みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(9点検索)】
19.《ネタバレ》 内田吐夢監督の晩年の代表作となるサスペンス映画。昔から見たいと思っていた映画だったがやっと見ることができた。三時間長という大作ではあるが、内田監督らしい重厚な演出も相まって、その長さを感じることなく、すぐに引き込まれたし、見終わった後には映画二本分を一気に見たような満足感となんとも言えない余韻が残る見ごたえのある映画だった。台風の中で起こった強盗放火殺人事件の犯人の一人であった男・犬飼多吉(三國連太郎)と娼婦である杉戸八重(左幸子)が出会うところからドラマが始まっているが、この二人が最初に出会うシーンでのおにぎりを食べている八重を見つめる多吉の表情、そしてその八重から手渡されたおにぎりをむさぼるように食べる多吉の姿が本当にリアルで、これだけで人間の本能というものを感じることができるし、これだけで終戦間もない頃という描かれている時代性も見て取れる。そんな多吉が八重と一夜を共にし、強盗で得た大金の一部を苦しい生活を送っているという八重に渡して去るが、これがのちのち本作のテーマである人間の善意とはなにかということにつながっていく構成がうまい。ここから先は八重の人生を追うというのが見ていて意外に感じたのは事実だが、多吉にいつか再会してお礼が言いたいという思いを抱えて生きていく八重の強さや、彼女の多吉への思いがじゅうぶんに伝わってきて、この部分も見ごたえがあった。そしてそんな思いを10年間抱き続けて生きてきた八重の運命はあまりにも悲しい。そして、そんな八重を演じる左幸子の演技のすごさ。とくに、多吉の爪を体にあてているシーンなどは、本当に気持ちが入っているのが見ていて分かるほどで、役を演じるとはどういうことなのかを考えさせられるし、八重が成功した多吉(樽見京一郎)と再会するシーンの緊迫感は内田監督の演出もそうだが、やはり演じる三國連太郎と左幸子の演技力あってのものだと思うし、なかでもこのシーンでは「やっぱり、犬飼さんだ!」と叫ぶ八重が忘れられない。そしてもう一人、本作でシリアスな役柄に初めて挑んだという強盗放火殺人事件を追う刑事を演じた伴淳は撮影中内田監督からいろいろ厳しく言われたようなのだが、見事にそれに応えて枯れた演技を見せていてこちらも素晴らしかった。八重が殺されて以降も面白く、とくに高倉健演じる刑事に樽見が取り調べを受けるシーンは演じる同じ二人が対決する役柄で共演していた同じ内田監督の「森と湖のまつり」を2か月ほど前に見ていたこともあって、なかなか興味深かった。そして、多吉が船の上から身を投げるラストの衝撃・・・。多吉は何を思いながら海に飛び込んだのかと考えると非常に切なく、そこにかかる冨田勲の独特な音楽が最初に書いたようになんとも言えない余韻を残す。まさに傑作・名作とはこういう映画を言うのだと思う。最後にもう一度、本作の杉戸八重を演じる左幸子は本当に素晴らしかった。本作はやっぱり左幸子の映画でもある。 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 9点(2019-08-18 17:53:42)(良:2票) 18.《ネタバレ》 W106方式という撮影技法のためか、映像が荒く製作年よりも古い作品に見える。 この方式の影響か解らないけど、軽快で躍動感があるカメラワークが面白い。 トラックが到着して、そこから警官隊がワラワラ降りてきて、そのまま舟に乗り込んで出港までを勢いよく撮り流す。 東京の下町の人混み。そこで客引きをして働く八重。警官が捕物を始め、逃げるタチンボ達。柱に隠れてやり過ごす八重。飲み屋街に逃げる頃にはカメラは屋根の上。後ろを振り返りながら逃げる八重、ゴミゴミした飲み屋街…ここまでワンカット。 こんななめらかに動きのある映像、当時どうやって撮ったんだろう? イタコの話は訛りが強くてよく解らないけど「(三途の川を渡ってしまえば)我が戻る道は一筋もござらい」のように言っている。八重のマネ「戻る道無いぞ~、帰る道無いぞ~」。イタコを知らない多吉は、その言葉を自分の運命と重ねたんだろう。多吉にとって津軽海峡が三途の川。 共犯の二人は多吉が殺したんだと思う。 帰り際「今度いつ来るの?」と言う八重、戻る道がない多吉。お代の50円とは別に渡した34,000円は、殺した二人への供養の意味もあったと思う。