みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(9点検索)】
47.《ネタバレ》 タイトルが単刀直入ですね。シナリオはそれほど単純ではなく、後段になって、前段の顛末のいきさつが分かるまったく飽きさせない展開です。これまで仲代達矢という役者の良さがなかなか分からなかったのですが、本作の仲代達矢は文句の付けようがないです。昔の役者は日本人離れした顔立ちがはっきりした人が多く、絵になるし、大物感がありますよね。丹波哲郎と三國連太郎があまりに男前で驚きました。三國連太郎は晩年の爺さんの印象が強く、本人だと気付きませんでした。あと、切腹をした石濱朗という役者は初めて名前を知ったのですが、BUCK-TICKの櫻井敦司似の色男ですね。岩下志麻は若いけれど岩下志麻です。 【camuson】さん [DVD(字幕)] 9点(2023-04-29 17:04:41)(良:1票) 46.《ネタバレ》 井伊家上屋敷に突然現れた浪人・津雲半四郎、「当家の玄関先で切腹させてください」と申し出る。食い詰めた浪人者が大名屋敷に押しかけて腹を斬らせろとごねて金品を恵んでもらうというゆすり・たかりまがいの手口が多発していた昨今、「どうせ腹をさばく覚悟もないたかりだろ」とタカをくくった家老・斎藤勘解由は津雲を追い返すべく面談する。それは日本時代劇史上まれにみる陰惨かつグロテスクなストーリーの幕開けであった。 いやぁもう、凄い映画としか言いようがありません。数ある橋本忍の脚本の中でもトップクラス、ひょっとしたらベスト・ワンなのかもしれません。津雲半四郎=仲代達也と斎藤勘解由=三國連太郎の緊迫したやり取りから始まる序盤から、謎の浪人・津雲は何の意図があってやって来たのかが判らないまるでミステリー現代劇のような展開、もうぐいぐいと引き込まれてしまいます。幕藩体制が固まってきた寛永年間、各藩は多くの従業員を抱える法人組織みたいな存在になっています。井伊家は言ってみれば名門大企業、芸州福島家はちょっと大きめの中小企業みたいな位置付けでしょう。幕府の引き締め政策が猛威をふるって地方企業がバタバタ潰れても、財閥企業である井伊家はびくともしないわけです。そして大企業らしい官僚制のうえ建前でガチガチに固まった組織、これは現代のメガ企業のオマージュじゃないかと思うほど60年代とは思えない鋭い視点です。斎藤勘解由や沢潟彦九郎=丹波哲郎が振り回す“武士の面目”はたしかに武家社会のど正論なんですが、裏を返せば体面を保つための手段に過ぎなかったという事が劇中で見事に喝破されます。騒動が終息して記される覚書にも、まるで「西部戦線異状なし」という感じで隠蔽される幕の閉じ方、もう無常観が半端ないです。 まるで舞台劇のような展開でしたが、ラストニ十分の斬り合いがまたリアルです。さすがに眠狂四郎でも勝てるかどうかというぐらいの井伊家の手勢の人数、満身創痍になりながら息が上がってくる仲代達也の立ち回りが壮絶です。そして沢潟彦九郎=丹波哲郎との決闘、なんとこのシーンは両者とも真剣を使っていたんだと。私は剣道には知識はないですけど仲代達也の構えは戦国時代の実戦的なものなんだそうです。それにしてもこの映画での丹波哲郎は、立ち振る舞いからして迫力があってほんと強そうです、この人は剣豪役をやらせたらピカイチですね。 【S&S】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2022-05-30 22:08:51)(良:2票) 45.紛れもない傑作。日本のみならず世界の映画史に刻まれてよい作品だと思います。古い白黒映画でありながら、映像は非常に美しくまるで水墨画を鑑賞しているかのよう。セリフも非常にわかりやすく仲代氏、三国氏、丹波氏皆エロキューションが素晴らしい。