みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
180.《ネタバレ》 「親孝行って何?」って考える♪でもそれを考えようとすることがもう♪親孝行なのかもしれない♪・・・この映画の子供たちは誰ひとり「親孝行って何をしたらいいんだろう?」って考えてない。「熱海なんてどーお?」「いいんじゃない?温泉あるし」って爺婆と話しろよ!めったに会えないんでしょうが!!そんな実の息子娘と対照的に爺婆に親切な亡くなった息子の嫁。そんな彼女も「私ずるいんです」と言う。いま日本国内では映画にしろ小説にしろ「泣ける」という要素がないと売れない空気ですけれど、私がこれらの作品に触れて感じたことは、「泣ける」映画は往々にして観客を泣かせることを最終目的にしているためにそこから先に進めないということです。泣いてスッキリしちゃう。日本の皆さん、小津安二郎を見なさい。これを同じ日本人が創ったんだよ。と言う私も「東京物語」しか見たことないですけど・・・。 【キュウリと蜂蜜】さん 9点(2004-10-27 23:19:27)(良:1票) (笑:1票) 179.「私ずるいんです」 笠智衆に対して頑なに言い募る原節子は、最後に救われたのだと僕は思う。「東京物語」とは、大都会でひとり生きてきた原節子演じる紀子が自らの頑なさを笠智衆という在るがままの御仁にぶつけることによって救われる物語なのである。もちろんこの大傑作映画は、登場人物たちのさざめく日常を丹念に描き、様々な人々の様々な奮えを静謐に表現することによって、実に多面的で奥が深い作品となっている。その多くの場面に僕は感銘を受けた。 それでもやはり、原節子という優しさの象徴のような女性がその内情の弱さを吐露する場面は、この物語のクライマックスであり、それは笠智衆という「精神」の静かな態度によってしっかりと受け止められるのである。最終的に、笠智衆は妻に先立たれ、子供達には厄介者扱いされるような不遇の立場にあるわけだが、彼はその立場を捩れなく自然に抱えこむことによって、決して自らの弱さに屈しない、かつ自らの強さを誇張することのない凛然とした「勁さ(つよさ)」を見出すのである。原節子が最後に救われ、癒されたのはそんな彼の自然さであり、「勁さ(つよさ)」である。彼女が自分の「ずるさ」と自然に向き合えたことこそが彼女自身の癒しだったのだ。 笠智衆が一人佇む最後のシーン。彼が自分の人生を十分に反芻しており、そのことから滲み出る自然体であることの「勁さ」というものを僕は切に感じることができた。そして、僕も救われたのである。 【onomichi】さん 10点(2004-08-25 01:20:02)(良:2票) 178.小津作品初めて拝見しました。この作品の良さは若い頃見ていたらきっと今ひとつ充分に自分の心に伝わらなかったのでは、と思っています。自分もある程度の年齢に達し、結婚し、子供も出来て親になってここに登場するそれぞれの人たちの気持ちがよく理解できるようになりました。結婚すると親の事を決して邪険にするわけではなく自分の生活の事をまず考えてしまいがちになるし、そこには親子だからという甘えもあります。子供というのは親が子供を思う程親の事は考えないものなのですよね。あの時にもっと親孝行しとけばよかったな、、と思う頃には親が亡くなってたりです。普段忘れがちになる親子の気持ちや生きてゆく事の意味などこの作品から教えられた気がします。劇中出てくるセリフのひとつひとつよく親や親戚たちとやりとりしてた言葉だったのでよけい胸に響いてきました。(特に“あんたが大きくなる頃にゃ婆ちゃん生きとらん~”のセリフは、うちの母が今子供たちによく言ってることだ)ラスト近く一人になった周吉が海を見つめているシーンは、三年前に亡くなってしまった自分の父親と重なって泣けてきました。 【fujico】さん 10点(2004-02-16 15:34:03)(良:2票) 177.紀子は、夫の死を経験し、今なおそれが身近に感じているから、他人である夫婦に優しくできたのかもしれない。 と鑑賞して、しばらくして思った。(赤の他人に、心の内を話すことがあるという現象と似たようなものがあるかもしれない) 子供たちは、今の日常が突如失われるかもしれない、そして必ず訪れる。。と、気づいていない。 気づき、考えたかもしれないが、受け入れたくないのでそれを忘れる(忘れようとする)。。。 