犯した罪を善行で償おうとしたんだろう。その後も善行を重ね続ける。臆病だから罪を認める勇気もない。 樽見と名を変え、自分なりに罪を償って、余生を過ごしていたところに八重が来る。この時の樽見の落ち着き具合は、見ていて多吉とは別人じゃないかと錯覚させる。忘れたい過去の自分を10年も探していた女。衝動的な殺人。 10年前の自供は、もしものときのために前々から用意していた筋書きだろう。 何とか助かる道を模索する樽見に弓坂が見せる舟の灰。善行で罪を償ったつもりでいた自分を、10年も追ってきた人間がここにもいた。 「戻る道無いぞ~、帰る道無いぞ~」 八重殺しを自供することも、隠し通すこともしない、出来ない。 現世でも地獄でもない三途の川、津軽海峡に身を投げる多吉。臆病な善人らしい最後かもしれない。 【K&K】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2021-05-28 11:13:29)(良:1票) 17.《ネタバレ》 重厚な映画。戦中戦後の壮絶な時期と、そこにおける人間の悲哀を、一本の事件を軸にして10年という歳月にまたがって描き出している。 ■前半の事件から、八重に助けられて八重が東京に出ていくまでのシークエンスは、人間の苦境、愛、悲しさ、欲望、そうしたものがうまく映し出される展開。そして後半が、まさに犬飼が捨て去ったはずの「過去」を知る存在として八重が現れ、彼女のそのけなげな気持ちが逆に当人の死を招くという皮肉。ラストの飛び込みは戦慄。 だが、10年後の展開は、特に書生を殺すところなどあまりに乱暴だし、犬飼の幼少期と事件前後の心境はもっときちんと描き出してほしかった。警察の動きはサスペンスとしてもぞんざいだし、人間ドラマならばもうちょい縮めていい部分。 ■他のレビュワーさんも触れているが、やはりこれは「砂の器」と比較したくなる作品。隠しておきたい過去、過去を捨て去っての成功、過去を知る善良な人を殺す運命といった展開は、まさに「砂の器」を彷彿させられる。 しかし、だからこそ、だからこそ10年後の八重殺しをめぐる犬飼の心境と、最初の事件までの犬飼の苦境とをもっと描き出してほしかった。 ■とはいえ十分満足の作品ではあるが 【θ】さん [DVD(字幕)] 9点(2011-02-13 00:13:21)(良:1票) 16.《ネタバレ》 日本映画史上のベストテンを選ぶ際、必ず食い込んでくる名作中の名作をやっと鑑賞することができた。 3時間を超える大作のため、なかなか観る機会を得なかったが、噂通り3時間という時間があっという間に過ぎてしまう力と流れのある名作であった。 監督は戦前からの巨匠内田吐夢。 この監督の作品を観るのは自身初。 音楽に富田勲。 本作のラストシーンは相当な余韻を残すものであったのだが、それはこの人の音楽によるところも大きいであろう。 そして主演に三國連太郎。 その名演技にはただ敬服するのみ。 『釣りバカ日誌』での三國連太郎しか知らないと、なかなかこの人の偉大さは分からないかも。 その他、左幸子、伴淳三郎等の脇役陣も一世一代の迫真の演技をみせている。 本作はミステリーとして観てしまうと、納得のいかない部分が多々ある。 そういう意味では完璧な作品とはいえない。 しかしながら、上記俳優陣の迫真の演技が、本作を“日本映画史上の名作中の名作”に押し上げている。 特に、中盤の左幸子が三國を久しぶりに訪問するシーン。 ここが最大の見所。 この一連のシーンはゾクゾクしたし、ワクワクしたし、感動したし、両者の演技に惚れ惚れもした。 しかし後半は、妙に強引な推理展開が目立ち、やや尻すぼみ。 小説は読んでいないが、文字で丁寧に書かれるはずであろう推理小説的な部分が、駆け足で進行されてしまうのだ。 しかししかし・・・ ラストシーンは圧巻だった。 これは凄い。 観ていて口がアングリしてしまい、開いた口がふさがらなかった。 これはこの3時間以上に及ぶ大作を最後まで観た人へのこれ以上ないご褒美だ。 ややや、まさに衝撃です。 本作は先にも述べたように、ミステリーや小説の映画化として観ると味気のないものになり、魅力は半減してしまいます。 俳優陣の熱演、効果的に挿入され衝撃度を劇的に高める音楽等に焦点を当てつつ、ストーリーの根底に流れる“人間の愚かさと哀しさ”に目を向けてみるといいように思います。 いずれにしても本作は紛れもない名作です。 