みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
23.《ネタバレ》 ちょつと長すぎる。2時間程度に収められる内容。 日本人が見ても言葉でしか広島、長崎が出てこないので 日本公開がなぜ遅れたのか疑問である。 世界的に見たら、原爆はこういう見方なんだろうなと思う。 そしてアメリカと日本は映画を見ても 国力が違い過ぎる。 日本を戦争に導いたのも、もっと早く終戦を迎えさせるように持っていけなかったのも 日本人だから考えさせられる。 とにかくストーリーがごちゃごちゃし過ぎ。 これがアカデミー賞か?てな作品です。 同じ原爆を扱ってもゴジラ-1.0の方が断然面白かった。 【SHOGO】さん [インターネット(吹替)] 5点(2024-12-18 19:37:30) 22.《ネタバレ》 理論屋が政治に巻き込まれ、その政治の結果に、罪悪感をおぼえるという、 まぁそういう話なのだが、これが日本の原爆になると、ちょっといろんな 感情が湧きおこる映画になってた。 前半、物理屋としての蘊蓄も交え、理論屋の生活を描き、 中盤、原爆担当として、その製造成功と、戦争に使われるという展開。 後半、自分のやってしまったことに罪悪感を感じ、人の子として、悩み苦しむオッペンハイマー。 そこに、政治思想の問題、腐れ縁の政治家が絡んできたりする。 素直に思ったのは、戦争で使おうと思った政治家が、原爆の威力を示す実験の場にいないで、 戦争に使おうと思うのは、いかがなものか? オッペンハイマーは、あの爆弾の威力を目の当たりにし、 あの爆発の下に数十万もの人間がいることをリアルに想像できたのだから、罪悪感も生じたのでは? 政治家は、現場で五感を使って判断し、行動に移してほしいなどと、ピントのずれたコメント、相済みません・・ (ゲイリーオールドマンが、トルーマン大統領演じているとこが、適役でした) まぁでも本作の目玉は、21世紀史上、最強の「天才集団」を描いたことでしょうね。 【トント】さん [DVD(字幕)] 7点(2024-11-30 18:02:39) 21.《ネタバレ》 視聴開始30分後には、これはたまらんと「ネタバレなしの解説サイト」を勉強してから(本当にそうしてよかった)、視聴の継続におよんだモノです。さらに、終幕後には再度、「ネタバレありのサイト」を閲覧し、復習し直しておおよそわかったような気になっているモノでもあります。■常人には理解し難い物理法則が世界にはあることを認識した上で生きる天才たちのありようというか、なんかこう、アカデミックな感じのするところとか好きでしたし、「アマデウス」みたいでもあったよねなんて、今は思っています。■いつか、もう一度見直してみると、いろんなことに気づきそうとも思いますが、一体どんな機会に本作を見直すのだろうと思うと、途方に暮れてしまいます。■ちょっと疲れたなあ。 【なたね】さん [DVD(字幕)] 6点(2024-10-08 17:13:47) 20.はたして原爆は世界に平和をもたらしたのか。 【TERU】さん [映画館(字幕)] 8点(2024-06-26 21:52:39) 19.当時は,敵国だったのでしょうがないとは思いますが,日本人としては非常に微妙な感じでした. オッペンハイマーは,プロジェクトリーダーとしては非常に優秀だっただろうね. 意外だったのは,悪魔の頭脳と言われたフォン・ノイマンが全く出てこなかったことです. 【あきぴー@武蔵国】さん [映画館(字幕)] 6点(2024-05-26 20:33:41) 18.《ネタバレ》 長いうえに演技や描写よりセリフでの説明が多い、ずっと弦楽器のような音楽が鳴っている、編集も細切れ過ぎてリズムが悪い等観ていて草臥れた。 