みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(9点検索)】
6.《ネタバレ》 まだ映画鑑賞歴の浅い私であっても、この映画が大変豪華であることは分かります。これだけの女優が共演しているにもかかわらず、役者同士で潰しあうこともなく、それぞれがとても自然な演技をしていて驚きます。これ絶対に今、活躍されてる俳優さんも見習うべきだと思います。控えめな田中絹代の正座やお辞儀など動作一つ一つがとても美しい。忘れかけられている日本の女性像がそこにはありました。この女優陣の中で異彩を放っていたのは、やはり杉村春子でした。人を食ったような演技は本当に見事。酔っ払って大立ち回りをし、しばらくしてひょっこりと帰ってきたシーンは何故か憎めなく、微笑ましかった。これだけのキャスト陣にもかかわらず、自然で流れるようなストーリーを作ってしまう成瀬監督は天才だと思います。ラスト、新しく開店予定の小料理屋で働くことを促された梨花の複雑な表情が脳裏から離れません。店を閉じることなど知る由もないつた奴は、歌いながら三味線を弾きます。その音がとても切なく聞こえました。最後、2カットほど外の景色が映されますが、木造の建物の奥にコンクリートのビルが見えるあたり、時代の流れ行くさまを感じてしまいました。 【スノーモンキー】さん [DVD(邦画)] 9点(2014-12-31 01:19:55) 5.《ネタバレ》 川がその流れを止めないように、時代はどんどん流れ続ける。傾いた芸者置屋も華やかな花柳界も、女も男もいずれは流されてしまう。 だが、それでも流れない奴は流れない。そんな人々の日々を淡々と綴った映画だが、淡々と言っても女達が口舌の刃でジャジャンガジャンと踊り毒づきド突き合うようなドロッとした話なんですけどね。 何せ初っ端から必死に稽古をする少女が去った後、彼女たちは挨拶でも交わすように罵り合いを始めるのである。 本当に肉厚というか、豪華すぎて信じられないくらいの面子だ。 田中絹代は歳相応で抑え気味の演技が素晴らしいし(溝口健二作品の絹代も凄いけど無理のない演技と高感度はこの映画がダントツ)、 山田五十鈴と杉村春子も妙な美しさ感じられる。 それに栗島すみ子の存在感(若い時の彼女は是非とも「夜ごとの夢」「淑女は何を忘れたか」等を御覧下さい)! 若い高峰秀子と岡田茉莉子の対比も効いている。とにかくこの映画、女、女、女の映画である。 花柳界の春真っ盛りといった具合の光よう。通りを歩く女性達の足取りも何処か楽しげ。一方、借金踏み倒しで傾きかけた芸者置屋はから元気というか、何処か暗い影が差す。取立人を酒で酔わせて“逃げる”日々も限界が近い。 芸者の世界は30過ぎたらBBAというほど選手生命短し恋せよ乙女。「君と別れて」といい、この辺の描写の生々しさよ。 それをせせら笑うように自由な猫は家と外を出入りする。 「人間よりも猫の方が大事」・・・今の時代はちょっと洒落にならんセリフになってしまった。 そこに家政婦はミタじゃないけど女中のお春さんこと山中リカがやって来る。最初この女性が田中絹代とは気付かなかった。 彼女は女達の様々な噂を耳にするが、彼女の心がそれで流れる事はない。それを観客同様に傍観するのかと思えば、彼女の存在が芸者たちを引っ掻き回したりもする。かといって狂言回しという役割でもないし、不思議な存在だ。 子供も大人も怖いもんは怖い注射。それを「針が折れたらもっと大変よ」なんて黙らせてしまうお春さんは賢い。 もっとも、一番女達を振り回すのはタチの悪い男ばっかり何ですがね。男という濁流に流され翻弄される女たち。 満たされない女達は踊り、嘲笑い、哀しみ、怒り、憎しみをブチまけていく。 空も「稲妻」を鳴らして泣きじゃくる。 【すかあふえいす】さん [DVD(邦画)] 9点(2014-08-26 16:59:53) 4.《ネタバレ》 いや~何たる豪華な顔ぶれだ!山田五十鈴のおかみさん、その娘に高峰秀子って、何つう親子だ!他にも常に控えめな田中絹代に小津監督の作品の常連でもあり、相変わらずぶりな芸達者ぶりを披露している杉村春子にいかにも岡田茉莉子って雰囲気の岡田茉莉子、それは岡田茉莉子に限らず、山田五十鈴も高峰秀子も田中絹代も杉村春子も演技なのか?それとも本人そのものなのか?と思わせるほどの素晴らしさ、そんな素晴らしい演技を引き出す成瀬巳喜男監督の凄さ、芸者の世界に生きる女性達の時代に流されながらも逞しく生きる姿が描かれている。そんなこの映画の本当に凄い所は、芸者の話なのにお座敷のシーンを全く描かずに芸者の世界で生きることがいかに難しく、厳しいかを描いて見せている。