みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(9点検索)】
3.《ネタバレ》 原作「ひめゆりの塔」の他、数多の資料を渉猟し、体験者の聞き取り調査も行っているので、描写が細部にまで行き届いている。綿密な脚本が成功の要因だろう。予算の関係か、米軍の描写がほとんどないので、沖縄地上戦の肉弾戦の凄惨さや臨場感は伝わってこない。機銃照射が当っても血が出ない。が、それでも戦争映画の最上部類に入る。何より、洞窟を利用しただけの不衛生な野戦病院で、医薬品も水も食糧も水も乏しい中、懸命に声をかけながら負傷兵を看護してまわる乙女等の純真な姿が胸を打つ。この場面だけでも観る価値がある。他に感銘を受けたのは、「戦争の犠牲になって散った乙女達」という暗鬱な主題であるのにも関わらず、青春の真っ盛りである彼女達の無邪気さ、天真爛漫さ、そして肉感的なまでの生命の躍動感というものをみずみずしく描ききっているいることだ。歌を唄いながら行進する場面、友達のもの真似をしてはしゃぐ場面、沖縄民謡を舞う場面、川で水浴びをする場面、髪を解かす場面、久しぶりの朝日を浴びて 欣喜雀躍する場面、キャベツを投げあって遊ぶ場面、死を決意して敢えて制服に着替える場面など、結末がわかっているのでそれらの場面が一々胸に迫ってくる。その彼女達が次々と命を落としていくのだから、感情移入しないわけがない。被弾場面では、他のどの映画よりも至近距離で爆発しているように見える。体当たりの演技に脱帽する。監督も俳優も心血を注いだ作品だ。他にも印象的な場面が多い。最初の方で、ある母が娘に同行を頼む場面で、少女が「生徒は学校と行動を共にしなければならないの。私を卑怯者にしたくないでしょ」とさりげなく、当時の彼女等の置かれた立場を明らかにしている。軍医が少女らに「夜でも見えるようになる」と飴玉をあげる場面、これは覚醒剤入りだ。乙女達が自殺用青酸カリを欲しがる場面、持っている友人を羨みもする。死を願う程追い詰められた心理状態が伝わってくる。誰かが母親のことを言いだしたら、みんな泣きだす場面。強がっていても所詮はうら若き乙女に過ぎず、まだまだ母の懐に甘えたい年頃だ。洞窟に付いてきた孤児を乾パンを上げたのだからと突き放す婦長。幼子にとっても容赦ないのが戦争だ。優しかった軍医が洞窟を出て行こうとする乙女を射殺する。衝撃的だが、その後手榴弾が投げられ、壕内大爆発し、衝撃に拍車がかかる。奈良岡朋子に似た生徒が出ているのが気になった。 【よしのぶ】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-09-03 23:12:18) 2.《ネタバレ》 小学校の教師をしていた私の父は、映画好きであったにもかかわらず、このような戦争映画を見に、私たち家族を連れて行くことはなかった。おそらく戦争中の悲しい苦しい体験をしていたからだろうと今になって思う。 ということで、私が見たのは小学生の頃、親戚に連れられてではないかと思う。映画の内容も、登場人物も誰が誰だかもわからず、いくつかのシーンしか覚えていない。その中で、置き去りにされていった兵士やこども女学生たち、機関銃や爆弾で無差別に殺されていった沖縄の人たち、つかの間の明るい太陽の元でキャベツでバレーボールをしていた女学生たち・・・。ただひたすら負傷兵のお世話をし、逃げまどう。 大人になってDVDで見ると、ああこんな映画だったのだということが思い出される。 今もなお沖縄は米軍基地によって悩まされ続けているが、このような悲惨な現実も知らず、沖縄の人は「ゆすりたかりの名人」と言っている人がいると思うと、本当に悲しくなる。 この映画は、戦争を知らない私たちが一度は見ておかなければならない映画だと思う。 【ESPERANZA】さん [映画館(邦画)] 9点(2011-03-11 11:12:54)(良:1票) 1.第二次大戦で唯一日本でアメリカ軍との戦闘があったのが沖縄。戦争末期で日本の敗戦が色濃かったのにも関わらず、沖縄では住民も巻き込んで悲惨な戦闘が繰り広げられた。まだ10代の学生たちも動員され、特にこの女学生のひめゆり部隊の悲劇は有名な話である。昭和27年にようやく独立国家として認められ、こうした戦争映画も作れるようになった。この作品はそうした中の1本。軍人ではなく野戦病院での働きだから、戦闘ではなくただただ爆撃に襲われて逃げるシーンなのだが、その爆撃の映像がすさまじい迫力がある。演じる者の至近で爆弾が破裂し、大地が揺れるほどの衝撃がある。いったいどうやって撮ったのかと思うほどだ。そんな地獄のような日々の中でも少女たちはけなげに力を尽くし、つかの間の平和な時には太陽を喜び、キャベツをボールにしてバレーをしたりする。そんな彼女たちを守り、支えたのは日本軍ではなく教師たちだった。この師弟愛にも心を打たれる。どんなときにも最後まで生きよう、生徒を守ろうとするが、次々と死んでいく。敗戦の2ヶ月ほど前のことである。本土決戦が免れたのもこの沖縄での時間稼ぎがあったからと思えば、沖縄が払った犠牲の大きさにもっと心を寄せ、死んでいった多くの沖縄の人たちを忘れてはいけないと思う。監督の思いもまたそうであったのだろう。当時の今井監督の名声は、俳優たちにノーギャラでもいいから出して欲しいと殺到したことでも分かる。脚本の水木洋子や監督、そしてこういった俳優たちの強い思いが画面からひしひしと伝わってくる。唯一残念に思うのは、学生たちも一般の沖縄人も沖縄言葉で話してないことで、分かりやすくしたとは思うが沖縄の言葉であったなら、これが沖縄の悲劇なのだともっと実感できたことだろう。 【キリコ】さん 9点(2004-01-13 15:00:50)(良:2票)
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