みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(9点検索)】
17.《ネタバレ》 この映画「チャイナタウン」は、レイモンド・チャンドラー、ロス・マクドナルドへのオマージュを込めたハードボイルド探偵映画の傑作だと思います。 この映画「チャイナタウン」の舞台となっている1930年代のロサンゼルスは、アメリカ社会が東海岸から西海岸へと発展の波を広げて行った時期に、太平洋岸最大の近代都市を形成しつつありました。 だが、そうした急速な膨張の反面には、かなりの無理がまかり通って来るもので、当然の事ながら、そこには不当な利権や醜い政治的な裏取引が蔓延して来ます。 この映画は、そのような時代背景の中に、それぞれの数奇で不条理な宿命とでも言うべき運命を背負って、哀しみの中で生きる人間たちの苦悩、葛藤をスリリングに、尚且つドラマティックに描いています。 レイモンド・チャンドラー、ロス・マクドナルドという二人のハードボイルド・ミステリー作家へのオマージュを込めて、しかも、ロバート・タウンのオリジナル脚本によって、それまでのどの映画よりも1930年代のロサンゼルスのハードボイルド探偵映画らしく映画化されていて、複雑で錯綜する話の内容をハードボイルド的なサスペンスでたたきこんでゆくので、一時たりとも画面から目が離せません。 ストーリーや当時の風俗やしぐさが、それらしいだけではなく、この映画製作に携わった人々は、"ハードボイルド的世界の精神"をきちんとつかんでいるし、主役の過去を秘めた虚無的な私立探偵ギテスを演じるジャック・ニコルソンの"シニシズムと人間臭さ"がまた映画好き、探偵小説好きにはたまらない魅力があります。 この映画は、1930年代のロサンゼルスの陽光きらめく太陽の底に淀む、退廃的なムードと虚無感に満ちた、陰湿な世界が展開されていますが、脚本のロバート・タウンは、そのレイモンド・チャンドラー的ハードボイルドの世界を見事に再構築していると思います。 監督は「戦場のピアニスト」、「ローズマリーの赤ちゃん」の名匠ロマン・ポランスキーで、彼は1933年生まれのポーランド系ユダヤ人で、第二次世界大戦中にその子供時代を過ごし、母親をナチスの強制収容所で失うという、悲惨で哀しいトラウマを抱えた過去を持っています。 この映画のラストの30分の思いがけない意表を衝く結末については、これは有名な話ですが、監督のポランスキーと脚本のロバート・タウンで意見が分かれ、ポランスキーの主張する不幸な結末でなければ、この映画のテーマが台無しになってしまうという意見が通り、この結末になったそうですが、やはりラストはこの結末以外には考えられません。 警察も手が出せない政財界の大物であるクロス(ジョン・ヒューストン)が、「時と所を得れば人間は何でも出来るのだよ」という神をも恐れぬセリフは、ポランスキー監督の人間不信の言葉でもあるような気がします。 このクロスを「マルタの鷹」等のハードボイルド映画の監督でもあるジョン・ヒューストンが、実に憎々しげでアクの強い人間像を演じて見事です。 そして、クロスの娘であり、また女でもあるという"複雑で哀しい宿命を背負い、妖気と虚無的で退廃感の漂う"人妻イブリンを演じるのが、フェイ・ダナウェイで、彼女が十字架として背負う哀しい宿命は、彼女の左の緑の瞳の中の小さな黒点として象徴されています。 彼女の瞳の中にその黒点を認めた時、共に暗く哀しい過去を持つギテスとイブリンは、宿命の糸で結ばれます。 しかし、その愛はほんの束の間で、急速に回転し出した運命の歯車は、一気にカタストロフィへ突き進んで行きます。 車でロサンゼルスから逃れ去ろうとするイブリンを背後から撃った警官の銃弾が撃ち抜いたのは、彼女の左目である事を我々観る者は見落としてはいけないと思います。 映画の題名である"チャイナタウン"が、この映画の舞台になるのは、この最後の10分程の短いラスト・シークェンスにすぎませんが、なぜ、このチャイナタウンを映画の題名にしたのかという事を考えると、"チャイナタウン"は、アメリカの街の中の異境であり、迷路のようなこの街の中に、ポランスキー監督は、ポーランドでのゲットーと同じ安らぎを見出し、併せて、自分の妻のおぞましい惨劇を引き起こしたアメリカへの批判をしているとしか思えてなりません。 