みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(9点検索)】
6.《ネタバレ》 ダッジ・チャレンジャーに乗り込み、夜のLAを跋扈する不気味なダークヒーローの物語。これは紛れもない傑作だ。 ナイトクローラーという知られざる職業にフォーカスすることで、退屈さとは無縁のエンターテイメント作品として仕上がっているのが面白い。役者の演技が光るサスペンスフルな展開から、素晴らしい出来のカーチェイスを経て、再三言い続けていたメッセージを突きつける。脚本もよく練られており、全ての要素が高いレベルでまとまっている。 ジェイクが演じるルーは疑う余地のない強烈キャラだが、負けず劣らず、ストーリーやメッセージ性もかなりキツイ。成功、成果、数字のためにどこまでやれるか。要はどこまで倫理から外れられるか。 僕はやはり倫理観という範囲の中で行動しているので、ずれ気味なルーが異様な行動力で成りあがっていく様はどこか痛快に映る。ネットで覚えた受け売りで相手を煙に巻き、ライバルは排除、衝撃映像を捏造するなど八面六臂の大活躍。「勝つためにはチケットを買え」ともっともらしいことを口にしておきながら、そもそも彼の成功のチケット(カメラ)は犯罪で得たものだ。コイツは最初からズレているのだ。 そういった中で描かれる雇用主と労働者の関係もかなりエグく描写されており、この辺は経営者や就活生にはかなり刺さるハズだ。薄給で酷使され、悲惨な最期を迎えたリックも決して他人事ではない。大企業のインターンという名目で無給で働かされ、正規雇用でないゆえ簡単に切られる若者は実際多い。 面白いのはこういった点が非難などもなく、中立の視点で描かれていることだ。これはOPとEDの映像を観れば合点がいく。この映画の主役の一人は街であり、ここで起きる事件も、ナイトクローラーもインターンも、全てが粛々と流れるLAの日常なのだ。 ふとテレビを点けると、ショッキングな「バナー」が踊っていた。生放送中に銃撃事件が起きたというのだ。 その内容はまさに善良な市民を襲うマイノリティの凶弾、大都市に潜む身近な狂気。 この事件にもやはりナイトクローラーやテレビ屋の奔走(または暗躍か)があったのだろうか。 無論、この映画はフィクションであるが、そう思わせるようなリアリティを十分すぎるほど持ち合わせている。膨大な時間をかけた取材と、LAの街を主役とした撮影の賜物である。 【サムサッカー・サム】さん [映画館(字幕)] 9点(2015-09-29 13:59:44)(良:3票) 5.《ネタバレ》 冒頭、軽犯罪に手を染める主人公のギョロリとした両の目が暗闇の中に爛々と浮かぶ。 その目を見た瞬間に、「ああ、こいつはちょっとフツーじゃないな」と感じ取れ、同時にこの映画自体の特異性を予感せずにはいられなくなる。 食いっぱぐれ、社会の底辺に潜んでいた主人公が、“ナイトクローラー”と呼ばれる報道スクープ専門の映像パパラッチ業に辿り着くことから、このある種悪夢のような“サクセス・ストーリー”が転がり始める。 こんなにも胸クソ悪いサクセス・ストーリーを未だかつて見たことがない。 と、自分の中の表向きの倫理観は、この主人公の存在そのものを真っ向から否定する。 けれど、それと同時に、外道そのものである彼の成り上がりぶりに対して、一抹の高揚感を感じてしまっていることにふと気づき、とてもじゃないが胸中穏やかでいられなくなる。 果たして、この映画の中で本当に間違っていることは何で、本当に正しいことは何なのか。 この映画は、衝撃的でおぞましいストーリーテリングの中で、その正体が何なのかということを観客に問うてくる。 「勤勉で志も高く粘り強い人間です お役に立てると思います」 “ゲスの極み”である主人公は、終始一貫してそう言って自分自身を売り込む。 自分の成功のためなら、彼はあらゆる罪も犯罪も意に介さない。 しかし、彼のその言葉自体には、微塵の偽りもない。 彼は自分の立てた成功のためのプランに対して努力を惜しまず試行錯誤を繰り返し実現している。 それは、完璧なPDCAサイクルの実行であり、そのプロセスだけを捉えればあまりに有益なビジネスの手本と言えよう。 主人公は、時間を惜しんでインターネットを貪り、この現代社会において「正論」とされているありとあらゆる理と、資本主義のルールを体現しているいに過ぎない。 故に、この映画は、決して主人公を断罪せず、さも当たり前のように“ハッピーエンド”を与えているのだ。 