みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(9点検索)】
2.《ネタバレ》 近松門左衛門の「冥土の飛脚」を映画用に再構成したもので、実際に起こった事件を近松門左衛門(片岡知恵蔵)がじかに見聞きし、 一つの作品(浄瑠璃)に仕上げる、という形式をとっている。 まだ映画の全盛期だったこともあり、東映の美術セットが実に見事。 主演の中村錦之助が金と力はなかりけりの典型的な色男(やさ男)を巧みに演じている。 有馬稲子もしっとりとした良い女(遊女)を好演。 圧巻は、二人の逃避行(道行)。場面が一転すると、追われる身となった二人がかばうようにしながら、 落ちのびていく様を流麗な舞に乗せて見せていく。このシーンは本当に美しい。 錦之助が文字通り水も滴るような美男ぶりで、有馬稲子は日本人形のような美しさ。 骨太の「飢餓海峡」を撮った内田吐夢監督に、こんな繊細な一面があるのかと、驚いた。 【kinks】さん [DVD(吹替)] 9点(2015-09-16 02:47:21) 1.タイトルだけ聞くと何だか軽くてヌルそうな感じですけれども、実際は文芸調の重みのある作品。悲恋の物語がじっくり描かれていき、じっくり描かれるからこそ、物語が後半の主人公たちが追い込まれてく姿に収束していく時のその絶望的な流れに、格別なものがあります。主人公の行動は、客観的に見ればいたって浅はかでどうしようも無いものではあるのですが、ここではその短絡的で直情的な行動が、絢爛たる花街の完成されきった世界の描写の中で対比的に描かれることにより、その無力さ、果敢なさが浮き彫りとなって我々に迫ってきます。圧倒的な非人情の世界の中に放り込まれた、無力な二人の姿、その世界に抗おうとして敗れ去る二人の姿。そしてその世界と、二人との間に位置する観察者としての近松門左衛門の存在が、またこの映画の物語に厚みを加えています。ラスト、彼によってこの事件が脚色された文楽が上演されている。(あるいは実際の事件の顛末を知ることなく)この舞台上の物語に魅了され感動している観客たちの姿と、実際の事件と自ら脚色した物語との違いを知る近松の最後の表情。彼の表情の奥にある心の慟哭こそがこのシーンの多層性、とも言えるのですが、それにとどまらず、現実の事件に触発されてひとつの作品が作られることそのものの感動もまた、ここにはあります。実話を元にしたなんて言うと、得てして「表面的」とか何とか批難されたりもするのですが、実際の事件を作品でそのまま再現する「リアリティ」が重要なんじゃなくって、それこそ様式化された人形劇へ置き換えちゃったってまるで構わない。実際の事件におけるある感情の一面、それは単なる一面に過ぎなくとも、作品として再構築され普遍化されて、人々の感情へと刻み込まれて永遠化していくということ。その感動ですね。 【鱗歌】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2014-11-26 01:39:21)
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