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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です!
【クチコミ・感想】
2.《ネタバレ》 まず装置があってシーンが創り出されたのか。あるいはその逆か。
いずれにしても、このエレベーターの鮮やかな用法には唸るしかない。
章の切り替え時に入る軽やかなエレベーターの到着音なども含めて、
その装置が映画に頻繁に登場するのには途中で難なく気づく。
映画の中盤、オフィスのエレベーターでヒロインのチェン・シャンチーと
ワン・ウェイミンとが決裂するロングテイク。
これと対になる形で見事にラストのショットを決めてくるのだから、楊徳昌もまた
ルビッチらと並んで『ドア』の映画作家と呼んでもいい。
構造物によって、人物を画面から一旦消し、そしてまた現れさせること。
それを長回しで撮ることで、様々な意味での奥行きと実存の感覚が生まれる。
溝口健二の襖のように。
本作のいくつかの場所でこれをみせる楊徳昌もまた一流であるということだ。
ラストの再開は、その極めつけと云える。
ヒロインの笑顔が現れた瞬間、扉の背後に遮られて見えなかった彼女の翻意の姿が
間接的なだけにより強く迫ってくる。
ほとんどシルエットに近い、表情の判然としない半逆光のロングショットの芝居の数々。
その絶妙な光の感覚もまた素晴らしい。
大っぴらに見せないこと、観客に想像させることで、逆にドラマに、キャラクターにと
引き込んでいく。
そこには観客に対する信頼がある。
【ユーカラ】さん [ビデオ(字幕)] 10点(2014-02-06 23:23:26)
1.《ネタバレ》 楊徳昌は、4時間にも及んだ前作『牯嶺街少年殺人事件』に匹敵するほど複雑に相関する登場人物を、このたかだか127分の中に無造作に配置し、配置された彼らはのべつまくなし饒舌にまくしたて、そのややこしく入り組んだ人間関係に言及する。説明描写の一切を放棄したまま、彼らの夥しい会話=情報だけがひたすらぎっしりと詰め込まれていく様は圧巻だ。だが、膨大な台詞を膨大な字幕で追いかけなければならない我々外国人にとっては、もはやお手上げである。『牯嶺街』でその名を世界に轟かせながら、続く本作がカンヌに出品されつつ無冠に終わったのは無理もない。(台詞を極端なまでに排した蔡明亮の『愛情萬歳』が、同年のベネチアでグランプリを獲得したのは皮肉な話だ。)この映画を初見で完全に理解することは、ほぼ不可能だからだ。だが二度観なければ理解できないとすれば、その映画ははたして映画失格だろうか?おそらく映画祭の審査員にとってはそうだ。多くの一般の観客にとってもそうだろう。しかし私にとっては違う。過剰にして饒舌なこの映画には、けれど恐ろしいほどに一切の無駄がないのだ。その映画的ボルテージは傑作『牯嶺街』にすら引けをとらない。そしてそれを今度は他愛のないラブコメの枠組みでやってのけたのだから、やはり楊徳昌は恐るべき天才だ。孔子の論語の引用から物語りはじめる小賢しく皮肉屋の楊徳昌だが、本作において彼が最後の最後に見据えるのは、物質社会に翻弄され困惑する儒者の末裔=現代人が、それでもひたすらに誠実であろうとするその有り様だ。打算や虚栄が前提の世界だからこそ八方美人と揶揄されるチチ。親友モーリーとの友情にも亀裂が入り、「用もないのに来られたら目障りだわ」となじるこの友人に対して彼女が出す答え。「会いたかったの。あなたもでしょ?」それは途轍もなくシンプルで美しい、ありのままの感情だ。そしてラストシーン。去りゆく相手をそれでも想って一度閉じたエレベーターを開くこと、あるいは去りゆく相手をそれでも想ってエレベーターの前に舞い戻ること。扉が開き、そうして目の前に現れるのは、あまたのラブコメにおける御都合主義的ハッピーエンドとは決定的に違う、必然の邂逅だ。楊徳昌は言う、これこそが真実なのだと。心のままに向かいあった「もう片方」を、彼らは心のままに、力いっぱい抱きしめる。いつかではなく、そう、今すぐに。 【BOWWOW】さん [DVD(字幕)] 10点(2013-05-02 21:00:54)(良:1票)
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【点数情報】
Review人数 |
2人 |
平均点数 |
10.00点 |
0 | 0 | 0.00% |
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1 | 0 | 0.00% |
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2 | 0 | 0.00% |
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3 | 0 | 0.00% |
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4 | 0 | 0.00% |
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6 | 0 | 0.00% |
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7 | 0 | 0.00% |
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8 | 0 | 0.00% |
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9 | 0 | 0.00% |
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10 | 2 | 100.00% |
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