笑いユーモアのあるシーンは全くと言っていいほど無く、観る者に終始緊張を強いる作品だけに、う~ん、個人的には満点をつけられないが、限りなく満点に近い9点であります。 【代書屋】さん [インターネット(邦画)] 9点(2021-06-18 23:03:58) 44.仲代達矢と三國連太郎が、役者としての格や力量を賭けて正面切って対峙する作品です。二人の大物のぶつかり合いの、ギラギラ感が凄いです。ストーリーも面白いですし、この作品は日本映画の中でも屈指の傑作だと思います。 【wayfarer】さん [DVD(邦画)] 9点(2020-06-14 02:30:49) 43.《ネタバレ》 不気味で緊迫感のある白黒映像と音楽に引き込まれ、全編にわたり武士たちの冷徹な眼差しが死線と向き合わせる。金をせびりにきた老いた浪人が切腹されることになり、そこから二転三転して、社会派ドラマにもギリシャ悲劇にも通じる普遍性のあるストーリーが展開される様は見事。貧困で飢えと病に苦しみ死んでいった娘とプライドを捨てた挙句武光で切腹された婿のために、武士道の虚飾を引き剥がす復讐劇に強烈なカタルシスを感じた。誇りある武士道なんて所詮嘘っぱちと言わんばかりに、あまりに残酷で壮絶で、そこまでしても変えられない無常感が最後まで貫く。何もかもぶち壊した果てに、何事もなく取り繕うだけで終わる理不尽さ。空洞になった社会における人情と倫理を問いかける重厚なまでの後味の悪さが残る。痛切な傑作。 【Cinecdocke】さん [DVD(邦画)] 9点(2018-07-24 21:06:09)(良:1票) 42.《ネタバレ》 これは名作。食いつめ浪人が切腹するつもりもないのに屋敷の庭先での切腹を願い出るのは、金をせびり取るのが目的。武士の風上にもおけないやつがいるもので、そんな悪習をどこかで断とうとしたのも当然の流れ。切腹志願者の若者が携えていたのは竹光で、懲らしめとして竹光で苦しみながらの自害をさせたのも、残酷ではあるけれど卑怯者を成敗しただけともとれる。 冒頭の切腹志願の老浪人が、何やら訳あり気で謎に包まれたオーラを出している。どうやら金が目的の切腹志願者ではなく、何か別の目的がありそうな…。と、その口から衝撃的で意外な真相が次々と明らかにされていく展開に引き込まれていく。 竹光を携えた切腹志願者に対する印象が、最初と最後で180度見事に変わってしまった。これだけ見事に引っくり返されては、あっぱれと言うしかない。 仲代扮する老浪人の井伊家に対する抑えがたい怒りや、自分の娘家族を救えなかったことへの悔恨が、ひしひしと伝わってくる。また、武士道の虚飾や武家組織の汚さを痛烈に皮肉っていて、見応えがあった。 【飛鳥】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2017-02-27 19:54:59) 41.《ネタバレ》 面白かったです。浪人が切腹を押し売りするも当てが外れて本当に死ぬことに…という単純な話と思いきやとんでもない。津雲が井伊家へやって来たこと、求女に対応した家臣三名が不在なこと、いずれにも理由があると分かるスリリングさ、そして、最終的に井伊家も切腹者を出さなければならない理不尽さが印象的で良い。役者ではなにより仲代達也氏。後半までほとんどお白洲から動かないのに凄くカッコいい演技は必見です。最後に、残念ではないですが微笑ましかったのが殺陣。形のうえでは1対30くらいなんですが、しっかり1対1の繰り返し。ああ日本の時代劇だと思いました。 【次郎丸三郎】さん [DVD(邦画)] 9点(2017-01-22 12:09:21)(良:1票) 40.《ネタバレ》 一切無駄がなく、見る人によっては痛快極まりない。