みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(10点検索)】
16.《ネタバレ》 この映画「ブリキの太鼓」は、奇想天外で挑発的な映画的陶酔を味わえる珠玉の名作だと思います。 映画「ブリキの太鼓」は1979年のカンヌ国際映画祭でフランシス・F・コッポラ監督の「地獄の黙示録」と並んでグランプリ(現在のパルムドール賞)を獲得し、また同年の第51回アカデミー賞の最優秀外国語映画賞も受賞している名作です。 原作はギュンター・グラスの大河小説で二十か国語に翻訳されていますが、あとがきの中でグラスは、この小説を執筆した意図について「一つの時代全体をその狭い小市民階級のさまざまな矛盾と不条理を含め、その超次元的な犯罪も含めて文学形式で表現すること」と語っていて、ヒットラーのナチスを支持したドイツ中下層の社会をまるで悪漢小説と見紛うばかりの偏執狂的な猥雑さで克明に描き、その事がヒットラー体制の的確な叙事詩的な表現になっているという素晴らしい小説です。 この映画の監督は、フォルカー・シュレンドルフで、彼は脚本にも参加していて、また原作者のギュンター・グラスは、台詞を担当しています。 原作の映画化にあたってはかなり集約され、祖母を最初と最後のシーンに据えて全体を"大地の不変"というイメージでまとめられている気がします。 そして映画は1927年から1945年の第二次世界大戦の敗戦に至るナチス・ドイツを縦断して描くドイツ現代史が描かれています。 この映画の主要な舞台は、ポーランドのダンツィヒ(現在のグダニスク)という町であり、アンジェイ・ワイダ監督のポーランド映画の名作「大理石の男」でも描かれていたひなびた港町で、この町は第一次世界大戦後、ヴェルサイユ条約により国際連盟の保護のもと自由都市となり、そのためヒットラー・ナチスの最初の侵略目標となりました。 まさにこの映画に出てくるポーランド郵便局襲撃事件は、第二次世界大戦の発火点になります。 そしてこの映画の主人公であり、尚且つ歴史の目撃者となるのが、大人の世界の醜さを知って三歳で自ら1cmだって大きくならない事を決意して、大人になる事を止めてしまったオスカルは、成長を拒否する事によって、ナチスの時代を"子供特有の洞察するような感性と視線で、社会や人間を観察していきます。 オスカルは成長が止まると同時に、不思議な超能力ともいうものが備わり、太鼓を叩いて叫び声を発すると居間の柱時計や街灯のガラスが粉々に割れたりします。 この奇声を発しながらブリキの太鼓を叩き続けるオスカルの姿は、ナチスによる支配下のポーランドの歴史そのものを象徴していて、フォルカー・シュレンドルフ監督は、原作者のギュンター・グラスの意図する二重構造の世界を見事に具現化していると思います。 超能力などの非日常的な要素を加味しながら、ポーランドの暗黒の時代を的確に表現した映像が、我々観る者の脳裏に強烈な印象を与えてくれます。 その暗いイメージは、特に海岸のシーンで象徴的に表現していて、不気味な映像美に満ち溢れています。 オスカルは、ドイツ人の父親を父として認めず、ポーランド人の実の父をも母を奪う男として受け入れません。 この二人の父親は、オスカルが原因となって不慮の死を遂げ、また気品と卑猥さが同居する母親も女の業を背負って狂死します。 この映画の中での忘れられない印象的なシーンとして、第二次世界大戦下、オスカルの法律上のドイツ人の父親は、ナチスの党員になり、パレードに参加します。 そのパレードの最中に威勢のいいマーチがファシズムを讃え、歌いあげる時、演壇の下に潜り込んだオスカルが太鼓を叩くと、マーチがワルツに変わってしまい、ナチスの党員たちまでが楽しそうにワルツを踊り始めるというシーンになります。 この意表をつく映像的表現には、まさに息を飲むような映画的陶酔を覚えます。 このダンツィヒは、歴史的には自由都市でしたが、ポーランドの領土になりドイツ人の支配を受け、その後、ソ連軍によって占領される事になります。 