みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(9点検索)】
13.《ネタバレ》 ゼロ戦の設計者・堀越二郎が実名で出ていますが、 「風立ちぬ」の著者・堀辰雄の人生と著作をフュージョンさせたフィクションでした。 宮崎氏が描きたかったのは、飛行機の設計だけに執着した男の話。 道徳的な教訓や反戦的な思索を込めた作品では無い。 だから、時代背景として描出される大正後期から終戦までの出来事 ~関東大震災、失業者が溢れる不況、銀行破綻、特高警察のマークなど~ はあくまで背景として流すだけで、主人公はそこに関わらない。 戦争描写も同様で、物資不足や空襲は描かれない。 思い切った省略が為されている。 「お国のために」という意識が堀越二郎に皆無だったとは思わないが、 そこも外されている 後半、病身の奥さんとの遣り取りが美談風に描かれる。 この辺りが堀辰雄からの引用。 でも、あえて較べるなら、主人公の頭の中は飛行機7、奥さん3くらいに思えた。 これらは意図した演出だろう。 空への憧れ、という一点だけを見つめた男を浮き彫りにするための演出です。 艦上戦闘機の設計に「機関銃さえ無ければ可能な案」が浮かぶ。 兵器を設計しながら、思考は「美しく飛ぶ飛行機」を模索する。 本人の目的と、製造されるモノの目的が合一しない。 最終的にゼロ戦は「機能美」を獲得した機体になった。 彼が夢で見たゼロの編隊飛行はとても美しい。 でも、その夢の中でも「最後はズタズタでした」と語る主人公。 「ズタズタ」とは撃墜や敗戦だけでは無く、「棺桶」として使用されたことも含まれるのだろう。 これらのギャップや矛盾が本作がテーマだったと思う。 時代のうねりの中で、 嗜好だけを貫いた者がどのような感慨を覚えたのかを描きたかったのだと思います。 そして、本作の主人公は宮崎氏にオーバーラップします。 この人ほど「空を飛ぶ機械」への憧れを描き続けた作家はいない。 ファルコ、ギガント、メーヴェ、ガンシップ、オーニソプター、アルバトロス、等々。 デッキブラシなんてのもあったけど(笑)。 長い付き合いの中で多くの飛翔を堪能して来ました。 彼は飛行機の操縦も設計も出来なかったが、描き、動かすことを自己実現の手段とした。 手法こそ違え、本作の主人公そのものではないか。 「空を飛ぶ機械」は美しく描きたいが、アニメになったら大半は戦闘シーン。 流麗に飛ばしたくとも、人殺しのシーンが最もイキイキする。 これも矛盾です。 個人の嗜好と有用性は、矛盾を孕んで進むものなのだと思います。 本作は分かりにくい映画でしょう。 それは、強引な取捨による個人の一側面描写に起因しています。 敢えて禁止用語を使いますが、ヒコーキキチガイを描いた映画でした。 同時に、監督の想いを綴った私小説ならぬ私映画でした。 そこに込められた想いに呼応できないと、ぼやけた見え方になると思います。 彼は「ズタズタ」になったとしても、彼の嗜好でアニメを作り続けたのでしょう。 広告に使われていたフレーズ「生きねば」とは、それしか出来ない者の覚悟だったと解釈します。 私は感動しました。 (2018/12/15更新 初投稿時、文字数制限で割愛していた部分を補足しました) 【アンドレ・タカシ】さん [映画館(邦画)] 9点(2013-07-24 05:08:58)(良:6票) 12.《ネタバレ》 もし10代20代の頃にこの映画を見ていたら、きっとあれこれと物足らなくて消化不良に終わっていたかもしれない。思った以上に深かった。次郎が心血を注いで作り上げた飛行機は、機関銃を載せざるを得ず、強くて勇ましいが、防御力は弱く砲を浴びればひとたまりもない。愛妻は他者に感染する病気を患い一見弱々しいが、気持ちは最期まで凛とし、決して折れない。どちらもただ美しいでは済まない存在であり、のちに夢のようにはかなく消えていく。次郎の愛するこの二者が美しい協和音のように響いているように見える。そういう意味で、堀越二郎と堀辰雄を融合させたキャラは成功していると思う。 