ストーリー的には時系列的に行ったり来たりするし、第二次大戦から冷戦、赤狩りというアメリカの歴史がベースにないとわかりにくい部分はあるだろうが、コロナでも如実に示された科学者と政治の関係などはうまく表現されていたと思う。 広島長崎の描写について大きく扱わないのは所詮勝者側の映画なので当たり前、アメリカは日本の一般市民の生命より自国軍将兵の無事を優先しながら勝利するために原爆を使用しただけの事。自分は日本人なので主人公が良心の呵責に責められたとか、後に水爆開発に反対したからといって、原爆の開発・投下を許す気持ちになどならない。 ユダヤ資本の強いアカデミー賞7冠受賞はさもありなんだが、同じ時に日本作品がいくつか受賞したのは配慮したのかな。 【クリプトポネ】さん [映画館(字幕)] 3点(2024-05-04 19:41:45) 17.この映画は面白い。前半はものすごい勢いで話が展開していきます。BGMをうまく使って、リズム感を作り出しているかのようでした。登場人物の人となりもこの時点でほぼ理解できます。後半は重厚さに重きを置いた展開でした。これだけ重苦しくなりそうなテーマなのに、とても受け入れやすい作りになっています。さすがの出来と言っていいんではないでしょうか。 【shoukan】さん [映画館(字幕)] 9点(2024-04-29 22:36:41) 16.《ネタバレ》 『オッペンハイマー』は知性についての物語でもある。 オッペンハイマーは高い学識を持った科学者である。量子力学を学び、早くからブラックホールの存在を思考し、その生成条件を理論化、中性子星の質量限界についての計算式を発見する。その功績から、マンハッタン計画の責任者に抜擢され、グループを率いて原子爆弾の製作を実現する。計画の中で多くの人々と社会的関係を築き、複数の女性を愛し、家族を得る。ユダヤ人として、科学者として、彼は彼の正義に基づきロス・アラモスに帝国を築く。しかし、彼は優しく、弱い人間でもあった。詩人にして、文学的、芸術的思考の持ち主でもあった。そういう視線で捉えれば、帝国の内実も見えてくる。戦後、原子爆弾が広島、長崎に投下されたことについて、彼は何を見ていたか、さらに赤狩りの嵐にどう立ち向かったか? オッペンハイマーの視点、そしてサリエリ(『アマデウス』)的なスクローズの視点。科学者(知性)と元靴売りの政治家(反知性)の対比。知性は「物自体」を正しく把握し、大衆を正しい道に導く。それが西洋的な形而上学の考え方。オッペンハイマー、アインシュタインもスピノザ的な神の信奉者であり、科学こそが知性であり、その手段であると信じていた。彼らにとっての知性こそ、社会性の基盤であった。 しかし、現代は、知性受難の時代。西洋的な形而上学は、相対主義の中でその価値と歴史を見失う。ゲーデルの不完全性定理は数学の、ハイゼンベルクの不確定性原理は科学のインテグリティを根本のところで否定する。現代において、科学は純粋に科学として取り扱われず、反知性、政治家や大衆は、科学者を奈落へと突き落とす。知性は彼を救わない。 私は、映画を観ている間、オッペンハイマーと共に、その時制の揺れと共に、ずっと揺れ、揺さぶられた。映画とは、新たな視点による歴史の追体験でもある。知性を揺さぶる文学的視線である。それにより、私自身を直視させられ、そして私は揺れるのである。社会は揺れるのである。 『オッペンハイマー』は素晴らしい文芸映画である。それは「私」に落下するが故に、私的な解釈を許す。そう、文芸作品とはそういう視線のものであると私は思っています。 【onomichi】さん [映画館(字幕)] 9点(2024-04-29 11:44:57) 15.《ネタバレ》 ついに来たオッペンハイマー。日本でのIMAX上映はキツいかと思われていた分なんとか上映されてよかったです。 