気づいたときはもういない。(親も、子供も、妻も、夫も、兄妹も・・・順番なんかわかんない) ということに気づかせてくれる作品なのかも。 自分の親が同じぐらいの年齢なので、考えさせられた。 年齢とともに、見方が変わっていく作品だろうと思う。 【へまち】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2023-12-17 16:13:29)(良:1票) 176.20年前にレンタルビデオで見た時にはとくに感動しなかったが、今日映画館で見て感動した。襖の影から人が現れて襖の影へ消えるの繰り返し、膝の高さのローアングル構図、小津映画のお約束をこれでもかと見せつけられる。しかし心に残るのは深い感動であってテクニックそれ自体ではない。ベタな平凡なストーリーを展開させて、人生の普遍的な喪失感が胸に迫ってくる。何故そんなことが可能なのか小津の魔法使いとしか言いようがない。 【ブッキングパパ】さん [映画館(邦画)] 10点(2020-12-12 16:45:51)(良:1票) 175.これはまあ、何と言ったらいいか、言語に絶する、あるいは言語道断(?)とでも言ったらいいのか こんな完璧な映画作っちゃいけませんよ。 レオ・マッケリーの「明日は来らず」にインスパイアーされて作ったということで、 あちらも、見捨てられた老夫婦が自分たちで生る道を模索するさまが悲哀とともにが描かれて素晴らしい作品だが、 これはさらにその域を越えて、諦念とそれを許容する寛容が、世界的なスケールで描かれ、ほとんど普遍の域に達している。 不朽の名作とはこういう映画のことを言うんでしょう。映画史上、永遠に残る傑作です。 【kinks】さん [映画館(邦画)] 10点(2015-10-04 23:32:00)(良:1票) 174.《ネタバレ》 誰が見ても文句無い大傑作 外国でも評価が高いのがわかる 当時の日本の住宅事情や温泉旅館、アパートや病院、美容院、居酒屋、お葬式、古い町並みを横切る蒸気機関車、すべてが興味深い 日本人ですらノスタルジックなのだから外国でも評価が高いのがわかる わかりやすいローアングル引き気味のカメラ 人物を中心に据えたバストショットは抜群の安定感 この時代から言われ始めた核家族の問題をいち早く捉えた映画だ 長男長女はいたってさばさば 今となっては普通かもしれないな wikiを見ると「家族という共同体が幻想でしかない悲し過ぎる現実」と書いてあるが、そこまで重く無く、いたって普通の家族の様に思える、今となってはむしろ幸せな夫婦の老後と私には思えたのは私がシニカルなせいだろうか 家族と義理の家族の機微の違いなども活写しているのは『歩いても 歩いても』等よりもわかりやすい 杉村春子の演技も判りやすく、相対する原節子の芝居においては今はこのタイプの女優はいないと言い切れるぐらい時代がかっている 今となってはむしろ斬新だった 笠智衆はこのときすでに爺さんで始終にこやか 私はこの笠智衆しか知らない この人の抜群の笑顔でこの映画が優しい印象になった 笠智衆は本当にうまくて、妻が長く無い事を知ったときの顔は、絶望とはこういう顔なのかと思った エンディングでは、最後まで残って世話を焼いてくれた次男の嫁も帰ってしまい、一人になったときに見せた横顔が何気ないが妙に哀しくて何故か涙が出た 【にょろぞう】さん [ブルーレイ(邦画)] 9点(2014-03-15 13:19:04)(良:1票) 173.《ネタバレ》 壮絶な映画でした。わざわざ田舎から出てきたのに迷惑がられる両親には共感せざるを得ません。家族ではなくても、友人関係や社会との関わりで二人と同じ気持を味わうことはあると思います。その二人に親切に振る舞い続ける唯一の存在である紀子さんには、強い思い入れがどうしても出来てしまいます。その中でのクライマックスには激しく心を揺さぶられました。隠してきた本心を告白する紀子と、それを受け入れた上で彼女の未来を心配し激励する父・周平。やられました。僕のような人生経験の少ない若輩者でもこうなのですから、今後人生経験を積んでいく中で、この映画を見るたびに心に響くところが変わっていくのではないかと思います。これぞ映画。 【カニばさみ】さん [DVD(邦画)] 8点(2013-09-05 01:26:39)(良:1票) 172.この映画がもてはやされるのに、どこか引っ掛かってました。