紙屑が舞い、野次馬が去って行く薄汚いチャイナタウンの夜のシーンは、哀しさと怒りを込めた、静かな中にも深く、優しさに溢れた名ラストシーンだと思います。 【dreamer】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2023-08-24 17:08:11) 16.《ネタバレ》 ロマン・ポランスキーに典型的なハードボイルド=フィルム・ノワールを撮らせるというプロデューサー=ロバート・エヴァンズの目利き力は賞賛すべきです。ロバート・タウンの“優れた脚本の教科書”と呼ばれる脚本と、ノワール的な雰囲気をこれでもかと盛り上げるジェリー・ゴールドスミスのスコア(彼の手掛けた映画音楽のベスト・スコアでしょう)も忘れてはならんでしょう。ジャック・ニコルソンに探偵役がこれほどしっくり演じることが出来るというのはそれまで彼が演じてきたキャラを考えると意外かもしれませんが、歴代ハードボイルド映画に登場する私立探偵の中でベスト・スリーにランクインするのは間違いないでしょう。このジェイクはかつてチャイナタウンを管轄地としていた刑事、その地で女性絡みの事件がきっかけで警察をリタイアした過去があるみたいですが、それを匂わせながらも最後まで詳細を観客に教えない脚本が上手いですね。イヴリンは“何をしでかすか判らん女”というのがキャラ設定だったそうですが、まさにフェイ・ダナウェイにはピッタシの役です。出番は少なかったですけど悪の黒幕であるジョン・ヒューストンもなんか凄い存在感でした。劇中彼がニコルソンと対話している中で「うちの娘と寝てるか?」と言うセリフ、彼のアドリブだったのかもしれませんが脚本上のセリフだとしたら傑作な楽屋オチです。ニコルソンとジョンの娘アンジェリカ・ヒューストンが当時同棲していたのは周知でしたからね、この時ニコルソンが微妙な表情で返すのも傑作です。 ハードボイルド映画のストーリーが判りにくいのは一種の伝統芸みたいなものですが、その中でもこの脚本はましな方じゃないですかね。それでも“誰がダイアン・ラッド(アイーダ:偽イヴリン)を殺したのか?”なんて、気にしたら夜も眠れなくなっちゃいます(笑)。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2022-05-21 23:19:22)(良:1票) 15.《ネタバレ》 久々に見返したが面白い。音楽も相当いい。出てくる役人は皆、カネまみれで買収されており、こんなもんなのかな〜、とため息が出てしまった。ニコルソンはアタマの切れるこういう役が似合いますね。ラストに判明するヒロインの生い立ちとあのクラクションが鳴り響くシーンはずっと記憶に残る。 【SUPISUTA】さん [DVD(字幕)] 9点(2016-04-09 09:55:36) 14.《ネタバレ》 観終わっての印象はやっぱり、この「脚本」のすばらしさに圧倒されるところがあるのだけれども、場面によっては、その脚本が絵をリードしすぎているように感じるケースもある。でもわたしはラストのシーンでの三人の男、警官のひとりが去って行くフェイ・ダナウェイの車に発砲しようとして、それを脇にいたジャック・ニコルソンがまずは止める。するとその脇の警官がニコルソンのとなりに出て来て、そこから車に発砲する、このシーンの演出が大好きである。どこか、「歌舞伎」の世界の所為を思わせられたりもする。‥‥そう思うと、この作品でのジョン・ヒューストンという強烈な存在がまた、まるで舞台空間のなかの世界を思わせてくれる気がした。みごとな映画である。 フェイ・ダナウェイが保護していた女性が彼女の「娘」であり「妹」なのだという告白のあたりで涙がこぼれ(ここのニコルソンの反応がいいんだ~ただひっぱたくだけだけれども~)、その、例のラストのセリフ、「忘れろ、ここはチャイナタウンだ」でまた泣いてしまった。 【keiji】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2014-07-05 10:57:29)(良:1票) 13.