上辺だけの見栄がいかに馬鹿馬鹿しいのか、改めて勉強させてもらいました。私が面白いと思ったのは、津雲と沢潟の対比です。決闘シーンでの戦術は前者が古風で後者が最新鋭のもの。これが意味するところは、現代社会の無知な武士道賛美に対する批判でしょう。明治維新で滅びるはずだった武士道は現代にも生きながらえ、本来の意味を全く無視して都合よく理解している人の多いこと。津雲は見栄ばかりで実態のない武士道の実体を暴露し、乱闘の末切腹することで、本物とはこういうことだと示したのです。真相を隠蔽する斎藤勘解由の惨めさは痛快!津雲がただ暴れまわるのではなくバックストーリーに重みがあることが本作の素晴らしい点で、そのエネルギーに圧倒されるばかりでした。本作のようなエネルギーに溢れる映画を見ることこそが映画鑑賞の醍醐味です。 【カニばさみ】さん [インターネット(字幕)] 9点(2015-11-23 13:07:34) 39.痛みと切実さが溢れる名演と脚本。目が離せない。 【Junker】さん [DVD(邦画)] 9点(2014-06-22 17:42:06) 38.「神々の深き欲望」で追悼三國連太郎熱があがって…、夜中に再鑑賞することに。初鑑賞は武満徹を冠した映画祭での一本として。 映画というものは脚本のできだけでこうもひとつの題材が面白くなりうるものかと打ちのめされた。先日リメイク版の「一命」も鑑賞する機会に恵まれたが、やはりあちらは色合いと3D効果に脚本の力が削がれているようにも感じられた。(役所広司はよいのだが。)まだどちらも観ていない人には是非この「正順」での鑑賞を強く、強くお薦めしたい!音の面から言っても!! 【kei】さん [映画館(邦画)] 9点(2014-04-01 11:12:35) 37.《ネタバレ》 小林正樹は「あなた買います」等の初期の方が好きで、後期の作品はどうも苦手だった。 だが、今回再見したことで意識を変えることに。以前見た時は退屈に感じた作品も、改めて見るとその徹底的なこだわりに眼を見張る。 かつて武士道社会への“怒り”によって新しい時代劇を創造した先駆者の伊藤大輔(「忠治旅日記」「下郎」等)。彼と対談し、その系譜に連なるような“怒り”と反骨精神を叩き込み小林が練り上げたアンチ時代劇。 大島渚と組んだ戸田重昌の美術が創りあげる閉鎖空間、吉村公三郎や五所平之助等の下で活躍してきた宮島義勇のキャメラが盛り上げる緊迫、仲代達矢たちの冷え切ったセットとは対照的なくらい暑苦しい、苦しみ抜いて訴え続ける全身全霊を込めた演技。 リアリティを極めるために中村錦之助(萬屋錦之介)にアドバイスを求め、阪東妻三郎、片岡千恵蔵、市川雷蔵、三船敏郎の殺陣を参考にし、小林に求められた真剣同士による立ち合いにも応えて見せる。 映画における従来の「切腹」は、責任を負うために行われてきた(フリッツ・ラング「スピオーネ」や後年の岡本喜八「日本のいちばん長い日」、三島由紀夫「憂国」等)。 本作は「ハラキリ」を通して無責任な発言を行った者がたどる末路・武士道社会そのものへの疑問を投げかける“復讐”。 冒頭、鎧兜の周りに立ち込める煙・霧が晴れるように座した鎧武者が現れる。開かれる「覚書」、刀一本片手に巨大な屋敷の前に現れる一人の男。響き渡る琵琶の音、門、屏風、廊下、中庭、冒頭の鎧をまた映す。 映像だけでもこのくどさ、あの美しい岩下志麻まで恐ろしい顔で現れる! 首を捻り素知らぬ顔で「さて」と応える真意、扇子を開くのはそうとも知らずに思わず喋りたくなってしまったことを無意識に現す。仲代の表情の変化、それに反応するように顔色を変える三國連太郎たち。 意図的に似たような構図を重ねる回想、無責任そうに緩んだ表情、密室で苦々しそうにどう対応するか語り合う。 家老もまた、屋敷を尋ねる侍たち同様に事情を抱え悩み続けた存在にすぎないのかも知れない。 