個人が自由に生きることが難しい戦時中に病身の妻を支える暮らしは、どれほど大変なことかと思う。しかし二郎は不平をこぼさず、その時々の条件下で自分にできることのみ集中し、黙々と努力を続けていく。心の声に驚くほどスピーディに反応して、リスクを恐れず迷わず行動に移す。生きることの集中力とでもいうか、侍スピリッツにあふれる二郎を見ていると、今自分が抱えている問題ごとなどやる気次第で案外何とかなりそうな気力が湧いてくる。夢破れても、亡き愛する人へ「ありがとう」という言葉でしめくくるラストも爽やかだ。 【tony】さん [DVD(邦画)] 9点(2015-03-04 00:44:12)(良:3票) 11.《ネタバレ》 ゼロ戦・飛行機の創造に魅入られた”天才肌の欠陥人間(分野は違えどまさに宮崎駿!まさに庵野秀明!)”と、そんな男を愛してしまったけなげな女の物語。 飛行機は美しい。堀越ニ郎は美しいものを見ていたい。美しいものだけを。 飛行機と同じように彼は「美しい」から菜穂子を愛した。だが、(あるいはだからこそ?) サナトリウムで美しさを失っていく菜穂子を見舞うより、彼は美しい飛行機の創造を優先してしまった。 それでも彼を愛し、ついに山を下りて、自分がまだ美しくいられる最後の日々を 二郎とともに過ごし、そして死期を悟って一人去っていく菜穂子の姿はひたすら悲しい。 最後に菜穂子は死ぬが、同時に失敗続きだった二郎の実験機は劇中初めて成功する。 ゼロ戦はついに子を持つことがなかった二郎・菜穂子夫婦の愛の結晶のメタファーだったのかな? 【大鉄人28号】さん [映画館(邦画)] 9点(2013-09-19 11:39:42)(良:2票) 10.《ネタバレ》 一つの目的にまっすぐ進んでゆく男と、彼を愛した女の物語。 ふたりのあまりなピュアな心の結び付きは、時としてハードボイルド。 その昔、妻の出産のためにTV番組の収録を休みにしたタレントがいて、 それが妻と子供を大事にしている美談のように伝えられたが、 親が死んでも笑って舞台に立つのがプロフェッショナルのはず。 そんなぬるい美談の対極にあるようなラブストーリーだ。素晴らしい。 【こんさん99】さん [映画館(邦画)] 9点(2013-09-04 00:42:18)(良:2票) 9.完全肯定! カリオストロから34年、ナウシカから29年、当初の大人も子供もという重圧から開放されてきた近年、創りたいもの自分の好きなものに特化してきた「紅の豚」以降の作品は、宮崎駿の作家性が客を選ぶようになった、特に死にまつわる描写が。 それでもジブリ、客は入るのでいろんな批判的意見も目に付くが、同じく年齢を重ねた自分には常にビタビタはまる。もしかして俺に見せるために創っているのか?などと勘違いしてしまうほど。 煙草をバカスカ吸い、震災の重厚な演出、軍人をアホのように描写、詳細な飛行機設計製作過程の表現、避暑地のドイツ人に忍び寄るもの、特高なんていうバカの扱いと物作り企業のプライド、帰ってこなかった戦闘機と戦争は町の炎上シーンで一瞬、レンズ越の目は歪み、信じられないサナトリウムでの治療から菜穂子が戻った訳、などなど・・・どれも素晴らしい、監督の言いたいことがリアルに伝わり涙が溢れる。 まだまだ良い作品を見せてくれる事を願ってやみません。 ※映画館入場時に渡された、鑑賞後に見てくれと言うかさばる紙切れ、高ぶって開いてみるとau宣伝の上に文章の不可解さ、あれは興ざめ鈴木P、監督の才能を再認識した上で己の仕事に専念してください。 【カーヴ】さん [映画館(邦画)] 9点(2013-07-30 11:04:12)(良:2票) 8.《ネタバレ》 これは、宮崎駿監督がニュー・シネマ・パラダイス(特に完全版の方)を作ったらこうなっちゃうよ、という作品でしょうかね。 向うが映画への愛なら、こちらは空への憧れ、いや、空を飛ぶ飛行機の「美しさ」への憧れ。それも、この作品の主人公たる二郎さん、トト君よりもかなりタチが悪い。トト君の場合、ベースとして幼少期以来の映画への愛があったとしても、そこにアルフレードさんとの交流があり、少女エレナとの恋愛がある。