おぞましくも独創的に社会の病理性を“爛々と”描き出したストーリーとキャラクター造形が見事だ。 ただこの映画を成功に導いた最大の要因は一にも二にも主演俳優によるところが大きい。 ジェイク・ギレンホールの言葉通りに「異様」な存在感こそが、この映画の肝であり、テーマそのものだったと思える。 劇中、殆ど瞬きをしない主人公ルイス・ブルームの異様な眼差しが、脳裏にくっきりと焼き付いて離れない。 ただし、“フツーじゃない”のはこの男ではなかった。決して曇らせることなく彼の目を輝かせ続けるこの社会の暗闇こそが、“フツーじゃない”のだ。 【鉄腕麗人】さん [ブルーレイ(字幕)] 9点(2016-05-04 08:54:30)(良:2票) 4.《ネタバレ》 いや~ 尻上がりに面白くなっていく。主人公は道徳的にはもちろん、黒人の刑事さんが追及してた通り、法的にもアウトなことしてる正真正銘のクズなのに、「この撮影が上手くいってほしい」と願う自分がいて、不思議な感覚を味わった。第一には金になるということだが、「凄いものを撮った」と称賛され、名誉まで伴ってくる快感もあったんだろうな。ユーチューバーでもなんでもないが、気持ちは分かる。クライマックスとなる最後の現場は圧巻で、しかも完璧に撮りきったという点が、そのままこの映画の満足度に繋がっていくのが見事だ。 【リーム555】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2016-09-30 20:17:21)(良:1票) 3.《ネタバレ》 まぎれもない大傑作ですね。この1年で鑑賞した中では一番素晴らしい作品だったと思う。 ジェイク・ギレンホールは以前から演技派だなぁと思っていたけど、本作もまた見事な怪演を見せつけてくれます。 というか、彼は作品選びも巧いなと思うんですよね。いい脚本、そして自分ならこの役をこなせるぞって吟味してるんでしょうね。 主人公のルイスは、モラルもかなぐり捨てたクズ、というか狂人の域になっていくわけですが、 そんなクズ野郎なのに彼の心情にいつの間にかアイデンティフィケーションしてしまう。それが本作の恐ろしいところ。 最初の頃はその日暮らしをしていた無職で、ひょんなことからパパラッチの現場に出くわし、そこに自分の居場所を見出す。 多少の憐れみもあって最初は見てたけど、そのリアルな人間描写ゆえにグイグイと彼の心情に惹かれてしまうのです。 テレビ局に持って行ったら褒めて使ってもえらたというのも大きいね。承認欲求を満たしてくれた。 ちょっとした踏み外しがどんどん大きくなり、完全に一線を越えることに。でも、自分だったら、、、と思うと怖くなる。 あそこまで踏み外したりはしないと思うけど、多少のいけないことはしてしまいそうな気がする。 ニーチェが言っていた、「 深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」という言葉を思い出す。 自分の中の黒い部分、モラルって結構儚いものだったりするのだなということに気がつく。 こういう主人公だと因果応報で悲惨な結末になるのが普通だけど、それどころかルイスは会社規模を大きくして終わる。 この結末もまた恐ろしい。単なる映画の枠を超えて、現実のジャーナリズムの戒めになってる。 印象深いシーンは数多くあるけど、個人的には事故に遭わされタンカーで運ばれるジョーを見るルイスの顔が目に焼き付いちゃった。 人間のあまりにダークな部分をむき出しで目撃しちゃったみたいで背筋が寒かった。 【あろえりーな】さん [ブルーレイ(字幕)] 9点(2016-04-05 21:59:03)(良:1票) 2.《ネタバレ》 久々に純粋に面白いと思える作品だった。 主人公ルーを演じるために12キロの減量をし、昼夜逆転の不摂生な生活をあえて送り、独特の不健康さと狂気を身につけて本作に臨んだジェイク・ジレンホール。彼の役者としての勘の良さ、器の大きさ、その余りある才能を改めて感じさせられる作品である。 本作はサイコパスの話だと聞いてはいたが、彼は本当にサイコパス(異常者)だろうか? 確かにサイコパスかもしれない。 だが、彼が持つ一面は、誰しもが持ちうる面ではなかろうか? 事故や火事などの現場で、興奮を隠せず(いや、隠しもせずが正しいだろう)カメラを高く掲げ、センセーショナルな場面をひたすら撮り続ける。 一般人にもよく見られる行動ではなかろうか? カメラかスマホかの違いだけである。 ルーは言う。 「人が破滅する瞬間に僕は顔を出す」と。まるで死神だ。 