個人的な話ですが初めて観る映画に行く前はいつも気分がダルくなってしまうのですが(観終わったら満足してる)、 本作でのそのダルさはもう憂鬱に変わって見る前のテンションとしては最悪でした。貴重な休日を削って3時間も原爆作った男の映画を観るのかと。しかしノーランの映画はIMAXで観なきゃいけないという強迫観念、そしてノーランの映画は見逃してはならぬという強迫観念のもと映画館に出向いたわけですが、結果として非常に良い体験でした。 ノーランの時間差攻撃も予習もあって比較的わかりやすく、絵的にも挟まる原子(?)のイメージなどで飽きがこないカッコ良い構成、そして映画館を覆い尽くす音の力でグイグイと話に引っ張られましたし、オッピー氏のなんだかんだクズなところと、危険なくらい無邪気なところ、そして天才なところの差が激しく観ていて楽しかったですね。原爆投下の直接的表現はありませんが、あのどんちゃん騒ぎが狂気的になっていくシーンはまさに地獄のようでしたし(劇場の音響だとめちゃくちゃ怖かった)、映写室での奴の顔を見ればどれだけ最悪で罪深い行為をしたか嫌でもわかります。 そして役者の面々も良い、キリアン・マーフィーも良かったですが、それよりも奥さん役のエミリー・ブラントのブチギレっぷりが最高でしたし、ロバート・ダウニーJrの温厚で無害そうなストローズおじちゃんがどんどん復讐の修羅に豹変していく具合も凄まじくて最高でした。あとマット・デイモンもパンフレットを見てようやく気づくくらいの誰やねん感で素晴らしかったです。他の登場人物も多いながらも皆個性的で見分けがつくのもよかったですね。個人的にはオッピーの友人で計画に参加しなかったラビが好きです。 そんなわけで3時間オッピーの「いや、お前さ」と言いたくなる、正直救いようのない話は飽きずに観ることができました。 話としては地味ですし、後味は正直良くないですし、日本人的にもアレな話なのですが、ノーラン映画の中では個人的には結構好きな方でしたね。 【えすえふ】さん [映画館(字幕)] 7点(2024-04-27 10:30:38) 14.私はマンハッタン計画についてはキュメンタリーやいくつかの本も読んで少し詳しかったので見に行きました。ところが、この映画はぐちゃぐちゃ会議だの審議会だのシーンが続いて心底退屈しました。天才科学者の栄光と苦悩といった映画なら、普通は前半を栄光、後半を苦悩の校正にするところを、監督はそんな平凡なことはしないぞいいたいのでしょう。ぐちゃぐちゃしたシーンにさらに性的シーンまで入れてげんなりです。 【mtx】さん [映画館(字幕)] 3点(2024-04-21 20:33:56) 13.《ネタバレ》 あえて事前情報を入れず、史実を学習せず鑑賞。 常識として日本に原爆が落とされたこと、オッペンハイマーという人は原爆を開発した科学者であったことぐらいは既知。 結果、正直長すぎてつまらなかった。 この映画は、ある程度勉強してから鑑賞することをおすすめしたい。 日本に原爆が落とされる前にアメリカ本土で実験が行われていたわけだから、初の原爆被害者はアメリカということ。意外と知られていないのではないか。(ビキニ諸島の実験のほうが有名)途中の科学者の嘔吐シーンもあったが、おそらく実験者も相当被爆していたのではないだろうか。 核融合、核分裂という、原子自体の構造にメスを入れ、結果として物質そのものの膨大なエネルギーを取り出し兵器に使う、というのは確かに神、あるいは悪魔の領域であろう。その意味でもE=MC2乗のアインシュタインがまあまあなキーパーソンであるのは象徴的。 