若い侍たちの雰囲気、それに代々受け継ぎ背負わされてきた「武士の誇り」という重荷。人が居るはずのない鎧…いや既にこの世に存在しない先祖の顔を窺い、首を下げて許しを請い、見えざるプレッシャーを感じ続け強面を通すしかなかったのだろう。 ゆるい表情を強張らせる襖の向こうから差し出す白装束、冗談交じりに手の動作で語る「これ」、襖を開けた先で逃亡を阻むもの、中庭に用意された正方形の死に場所。 鞘から抜き放たれ暴かれる“真実”、事の真相も知ろうとせずに嘲笑い叩きつけ「誇り」とやらをほざく驕り。 わざわざ切腹の方法を語り十字を切るのは相手を絶望させるため、目の前に置かれる「得物」、装束を勢いよく脱ぎ台座を叩きつけるヤケクソ、何度も突き立て、苦しみで震え、嗚咽し、凝視し、臓物をぶちまける代わりに大量の汗を吹き出し、血を流し、眼球と顔面を震わせ、天を仰ぎ、くたばり果てる。 手で強調する「このこと」、懐の得物に手をやり「笑う」本当の意味。後ろを槍で武装した者が固め、腹に何かを抱えていることを暗示するように仲代の顔には影が差し掛かり続ける。覚悟を語るように強烈に響き渡る音。 降り積もる雪、立て札、静かに迫る「死」が決断させる人生を賭けた行動。 介錯人を静止させ、家老を絶句させるものを投げつける腕の動作、風が吹き付けはじめ語られる一連の復讐劇。 密室から引き連りだすように申し込まれる“果し合い”、墓場に屹立する墓石群、竹林が挟む小道を抜け、風が激しく吹き荒ぶ薄野原で相対し抜き合う! 刀片手にジリジリと距離を詰め、両腕に持ち替え、太刀を弾き合う接近と交代を繰り返し、防御をこじ開け、刃と魂をへし折る必殺の一撃。 増えていく“手土産”は周囲を取り囲む者たちの殺気と神経を逆なで、風は汗を吹き出し睨みつける者たちを号令とともに立ち上がらせ抜刀させる。 圧倒的優位でありながら死を恐れ中々近づかない戦争未経験者、死を恐れない戦争経験者。 槍をふるい、投げつける砂利・槍、突進してくる者を盾にし、血に染まる衣服・家紋、息を荒くし、襖を薙ぎ倒し、這いつくばり、刀を突きあげ薙ぎ払い突き斬り捨てまくる一対多数、下から睨み上げ、刀を突き立てながら立ち上がり、駆け抜けたどり着く場所。 眼前に飛び込む権威の塊、それにすがりつき担ぎ上げ叩きつけ、ぶちまけられる、すべてを“切り捨てる”決断。影の落ちた表情と後ろ姿だけが、何もかも“偽る”苦汁を静かに語る。 鮮血が飛び散り、鎧が破壊され散乱した死闘を物語る“跡”も、風と後始末をする人々の手によって消えていくのだろうか。 【すかあふえいす】さん [DVD(邦画)] 9点(2013-12-24 13:01:18) 36.《ネタバレ》 日本映画をあまり見ない自分であるが、 この『切腹』は本物の日本映画といわざるを得ない。 その本物であることを示す言葉を自分は持っていないが、 確かに見終えた後にそう感じた。 この映画にあるのは武士道であり、筋を通すということだ。 暗く淡々としているが内容は洗練されている。 サスペンスのような緊張感が素晴らしい。 仲代達矢の演技には夜叉が宿る。 切腹の持つ潔さは美であると思った。 【ゴシックヘッド】さん [DVD(邦画)] 9点(2013-04-30 01:23:49) 35.日本人にとって、切腹というコトを口にするのは、ちょっと微妙な感情、一種の居心地の悪さが伴う訳で、それは、いわば日本を代表する風習のひとつでありながら、自分自身はそれを決行する自信が全くないこと。何かと耳にはする「切腹」という言葉と、その意味する実態が想像を絶することとのギャップ、しかし世が世なら自分もそれをせざるを得なかったかも知れないという恐怖(武士だけの行為ではない。近代でも自らそれを行った例が多々あるとのこと)。