オスカルは戦後、成長を始めましたが、若い義母と一緒に、列車で去って行く彼を郊外から一人で見送る祖母の姿に、ポーランドという国が抱える拒絶と抵抗と絶望との暗い時代を暗示しているように感じられました。 尚、主人公のオスカルという子供が成長を止めたというのは、第二次世界大戦下、ナチス・ヒットラーの暗黒時代をドイツ国民が過ごした事の象徴であり、撮影当時12歳だったダーヴィット・ベネントのまさに小悪魔的な驚くべき演技によって、見事に表現していたように思います。 とにかくこの映画は、全編を通して奇想天外で挑発的であり、映画的陶酔を味わえる、まさに珠玉の名作だと思います。 【dreamer】さん [DVD(字幕)] 10点(2023-08-28 08:59:54) 15.小学生の時から何度か観ていますが、これほど強烈な映画はないと思います。 ものすごい負の世界と、信じられないくらいの完成度。 好きではありません。 が、これは好みの次元を超えている映画でしょう。 1ミリも無駄がない。うなります。 【Catherine】さん [ビデオ(字幕)] 10点(2009-08-03 22:31:56) 14.わざわざ見せなくてもいいような不快でえげつない映像がこれでもかと押し寄せてくる。しかし根底に流れる感情は決して悪意ではなく、むしろユーモラスな温かささえ感じさせる。そういう意味ではこの映画そのものが子供の心をそのまま映した極めて純粋なものであると言えるのかもしれない。一生忘れないであろう強烈な印象を残す作品でした。 【ラーション】さん 10点(2005-01-31 08:05:20) 13.社会人を20年以上もしていると、この映画を思い出し、太鼓叩いて、”キェーッ”て叫んで、事務所のガラスを割りたくなることがある。 この映画、淀川長治さんが大好きな映画だったよ。昔々そのまた昔。毎週、深夜ラジオで、淀川長治さんの映画解説番組がありまして、この映画の解説の熱弁は今でも忘れやしゃせんぜ。この映画の少年と淀川さんがオーバーラップしてショウガナイのでござんす。二人とも大人になることを自分の意思で止めちゃったわけで。.....長い映画でござんすが、そこのお若いの。是非是非、ご覧あれ。 【atusiya】さん 10点(2004-11-30 00:18:48)(良:2票) 12.これほど理性の無い作品も珍しい。形こそ違うが時計じかけのオレンジといい勝負である。もう映画全体がシュールであり折れそうなほど曲がっている。とんでもなく歪んでいる。それが芸術的にさえ思える描写。壊滅的な傑作。 【モチキチ】さん 10点(2004-10-04 04:45:18)(良:1票) 11.ぬめぬめと温かく湿った内臓を連想させるようなグロテスクさ。観る者の生理的嫌悪を確信的に掻き立てる描写。強烈な不快感。それは表面的なグロテスク描写のせいだけではなく、もっとずっと深い所、この作品の根底に流れる何かに、心の奥の柔らかい部分を鷲摑みにされてしまったからだと思う。オスカル少年は成長を止め、刻々と流れる世界に組み込まれない異質の存在となることで、ポーランド暗黒の時代を客員的な視線で眺め記録する、客観の視点の体現者となった。つまり彼はクロニクルの叙述者であり、無意識的な道先案内人なのだ。しかし同時にポーランド暗黒時代そのものの体現者でもある。正常に成長の轍を踏まず、ある意味幼少期から少年期を丸々欠落させた彼は、まるでポーランドの“失われた時代”そのものであるかのようだ。幾層にも堆積し歪曲した不快なまでの悪意、グロテスクなメタファーで形成されたこの作品。難解ではあるけれど、根底にあるものは単純極まりない。根底にあるものは単純に、人間の業なのだ。人間は自らの業による汚辱からは逃れられない。あれだけ大人の世界を否定していたオスカル少年だって、モラトリアムの最中にあってさえ、実のところやっていることは大人と何一つ変わらなかった。触れられたくないものを、最も汚辱に塗れた手で掴まれたようだった。それは私の心の奥に一点の消せない滲みを残して去って行った。