そして空気中の原子含め連鎖反応が止まらずにこの世がなくなるかも、という懸念は、バック・トゥ・ザ・フューチャーで「過去の自分と会うパラドックスによって、宇宙が崩壊するか、単に失神するか」に受け継がれていく・・・ 【チェブ大王】さん [映画館(字幕)] 3点(2024-04-21 01:22:07) 12.《ネタバレ》 まず物理的な問題として映画館の椅子に 3時間座り続けるのはきつかった。最後の一時間は尻が 痛くて痛くて・・・やっぱり劇場公開するなら2時間以内 で頼みますよ。 そして内容ですけど、プロジェクトXのような原爆開発の 技術的、物理的な困難をいかに乗り越えたか的なお話かと 思っていたら、全く違いました。 核開発への後悔や批判よりも、オッピーとストローズの 私的な遺恨を巡る泥仕合がドキュメンタリー風に延々と 描かれていて、公聴会での長々としたやり取りも赤狩り も米国の国内問題であって日本人にとっては正直どうで も良かったような(そもそもあそこにいたおっさん達って誰?) 日本国内では広島、長崎の惨状がほとんど描かれていな いという批判があるけれど、そもそも当時も現在に至って も米国人の日本に対する認識はこの程度のものだという ことでしょう(Nagasakiを言い辛そうに発音していた) とにかく登場人物が多くて誰が誰だか良く分からず テレビドラマのように、字幕に名前と役職を表示して ほしかった。 ジーンのおっぱい丸出しのシーンが何度もあったけどあれ は必要だったのだろうか 公聴会でいきなり二人のセックスシーンが始まったりし たのは意図不明であれでR15指定になってしまったのだろう 【キムリン】さん [映画館(字幕)] 6点(2024-04-09 16:22:41) 11.《ネタバレ》 ※すみません、以下長文です※ 3時間の超大作、とても観応えあり。 でも私は及第点(5点)を付ける。 その理由は以下。 3つの時系列を巧みに操る緻密な構成は流石ノーラン、この構成で3時間突っ走るのは並大抵の技量の監督さんでは無理だと思う。 時折織り込まれるオッペンハイマーが夢想?妄想?する量子力学を視覚化したかの様なイメージシーンがとても魅力的。 天才が普段感じている感覚とはこういうものなのか?と疑似体験させてくれている様で映像の力を感じる。 鑑賞し終えてアカデミー助演女優賞はエミリー・ブラントが受賞するべきだったと痛感する。 それ位力の入った素晴らしい演技をしている。 彼女の喜怒哀楽を情感込めて演じている様を観るだけでも入場料の価値は有る。 翻って、本作のテーマでもある原爆に付いては、私が被爆国である日本(今や「唯一の」とは言えなくなったが)国民で有る事を差し引いても、正直なところ途中から怒りを感じる位に極度な生温さを感じた。 オッペンハイマーは決して功名心から原爆製造を指揮したのでは無く、戦争に突入していた時代背景(戦争の為ならばいわば無尽蔵に金が使える。実際に町を作ってしまった程)や、当時はまだ机上の空論と位置付けられていたらしい量子力学を自分の目で具体的に見る事が出来る「原爆」と言う手っ取り早い方法に対し、科学者故の好奇心・探求心から抗い難い魅力を感じてしまったのかと思える。 だが、それ以降の広島と長崎への実際の原爆投下を経て彼がその「効果」を目の当たりにし、以降の水爆製造への反対運動やそれが転じて赤狩りの対象となり、いわば転落の人生を迎える事になる程に彼が反対と思うに至った「効果」の描写が、本作では極めて抽象的に描かれ過ぎていて、教育の一環として広島・長崎の惨状を知っている日本人ならともかく、『第二次大戦を早期終了させた(←この言葉には反吐が出る!)』と教えられている彼の国を筆頭に他の国々の人達にはどうにも説得力に欠けているのではと思わざるを得ない。 何も私はノーラン監督に広島と長崎の惨状を写実的に・リアリスティックに描いてほしかったとは思っていない。 