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【クチコミ・感想(9点検索)】
4.市川崑は「女たちの帝国」とでも呼ぶしかない世界を好んで描いてきた。それの大映時代の代表作を『ぼんち』とするなら、東宝時代がこの『細雪』だろう。大映時代には『黒い十人の女』もあるし、東宝時代の『犬神家の一族』もその系譜だけどね。じゃれあう姉妹たちで閉じられた世界、夫たちも足を踏み入れられない聖域。雪子が溺愛するのも甥ではなく姪であり、女の血の流れだけで守られた上品な淫蕩さが支配する結界だ。この宇宙が崩壊していく物語なんだけど(いや、散り散りになっても決して崩壊しないという物語なのか)、あからさまな腐臭はたたせない。啓ぼんでさえ、変な言い方だが実に趣味よくすさんでいく。雪子の見合いの相手はどんどん落ちていき、妙子の相手の質も悪くなっていくのだが、そのことが蒔岡姉妹を汚せない、雪子の高貴さを高めるばかり。こういう不可思議な帝国を観客に納得させるのは、女優たちの力で、佐久間良子の三枚目ぎりぎりの「愛すべき人物」ぶりなんかが実にいい。最初キャスティングが発表になったとき、吉永小百合の雪子は違うだろ、と思ったが(現実の女優が雪子を演じるということ自体無理な話なのではあるが)、観てみると、なんか納得できる出来になっている。下手に雪子らしさを強調するとオカルト娘っぽくなっちゃうし、何も演じなければただの愚図になってしまう、その程度が良い。鮎男との見合いのあとフェイドアウトになるときの曖昧な表情。たしかに軽蔑があって、それを隠してもいないのだけど、棘がないというか、相手に向かっていない。相手にマゾヒスティックな悦びを与えてあげているような表情。蒔岡姉妹とはつまりこういう表情を作れる人なんだ、と得心させられる。「細雪」という作品の本質が一瞬であらわになった場面だった。「女性映画」と並んで崑で優れているのが「無内容な純粋娯楽作品」だと思ってるんだけど、それの大映時代の代表作が『雪之丞変化』、東宝時代の代表作が「金田一もの」。そういう私にとって、本作で「本家」とか「分家」とかの活字を画面に目にすると、あのシリーズを思い出しホロッとしたものでした。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 9点(2012-08-01 09:58:38)
3.《ネタバレ》 いやーよかった。大阪弁でおっとりした吉永小百合も石坂浩二も。皆さりげない演技で心地がいい。そして失われてしまった日本らしさがこの映画の中にはある。人も家も服も道具も変わったいまの日本の良さって何があるんやろ。ふと自分の部屋を見渡して情緒の欠片も見つからないことに驚いてしまう。とまぁ危うく懐古主義に陥ってしまうぐらいの作品。全編通じてユーモアのセンスも良く、色使いもなかなか。作品としては140分で一段落ついたものの、昭和13年というとこれから戦争が激化するわけで、観終わった後になんともいえない哀しさが残る。唯一、最後の雪はもっと綺麗に撮ってほしかったけど 【stroheim】さん [ビデオ(邦画)] 9点(2006-04-18 07:58:56)
2.《ネタバレ》 観終わった後もしばらくウットリしてしまう世界観。映像の美しさも勿論やけど、女優陣の京都弁も艶やか。季節が春から冬へと移り変わり、全く違った趣を見せるように、時代も刻々と変化し続け、家柄とか、女性の人生観とかの価値観も変わっていく。妙子のように自由に恋愛して、自分らしさを追及する生き方も素晴らしい。でも、雪子のように慎ましやかで奥ゆかしく、それ故、何考えてんのか分からんような所がありつつも、物事の本質をしっかり見抜いて自分の人生を選んできた古き日本女性達への賛美もまた感じた。あと、石坂浩二は本当に難しい役どころを見事に演じていたと思う。桜の花はマジで綺麗やったな。こんな桜初めて見たかも。まさに乱れ咲き。 【ハッシーふりかけ】さん [ビデオ(邦画)] 9点(2006-04-17 16:13:25)
1.日本人の美意識を四季の移ろいに重ね合わせ、これほどまで美しく映像に焼き付けた作品を僕は他に知らない。吉永小百合がふわふわしたとらえどころのない三女雪子を的確に演じて極めて魅力的。妹(古手川)に足の爪を切らせていた彼女が、突然の義兄(石坂浩二)の来訪に着物の裾を直すシーンが妙に艶っぽい。岸・佐久間は流石の貫禄。伊丹十三も小心物のキャラクターを巧く演じてみせてくれる。第二次大戦開戦前夜の、忍び寄る戦争の影をところどころに点出させているきめ細かい演出も見逃せない。 【放浪紳士チャーリー】さん 9点(2004-10-17 12:37:41)
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【点数情報】
Review人数 |
37人 |
平均点数 |
7.16点 |
0 | 0 | 0.00% |
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1 | 1 | 2.70% |
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2 | 0 | 0.00% |
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3 | 0 | 0.00% |
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4 | 1 | 2.70% |
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5 | 2 | 5.41% |
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6 | 6 | 16.22% |
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7 | 12 | 32.43% |
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8 | 8 | 21.62% |
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9 | 4 | 10.81% |
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10 | 3 | 8.11% |
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【その他点数情報】
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