だけどこの二郎さん、基本的に飛行機のことしか頭にない。それでも女性には優しかったりして、それも別に打算がある訳じゃなく本当に優しくって、それでもやっぱり飛行機のことばかり考えている、こういうヒトが一番、罪作り。 終盤で、病の奥さんが最後に布団をかけてくれたことにも気づいていない。この場面で、奥さんが寝顔から眼鏡をはずすのが印象的でした。そういや作品自体も、子供時代の二郎さんが眠って夢を見ている場面から始まったんでしたっけ。このヒト、何かとよく寝てる。そして飛行機の夢ばかり見てる。 何よりこの二郎さん、最後にはすべてを失いながら、まるで後悔も反省もしている気配がない。ニュー・シネマ・パラダイスより、はるかにはるかに重症です。 これが宮崎駿というヒトの一面なんだろうなあ、と。ホントに怖いヒト、その怖さが、他人を感動させる。 という自覚症状に向き合い、それを描ききった、総決算のような作品、なんですかね、これは。 【鱗歌】さん [DVD(邦画)] 9点(2016-04-04 19:13:59)(良:1票) 7.《ネタバレ》 悪魔に魂を売るかのごとく、私生活を代償にしながら夢を形にしていく二郎。 自分の命を削りつづけながらも、二郎に寄り添い続ける菜穂子。そこには、世間が考える善悪や倫理観などの物差しでは図る事ができない幸せがある。そしてあまりにも刹那的な生き方。 他の人にはわからない。けれど幸せ。それが全て。 そして二人の姿に、ルパンがポルコ・ロッソがアシタカが逃げ続け、ポニョで結実した宮崎監督が描く愛の形のその先を観た気がした。 【ちゃじじ】さん [DVD(吹替)] 9点(2016-02-26 00:13:43)(良:1票) 6.《ネタバレ》 封切り時に映画館で見たけど、今日TVでやっていて、やはり引き込まれてしまった。 どなたかも書いてたけど、一つの映画を好きになる時、その理由は一つではなく沢山の要素が絡み合ってるのだな、と思いました。この映画は大好きだ。一番好きなのは貧しくてストイックで礼儀正しい、昔の日本人が沢山出てくることだ。結婚式のシーンが完璧すぎて泣けてくる。風の吹かせ方は人間国宝にしたい。満点でないのは、軽井沢のホテルで紙ヒコーキを飛ばすシーンが陳腐だから。 煙草の事でいろいろ書かれてるみたいだけど、昔の映画見たことない人が増えてるのかな・・。 【しろ太】さん [地上波(邦画)] 9点(2015-02-21 01:36:30)(良:1票) 5.《ネタバレ》 期待してなかったからだろうか、すごく良かった。先に行っておきたい。議論になるような喫煙シーンがあったか?そういう時代だったのだろう。戦争映画の殺人シーンが問題になるのだろうか、という次元の話と思う。さて、肝心な映画は考えれば考えるほど面白い。色々なところで年代を特定することができるヒントが出てきて、それを集めて年表を作ってみたりした。最後のテスト飛行の時、次郎は何を悟ったのかが気になって、、、。宮崎氏の映画はいつも時代考証がしっかりしていてたまりません。 【lalala】さん [ブルーレイ(邦画)] 9点(2014-09-21 18:51:49)(良:1票) 4. 過去、日本は貧しく遅れていました。みんなで一生懸命努力しました。しかし、その努力の先に待っていたものは敗戦でした。きっと、少し努力の方向がずれてしまったのでしょう。明治維新で開国したころの欧米との科学技術の違いを思うときそれから70年ぐらいで国産兵器で欧米と肩を並べる処まで来たのは奇跡と言えます。黒船に腰を抜かした民族が世界最大の戦艦大和を建造しました。欧州から購入するだけだった航空機も世界レベルのものを生み出しました。戦闘機においては96艦戦、爆撃機では96陸攻がその嚆矢でしょう。 物理学を研究したその先に原爆がありその実現に向け研究を重ねてい湯川秀樹がいたように飛行機に夢をかけ戦闘機を設計した堀越二郎もいたのです。欧米へのキャッチアップに成功した96艦戦は幸福な機体ですが、負け戦の前面に立たされたゼロ戦はつらいことになりました。