過去の監督作で彼の映像作家としての力量にひれ伏した身としては、ノーラン監督なりのもっと観る側の感情を揺さぶる、 一度見たら決して忘れる事が出来ない程の映像の力で広島と長崎の惨状を表現できた筈だと思ってしまうのだ。 もう一線踏み込んでいれば、反戦・反核映画として映画史上に残る稀代の名作に成り得たのにと思うと残念で仕方がない。 最後に、本作鑑賞の前に以下を一読・一見しておく事を強くお勧めします。 ・オッペンハイマーのWikipedia。これを読んでも本作の場合はネタバレにはならないと私は思います。 ・BS朝日で2024/3/16に放送された「町山智弘のアメリカの今を知るTV」...ロス・アラモスのDownwindersと呼ばれる人達=いわば世界最初の原爆による被爆者達の事を私は知りませんでした。 この事実を知り、本作の作成の裏で何が有ったのかと勘ぐってしまった程です。 世界各国の老若男女が観て議論するべき作品で有る事は間違いないのですが、上記諸々含め私の採点は5点です。 【たくわん】さん [映画館(字幕)] 5点(2024-04-08 09:34:03) 10.《ネタバレ》 約7か月ぶり2度目観賞。原爆を製造した男の生涯を、3時間かけて綴る伝記ドラマ大作。米アカデミー最優秀作品賞受賞作。世界を破滅させるブツを造っちまったオイラ。賞賛と自責の念の間で葛藤。キリアン・マーフィー、鬼気迫る名演で米アカデミー主演男優賞受賞。クリストファー・ノーラン監督、独特の世界観を表現して悲願の米アカデミー監督賞受賞。2024年を代表する作品。序盤に、愛人とのとっても濃厚なアリガタシーン振る舞い。 【獅子-平常心】さん [映画館(字幕)] 6点(2024-04-07 05:27:40) 9.《ネタバレ》 いやー相変わらずのノーラン節で、情報量が半端なく時間軸も3つあるので最初は???で集中力が必要(毎回そうだが)。 あえて事前の知識等も身に着けていない状態で鑑賞したので頭がパンッパンですよ。でも終盤で全てがつながり理解できるのはさすがノーランの手腕だなと。映画の始まりにプロメテウスを持ってきて、序盤の象徴的なリンゴ、オッペンハイマーの観念的幻想などの演出も上手い。緊張感のある音楽を使い3時間ダレずに観れるのもすごい。 情報量半端ないのに主人公オッペンハイマーの心中がはっきりと明示されず、複雑な人間性を表現できている点は素晴らしいと思った。 一方で日本人としてはやはり原爆に対して思うところがあり、総じてエンタメな作りになっている点やマンハッタン計画のシーン、原爆投下後の展開というのはなかなか複雑な心境。皮膚がめくれる、炭化した人間など原爆の幻想を見て思い悩み苦しむ姿は描かれるが、ちょっとその描写が甘いんじゃないかと思ってしまう。 でも原爆の映画じゃなくてオッペンハイマーの映画として見るならそれも仕方ないか…いやしかし…。 周辺情報を収集して再鑑賞しようと思います。 本国では年齢制限つきで3時間の大作としては異例の大ヒット、アカデミー賞では総なめといった大成功をおさめた作品となったが、どういう風にこの作品を観てどう感じたのか、何が観客にウケたのかというのが気になる。 フローレンス・ピューがあっけらかんと脱いでいたのはびっくりした。正直そういうタイプの俳優だとは思ってなかったので。 エミリー・ブラントは助演女優賞獲ってもよかったのでは?と思うほどの熱演でした。あの怒りで顔真っ赤にしてるのが忘れられない。 【eureka】さん [映画館(字幕)] 8点(2024-04-03 11:39:49) 8.《ネタバレ》 原爆の父オッペンハイマー博士の半生を描いた伝記映画。ユダヤ人である氏は絶対にナチスに先を越されるわけにはいかなかった。恐怖を抱えながら研究・開発に邁進するが、やがてヒトラーが自殺、そしてドイツは降伏した。