そして“日本映画史上の名作中の名作”、これも決して大げさなふれこみではありません。 観るチャンスがあれば、絶対に観るべき作品ですね。 【にじばぶ】さん [ビデオ(邦画)] 9点(2007-09-02 22:37:29)(良:1票) 15.《ネタバレ》 リアリズムを基調とした、真の太い重厚な人間ドラマに仕上がっていて、まさに脱帽といった感じでしょうか。レリーフ処理でサスペンスを盛り上げるあたりも手抜きがないのですが、何と言っても、八重が東京に出てきたところで映し出される戦後闇市の風俗描写が秀逸です。特に、八重が客引きをしていて捕まりそうになり、店に逃げ帰ってくるシーケンスでのロングカットが印象的。高い位置から空を飛ぶような俯瞰の移動によって、切迫した緊張感が漂い、素晴らしいリアリティを生んでいます。また、三国連太郎演ずる犬飼が握り飯をガツガツと貪り食う生命力に満ちたカットも素晴らしい。物に飢えた人間の凄まじい有様。これらを泥臭いまでに表現した、ズシリと重い映像の数々がこの映画の性格そのものといえるでしょう。戦後日本の物質的な「飢え」。ただ、この映画の「飢餓」とは、こうした物質的な「飢え」ではなく、心の「飢え」のこと。嘘が嘘を呼び、嘘を嘘で塗り固めなければならない男の悲劇。嘘をつくのは相手を信じることができないからでしょう。解ってもらえないという、この心的な「飢え」によって、警察はもちろん、世間も、そして自分を信じてくれる人さえも信じることができなくなる。到底、愛情に気付くはずもなく、滅びの道を突き進むことになります。もしも、この心的な「飢え」が、戦争による物質的な「飢え」によってもたらされたものであると考えれば、この映画は完全に反戦映画としての様相を呈してきます。しかし、ラストで犬飼が真実の全てを闇に葬り去った瞬間、観ているものは思わずそこに立ち往生してしまい、何が真実なのか、事の真相が解らなくなってしまうのではないでしょうか。そして犬飼と同じように登場人物の全てを信じられなくなるような思いに一瞬かられるのではないでしょうか。解ってもらえない、人を信じることができないという、心的な「飢え」は、決して物質的な「飢え」によってのみもたらされるものではなく、そもそも人間の業のような気がします。戦争や物質的な「飢え」を知らない自分にもこうした心的な「飢え」が確かにあるのです。人が人を完全に信じることは難しい。それでも人は人を信じずには生きていけない。衝撃のラストは、この人間の業を一瞬にして語らしめる見事な幕引きだと感じました。傑作です。 【スロウボート】さん 9点(2004-04-06 00:34:09)(良:1票) 14.中学生の頃に原作を読み、酌婦八重の情の深さに涙した。以来、水上勉の薄幸の娼婦を扱った小説をいくつか読んだが、「飢餓海峡」の杉戸八重が僕にとってのNo.1であることは変わらなかった。<ある意味で僕の女性観に決定的な影響を与えたといっても過言ではないかもしれない> 映画を観たのはちょっと先の話。イメージというのは恐いもので、左幸子もそれなりにがんばっていたが、ちょっと狂信的な感じが立ちすぎて、僕の八重のイメージとは違うし、原作をかなり端折った<東京での八重の暮らしぶりとか>途中の展開にもすんなり入っていけなかった。原作と映画の関係というのは難しい。映画だけ観れば、この作品が名作であることに全く異論はないが、原作に感動し、そのイメージが出来上がってしまうと、原作に忠実な映画というのは、作品の単なる短縮版のような感じがしてしまうのである。<長編小説の場合は特に> 作品として完成されたもの同士を同列に観てしまうとそうなってしまうのかな。正直言って、こればっかりは仕方がないことかもしれない。ただ、映画ということで敢えて言えば、画面から漂う雰囲気がとても切なく、伴淳の名演もあって、期待以上に見応えがあったことは間違いない。 【onomichi】さん 9点(2004-01-25 18:40:18)(良:1票) 13.《ネタバレ》 5回目の鑑賞でも、最後まで目をくぎ付けにさせるのは、内田吐夢監督の練られた映像と役者の重厚な演技によるものと思う。現代の映画のようにあわただしく騒がしく早口で何を言っているのか聞き苦しい映画ではなく、それこそ水上勉の小説をたんたんと読むような感慨がある。三国の映画をすべてみた訳ではないが彼の代表作ともいえる名演技だし、伴淳の朴訥とした味のある名刑事役は高倉健もかすんでしまう。