みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(9点検索)】
6.《ネタバレ》 どうでもいい事だが、自分は井伏鱒二の原作を読んで一週間うなされた経験を持つ。あの凄まじさがこの映画でも完璧なまでに再現されていたら、自分はきっと一ヶ月はうなされていたかも知れない。 それでも、人々の挨拶から始まるオープニングからして不気味な静けさが漂う。嵐の前のような。 まばゆい閃光と共に夥しい窓ガラスが砕け散り、爆風によって一瞬にして路面電車から投げ出され叩きつけられる、遠距離から巨大なキノコ雲を見る瞬間の、川の上から市内に向かう瞬間の、黒い雨がぽつぽつと降ってくる瞬間の恐怖。 吹き飛ばされた女性がうめき声をあげる、火傷で顔が崩れる人々、倒壊しかけた家からの脱出、生き埋めになり屋根の中から瓦礫を投げて助けをこう(あるいわ気がふれてしまった)姿、黒焦げになった遺体が山積みになる市街地、防火水槽に体を突っ込んでいる黒焦げの死体、大火傷を負い腕から皮膚が垂れ下がる子供、その子供が「兄ちゃん・・・」と声を必死に張り上げて青年を呼び止める場面、変わり果てた姿になった子供がやっと弟だと解り抱きつく瞬間の残酷さ、黒焦げになって死んだ赤ん坊を抱きかかえる母親らしき女性、馬の遺体、川の水を飲んでそのまま死んでしまう人々、川を流れてくる多数の遺体、水の中から引き上げた魚(うなぎ?)が元気よく動く姿が異様に見える、引火して爆発する列車。こういった爆発が新たな火種となって広島は尚も焼き尽くされていったのだろう。トラックに積まれる遺体・・・こうして書いているのも恐ろしい映像ばかりだ。 だが、焦点は原爆の惨禍ではない。原爆後の、戦後の後遺症に襲われる人々の叫びや苦しみに重点が置かれる。戦場から帰ってきたタツが敵襲に怯える姿の恐怖、あの日の恐怖を思い出して泣き叫び、次々と後遺症によって死んでいく人々。娘の未来に絶望したのか、狂ったように「結婚するな」と繰り返す母親、それに何も出来ない無力さに打ちのめされる夫として・父親としての重松。 かつて原爆の惨禍と後遺症で苦しむ人々を描いた作品は幾つも存在する。 今村昌平のこの作品は戦後数十年だからこそ、あの日を直接経験しなかったからこそ描けた作品だが、今までの作品が描けなかった限界を超えているとは思えない。 確かに原爆後遺症で嘔吐するシーンや髪が抜けていくシーンは凄みを感じたし、デジタルニューマスター版のDVDに収録された矢須子のその後をカラーで描いた映像の強烈さ。 しかし、たどり着いた後に亡くなった会社の同僚の姿。顔は白い布で覆われているし、「黄色い水を吐いたとたんに死んでしまった」という事が口で語られるだけ、白い布の下をハッキリ見たのも彼らだけ。重松がお経を読み上げる場面も、遺体は既に燃え盛る炎の中であり、跡に残った白骨だけが静かに語る。 女性の裸にしても、新藤兼人の「原爆の子」が爆風で衣服を剥ぎ取られ乳房を丸出しにした女性を描く事で惨禍をより際立たせていたのに対し、この映画は女性の裸体はほとんど描写されない。女性たちが汚れた服を脱ぎ体を洗う場面も、首というより鎖骨から下は水につかり映されない。 冒頭の徹底的な描写に比べると、観客にその過程を見せない必然性は何なのだろう。重松がお経を頼まれる辺りから、物語は何処か抑圧に向かっていった気がする。 今村昌平はアニメ映画「はだしのゲン」の凄まじさを参考にしたそうだが、あくまで参考であり、物語は原爆で人生を狂わされた人々のやりきれない姿に心血が注がれる。抑圧された、誰にも理解されないかもしれない苦しみを。病院に運ばれる最愛の人の無事を祈る事しかできない、遠のく姿を見守る事しかできない無力さが・・・。 【すかあふえいす】さん [DVD(邦画)] 9点(2015-06-19 13:54:44)(良:1票) 5.広島長崎の原爆投下から67年が経過しようとしているが、いまだに原爆の傷跡は癒されてはいない。私の子どもの頃(昭和30年代)も原爆症で苦しみ多くの方が亡くなっていった。いつ発病するともわからないまま不安な日々を過ごす人たち、ピカにあって思うように働けない人たち、結婚差別を受ける人たち・・・。映画そうした苦しみの中で生きる人たちの物語で、北村和夫、市原悦子、田中好子らが見事なまでに演じている。特にスーちゃんこと田中好子は近年癌で亡くなったことともダブり非常に痛々しい。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 9点(2012-08-07 17:10:44)(良:1票) 4. ビデオ表紙の「死ぬために生きているのではありません」というコピーに引かれて借りた。 原爆投下後の広島のシーンが、凄まじい。白黒なのでホラー映画のようなグロさから一線を画し、冷静に悲劇と向き合える。 原爆症で、登場人物が一人ずつ、静かに死んでいく描写が、個人の小さな幸せを笑って国家の大義を通すことへの監督の問いかけを感じさせた。 「正義の戦争より、不正義の平和のほうがマシ」という台詞が、今でも私の中で引きずっている。 【たまお2】さん 9点(2003-05-15 00:20:04)(良:1票) 3.《ネタバレ》 後世に残したい映画とはこういう映画だと確信を持って言えます。始まって白黒映画で驚きましたが、その演出も核兵器の凄惨さを教えてくれるのに役立っていると感じました。 核爆弾の二次的被害の大きさはここまで及ぶのかと想像を超えていました。被害がいつ出てくるかという不安感に苛まれる気持ちが劇中通して伝わってくるし、他人には分からないことを教えてくれます。苦しんで生きることの辛さ、どれ程大変だろうと想像を絶します。 また登場人物の多くは、他人に迷惑を掛けたくないという日本人らしい性格で描かれており、感情移入しやすく親近感を持ってみることが出来た気がします。 時に、皆が他者の気持ちを慮るあまり物事が上手く進まないことがありますが、それって不合理ですが素敵なことだと思います。そんな心を持って生きていきたいと改めて思いました。 【さわき】さん [地上波(邦画)] 9点(2016-12-21 18:43:35) 2.広島、長崎の原爆投下から60年近くも経とうというのに、今もなお被爆の後遺症に苦しんだり、いつ原爆症が出るか不安を抱えながら生活している人々が全国に29万人(被爆者健康手帳保持者の数)もいるという。多量の放射能を浴びるということは本当にオソロシイことで、ちょっとした体調不良でも恐れおののかねばならないと言います。このような苦しみはとうてい被爆者にしか分からないことであろう。俳優達の淡々とした好演も手伝い、平凡な市民の日常というフィルターを通し原爆症の恐ろしさが見る者へ静かに伝わってくる。川又昂の乾いたカメラワーク、武満徹の不安を煽る音楽ともに印象的だが、何よりモノクロ映像というのが良かった。全世界の人々(とくに米国)へ原爆の恐ろしさを訴え続けるためにも、永遠に残すべき映画作品です。 【光りやまねこ】さん 9点(2004-05-30 21:59:50) 1.「何故、戦争はいけないと思う?」その答えが、実にシンプルに描かれている。アチコチから理屈を引っ張って来て、朝から晩まで議論する必要なんて無い。そう思わされる。 【ぽろぽろ】さん 9点(2003-08-07 11:06:56)
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