先を越されるという懸念した事態は避けられたのに、彼は日本に対して核を使用するよう進言する。制空権を奪われ、連日の空襲で焼け野原と化し、もはや瀕死と呼んでいい国に対してだ。その後の世界において主導権を握りたかったアメリカの思惑によるものとされるが、政治家ではないオッペンハイマーがこの主張をしたのは自身の功績を国内外に示したかったからとしか思えない。科学者の性と言うべきか。それでいて、8月6日以降は急に罪悪感に苛まれ、より強力な水素爆弾の開発で競い始めた米ソに対しても、どうにか歯止めをかけられないものかと苦心する。矛盾するようで矛盾しない、実に人間らしい主人公をキリアン・マーフィーが好演。映画的にはだいたいこの辺りがピークかなと思うが、その後の赤狩りを背景とした戦いもアカデミー助演男優賞に輝いたロバート・ダウニー・Jr.の存在感もあり、なかなか見応えがあった。3時間だれることのない優れた出来。アカデミー作品賞も納得の一本だ。 【リーム555】さん [映画館(字幕)] 8点(2024-04-01 20:46:56) 7.《ネタバレ》 歯車は回りだしたら止まらない。科学も政治も人類破滅の日も。今もその日に向けて着々と回っている。 長尺だがあまり飽きさせないとは思う。全体的にわかりにくい。まず公聴会のくだりがわかりにくい。登場人物が多めで見分けがつかないというか聞き訳がつかない。セリフだけで誰それがと言われても欧米の人名と実際の顔は対応が付かないよ。またカラーのシーンとモノラルのシーンの使い分けがわからない。誰かの解説に頼ればわかるようになるのだろうが、そうまでしたいとは思わないし、そうしないとわからないのであれば作り方の失敗と言える。ああいう愛人なら私も欲しい。 【ほとはら】さん [映画館(字幕)] 7点(2024-04-01 19:29:36) 6.並行世界のように異なる時間軸が入り混じって描き出されるストーリーは、「事実」のあり様を敢えて意図的に混濁させ、多角的な“視点”と“認識”を創出している。 「原爆の父」として、特に我が日本にとっては、切っても切り離せない人物として存在するJ・ロバート・オッペンハイマーの目線と人生観を、一つの視点として描き出した本作は、紛れもない傑作である。そして、やはり日本人こそが、腰を据えて観て、様々な感情を生むべき作品だろうと思った。 瀬戸内エリアで生まれ育ったこともあり、広島の平和記念資料館や原爆ドームへは、何度も行ったことがある。訪れるたびに、人類が生み出した「業火」の残酷さに愕然とし、胸が掻きむしられるようだった。 そこに展示されているおびただしい数の残骸と残穢、その一つ一つに残る悲痛な記憶に、涙が止まらなかった。 そして、あの「爆弾」を生み出した人物の所業を呪わずにはいられなかった。 ただ、その当人のことを決して積極的に知ろうとしてこなかったことも、また事実だった。それは多くの日本人にとって共通する事実ではないだろうか。 この国で、戦後の現代社会に生まれ成長してきた者として、必然的に原爆投下の事実と、それがもたらした文字通りの“地獄絵図”は、子供の頃から学校の授業で、漫画で、映画で、写真で、そして被爆者の経験談で、繰り返し見聞きしてきた。 しかし、それをもたらした一人の科学者の人生模様と、彼が生きた社会及び世界の実態に対する認識はほとんど皆無だったと言っていい。 本作を観終えたあと、NHK「映像の世紀 バタフライエフェクト」のオッペンハイマー回を観て、彼が天才科学者として辿った人生の、その一端を垣間見た。 “一端”ではあるけれど、その人生を知って思ったことは、彼が本当に得たもの、最終的に心を埋め尽くしたものは、栄光でも苦悩でも無かったのではないかということ。 