他人の不幸を飯の種にする彼の生き方は、文字通り死神めいている。 しかしそれ以上に、現場でカメラを手にする彼は恐ろしいほど活き活きとしている。獲物を捉えた目は見開き、不敵な笑みで口元を歪ませるその様は、まさに狂気。 さながら不幸や生気を吸い取る死神である。 自らの天職(居場所)を見つけてしまった彼は、もう元には戻れない。 しかしながら、彼の持つ異常性は、果たして本当に先天的なものなのか?私は、彼の生い立ちにも異常性を呼び起こす要因があったのではないかと思えてならない。 作中で彼が家族や友人などの人間関係について言及するのは、ほんの3~4回だ。 最初は、鉄屑工場の社長に自分を売り込む時に「宝くじを当てるにもお金がないと始まらないと母は言っていた」と話す。 次に、ニーナと食事をしている時に「故郷に帰っても誰もいない」と話す。 さらに、ニーナに友達として夜の誘いをかけ、その矛盾をつかれたときに「友達は自分自身へ対する贈り物だろ?」と返す。 また「学生時代は自尊心が高すぎて妥協ができなかった」とも回顧している。 これらの発言から私は以下のように想像する。 彼は家族とは疎遠、もしくは既に家族は他界している。 恐らく彼の母親は厳格で、教育にも熱心だったと思われる。それは彼の発言には品と教養が感じ取れるからである。 彼が関わる人々(取材する住人でさえ)のほとんどは、「Fuck」や「Damn」などの汚い言葉を日常的に連呼している。 しかし彼はほとんど口にしない。 それどころか、彼は助手に対してでさえも「Please」や「Can I~?」を使い一定の尊重の念を表している。 そういった点からも、彼の教養の高さ、知性の高さが窺える。 恐らく、こういった行儀の良さがニーナや上役たちに気に入られる点でもあるのだろう。 しかし、彼は母親の期待に反して学業面では頭角を現さなかった。 故に学歴がない。基本的知能は高いだけに、それが彼にとって大きな挫折と劣等感となったのは想像に難くない。 理想と現実の乖離を認めることができなかった彼は、自尊心を高くして妥協しないでいることで、かろうじて自我を保っていたのかもしれない。 だから友達が出来ない。 知能の高さゆえ人を見下す癖のある彼は、周囲と折り合いをつけられず、友達の作り方が本当に解らなかったのだろう。 それを彼は、自身の努力不足、能力不足だと解釈してしまう。 自分の価値を高めて相手より上に立つことができれば、相手が自分を認め、崇めてくれて、友達になることができると考えたのだ。 その結果が「友達は自分自身(の努力や自己研磨)へのご褒美」という発言につながるのだろう。 彼の孤独は生活感や発言から窺えるものの、その奥に潜むのは、周囲(特に母親)に認められなかった劣等感と、彼を見下してきた周囲に対する復讐心のように感じられる。 ニーナほど年上の女性を好むのも、彼女に母親の姿を投影しているからかもしれない。 彼女に認められるために法を犯しても尽力する姿は、まるで母親に認められたい子どものよう。 反して、自分の要求に対して無条件降伏を彼女に促すのは、厳格な母親に向けたある種の復讐のようにも思える。 哀しい人間である。 これらはあくまで私の想像でしかないが、そういった視点で考えると、私はルーの非情で冷酷で下劣な品性を揶揄する気にはなれない。 本作は、ルーを通じて報道側の人間と視聴者に対する強烈なアンチテーゼなのかもしれない。 私たちは、いつだってルーになり得る。 ともすれば、いつだってルーのような人間を作り出してしまうのかもしれない。 それを肝に銘じなければならないと、私は思った。 【港のリョーコ横浜横須賀】さん [インターネット(字幕)] 9点(2020-10-11 01:07:45) 1.《ネタバレ》 「コソ泥は雇わない」と言い放たれたルーがナイトクローラーとして成功してゆく過程が描かれています。目端が利く行動力であっても最初の機材購入資金が自転車コソ泥によるもので卑しい性根は三つ子の魂百までなのでしょう。この男のサイコパスぶりの極めつけであるリックを処分するやり口がえげつない。同類であるプロデューサーと共に業界のみならずどの世界でもこういう人物が存在するのだろうと思わされるもので、片時も目が離せない傑作です。願わくばこういう輩に天が罰を下さん事を! 【The Grey Heron】さん [DVD(字幕)] 9点(2020-04-17 16:22:12)
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