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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(7点検索)】
9.《ネタバレ》 予備知識ゼロで見ました。1987年、チャウシェスク政権下という設定。学生寮らしきところに住む20代前半?の女子学生二人(ルームメイト同士)が、なにやら泊まりがけで出掛ける支度をしているところから始まります。部屋の中は、ぬいぐるみやらのkawaii系グッズなどは皆無で、無機質で男前です。さて、泊まり先としてホテルを予約していたのですが、実際に行ってみると、予約係のミスで予約が入っておらず、フロントには冷たくあしらわれます。逆に、前日に予約確認をしていなかったことを責められる始末。計画経済における供給者側の傲慢さに加えて、利権すら見え隠れします。余分に請求されたお金はフロントの懐に入ってしまうのでしょう。そして、映画が始まり30分ほどしたところで、ようやく、闇医者に闇中絶をしてもらうために、ホテルを予約したことがわかってきます。そう言えばネットか何かでみた作品概要に、妊娠中絶の話って書いてあったなと思い出しました。勘の悪い私は、ここでようやく、タイトルと内容を結びつけることができました。さて、ルーマニアでは、妊娠中絶は違法行為なので、闇市場化しています。健全な市場であっても医者と患者が対等な関係となるのは難しいと思いますが、いわんや闇市場をや、です。ホテル代を支払ってからの価格交渉では、後に引くにもコストがかかり、供給者側の圧倒的有利な立場により、言い値が通ってしまいました。仮に金を多く持っていたとしても、やられていたことでしょう。人間のエゴをコントロールして、推進力として活用しようとする市場経済システム。人間にエゴはないものとし、資源は計画的、効率的に配分されるものとする計画経済システム。コントロールされないエゴの醜悪さを、まざまざと見せつけられた気がします。妊娠をするに至った経緯や相手の男について一切触れないことにより、想像の余地が非常に大きくなっています。見た人によって感じ方が著しく異なるであろうところが面白いですね。他の人の感想を知りたくなる作品です。私の感想は、社会システムが悪いのは、重々承知の上で、まあ自業自得かなと。主人公は、巻き込まれた被害者でもあり、気の毒ではありますが、妊娠した本人は、胎児を殺すわ、親友を巻き込むわ、まったく自覚がないので、腹が空いたら飯を喰らうが如く繰り返しそうです。胎児の父親については、特定できない可能性もあり何とも言えませんね。仮に特定できるとすれば当然男も悪いですが、この妊娠女に至っては、100人に1人の悪い男を100発100中で選ぶような勢いすら感じられ、同情の余地がありません。憎めない感じではありますが。ドジっ娘属性ありますが。結構好きですがなにか。P.S.映画中で説明はないのですが、ネットなどで調べるに、当時、チャウシェスク大統領夫人の考案で、労働人口を増やすために、避妊と堕胎を禁じる政策を布いていました。うん、わかりやすいよ、うん。結果として、ストリートチルドレンがあふれました。 【camuson】さん [DVD(字幕)] 7点(2024-10-10 18:05:16) 8.《ネタバレ》 一見何事もない日常に見える。しかし1987年当時のルーマニアは共産圏で密告も裏切りも絶えない時代。その閉塞感と緊張感が固定カメラの長回しで占める映画全体の空気を引き締める。中絶が禁止されているのなら尚更だ。中絶を望む友人の空気の読めなさ、臨機応変のなさ、曖昧な応対にイライラさせられ、ついに彼女のためにヤブ医者に身体を売る羽目に・・・それでも友人を見捨てなかったのは、自分も同じ立場になったら、友人に頼らざるを得ないということ、そして避妊具がこの国では流通していないことも大きいのだろう。望まぬ妊娠で生まれた子供はやがてストリートチルドレンとして過ごし、凶悪犯罪に手を染めていく。欧州最貧国の一つであるルーマニアに残された負の遺産と傷痕を伝えたのがこの映画だ。無事に一日を終えた二人の表情には安堵と険しさが同居している。数年後、チャウシェスク政権が崩壊することを映画を観ている人は知っている。だが、二人はそれを知らず監視社会に怯え続けなければならないのだ。 【Cinecdocke】さん [DVD(字幕)] 7点(2017-04-06 23:51:27) 7.思い出したくもないような日、それは誰にでもある。やたらに汗をかき心をぶるぶると震わせて、ものを食べる気にもならずに気がつくと足が棒になっているような、大変な一日。長回しで作りだした主人公オティリアの悔しくて怒りに満ちた空間を、疲弊した人々や町と一緒に切り取ってみせた映画。暗いけれど、そこを生き抜く人たちの強さも感じる。しかし、彼女の映画のなかの時間は全て友人や恋人のためにあった。なんでそうまでするのかと首をかしげたくなるほど。ロシアがソ連だった頃にそこで暮らしていた人が「何もないから、みんながピュアだった。」と言っていたのを思い出す。 【のはら】さん [DVD(字幕)] 7点(2013-01-12 20:38:40) 6.《ネタバレ》 1987年という年号から始まるのは、チャウシェスク政権の崩壊直前という意味以外の何物でもない。自分の知識は、女子体操のコマネチさんがチャウシェスクの息子に囲われていたと云うゴシップレベルで無知に近い状態。この映画を見た後に少し調べましたが、↓【シュウ】さんのレビューに完全に補完していただき助かりました。