終盤の「母の死」という事件が、映画の中であまりに大きな転機になっていて、これは通俗性の表れだろう、と思ってました。だから世界中で受け入れられたんだろうと。しかし本当にこの作品が小津作品の真骨頂みたいな扱いで、良いのか、と。……しかし、自分にも子供が出来て、子供の事を「何か頼りないなあ」とか「でもまあ頑張ってるよなあ」とか言う立場になってから、改めて観た時、本作はどうにもタマラン映画なのでした。背中を丸めた年老いた親、その親を邪険にする子供たち。いや別に邪険にしている訳ではなくて、いわば空気のようなアタリマエの存在だからこそ、なのかも知れないけれど、血の繋がらない人たち(原節子とか中村伸郎とか。それこそ東野英治郎とか)の方が余程フレンドリーな描かれ方をすることで、子供たちのよそよそしさが目立つことに。しかし、親としては、子供たちが順調に育ってくれて(当時は「戦死」で息子に先立たれるなどという理不尽もあった訳で)、家庭を持ち「自分たちの世界」を持ってくれれば、それで良いのだな、と。孫より子供の方が可愛い、という、無限の愛情、それが一方的なものとなってしまうのは、やはり必然なのか。医者になった息子に最期を看取ってもらえる、というのが、幸せであり、また幸せの限界でもあるのか。妻の死を目前に静かな表情で「そうか、いけんのか」「そうか、おしまいかのう」とつぶやく笠智衆。感情を露わにしてくれた方が観てるこちらにも救いがあるのに、「どうしてそういう言い方するのよ」と悲しくて仕方がない。まあ、脚本に書いてたとか監督に指示されたとかいうのがその理由なんでしょうが(そう思わなきゃ、やってられませんわ。笑)。この静かな表情からは、「自分たちは役割を終えた」という諦念がにじみ出て、映画を通じて登場する背中を丸めた座り姿とともに、忘れられないものとなりました。しかし彼にはまだ、最後の「役割」が残っている、それは、自分の子供たちだけではなく、すべての子供たちにかける言葉。未来があり、自由があり、しかしそれを行使し切れずにいる、原節子への言葉。やがては子供たちの世代もいずれは孫を持つ世代となり、すべてが繰り返されていく訳で、永遠のテーマですなあ。そしてこれも変わらぬ、尾道・浄土寺。 【鱗歌】さん [CS・衛星(邦画)] 10点(2013-02-22 04:12:38)(良:1票) 171.《ネタバレ》 お父さんが先の方が良かったって・・・、それは言うたらあかんやろ。 【ケンジ】さん [DVD(邦画)] 6点(2013-01-28 01:02:05)(良:1票) 170.何も起こらないとても退屈なつまらない映画です。ただ、見終わった後すごいものを見た事だけがわかります。残念ながら今の私にはそれをあらわす事ができません。何十年か経っていつの日かこの映画の真の素晴らしさを理解し言葉であらわせれるような人間、映画好きになっていたいと思います。余談ですが、私は恋愛映画が大嫌いです。一般的な恋愛映画で描かれる恋愛というのは非常に薄っぺらい関係だと思っています。しかしこの映画で描かれている夫婦は好きだの愛しているだのそんな安っぽい言葉を使わずとも、信頼関係を通り越し信頼という言葉すら必要ないほどの愛情を感じました。日常のたわいない会話の一つ一つにどきどきしてしまいます。私にとっては最高の恋愛映画だとも思っています。欲張りな私は何十年か経って人間、映画好きと併せてこんな夫婦になっていたいと思います。 【pnpls】さん [CS・衛星(邦画)] 10点(2012-04-18 09:37:59)(良:1票) 169.おじいさんとおばあさんの「ありがとう」の言葉がいつまでも胸に残っています。優しさを刺激してくれる素晴らしい映画です。 今の時代にも通ずるものがあって色あせない情感があります。 【さわき】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2011-05-04 00:49:10)(良:1票) 168.何と穏やかな老夫婦だろう、癒されるな~。熱海で温泉を満喫したけど、夜は賑やかすぎてなかなか眠れない→翌朝、海を眺める二人「帰ろうか」 かわいいとさえ思えてきます。お気に入りはとみさんが孫に語りかける場面。孫の成長を見守りたいけど、虫の知らせがあったのだろうか、その哀愁たるや尋常ではない。「あんたがのう、お医者さんになるころ、お祖母ちゃんおるかのう・・・」 泣けます。