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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です!
【クチコミ・感想(10点検索)】
6.《ネタバレ》 十数年ぶりに観たが、やはり黒澤作品の中でも抜きん出て同時代の社会そして人間のスケッチが素晴らしい。闇市や復員兵もそうだし、共犯者を押さえるためにプロ野球の巨人-南海戦に刑事たちが張り込む場面では、現役時代の川上哲治の打棒が観られるのもお得感。
物語のタテ糸は、終戦からまだ間もない混沌とした時代、掏られた拳銃を強盗殺人事件に使われたことで苦悩する新米刑事が、拳銃と犯人の行方をベテラン刑事と協力してまさに「犬」のように這いずり回って追跡していく中で警察官としての責任意識、職業倫理を体得して成長していくというところにある。
そこにはまた「新米は先輩の言う通りにしていればそれでいいのだ」という儒教的なパターナリズムも見て取れるし、そして「戦争」によって人生を狂わされた者と、狂う寸前で踏みとどまった者との「モラルの持続」における対照性が色濃く投影されている。
ただ、三船敏郎が風格満々で新米刑事にみえないというのもご愛敬だが、やはり三船の精悍で雄々しい風貌と緩急自在の身のこなしは惚れ惚れする。
黒澤作品における犯罪サスペンス映画の金字塔として『天国と地獄』が挙げられるが、途中で犯人の顔が明かされる『天国~』に対し、本作は最後の最後まで犯人の顔を見せないところがひときわスリリングな演出でとにかく息を飲む。
そして主人公と犯人が対決する時に近所から流れる悠長なピアノの音色。犯人をようやく捕らえた時に犯人の放出する盛大な嗚咽。さらに被さるのが登校中の子供たちの天真爛漫な歌声。こうした「不穏」と「平穏」との絶妙なコントラストを表現する演出の妙。
そこには、苦難を乗り越えて陰鬱な連続殺人事件を片付けた後に訪れる、えもいわれぬカタルシスを感じさせる。
また、この時代の地道ながら綿密な犯罪捜査の過程についても行き届いた描写がなされていて実に面白い。
作品の設定と同じく、うだるような真夏に鑑賞するのも一興だろう。 【あやかしもどき】さん [DVD(邦画)] 10点(2025-02-26 05:23:33)★《新規》★
5.《ネタバレ》 暑苦しい映像はそのまま社会の暑苦しさ、生きにくさを象徴している。だからあれだけ永いシーケンスが必要だったのだ。悪い環境ゆえに罪を犯すという考えがあり、実際戦後の混乱期には犯罪が多発した。犯人遊佐のような生活環境であれば、もしかしたら自分も悪事を働くかもしれない、そう視聴者に思わせられなければ失敗だ。映画はそのことに全力をあげている。ぎらぎら光る目、ぎらつく太陽、疲れてふてくされた顔、水溜りに映る後姿、夕立、一々構図が決まり、カタルシスを覚える。一転、屋上での涼しそうな夕雲。空を大きくとった構図が素晴らしい。「ひと雨きそうだな」の言葉通り、雨がやってくる。その直前の雷。並木ハルコが遊佐からもらったドレスを着てくるくる回る。ドレスはあこがれの象徴だ。どしゃぶりとなり雷鳴と同時に刑事が撃たれる。ドレスも雨に打たれる。泥が犯人逮捕のヒントとなる。犯人を逮捕するシーンは、走って、止まり、撃って、静かにピアノが流れ、血が滴り、花が美しく映える。逮捕されたあとの子供達の歌声、そして犯人の咆哮。音と映像の静と動のコンビネーションは芸術。全てにおいて考えつくされており、無駄がない。遊佐と村上刑事は双子のように表裏一体に描かれる。ほんのちょっとしたきっかけで立場は逆になっていただろう。村上も遊佐同様、復員時に荷物を盗まれているし、辞表が受理されていれば自暴自棄な人生に陥ったかもしれない。人間の危うさ、運命の非情さ。遊佐の家と佐藤刑事の家も上手に対比させている。人間らしさが全く伺えない遊佐の茅屋。佐藤の家では子供達がすやすやと眠る姿。