みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
14.《ネタバレ》 最近読んだ小説に、「恋をする女性は現実の男を見つめているとは限らなくて、もっと遠くにあるよくわからないもの、途方もなく美しい極みたいなものに焦がれていることがある」という意味の一節があった。たぶんこの映画のゆき子がそうだったんじゃないかと思う。 敗戦後の何もかもが色を失った苦しい時代に、南国で過ごしたひたすらに幸福な時の記憶を抱きしめて生きる。親類に性的な虐待を受けていたゆき子のなかでは、暗い思い出のある日本を遠く離れて過ごした日々が、本当に美しく輝いていたのだろう。しかしゆき子を待っていたのは、日本の敗戦と貧困、愛した男のみすぼらしい本性。 本当はここで足を踏ん張って、前に進む道を選ばなければいけなかった。甘い時代の残像を追いかけて生きるべきじゃなかったのだ。しかし未来を見なかったがために、ゆき子は地に足の着かないまま、ふわふわと漂流するような人生を送ることになってしまう。 娼婦のまねごとをして、インチキ宗教家の親類に生活を頼ったかと思うと、大金を盗んで逃げる。堅実な職業に就いたり家庭を作って定住したりはしない。だけど人間は本来、安住の地を求める生き物だ。どこか特定の場所にしっかり根を張って、しっかりした人間関係を築くことで、自分が帰ってくる居場所を作りたがる生き物だと思う。放浪生活を送る人間ほど、繋がることへの渇望を抱いている。ゆき子のそれはあまりにも強く、それゆえに却って現実を見失ってしまう。 劇中では殺人事件なども起きており、後になって考えるとかなり劇的な物語なのだが、観賞中はそれほど違和感を覚えないで普通に流していた。それほど自然で説得力のある演出だったのだ。しかもとにかく観る者を引き込むのが上手い! 暗い内容にもかかわらず、前のめりで鑑賞してしまった。これほど強烈かつリアルな人間ドラマはなかなかない。成瀬巳喜男の比類ない才能を思い知った。 【no one】さん [DVD(字幕)] 8点(2006-02-09 03:46:59) 13.《ネタバレ》 ファーストシーンは、船から降りてきた大勢の群集の中から主人公ゆき子が姿を 現す所から始まる。そして、ゆき子は富岡の家をたずねるが、老齢の女性、中年 の女性と出てくるがなかなか富岡は出てこない。ゆき子が農林省の使いだと言う とやっと富岡が出てくる。 いったいどういうことなんだ?訳がわからんと思っ ていると、灼熱のインドシナでの二人の出会いのシーンが回想され、ファー ストキスの場面まで行くと、重なるように現在の日本でのキスシーンに戻ってい く。こうして、二人の関係の謎が明かされる。この後も、最後まで意味深で緊張 感に満ちたシーンが続くので、重苦しく暗いドラマにもかかわらず不思議と飽き させない。説明的なシーンが少なく、そのときの状況や男女関係の心理模様をゆ き子(高峰秀子)の顔の表情や目の動きが巧みに表している。音楽も、意味深で 印象深い効果を発揮している。サイコメロドラマ、あるいはサイコラブストーリー と言えるような映画だった。 【サラウンダー】さん [DVD(字幕)] 8点(2006-01-05 01:35:31) 12.普通これだけ暗い気分にさせられる映画は先のことなど見たくもないのだけど、この作品は違った。いかにも昔の日本人を描いた名作で、もはやこんな暗くて不幸な日本人は少数派に近いのではないか。今の10代を中心とした若い人がみたら、どんな気持ちになるのだろう。そんなことが気になった。成瀬監督の作品は初めて見たが、女の嫉妬、涙、懇願、怨みが上手く描かれていると思った。 【mhiro】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2005-11-04 20:20:03) 11.世界的に評価されるのも納得。 【リーム555】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-09-21 12:51:58) 10.あの戦争の敗戦によって、ほとんどの日本人が人生をリセットされたんでしょうね。上手く切り替えた人や逆に水を得た魚になった人だけじゃなかったのもわかります。ただ、それは一つのきっかけであって、原因とは言えないんだろうな。どんな時代にも自分の明日を描けない人はいますからね。