いぶし銀という言葉がこれほど似合う作品もめずらしい。ブランデーのような濃厚な香気を作品全体が放っている。哀愁漂うジャジーな音楽、埃立つような彩度の薄い色彩、ニコルソンの渋み、フェイ・ダナウェイの無の演技 etc...。個人的にゴッドファーザーI並の傑作と思いますが、ラストがアレなもんで評価が分かれるんでしょうね。フィルムノワールは個人的にツボなので、この映画も例にもれず好き。特に本作は静謐で重厚な脚本で、現在見ても上手いなーと思う描写と構成で関心させられる。 【Nujabest】さん [DVD(字幕)] 9点(2009-06-26 09:50:55) 12.アメリカンニューシネマはあまり好きではないがこの映画は素晴らしいと思う。しっかりとしたサスペンス物で物語を追わせておいて衝撃の、最近の生ぬるい映画にはないタブーのラスト。雨の日に街頭で呆然と立ち尽くしたような気分にされた。安っぽいハードボイルドではない。これはこの世の絶望を実際に経験した人間にしか撮れない。 【Arufu】さん [DVD(字幕)] 9点(2006-05-05 04:42:05)(良:1票) 11.ジャック・ニコルソンの全く正義を感じさない薄汚れた印象、緊張感と混沌とした雰囲気を醸し出す音楽など、フィルムノワールとしてもハードボイルド映画としても傑作です。人間の清濁混交としたあらゆる行い全てを飲み込んでしまう街としてのチャイナタウンは、安易な発想かもしれないけど、相応しい場所のように思う。誰にとっても得るところはなく、あらゆる行為は無意味となったときジェイクは「なまけ者の街」と呟くが何を言いたいのだろうか?自分は何かを行ったと思っていたが結局は何もできなかった、なまけ者と同じだと言いたいのだろうか。激しい渦に巻き込まれ、すべてが水泡に帰し、ジェイクに残ったものといえば鼻の傷痕と苦い記憶のみ・・・ラストで虚ろな表情で佇むジャック・ニコルソンの表情は印象に残りました。 【ペリエ】さん [DVD(字幕)] 9点(2005-05-03 22:08:07) 10.《ネタバレ》 ハードボイルド小説が好きです。私がハードボイルドの何に一番反応するかと言えばスタイルに対するこだわりと男の哀愁。この作品はまさにそれを見せてくれる、好きな人には堪えられない映画ス。隅々までに感じるこだわり、この気怠さ、退廃、そして疲れ。あぁ、たまりません。評価が別れるラストですがポランスキーは「彼らが逃げ切れたら観客は『ああ良かった』と安心してそれ以上考える事をやめてしまう。あのラストにしたのは怒りを残す事によって、考えて欲しいからだ」みたいな事を言っていました。そう言うやり方が正しいか間違ってるかは分からないけど、私は共感します。 【黒猫クロマティ】さん 9点(2005-02-28 13:12:08)(良:1票) 9.ストーリーも若いジャック・ニコルソンも良いです。 鼻を切られる場面は、思わず目をそむけてしまいました。 【しまうまん】さん 9点(2004-06-13 01:33:05) 8.お待たせしました(?)。この雰囲気がたまらなくいいです。LAの乾いた風景にチャイナタウンのルーズな響き。ミステリアスな貴婦人の秘密と巨大な陰謀の予感。人はいいが強くない私立探偵が、ドジを踏みながらも次第に事実を明るみにしていきます。良かれと思って必死になりますが、無理やり聞き出したのが救いようのない悲劇であり、衝撃の結末も救えません。後悔とむなしさだけが残りますが、所詮チャイナタウンの出来事です。ポランスキー監督が描く逃れられない性と大人の淡い恋心。人生に疲れたとき、この雰囲気にしばし浸るのもいいかな。音楽もまた、いいです。 【パセリセージ】さん 9点(2004-04-12 19:04:24)(良:2票) 7.《ネタバレ》 映画の見方ってほんとに人それぞれだなあ・・。私がこの映画に9点をささげたいのは、ただひたすらに鮮烈なラストシーンにショックを受けたためです。でも、そう聞いてからこの映画を見たら、ショックはきっと受けませんよね。やっぱり「ネタバレ」、つけておこっと。私はほんとになーんにも知らずに見始めたので、自分の「ラストでぶっとんだ映画ベスト3」に入れたい作品となりました。それにしても、見たのいつ頃だろう・・すっかり忘れました。