惜しむらくは、女を強く抱きしめるだけで死んでしまうのかという疑問と、犯人が船からたやすく飛び降り自殺できるのかという疑問が残りますが、それらをおしてまでも、見るものを最後まで堪能させるという映画本来の使命を十分満たしており、必見の価値があります。 【黒部の太陽】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2021-02-09 10:05:03) 12.《ネタバレ》 タイトルのイメージから、格差だ貧困だ今こそ共産主義だ的な説教臭い作品ならイヤだなと思っていたのですが、さにあらず。最初から最後まで重厚でサスペンスなエンターテイメントでした。 とにかく、1つ1つのシーンやセリフにまったくムダがない感じがいい。すべて有機的に絡み合い、重みがあり、リアリティもあって、結末までグイグイ引っ張ってくれます。特に、何を考えているかよくわからない三國連太郎と、正義感溢れる高倉健のやりとりには迫力があります。 プロット的には「砂の器」とよく似ていますが、かの作では加害者の父親役だった加藤嘉が、本作では被害者の父親役。こういう枯れた老人役で、右に出る人はいないんじゃないでしょうか。今ならMr.オクレくらいかなと。 ただし、肝心の「飢餓」の意味が今ひとつよくわからない。貧しいといえば日本人全員が貧しかったわけで。三國連太郎の生い立ちもセリフだけで済まされたので、「それがとうした」という感じ。このあたりが、「砂の器」とちょっと違うところです。 【眉山】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2020-06-02 02:00:42) 11.《ネタバレ》 日本映画の黎明期から活躍を続けた内田吐夢の傑作サスペンス。 マキノ省三が日本のD.W.グリフィス、 衣笠貞之助が日本のセシル・B・デミルなら、 内田吐夢は日本のキング・ヴィダー! どんな地味な題材でもスリルを帯させダイナミックに描いてしまうのだ。 「土」や「限りなき前進」なんか正に究極の地味映画。 本作は3時間という長さを感じないスリルに満ちたドラマ。 戦後の台風や火災から一つの殺人事件が浮かび上がってくる。 強盗事件が様々な人間や街一つを焼き尽くすほどに膨れ上がっていく。 だが一度強盗に手を染めた人間は何処まで行っても警察の影が付きまとう。 女を助けた男、愛されていると信じた女、それぞれの顛末。 「限りなき前進」「土」「大菩薩峠」と多くの名作を残した吐夢監督。 本作は邦画黄金期の終焉が迫った65年に制作された。 水上勉の原作を映画化した作品はこの後も多く作られたが、原作の緊迫感を如実に映像化した作品はこの内田吐夢の映画だけであろう。 【すかあふえいす】さん [DVD(邦画)] 9点(2014-12-18 19:10:59) 10.《ネタバレ》 時間の長さが気にならない映画でした。主役2人の男女の人格形成に影響を与えたはずの過去の貧困状態があまり描かれていませんが、観ていると自然に伝わってきます。警察の捜査や取り調べシーンが雑に感じますが当時を思えばそれが正解なのでしょう。原作未読ですが、この映画では内地に渡るまでの2件の殺人事件の真相やラストで思い切った行動に出る主人公の心情が最後まで明かされません。それも余韻を残してくれます。刑事役の高倉健のセリフ下手や低予算のためか海上シーンのしょぼさも目につきますが、それをカバーしても有り余る面白いサスペンスミステリードラマでした。 【ProPace】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2014-09-16 19:40:03) 9.《ネタバレ》 <原作未読>戦中、戦後を生き抜いた刑事たちから見ても犬飼多吉の生い立ちは悲惨なものだったという。それゆえ多吉の言葉には説得力があるが、この映画はそう見せておいて、真実は逆でした!と来るのかと思った。でも原作ではそうじゃないらしいので、以下勝手なことを書く。横領は立派な犯罪だが、それを元手にし財を築いた樽見は大金を社会に還元にしている。八重が訪ねて来たときの心中は察するに余りあるが、人を殺める理由には味村刑事の推理の方がしっくりくるのだが・・・。何はともあれ見応え十分の傑作であることは間違いない。 【リーム555】さん [DVD(邦画)] 9点(2010-10-20 21:33:00) 8.なんと言ってもロケーションの素晴らしさと清濁併せ持った人間描写の緻密さに驚かされる。