とは言え、時代背景としては戦後の混乱期は設定にはぴったりですね。登場人物たちの表情が皆暗く、敗戦の負の部分を象徴するような映像が続くのが辛いですね。お互いを必要としているのに、一緒にいても満たされない辛さが伝わってくるなあ。その後、彼はどうしたんだろう。 【パセリセージ】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-09-20 12:58:27) 9.最初二十歳前後に観たときには、暗いばかりで、なんとも思えなかった。ところが、三十越えてふたたび観たときには、うちのめされるように感動して、どうしようもなかった。うちのめされるという言葉が、まさにふさわしかった。みなさんも三十、四十越えてから、もう一度観てみてください。 【goro】さん [映画館(字幕)] 10点(2005-09-19 03:28:44) 8.名作と言われるのはわかるけど・・・自分はあんまり好きじゃないです。これ見せてオレにどうしろというんじゃ!(^^; 【ゆうろう】さん [映画館(字幕)] 6点(2005-08-22 08:58:23) 7.暗い、暗すぎる…。高峰秀子と森雅之、この二人が一緒にいるだけでどんな部屋でも陰湿なムードになってしまう。こんな映画が人気だったなんて当時の日本はよっぽど落ち込んでいたのでしょうかね。もっとポジティブなものを想像していましたが、まさかここまでネガティブだとは思いませんでした。ヤルセナキオってこういうことか…。 【かんたーた】さん 7点(2005-03-28 16:07:54) 6.去年、池袋の文芸座でやっと観ました。もちろん感銘は受けたけど、予備知識を色々入れた後で観てしまったので、教科書をおさらいしているような感じでした。改めて映画っていうのはまっさらな白紙の状態で観るのがいいと思った次第です。高峰秀子はこういう投げやりで物憂げな台詞が巧いですよね。森雅之のダメダメ男も魅力有り。 【放浪紳士チャーリー】さん 8点(2004-04-11 15:27:37) 5.本来、もっと切なく盛り上がれる素材なのだろうが、妙に断片的な、そして同じようなシーンが繰り返されて終わってしまった。脇役が定型的であまり物語に影響していないのも、かえって主人公2人の魅力を削いでいると思う。あと、問題は、作中でどれくらいの期間が経過しているのかがはっきりしないこと。こういう筋は、登場人物の人生の積み重ねと絡んでこそ輝くものであるはずだが。 【Olias】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2004-03-08 01:26:51) 4.高峰秀子は本当につらそうに泣く。同情をかうためやストレス発散、感情失禁といった涙ではなく、また悲しいからでもなく、つらさのあまり崩れるようにして泣く。 【駆けてゆく雲】さん 10点(2003-12-27 23:19:45) 3.どういうわけか“女が大泣きする芝居”が好きで、「飢餓海峡」が好きなのも左幸子が大泣きするシーンがあるからだし、「サンダカン八番娼館」を何度も観てるのも田中絹代の泣きの演技が見たいがため。「浮雲」が好きなのも同じ理由で、高峰秀子の泣きっぷりがあまりに見事だから。またあの悪声でしょう、とにかくリアリティがあるんですよ。“洗練”って決して美徳じゃないよな。昔の日本映画を観ているとしばしばそんなことを考えさせられます。 【じゅんのすけ】さん 10点(2003-07-05 15:21:54) 2.ダメ男と分かっていても、腐れ縁でズルズルと関係を続けていった挙句に遠く屋久島くんだりまで行って死んでしまう女の悲しさ。そんなどうしようもなくやるせない男女の関係。高峰秀子が人生をだんだん落ちていく女だがその表情が印象的だった。 【キリコ】さん 8点(2003-02-08 15:38:18) 1.林芙美子の原作を成瀬が巧みに描いて見せた、森雅之のニヒリズムが堪能できる傑作。夢のような生活から一転、混乱期の日本社会に対応できず、男は自堕落になり、女は過去の生活と恋を追い求める。これはただの空しい恋物語とはいえない。高峰秀子扮するゆき子と、森が扮する富岡の妻、おせいという人妻の三人は、男・富岡のエゴイズムの犠牲者なのだ。 【ノブ】さん 9点(2003-02-02 16:15:36)
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