あと、世のSMマニアの中には切腹マニアというのもいて、そのテの本や写真集もあるそうで(三島の『憂国』だってその一例だ)、それも居心地の悪さの原因かも知れないけれど(笑)。さて本作。ひとつには物語の構成の妙が我々を釘づけにするんだけど、“切腹”を正面から捉え、しかもそれを痛々しく理不尽に描いているのが、強烈この上無い。切腹ってのは、腹膜まで切ろうとすると非常に苦しいものとなり(腹筋を切り裂くのがまず大変)、浅く切ってすぐ介錯してもらうのが楽で良いらしい(とモットモらしく言ってるのがこれまた居心地悪いんだが)。それを何と、竹光での遂行を迫られる理不尽さ、その苦痛はいかばかりか、画面からヒシヒシと伝わってくる。なのに本作の音楽担当が「たけみつ・とおる」とはこれまた何と理不尽な。それはどうでもよいが。後半、物語は一変、いや、視点が変われば物語も変わるということ。強い立場、迫る立場、追いつめる立場であったはずの人間が、実は追いつめられていってる、というその過程が、別の意味でコワイ。何ものかにとらえられている存在であることには、皆、変わらない。この凄惨なクライマックスは、一種のエンターテインメントでもあるのかも知れないけれど、そこには同時に、秩序が内側から自壊していく恐怖もある。いやむしろ、秩序の虚飾が内側からが崩壊してなお、秩序の外枠だけがガランドウのように残り続けていくことの恐怖なのかも知れない。 【鱗歌】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2012-09-29 03:47:41)(良:1票) 34.《ネタバレ》 予断を許さぬ展開とものすごい緊張感に圧倒される。間違いなく日本映画を代表する作品の1つだろう。「切腹」という日本独特の様式美にまつわる話だけに、ぜひ日本文化に興味のある外国人にこそ見てもらいたい気がする。しかし、竹光を嘲笑われたり髷を切られることの死にも勝る屈辱感は理解が難しいかなあ。まあ、「武士は面目に命を賭ける」ということさえ理解してれば大丈夫だろう。いい作品ではあったが、半四郎の最後の大立ち回りは筆者の好みではない。井伊家の面々に衝撃を与えた後、半四郎も静かに詰め腹を切る方が武士の散り際としては美しかったのではなかろうか。好み50/50、演出14/15、脚本12/15、演技9/10、技術9/10、合計94/100→9/10点 【chachabone】さん [DVD(邦画)] 9点(2012-08-19 23:47:10) 33.《ネタバレ》 噂に違わぬ名作だと思いました。武士の所作として最も尊ばれるべき切腹。それを真ん中に置いて展開する武家社会の「体質」の話だったと思います。 どんな事情があろうとも押しかけてきて「ここで死なせろ」と云うのは、言われた方には大迷惑なお話です。序盤は井伊家側に同情しました。仲代達也が語る実情を聞いても、それは浪人を増やす幕政の問題で、井伊家の責任では無いと思いました。なのでラストの大立ち回りは必要なのかとも思いました。そこまでの口上に照らすと潔くない。でも、その斬り合いで出た死傷者に対する家老の態度でテーマがハッキリしました。 自分たちの対応から生じた不都合を手際よく「隠蔽」する。不都合が生じた原因は、大きな組織体が持つ「傲り」や「慢心」です。幕府に露見すれば譜代筆頭である井伊家も処分を免れないと云う事情があるのでしょう。ならば、そうなる事を事前に察知し、回避するのが大藩の知恵ではないかと思います。たぶん、井伊家の人達が個人で対応していれば、あんなことにはならなかったような気がします。大きな組織に帰属することによって、自分が偉くなったと感じる錯覚。それが組織体を蝕む根本かな、とも思いました。 仲代達也の堂に入った演技には見応えがありました。この時、彼はまだ30歳。その若さで爺さん役まで演じている訳ですが、まったく違和感がない。