そんな都合の良い“言葉”では、彼が“生み出してしまったもの”に対する功罪は推し量れないと思えた。 ブラックホールの研究に傾倒し、時代の流れのままに原爆開発の中心に突き進み、文字通り世界の在り方そのものを変えてしまった男がたどり着いた境地は、あらゆる感情を呑み込まざるを得ない「虚無」そのものだったのではないか。 キリアン・マーフィーが演じたオッペンハイマーの瞳には、野心や後悔すらも呑み込む深い漆黒が広がっていた。それは奇しくもすべてを呑み込むブラックホールを彷彿とさせた。 実は鑑賞から一ヶ月近く経っても、なかなかこの映画に対する感想がまとめきれなかった。いろいろな感情が渦巻いて整理しきれなかったからだ。 題材故に、日本公開が随分と先延ばしになった経緯があるが、もし本作が日本公開に至らなかったならば、それこそあまりにも愚かなことだったろう。 繰り返しになるが、この映画は、世界で唯一の被爆国であり、原子爆弾による死屍累々の上に生きる日本人だからこそ、しっかりと鑑賞して、様々な感情を巡らせるべき作品だと思う。 劇中、ヒロシマ、ナガサキの惨状そのものを映し出さなかったことに対する是非が問われていたようだけれど、それを描き出さなかったことが、必ずしも本作の主題において無責任なことだとは思わなかった。 むしろ直接的な地獄絵図の描写がないからこそ、オッペンハイマーをはじめとする当時の全世界の科学者たちの宿命と、彼らを含む社会のエゴイズムと狂気の様が際立っていた。 そしてその全世界的に渦巻いたエゴと狂気こそが、彼らを踏みとどまる余地すらない無間地獄へと誘い、その地獄は今なお続いているとういことを、この意欲的な映画は雄弁に語り尽くしていたと思う。 原爆開発に限らず、歴史や人間の功績は、常に闇と光を併せ持つ。様々な“視点”によって、断罪と称賛はとめどなく入れ替わり続ける。 “毒林檎”をすんでのところでゴミ箱を捨てた男も、世界を滅ぼす力を持つ爆弾を生み出した男も、ただひたすらに科学に邁進した一人の人間なのだ。 そして人類は、今なお世界の終焉そのものを天秤にかけて、あまりにも危うい葛藤を続けている。 “毒林檎”は、今この瞬間も、アンバランスな天秤の片側でその重みを増し続けている。 果たして、人類は自ら生み出してしまったその禁断の果実を、ゴミ箱に捨て去ることができるのだろうか。 【鉄腕麗人】さん [映画館(字幕)] 9点(2024-03-31 22:17:15) 5.《ネタバレ》 長い、とにかく長い・・会話も長いが、見せ場もてんこ盛りで長い。 オッペンハイマーの人物像と太平洋戦争の時代のアメリカを丁寧に描いているが ここまでの物量が必要だったのだろうか・・? 女好きの下半身事情とか 原爆の開発研究課程の人間関係に、最初の核爆発実験シーンも 水爆を否定し共産主義を疑われて窮地に陥る後半の顛末も、もっと編集して 短くする事が出来た筈だし、普通の監督なら、制作スポンサーサイドから要求された筈。 今回は、大御所になってしまったノーラン監督のわがままを通してもらったのだろう。 しかし、長すぎて飽きてしまったのは事実だ。 どう考えても2時間以内の映画にできた筈。 だって大した中身が無いんだから・・ 核爆発による大量破壊兵器の問題は、被害が広範囲過ぎて、軍隊だけでなくその何倍もの 民間人が巻き添えになる皆殺し兵器だという点。 そして放射能による長く続く悪影響。 その現実を理解していながら、敵国に遅れる訳に行かず研究を急ぐ科学者チームのリーダーが その成功により、戦争終結し英雄扱いされる中で、急に冷めていき、更に強力な水爆の開発の 依頼が来たのを拒否。そして原爆開発チームの一部にソ連のスパイが見つかり、栄光の座から 容疑者へ転落し、女癖の悪さをも暴露され女房との仲も最悪になる終盤。 