この物語に悪役はいない、みんながとてもリアル。杉村春子さんが演じた「しげ」は嫌われる役かもしれないけど、決して悪人ではないし、酔った父親とその友人を布団に寝かせるなど、優しいところもあります。椅子に寝てるんだから放っておく人もいると思いますけどね・・・ 旦那(中村伸郎さん)は二階行き。「子供より孫がかわいい」は定説だけど、それを否定した周吉、とみ二人の会話も面白かった。小津さんは孫どころか結婚もしなかったのでそんな風に思えたのかもしれません。 【リーム555】さん [DVD(邦画)] 8点(2010-09-01 22:00:52)(良:1票) 167.《ネタバレ》 この映画は何回も観てきたけれど、そのたびにボロ泣きなので、今回も泣くかと思いきや、意外に泣かなかった。分析的に観てしまったせいがあるかもしれない。そのせいか、小津監督の映画作りのうまさを改めて感じたし、やはりこの作品が代表作とされるのはその様式美が遺憾なく発揮されているからだろうと思った。同じカットを映しながら、人や物の配置を替えたり、あえて配置しないことで、その違いを際立たせたり、同じ人物を近くから撮ったり、遠くから撮ったりすることでその心象風景を描き出したりと、この映画には彼のテクニックがてんこ盛りに詰め込まれている。 話の構成・展開も見事だ。老夫婦が東京に来てから少しずつ際立つ違和感、彼らの子供たちの生活に投げかける波紋が残酷なほどに丁寧に描かれる。子供たちとて歓迎したくないわけじゃない。ただ忙しいだけなんだ。だが、その「忙しい」という言い訳がどこまで通用するのか?彼らはそれにかまけて逃げているのではないか?小津さんの追及は厳しい。長女しげを演じる杉村春子の演技はあまりにも見事で身につまされるが、僕らの大半は彼女なのだ。悲しいことに。 しかし、彼らは背景に過ぎない。本作の女神は紀子だ。親不孝な僕たちにとっては美しくも怖ろしい。怖ろしいほどイノセントで神々しい彼女が最後に漏らす「私、ずるいんです。」という一言は見るものすべてに止めを刺す。それがずるいのなら、僕らはどれくらいずるいのだろうか。と僕たちは感じざるを得ない。キリストが人間だとしたら、尚更その神性が際立つようなものだ。 今の世界に小津さんがいたら、果たして彼は何を描いただろう。観終わってそんなことが気になった。しかし、ちょっと考えると、彼はまた同じ物語を作ったのではないか?とも思った。それほど時代を超えて(あるいは国を超えて?)普遍的な物語がここにある。 【枕流】さん [DVD(邦画)] 9点(2009-10-25 00:49:56)(良:1票) 166.湯煙たなびく山あいの温泉に浸かり、星空見上げて深呼吸しながら、やっぱオレ日本人に生まれて良かったあ~!ってしみじみと思う瞬間があるけど、僕にとっての小津映画とは正にそれと同じ。もはやとうに失われてしまった純ニッポン人の美点、礼儀作法、奥ゆかしさ、ちょっとした気兼ね気配りみたいなものが、この映画を一本観さえすれば全て入ってますね。自分の好みと、「何度も繰り返しみたくなる」欲求という点では『彼岸花』の方が勝るけれども、映画の完成度という点ではこちらの方に軍配を上げざるを得ません。 【放浪紳士チャーリー】さん [地上波(邦画)] 9点(2007-07-28 11:21:31)(良:1票) 165.尾道から東京までの長い旅路。容赦ない夏の暑さ。息の詰まるような東京の町。着物の重苦しさ。履物の不安定さ。気を使う息子たちの家。これでは気の休まる暇も無い。唯一、親身になってくれる紀子だけが救いである。遠くの親戚より近くの他人と言うが、本作は遠くの親戚より遠くの他人(他人ではないが)といったところか。たしかに世間では相続争いや兄弟喧嘩、果ては更に悲惨なことまで毎日のように起こっている。本作にも「それを思えばまだ幸せだ」というセリフがあるが、そうであったとしても老夫婦には心身ともにつらい旅となった。そういった老夫婦の寂しい話ではあるけれども作品としてはとてもよかった。朴訥としながらも品のある老人を演じた笠智衆を筆頭に美しいとは思わないが気品溢れる原節子の優しい眼差しにも心が洗われた。そして尾道の美しい風景や東京の復興目覚しい街並といった背景も印象的で、穏やかな情感ある音楽も作品の雰囲気に合っていたと思う。傑作であると素直に感じられた。