眼差しだけで弱々しい表情から毅然と力強い顔つきまでを演じ分ける。モノクロ画像のシャープな陰影が見事にそれを切り取っていました。 余談ですが、事実を隠すことによって事を荒立てない作法は「嘘も方便」という言葉があるように全否定はしません。何を守るために嘘を付くのかが焦点だと思います。大きな社会的責任を負った組織が隠蔽した事実が明るみに出ると反動は大きい。それを、記者会見で頭を下げる「行事」で落着にする習慣は新たな悪しき体質と思えるこの頃です。 【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2012-07-21 14:34:38) 32. こういう映画を作る時代背景があったのでしょう。語りの説得力が違います。不勉強で調べるまで知りませんでしたが、「上意討ち 拝領妻始末」や「東京裁判 」の監督でもあるんですね。見て良かったと思います。 【海牛大夫】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2012-04-02 18:31:07) 31.拝啓、仲代達矢様。しかと見届けましたよ あなたのその佇まいやら、台詞の一句一句やら。 今後、あなたの名を呼ぶ時には 必ず最後に様を付けて呼ぶ事と致そう ほんとあなたは感心するほど台詞の魔術師だ。 【3737】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2012-01-23 20:56:06) 30.原作が凄いのか、脚本がすばらしいのか、はたまた映画監督や役者が抜きんでた才能があったのか、いずれにしても最高峰に値する時代劇である。 切腹という究極の武士道精神なのだが、それを少しも格好良いものではなく、腹切りという現実の自殺として扱う。なぜ切腹しなければならなくなったかを、朗々と言って聞かせるあたり並のものではない。 映画を見た当初は知らなかったが、人間の条件を描いた監督であり、その主役の仲代達矢である。それがそのまま、この映画で反映されているかのようにも改めて思う。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 9点(2012-01-16 20:59:27) 29.黒澤の時代劇が娯楽大作なら、これは時代劇サスペンスと言えるような作品。 お話はそのほとんどが武家屋敷の庭で展開されるという、まるで密室サスペンスのような作り。 あっと驚くようなヒネリやオチはないけど、仲代、三國の息詰まる心理戦、 緊迫感溢れる演技に引き込まれ、とにかく画面から目が離せない。 まさしくこれぞ役者!というような重厚な演技対決を存分に見せてくれる。 殺陣のシーンは今イチだが、この時代の武士としての体面や生き様などの描写も見所。 本当に面白い映画だった、という満足感を与えてくれるお薦めの作品である。 【MAHITO】さん [DVD(邦画)] 9点(2011-07-19 12:52:19)(良:1票) 28.'11.3/19鑑賞。初のインターネット・ユーチューブで観る。 脚本 橋本忍 音楽 武満徹 撮影 宮島義勇とスタッフも最高。 これが50年前とは思えない骨太、重厚な作品で時代を超越している。 時代背景と脚本の面白さの中に役者、映像、音楽が一体となった感じ。 2012.04/02 2回目鑑賞。やっとTVで観れた。この脚本の筋立てと台詞は最高+1点。過去回帰の一部に少し澱みを感じるが・・。 【ご自由さん】さん [インターネット(字幕)] 9点(2011-04-10 14:10:39)
【点数情報】
【その他点数情報】
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