みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(10点検索)】
3.夕景の街中にあるガスタンク。十字の格子が浮かび上がる部屋。木々のざわめき。 半透明なレースカーテンの白の揺れ。風にはためく、壁に貼られたモノクロ写真。 何気ない風景のようでいて、その佇まいだけで不穏な気配を濃密に湛える画面の 息遣いがことごとく心をざわつかせる。 そして人物の表情が見えるか見えないかの半逆光の加減が絶妙で、 その無表情と陰影はキャラクターの心理を読み取らせない。 ゆえに本作は、物語的にも画面展開的にも全く予断を許さない。 それだけに、突発的な暴力が炸裂する刹那のインパクトは見る者を戦慄させ、 静かに流れ出す『煙が目に沁みる』のレコード音の情感に 訳も分からないまま心を動かされてしまう。 80年代の空気をすくい取りながら、まるで古さを感じさせない。 【ユーカラ】さん [ビデオ(字幕)] 10点(2012-10-05 23:52:51) 2.《ネタバレ》 そう、紛れもなく起こった。理由の有無は置き、画面の強度がそれを証明している。フレームの外にも紛れもなく存在する物語が、生活が、悪意が「映画」の現在性を主張し、私的空間に侵食する心地よさ。画面外から突如ナイフで踊りかかる女、画面外の声、画面外の無声、銃声によって容れ物である花瓶を失い溢れ出す水、風、レースカーテン、写真、剥がされる皮膚。主題の欠如からエドワード・ヤンのフィルムはショットの一貫性に不利があるが、物語で補っている。ところであの餌付きは妊娠だろうか、心憎い人である。 【stroheim】さん [ビデオ(字幕)] 10点(2008-02-07 13:56:31) 1.《ネタバレ》 「この世界には恐ろしいことがひとつある。それは、すべての人間の言い分が正しいということだ」、言うまでもなくジャン・ルノワールの、というか映画史上の大傑作「ゲームの規則」でジャン・ルノワール自身が放った言葉だが、その言葉の恐ろしさを絶対零度の冷たさでもって体現した作品がエドワード・ヤンの「恐怖分子」だと言えるかもしれない。優しさなんて、この映画には1ミリもない。優しさをみせてしまった者には過酷な運命が待ち受ける。そんなゲームの規則が繰り広げられるこの恐るべき映画、にも関わらず、いや、だからこそ見終わった後に実感する生の充足。「生きる」ではなく「死にたくない」へと向かう方向性に、クリント・イーストウッドのこれまた恐るべき「ミスティック・リバー」が思わず重なる。ラストの嘔吐には、新たな恐怖分子の誕生を想起してもいいかもしれない。しかしそれよりもなりよりもこの嘔吐する女である。嘔吐する女といえば、これまた再び恐るべき「ヴァンダの部屋」において、ヴァンダが激しい咳をしていると突然ゲロを布団に吐きだすシーンが鮮烈だったが、この「恐怖分子」の嘔吐の場面もまた忘れがたい。布団から上半身を起こした時に見せる定まりのない目線、そして突然口元に手を押さえそのまま体を床の方へ折り曲げるまでの一連のアクション。こうして吐き出された吐瀉物は(といっても画面上には出てこなかったのだが)、風呂場にて自死を遂げた男の後頭部から脳漿とともに垂れる血液のような粘性を持っていただろう事は容易に想像できる。 【Qfwfq】さん [映画館(字幕)] 10点(2008-01-10 22:31:13)
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