相当昔です。これもポランスキー、「戦場の・・」もポランスキーというのが、すごいなあ。 【おばちゃん】さん 9点(2004-03-09 00:21:15)(良:1票) 6.《ネタバレ》 ジャック・ニコルソンが渋くて決まってた。あの鼻を切られ方はいろんな意味でイタイ。車で逃走してくフェイ・ダナウェイの頭が打ちぬかれるのはラストとして斬新でした。この子は孫で娘だとか言ってるクロスのおじいさんははまり役、実際やっちゃいそうな雰囲気がプンプンした。出入りが早く集中してないとお話に置いてかれちゃいそうで面白い。キャサリンのその後は黄昏のチャイナタウンで観れます。 【スルフィスタ】さん 9点(2003-10-28 02:48:20) 5.面白い!30年代のLAを再現した舞台設定も私立探偵演じるジャックニコルソンもスタイリッシュで素晴らしい。もちろん実際に30年代のLAを知っているわけじゃないけど、あのハードボイルド小説で読むところの雰囲気が十分に出ていたような気がする。ラストもお約束だ~って感じだけど、的は外してないんだなぁ。ニコルソンの私立探偵役もピタッとはまっていて、とてもGood!最高のはまり役でしょう。フェイダナウェイもいい女だ。これシリーズ化したら面白かったんだろうな。もう1~2作観たかった。。。と思ったら16年後にパート2があったよ。遅すぎる。ジェイクは若くて精悍じゃないとね。 【onomichi】さん 9点(2003-09-16 00:01:43) 4.これを観ると、ポランスキーはやっぱり上手いと思ってしまう。J・ニコルソンとF・ダナウェイは、本当にハードボイルドが似合うな~友人に「これはハリウッドのヒューストン王朝vs移民のポランスキーという見方もできる」と聞いて、なるほどなと思ったことを憶えています。しかし、なんともやりきれない話です。 【クロマス】さん 9点(2003-01-18 01:34:12) 3.ハードボイルド映画の大傑作。ポランスキー監督もこの作品を撮ったあたりが最も旬だったんでしょうね。ところで、ドラマにもなった小説、「池袋ウエストゲートパーク」の作者は、ひょっとしてこの映画が好きなんでしょうか?文中にもこの映画のことがちょっとだけ触れられてるし。なんとなくこの映画に似た雰囲気をあの小説から感じるのです。 【トリスタン】さん 9点(2001-12-02 00:20:21) 2.飄々としながらもフィリップ・マーロウ並みの行動力と推理力を持つ私立探偵ゲティスのもとに舞い込んできたありがちな夫の浮気の調査を進めるうちに、実はその裏に大掛かりかつ悪意に満ちた事件があったが、1つ謎を解いてもそれ以上の疑問が湧いてくる・・・という話。ロマン・ポランスキー、ジャック・ニコルソン、そしてスコアを担当したジェリー・ゴールドスミス各々にとってもエポックと言える秀作だと思うが、細部まで相当に拘ったでろう画面から醸し出されるある種のハードボイルドな雰囲気が最高で、それこそが本作の白眉。いつまでも陶酔していたくなる。ラストは次に何が起こるか分からないチャイナタウンならではか。 【ダイ】さん 9点(2001-08-03 01:36:10)(良:1票) 1.1930年代のあまり景気のよくないLAの風俗を見事なまでに再現している秀作と言えるだろう。この作品の意外な拾い物は、名監督ジョン・ヒューストンのふてぶてしいまでの演技でした。まぁ正直言って納得のいく演技ではなかったものの、欲の塊と化した大富豪の老人を見事に演じていたと思う。ロマン・ポランスキー監督の見事な手腕を発揮したベストワークとも言えるし、また主演のジャック・ニコルソンとフェイ・ダナウェーも良かったと思う。実はこの映画のニコルソン、どこにでも首を突っ込むしがない私立探偵を嫌味なく巧い具合に上品に演じていたと思う。またフェイ・ダナウェーは激しい台詞の応酬ではなく、30年代の貴婦人を気品高く演じていたと思う。ただこの映画に10点を挙げられないのは、ただ釈然としないラストのおかげである。 【チャーリー】さん 9点(2001-06-18 20:50:38)(良:1票)
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