本当に凄いことだと思います。川を流れる水の音のような静寂しきった乾いた空気、それこそこの監督の持ち味なのかもしれない。ラストにこれまた水の流れる川を映す。そして、そんな川にまるでこの映画のタイトルの「流れる」のように流れて見える船を映して終わる。終わり方もこれまた成瀬巳喜男監督は本当に余韻を残すことに成功している。やはり凄い映画だ。間違いなく傑作です。 【青観】さん [DVD(邦画)] 9点(2007-11-25 18:30:26) 3.《ネタバレ》 田中絹代さん演ずる梨花の視点から見たら、右を見ても左を見ても愚かな人間しか見当たらない。異常なのが梨花の方なのではないかと思ってしまうほど、登場人物たちの多くが人を馬鹿にし、見下し、陰で笑っている。梨花の力で彼女たちの感情が変化していくかと思いきや、変わらない。結局時代に流され、消えていくだけ。変わろうとしない意固地な人間たちの愚かさを、清き心を持ち、多くの人に親しまれる梨花を通して悲しく見つめる作品。ラスト、悲しげな瞳を背け、背中を向ける彼女のその最後の優しさに胸が締め付けられる。 【ボビー】さん [DVD(邦画)] 9点(2007-04-30 14:25:33) 2.《ネタバレ》 前から観たいと思ってたのですが、近辺のビデオ屋には置いてないし、図書館のフィルムライブラリーにもなく、最近になってようやく近所のツが成瀬作品をどっと入れたおかげで眼にすることができました。日本映画の名作DVDって値段高すぎ! 洋画みたいに新作でも2,980円、キャンペーンだと2本で1,500円とかできないのかな? 原作読んだのは前世紀の終わりで、映画とはずいぶん違う印象だったと思います。とくにエンディングの処理の仕方、原作は梨花の視点だけど映画は異なるので… ただ、幸田文が興味を持っていて最後までこだわったのが「崩れ」だったことが映像を観ることでよくわかりました。豪華出演者たちを活かしきってますね。岡田茉莉子、なんと美しいのでしょうか。杉村春子(石井ふく子作品に結構出てます)と賀原夏子(~ケンちゃんのばあさん役)が後年、つまりずっと齢を重ねてからとまったくおなじイメージだったのにはびっくり。中北千枝子(初代ニッセイのおばちゃん=ニュースコープ枠のCF)を含めてTBSな香りが濃厚だったことに後になって気づきました。高峰秀子は「カルメン」経由して木下恵介につながるし。「ただいま11人」「東芝日曜劇場」に始まるTBSホームドラマの要素がすべてここにはあります。そして向田さん、久世さんが亡くなった今、それは「渡鬼」にしか残ってない、好きじゃないけど。なお、三味線のバチさばきを観るだけでも価値ある作品です。むかしの俳優さんは凄いわ。 〈追記〉さっき「拝啓、父上様」第3話のV観てて気づきました。倉本聰、これをやりたかったっつーか、TBSの仕事したかったのね。最初の「大都会」や「前略」やってて、不祥事で久世さんがTBS追い出されても声かからなかったから富良野に籠もったわけね。 【shintax】さん [DVD(邦画)] 9点(2007-01-26 17:35:13) 1.日本の映画史を語る上で欠かせない、この豪華絢爛な女優陣たちがひとつ屋根の下で暮らし、しかも画面の中でそれぞれの個性が巧く生かされるよう収まってる、その事だけでもまず凄いです。芸者の人たちって一体どんな会話を普段してるんだろうってずっと思ってたんですが、ハナっからみんな見事にお金!お金!お金!に関するみみっちい会話ばかり。いかにも成瀬監督作品らしいですW。まずキャスティングが決まってから、脚本が書かれたという典型的な成功例ですね、これは。大スター競演作にありがちな大見得を切るような芝居どころも特にないし、むしろストーリー自体は地味な印象。同じ花街の芸者ものなら成瀬のフィルモグラフィーでは黙殺されている「夜の流れ」のほうが派手。でもこちらのほうがしみじみした後味を残します。「流れる」のではなく皆が「流されている」中、高峰秀子と田中絹代(←女中役なので皆が彼女をアゴで使っているってのも凄い)の自立しようとする意志の強さが頼もしかったです。婀娜な中年増ぶりを魅せる山田五十鈴、場面盗み巧者第一人者杉村春子、サイレント時代の大女優栗島すみ子のしたたかな貫禄ぶり、「女優」っていうのはこういう方々のことを言うんだろうなあ、本当は・・・。 【放浪紳士チャーリー】さん [DVD(字幕)] 9点(2006-02-24 11:44:18)(良:1票)
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