機が、後半では抒情のアイテムへと変容する。
ショックシーンで用いられるクロースアップ、画面分割、ネガ反転にディストーション。
不意の短いフラッシュバックとして挿入される線香花火、入道雲のショット。
同じく、暗い病床と模型飛行機の滑空の叙情的なオーヴァーラップ。
または洗面器の中で溺れる蠅のショットの悲壮と抽象性。
病室での大胆な表現主義的ライティングによるノワールスタイル。その柔軟で果敢な試行が若々しい。
一方で、病室の息子と夫婦それぞれの顔に注がれる光明は成瀬50年代の絶頂期にも負けぬくらい繊細で美しい。
【ユーカラ】さん [映画館(邦画)] 8点(2012-02-13 20:15:12)
1.成瀬が第二の小津と言われたのは、あくまで小市民の哀歓という題材によるのであって、フィルムはもう完全に異質。窓から室内を見たり、保険の話を妻としている時にその話題の家族のインサートカットがナウく入ってきたり、表現主義風のところなんかネガまで使っている。病室のシーン、ぽたんぽたん手術皿に水がしたたってそこで蝿が溺れかけているなんてナーヴァスに迫ったかと思うと、逆光で母がうろうろしているとこの光と闇の美しいこと。こういったものは全部小津にはない。そして成瀬の特徴とも言えるトボトボ歩きがある。画面の右上に向ってやや俯瞰気味で少年がトボトボと歩いていく。この情感は成瀬独自のもので、この現存最古のフィルムにも「成瀬ウォーク」が確認できたのは嬉しい(同年に作られた『ねえ興奮しちゃいやよ』ってののフィルム、どっかから出てこないかなあ)。外界が目に入らぬ人物と、その人物をそっくり包み込んでいる外界、どこへ行こうという歩行ではなく、自分自身を稀薄に溶かしてしまおうとしているような歩行。これが本当にいいんだなあ。PCLに移る前から、松竹の習作時代から、もう成瀬はナルセだったのだ。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 7点(2010-11-06 16:01:09)(良:1票)
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【点数情報】
Review人数 |
4人 |
平均点数 |
7.25点 |
0 | 0 | 0.00% |
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1 | 0 | 0.00% |
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2 | 0 | 0.00% |
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3 | 0 | 0.00% |
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4 | 0 | 0.00% |
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5 | 0 | 0.00% |
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6 | 1 | 25.00% |
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7 | 1 | 25.00% |
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8 | 2 | 50.00% |
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9 | 0 | 0.00% |
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10 | 0 | 0.00% |
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【その他点数情報】
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