その眠る姿から静かに殺人現場へ移る。ここでも花とピアノが印象的に使われている。妻を殺された夫が狂ったようになってつぶしたトマトのアップ。死体を見せずに事件の残虐性を余すところなく伝える。善悪に徹しきれず、犯人に同情してしまう村上。犯人のことなんて忘れるんだなとアドバイスする佐藤。若さと老練、情と冷徹。遊佐から慕われる並木は社会を憎む危うい若人の一人として描かれる。女スリの見せた刑事への同情、遊佐に強く同情する姉、女たらしのリーゼント男、従業員と浮気する旅館の経営者。人生の機微を多様に描き、この悲劇は誰にでも起こる可能性があることを示唆する。天才のなせる業としかいいようがない傑作。文句なしの10点。 【よしのぶ】さん [DVD(邦画)] 10点(2009-07-08 07:25:59)(良:1票)
4.私たちの両親、あるいは祖父母たちが生きた戦争直後の記録として、、、、善と悪のあまりにわずかな分岐点の記述として、、、、、、日本の夏の暑さの映像として、、、、高円寺や大原の情景の記録として、、、、、、深く心に残りました。、、、最後の木村功の叫びも。 【王の七つの森】さん [DVD(字幕)] 10点(2005-06-30 12:03:11)
3.驚いた。全然、古くない。自分の生まれる前の映画を観て、普遍性という言葉におさまりきらない、ここまで現代の感覚で見ても「新しい」と思える作品に出会ったことはまずない。黒澤作品だって何本か観ているし、今までは「デルス・ウザーラ」が最高と思っていたが、初めて「いや違った!」という気持になった。世間的には「天国と地獄」への評価のほうが高いかもしれないが、私にとってはあれをはるかにしのぐ。今見るとショボいお金持ちの家を舞台にしたあちらと比べ、戦後の混乱期をひたむきに生きている庶民を中心に描いているからかもしれない。切なさというスパイスは、断然こっちです。何より言えることは、テンポがいい。躍動感がある。バツグンのスリルがある。物語としての整合性、リアリティーがすごい。映像美がたまらない。でもそれだけじゃない。古今東西の作り手がいかにこの映画をパクリまくってきたかに気づき、アゼン。だが、ここまで素晴らしい映像作家を生み出したこの国で、なぜこの大いなる財産を、パクリという安直なやり方ではなく、発展というかたちで生かすことが出来なかったのか、ということにボウゼン。まあしかし、生きてるうちに、これを観ようという気になっておいてよかった! 今はとにかくもう一回、ビデオを巻き戻して、この傑作を楽しもう。なにしろ、この映画にはいろんなしかけが見受けられる。一回見ただけじゃきっと見落としているところがありそうだ。小道具や音楽の使い方も、ハンパじゃない(ピアノのシーンの秀逸さを言う人が多いようですが、私はハーモニカのシーンが好き~)。それに、このときの三船敏郎って、まるでジョニー・デップみたい。酔える! 【おばちゃん】さん 10点(2003-12-19 23:28:48)(良:2票) (笑:1票)
2.さすが黒澤明監督!!この表現力!!灼熱の暑さ、夕立の後の涼しさ、三船敏郎の激しさ、志村喬の優しさ…、ぎゅっと凝縮された表現には強烈な印象を受けること必至です。 【チャターBOX】さん 10点(2003-09-30 18:17:03)
1.究極の映画でしょう。 【ひろみつ】さん 10点(2003-06-28 01:49:31)
マーク説明 |
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《更新》 | :7日以内に更新 |
【点数情報】
Review人数 |
71人 |
平均点数 |
7.58点 |
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【その他点数情報】
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