本作が上映された1953年というと「雨月物語」といった後世に名を残す名作が封切られた稀有な年でもあり、更にこの50年代は両監督にとっても日本映画界にとっても黄金時代にあたるのだなと改めて感じた次第です。 【カリプソ】さん [DVD(邦画)] 9点(2007-05-11 23:19:58)(良:1票) 164.アメリカのテレビで日本語放送・英語字幕という特異な環境で鑑賞。原節子の清楚な美しさ、彼女の日本語の美しさに感動しました。遠くの故郷・家族のことを思い出し、自然と目頭が熱くなりました。年をとってから見て良かったです。ありがとう。 【ジャッカルの目】さん [地上波(字幕)] 10点(2006-12-29 00:41:42)(良:1票) 163.おそらく同じことをさんざんいわれてきたであろうし、とてもありふれた感想になるのだろうけれど、やはりこの映画には、日本人の美点が濃縮されているように思う。 【チビすけ】さん [DVD(邦画)] 9点(2006-08-29 20:17:47)(良:1票) 162.《ネタバレ》 「晩春」、「麦秋」に続く小津安二郎監督と原節子の紀子三部作の最後の作品。尾道から子供たちに会うために東京に出てきた両親と子供たちのすれ違いが描かれた映画だが、ここに現代でも通じる普遍性を感じることができるし、やはりこの普遍性こそが本作を不朽の名作たらしめるゆえんではないかと思う。実際に今見ても現実味を感じられるし、真に迫るものがあり、なにか身につまされるものもあった。子供たちの両親への対応がとても冷たいのだが、それは彼らには彼らの生活があるからであってたとえ親子であってももう別の人生を生きているということがリアルに伝わってくる。だから終盤の京子(香川京子)と紀子(原節子)の会話の部分も、兄姉を非難する京子を諭す紀子の言葉にすごく納得できる。(この部分、初めて見た時は京子のほうに共感してたと思ったんだけど、見方が変わったみたいだ。)周吉(笠智衆)が再会した友人(東野英治郎)と酒を飲みながら交わす会話も二人のさびしさをよく表していて印象的だったし、とみ(東山千栄子)が紀子の部屋へ泊るシーンのやりとりもすごく良い。笠智衆はもちろんだが、このとみを演じる東山千栄子がなんといっても素晴らしかった。この老夫婦が「それでもやっぱり、孫より子供のほうがかわいい。」と話し合うシーンは親のわが子への愛情が永遠であるということをあらためて感じることができ、素直に感動してしまった。(今、これを言えるような親が少ない気がする。)でも、当の子供たちは自分たちの人生を生きるのに精いっぱいで両親にかまっていられないという現実の悲しさ・・・、そういうものが見事に描かれていて、見終わった後には「家族」や「親子」というものについていろいろ考えさせられた。二十歳くらいの頃に初めて見た時は正直、そこまでの良さは分からなかったのだが、久しぶりに見て世界的な名作と言われる理由も分かるし、そしてもちろん、小津監督の最大の代表作、間違いなく日本映画の美しい名作の一本であると確信することができたし、再見して本当に良かった。何度でも繰り返し見たくなる映画というのはあるが、この「東京物語」は自分が年を経るごとに繰り返し見たくなるような映画だと思う。もう10点以外ありえない。(2020年1月6日更新) 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 10点(2005-04-12 21:09:24)(良:1票) 161.《ネタバレ》 この作品について語ろうとすればとてもこのスペースでは足りないし、そもそも多くの方が語ってらっしゃるので今更付け加える事はあまりないのだけれど・・・。一つ思ったのは、普通映画の中の「死」って極端に軽く扱われるか、でなければ大仰(ドラマチック)に扱われるのが殆どだと思うんですよ。でもこの作品ではそのどちらでもなくて、「死」は淡々と近づき、淡々と迎えられ、淡々と過ぎていく・・・その描かれ方にむしろ特異な印象を覚えました。妻を亡くした後の笠智衆の佇まいと言葉が、淡々としているからこそ重く感じられます。ひょっとして僕がそう感じたのは、中学の時に母を亡くした時の自分の父の表情と重なったからかもしれませんが。 【ぐるぐる】さん 9点(2005-03-04 20:22:54)(良:1票)
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