堂々たる和製サスペンスの珠玉。蛇足ながら、お茶なしでオニギリ二個をはぐはぐと食らう三國連太郎には、ハラハラさせられてしまった。ホント、蛇足。 【aksweet】さん [DVD(邦画)] 9点(2009-08-30 21:36:21) 7.《ネタバレ》 巨匠内田叶夢による邦画史上屈指の「大作」である。この映画を観て私が感じるのは芥川「蜘蛛の糸」。犬飼多吉にとって津軽海峡の暗い波頭はまさに地獄の血の池であったのだろう。そして娼婦八重はまさにそんな糸を紡ぎ出す蜘蛛であったろうし、八重にとっても犬飼は一時でも娼館を抜け出せるきっかけを作ってくれた、まさに「同じ地獄の境遇」から生還できた同士であったに違いない。だが時が経ち篤志家となった彼にとって彼女の存在は過去の罪を思い起こさせてくれるだけの邪魔者=地獄からの使者に感じられた、という悲しさ。ラスト犬飼が飛び込んだ海。それは「地獄へ墜ちていく」事の意思表示であり愛を捧げてくれた薄幸な娼婦への贖罪であったに違いない。役者は皆好演だがやはりこの映画は人間の持つ清濁性を存分に発揮した役者三国の代表作として挙げておきたい。といって私アジャパーだけではない役者伴淳三郎も、左幸子も凄いと思うんですよね。左演じる八重の犬飼への感情のほとばしり(切った爪を抱きしめ悶えるあのシーン!)、または皆様仰る犬飼との再開(「いぬが~いざ~ん!」)。刑事弓坂が犬飼に指し示す「砂」のシーン。まさに名演のオンパレード。点数は前半の凄まじい展開から後半に進むにつれ観賞疲れを感じてしまう処を考慮して。ここでは健さん、たんなるおまけだな。 【Nbu2】さん [映画館(邦画)] 9点(2008-12-30 14:08:38) 6.スケールが大きく人間ドラマとしても完成度は高い。 【PAD】さん 9点(2004-10-13 15:11:15) 5.《ネタバレ》 戦中戦後の苦い空気を吸ってきた役者達の放つ演技は圧巻。 本物だ。 三国の空腹の演技一つとっても「目の前にあるものを喰わなくては死ぬ。」という状況を知らぬものには出来ない演技だと思った。 左幸子もあの時代、女一人何かにすがらずには生きてゆけない人間の弱さ、切なさを愛しい人の爪を握り締めて見事に表現していた。 伴淳の親子の絆をさりげなく表すシーンも静かに胸に沁みた。 その他の脇役も隅々まで見事だった。 奇妙な人間関係の織り成すドラマを、深い人物描写と安定感のある語り口で観るものを引き込む説得力は強烈だ。 真実はその時代の象徴である「飢餓海峡」の荒波に、全て呑み込まれてしまうというラストも印象的だった。 重厚な演出と映像で、生き残るために必死な「時代」の人間のとある生き様をまざまざと焼き付けて見せた、まぎれもない傑作だと思う。 【Beretta】さん 9点(2004-03-11 01:35:54) 4.映画としての基本がある。 フィルム処理もそう。(ビデオ) 【zero828】さん 9点(2004-02-25 20:51:43) 3.映画が、ある時代と、そこに生きる人々を描き創りあげたものとして最高の到達点のひとつ。 【るーす】さん 9点(2003-06-03 13:32:14) 2.なんといっても左幸子。雇ってもらった女郎屋で大泣きするシーンにはこっちまで鼻の奥がツーンとなってくる。今のテレビ女優にはあんな芝居できないだろうなぁ・・・。左幸子が引っ込んだ後半部分、ちょっとダレてくるのでマイナス一点。それにあの刑事役は健さんじゃなくてもいいしね。伴淳は素晴らしい。 【じゅんのすけ】さん 9点(2003-06-01 18:54:12) 1.《ネタバレ》 実際に起こった青函連絡船「洞爺丸」転覆事故をモチーフにして描かれた水上勉の原作を戦前からの巨匠・内田吐夢が映画化した問題作。犯人・犬飼多吉役の三國連太郎も、弓坂刑事役の伴淳三郎も、娼婦役の左幸子も各々絶品の演技。特にわざわざ御礼を言いに行って殺される羽目になる、左幸子扮する杉戸八重の哀れさには胸が詰まる。最後に連絡船から津軽海峡へ身を投げる樽見こと犬飼とバックに流れる(冨田勲作曲の)荘厳な地蔵和讃が、戦後の重く哀しい現実を慰撫するかの如く響いて深く心に残る。高倉健も出てるが殆ど意味ナシ。 【へちょちょ】さん 9点(2003-01-29 06:11:58)
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