結果にとらわれずその努力をあの時代性の中で表現できたこの作品、9点ですかね。素晴らしい作品だと思います。 【たこのす】さん [地上波(邦画)] 9点(2021-09-23 01:18:01) 3.宮崎アニメのなかで、もっとも美しい作品ではないかと思います。そこに「悪」の要因があるにせよ、その美しさを讃えずにはいられません。もっとも愛があふれた作品だろうとも思います。しかし、その愛こそが、大いなる「悪」なのでしょうね。ひたすら「善」を求める観客には拒絶されるでしょうが、そもそも美や愛は、かならずしも「善」であるわけではなく、ときとして大いなる「悪」だと言わざるをえません。宮崎本人の言葉を借りれば、この映画にあふれる美や愛こそが悪への誘惑=メフィストフェレスです。 まごうことなき「善」の映画など存在しない。それどころか、武器をもって闘ってきた宮崎アニメの過去作品のすべては、たえず「悪」を美化(あるいはエンタメ化)しつづけてきたはずです。その意味では、むしろ『風立ちぬ』こそが、その矛盾にもっとも向き合った作品だといえる。鈴木敏夫が意図したように、この矛盾にこそ、宮崎駿が描かねばならない真実があったのだといえます。 戦争技術者をあからさまなマッドサイエンティストとして描く紋切り型にくらべれば、むしろ慎ましく美しく生きた戦争技術者の生き様にこそ、真実の一端があるのかもしれない。一部のエリートが民衆の善良な生活を破滅させたとする紋切り型にくらべれば、むしろエリートの美しい技術を愚かなナショナリストたちが応用したという醜悪な実態にこそ、真実の一端があるのかもしれません。 では、科学技術者はいったいどうすればよいのか? その答えが映画のなかに用意されているわけではありません。強いていえば、その答えは、破壊し尽くされた飛行機の残骸を見つめる観客のほうに投げかけられています。 もともと久石譲の音楽は好きじゃないけれど、この映画の音楽は率直に美しく感じられました。荒井由実の曲も、死と飛行機の描写にティンパンアレーの透明なサウンドが重なり、さらには彼女のコンサバな姿勢までもが相俟って、まるであらたに意味付けされた楽曲のように生まれ変わっていました。 【まいか】さん [DVD(邦画)] 9点(2020-01-13 23:59:12) 2.《ネタバレ》 恋愛映画として傑作。 人生観を考えさせる映画として秀逸。但し、未来に向けてでは無く、今まで数十年生きてきた大人に、それぞれにおいて間違えでなかったんだよと教えてくれる映画。子供たちには不向きだと思う。難しいと思う。でも、周囲に居たうるさそうな子供たちが、映画の最中に行儀が良かったのは何かひきつけるものがあったのか?映画について賛否を論じる必要は無いかと。過去の宮崎作品から見ても、(夢として描くことで)ファンタジーから離れて、実人間界での生き様で描いた。宮崎氏自身に照らし合わせて。唸るように攻めてくる地震、怖い、その震災に対しての頑張ろう日本!にも通ずる。美しい愛を再認識させてくれてありがとう、夢と希望を描くキャンバスが戦争兵器しかなかったという罪を教えてくれてありがとう、その罰は何!?が残るのだけれども、涙するほどの感動をありがとう。 【お好み焼きは広島風】さん [映画館(邦画)] 9点(2013-09-16 19:20:29) 1.《ネタバレ》 夢の物語。一心不乱に美を追求する彼の思い描いた理想という名の夢。消えそうでも、断ち切れそうでも、夢を抱ける者は立ち上がれる。また、立ち上がらなければならない、と自分に言い聞かすことが出来る。夢に始まり、夢に終わる。 寝て起きて、見た夢を他人に語って面白がられることなんて殆どない。夢は自分にしかわからない。これは、夢を知る者しかわかるはずがない。全てが空想、ファンタジー。まさしく夢。 【ボビー】さん [映画館(邦画)] 9点(2013-08-25 06:31:10)
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