この物語を映画にするのに、あれ程の細かいエピソードを肉付けする必要があったのだろうか。 映画館を見渡すと、高齢者が多くて笑ってしまったのだが、かく言う自分も引退世代、 トイレが持つかどうか不安である。 実際隣の同世代の客は核爆発実験の後でトイレへ行き 戻ってきたが、ラスト30~40分を見ずに出て行ってしまった。 見るからに足腰の不自由な80代のお婆ちゃん、良くぞ耐えたものだ。(他意は無しです) 暖房効きすぎで暑過ぎる館内環境は、発汗でトイレ問題解決の為なのかと思ってしまった。 と言うわけで・・映画は長すぎてはイケないというのが、自分の判断基準の一つである。 それから気になったのは、ただのドラマシーンに大音響重低音の効果音はやり過ぎだ。 先日見た砂の惑星レベルの地響きと振動が、ドラマの中に何度も使われていて煩い。 1度ならまだしも、10回も20回も繰り返す演出は、インパクトを超えて嫌味になってる。 そしてエンディングがまたイマイチ。科学者の名前を付けた映画なのに、どんな人生を 終えたのかは描かれない。 名声を失った後に、核戦争の未来を想像するシーンで 終わりって・・ 中途半端感が大きい。 てな事で、この映画に高得点を付ける気にはなれなかった。アカデミー賞で話題だけど そこまで優れた作品かと疑問が残る。 この長さの映画なので、セルかレンタルで自宅鑑賞を強く推奨します。 で気が付いたら、自分の投稿も長過ぎでビックリ。 追伸・・日本語字幕の文字が、かつてない大きな文字でした。それだけ会話の中身が 重要な社会派ドラマ映画なのでしょう。 その新しい試みは賛同しておきます。 【グルコサミンS】さん [映画館(字幕)] 6点(2024-03-31 20:16:04) 4.《ネタバレ》 専門用語が次々に現れ、時系列を交錯させ、培ってきた技法を総動員させたクリストファー・ノーランの力作だが彼のベストではない。 恐らく半分以上は話を理解できなかっただろうし、あれほどの会話劇で本国アメリカで記録的な大ヒットしたことは、ノーランのブランドがなせる業なのか、核兵器を巡る世界情勢の重大な危機に関心が大きいのか、その両方だろう。 唯一の被爆国である日本にとって胸糞悪いのは事実で、戦争という熱狂によって人道・倫理観のブレーキが壊れ、戦場が兵器の実験場に変わり、新たな秩序と発明が生み出されていく。 戦場とは遠い世界でチェスの駒を操れそうな位置にあり、やがて自分自身も利用されて棄てられていく様が同じ天才学者を描いた『イミテーション・ゲーム』に通じるものがある。 国のエゴと利害の一致によって身動きできなくなっていく理不尽と葛藤と矛盾がオッペンハイマーに強烈なストレスとして画面に発露される。 広島と長崎の投下シーンが一切ないのは予め知っていた。 これは日本への配慮とも言えるし、挿入したとしても"オッペンハイマーとは何か"をぼかしてしまうので妥当とも言える。 英雄でもなく、悲劇の人物でもなく、功績と名誉を回復しても、これらは彼以外の大多数の所有物でしかなく、本人がどう思っているのかは知る由もない。 彼がいなくても、誰かが原爆を作り、どこかで投下されていただろう。 全人類を破滅させることができる発明が世に出てしまった以上、もう止めることはできない。 昨今に論議を巻き起こしているAIが世に出てしまったように。 現実、国の最高権力者という名の狂人が核兵器というキャスティングボードを握っている。 話し合いで解決できない相手に我々だったらどう向き合うか? もはや「核兵器について議論しない」という日和見な選択肢は残されていない。 【Cinecdocke】さん [映画館(字幕)] 6点(2024-03-30 22:40:46)
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