そしてオスカル少年は、結局は自ら汚辱の世界に戻って行った。それは暗黒時代の終焉であると同時に、1つの観念的な戦争における、徹底的な敗退の証明でもある。 【ひのと】さん 10点(2004-07-31 22:34:18) 10.あのオスカル役の子供がこの映画の成功の最大の要素でしょう。 子供でありながら眼は大人という、まさにあの役そのもの。 【BAMBI】さん 10点(2004-04-05 16:23:14) 9.過剰なまでのエログロ。人を受け付けない異物感。ひとつひとつのエピソードのアクの強さが、ランダムのように見えながら実は計算されて叩き付けられる大作。楽しいとも面白いとも感動するとも云えないが、こんなに凄い映画は中々ないのも確か。リンチ作品のように、監督の作家性で生まれた作品ではない(らしい)ところがまた凄い。 【GAGA】さん 10点(2004-02-27 17:00:31) 8.オスカルが可愛くって子供ながら演技もうまいなと思う。ありのままの人間をリアルに描いていて、とても面白くスケールのある映画だと思います。 【See】さん 10点(2003-07-05 02:22:49) 7.まだ子供だった封切時の印象は「体力を持って挑まねばならぬ映画」。しかし何度も見ているうちに次第に当初のショックは消え、映画のエンドが近づく頃には力強い生きる力が湧いてくる。何度か見てほしい映画。原作は映画の後の時代も書いているけれどこの映画を完結して楽しむには読まない方がいいかも? 【Undead】さん 10点(2003-02-18 01:54:41) 6.社会の傍観者でいるために成長を止めた主人公は、叔父を事件に巻き込み、弟を自分の息子だと確信し、最終的には親殺しまで演じる。狂った時代と呼応するような倒錯の世界に圧倒されました。 【ヨシオ】さん [ビデオ(字幕)] 10点(2002-11-14 23:52:23) 5.私は単なる反戦映画かなと思いつつこの映画を見たのであるが、案の定最初の方はとても退屈に感じられた。だが、オスカルの家にマリアがやってきてから物語は展開をみせた。オスカル少年がマリアに恋してしまうのであった。年齢は16歳と、マリアと同じ年齢であるにもかかわらず、見た目の年齢が3歳のオスカルがそのマリアに恋するというのが、少し微笑ましいとでもいうのか、笑わせてもらった。 【杉原秀敏】さん 10点(2002-11-01 07:03:27) 4.内容は好きじゃないけど、ひたすら圧倒されました。 【超無職】さん 10点(2001-09-03 05:20:15) 3.何て言えばいいのか...悪魔的映像と冷静な視点...箇条書きでしか感想が浮かばない。オスカル役の少年(だよね?)が凄い。忘れられない。 【流血マロリー】さん 10点(2001-06-27 17:23:34) 2.体格も表情もいたいけな子供そのものでありながら、その大きな目だけは、ほとんど老成した大人を感じさせてしまうほど冷徹で醒めている。この主人公オスカルは戦争(=ナチス)を拒絶するために自ら成長を止め、声高に抗議するあまりガラスを割ってしまう。彼はあらゆるこの世の対立する両極を冷静に見つづける、善と悪のどちらをも自在に操る異端児のようである。彼を演じるダーヴィト・ベネントの適役ぶりと、見事なほどの好演は万人の認めるところであり、彼でなければこの作品は成立していなかったのじゃないかと思うほど魅力的だ。 【ドラえもん】さん 10点(2001-03-24 23:36:57) 1.なんか性春・・・いや、“青春”映画っぽいスタートをしたから、まあ大した映画じゃないなって見てたんだけど、いや何々。凄い大作じゃないですか!ドイツ映画らしく、ヒットラーについて行った国民の悲劇を、見事に敗者の目から描き切った作品でした。 【イマジン】さん 10点(2001-02-19 19:52:48)
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