この映画は友情とか同情とか、そういう心模様を綴った作品では無いのでしょう。背景の街並みの廃れ方や台詞の断片に、当時のルーマニアの社会情勢が細かく散りばめられています。知識を得た後になって言えることですが、とても良く練られた脚本です。今更、無くなった政権の批判をしても仕方のないことだけど、労働力を増やしたいがための中絶&避妊禁止って政策に絶句です。理不尽は当然としても、論理のレベルが低過ぎる。だけどそれが「独裁」って意味であり、「独裁者」は人を野良犬並みに扱っていたことが良く分かる。そんな状況の中では、誰もが自分本位に物事を考えるのでしょう。その代表例があのヤミ医者。「責任を取れないことはするな」などと偉そうなことを言いながら、女性が妊娠に至る行為を金銭の代償に求める矛盾。何本もネジが緩んだルームメイトの馬鹿さ加減も、主人公の苛立ちを際立たせるための演出ではなく、社会制度がもたらした自分本位の退行現象とも捉えられると思います。主人公の聖人のような面倒見の良さは、思いやりと云うより、体制に抗う製作者の意思と解釈しました。一種の記録映像という位置づけが出来る内容ですが、映画というメディアの持つ力を再認識させてくれる作品でした。 【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-12-09 04:50:06) 5.ルームメイトにあそこまでつくす奴はそうそういないわな。暗い夜道が当時のルーマニアを暗示していました。 【すたーちゃいるど】さん [DVD(字幕)] 7点(2009-07-30 00:04:47) 4.共産主義社会ではかように力なき者同士は助け合うようになるのだろうか?何故バスのチケットが無い人間に当然のように自分の切符を分け与えるのか、何故たかがルームメイトの窮地に犯罪に荷担してまで尽くすのか・・・そこに違和感を感じる自分が、個人の失敗は基本的に全て自己責任として扱われ、他人の不幸は自分とは無関係と考える、この素晴らしき自由な個人主義社会で何かを失っていることに気がつかされた。 【lady wolf】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-05-04 16:40:22)(良:2票) 3.《ネタバレ》 登場人物がひそやかに語ることの緊張がすごい。そこらのドラマだったら怒鳴るようなところも、ぐっとおさえてひそやかに語る。だって外には耳があり、そのさらに外には国家がある。直接国家の恐怖を描いていないにもかかわらず、「そういう国家」に生きていることの緊迫が全編に張りつめている。映画の描写とはこういうものでなくてはならない。なんらの趣向のない長回しが、ためらいや沈黙の息苦しさを記録していく。しかしこれは特殊な国家の物語というだけでなく、女性という性の普遍をも描いている。子どもを産む・産んでしまう可能性を持っている女性が、決定的に不利な社会。堕胎の報酬として身体を要求されるという悪循環がやりきれない。さらにもっと普遍的なテーマとして、何かをやり遂げる達成感の映画でもある。この友だちのイライラさせる造形がよくできていて、おっとりしているというのか、人任せに慣れきっているというのか、見ているこっちもイライラさせるような人。この全然「心から感謝してます」って態度を見せないキャラクターが、主人公の達成感をさらに浮き彫りにしている。いったいどういうところからこういうキャラクターを考えついたのか、とひとまず呆れ、でも私は主人公よりこっちに近い性格だなあ、と反省。 【なんのかんの】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-12-22 12:13:09) 2.内容をまったく知らずに観たため序盤は意味がわからなかったが、内容と映画のタイトルを理解したところから一気に緊張感が高まりハラハラし通しだった。ものすごくリアリティがあり、まるでドキュメンタリーのような印象さえも感じた。 【茶畑】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-12-13 18:19:13) 1.《ネタバレ》 手持ちカメラで追いかけるだけじゃここまでの不安感は出せない。この映画は音が凄い。物をテーブルに置く音や足音や息遣いが気分が悪くなるくらい響いてくる。音が襲ってくる。不安感と書いたが、それだけじゃなくて、焦りや憤り、怒り、孤独感も。主人公はルームメイトにも恋人にも、違法である堕胎手術をするかわりに見返りを強要する男にも、そして自分自身にも憤りを感じている。延いては社会全体に憤りを感じている。その社会は孤独な者をさらに孤独にせしめ、弱者をさらに追い詰める。堕胎手術を頼んだ女と頼まれた男は、男の計画通りに進まなくても、2対1という数的有利となっても、お金が支払われても、堕胎が行われてもけして変わることはない。社会の構図として男よりも女が弱い立場にあることは、恋人の家での会話からもうかがい知れる。しかし生きていかねばならない。不満を漏らしたところで何も変わらないことを女たちは知っている。女二人が食事を摂る。それは何も出来ない女の弱さの象徴でもあり、それでも生きてゆく女の強さの象徴でもあるのだと思った。 【R&A】さん [映画館(字幕)] 7点(2008-07-30 14:07:03)
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