みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(7点検索)】
9. 第二次世界大戦後の冷戦を背景とした赤狩り“ハリウッド10”の実態を赤裸々に描く。表現の自由を守るため赤狩りに対峙し、激しく闘った闘士・トランボ像は予想外だった。 映画人の思想的な立場が興味深く、記録映像やネット情報で既知の部分もあり、J・ウエインのタカ派ぶり、K・ダグラスの硬骨漢ぶりなどは想像どおり。戦場に行かなかったJ・ウエインに対し、トランボが皮肉交じりに言い返すシーンが痛快だ。公聴会で証言を拒否しても仕事ができるトランボに対し、顔で勝負するE・G・ロビンソンが証言せざるを得なくなる立場もよくわかる。 赤狩りを推進したH・ホッパーの暗躍がいやらしい。ブラックリストに載った人たちの苦悩はいかばかりだったかと思う。その当時、日本でもレッド・パージがあったと職場で聞いたことがある。 B級映画の製作会社キングブラザース幹部の方針を聴いて、かつて海外のドキュメンタリー番組で三流とみなされた映画の監督が語った言葉「俺たちも『市民ケーン』を作ろうと思えば作れるが、そんな映画を作る気はない」に通じる気概を感じた。負け惜しみとも思うが一理ある。 議論好きで理屈っぽい共産主義者の一面が、良くも悪くもリアリティに満ちている。反面、生活のためもあり仕事に没頭して赤狩りに対決するトランボの姿勢が、家族との対話不足に陥り軋轢を生むのは皮肉なこと。家族との葛藤も描かれているがややあっさりの印象。特に夫人の苦悩は並大抵のものでないと思うので若干物足りない。 【風小僧】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-01-28 16:56:30) 8.「共産主義」にもいろいろあるわけで。例えば、日本で60年前後に登場した新左翼勢力のほとんどはソ連を共産主義ではないとしていました。本作でその「共産主義」の内容が説明されない意図は、2015年のアメリカの状況と照らし合わせて考えるべきなのでしょうが、私の手には余ります。 現在の日本で本作を見ると、一般論として提示するために描かなったという穿った見方さえ可能になるなと、感慨深いものがありました。 例えば22・23年に問題となった例をあげると、関東大震災時に朝鮮人大虐殺があったことに触れただけで、東京都が関与する企画で上映できなくなった映像作品が存在します。映画でドリンクを浴びせかけられるシーンがありましたが、洗脳された生徒によって階段から突き落とされて大けがを負った日の丸・君が代に反対する教師の姿がオーバーラップします。 正義とは、自己の信念とは、国家と市民の関係とは、見る者に様々な考察を要求する作品になっていると思います。 【傲霜】さん [地上波(字幕)] 7点(2024-01-05 21:35:52) 7.なかなか見応えがありました。なるほどトランボとはこういう人だったのかと。バスタブに浸かったまま、酒を飲み、タバコを吸い、タイプライターを打ち続ける姿というのは、なかなか壮絶なものがあります。仕事に対するあれほどの情熱を、ぜひ私にも分けてもらいたいと思ったことが1つ。 ただし、そもそもなぜ共産主義者になったのかがよくわからない。映画産業という資本主義の権化のような業界に身を置き、なおかつそれなりの地位を得ていたようなので、なお不思議です。たしかにちょっと前までソ連は同じ連合国側だったわけで、その間に何かを学んで共鳴した可能性はあります。しかし戦後はきっぱり決別した以上、その時点で共産主義を捨ててもおかしくなかったはず。なぜ捨てなかったのか。 まったくの邪推ですが、もしかしたら本当にソ連共産党とつながっていて、スパイ的な行為や破壊的な行為を働いていたのではないか。そう考えると、逆に当時の米当局や米映画業界が執拗なまでに共産主義者を排斥しようとした理由もよくわかります。映画とは無関係な話ですが。 それからハイライトといえば、やはりジョン・グッドマンがバットを振り回すシーンでしょう。面白いのは、彼はけっしてトランボに対する友情からそうしたわけではないこと。「金づるを奪われてたまるか」という、いかにも資本主義的な行動原理だったように思います。つまり共産主義者トランボは、資本主義によって守られたわけで。作品にそんな意図はないかもしれませんが、つい勝手に妄想してニヤニヤしてしまいました。 まったく余談ながら、「ハリウッド・テン」を描いた映画なら、コーエン兄弟の「ヘイル・シーザー!」がおすすめ。彼らをおちょくった感じで、興行的には失敗作だったようですが、映画愛に満ちています。 【眉山】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-12-27 02:34:55) 6.自由の国アメリカでも当時は思想に対して迫害があり、その中で服役までした脚本家ダルトン・トランボとその家族、そして友人の物語。ハリウッドの赤狩りは「映像の世紀」やらでちょっと見たくらいだったから、この映画はいろんな事が知れて面白かった。これだけ時代が近いと日本なら日和って実名は避けるかもしれないが、アメリカは遠慮なしなのも良い。カーク・ダグラスが男気あるスターとして登場する一方、ジョン・ウェインは悪役、ヘレン・ミレンが演じた嫌味なおばさんも実在の人物。トランボ自身もなかなか濃いキャラとして映画の中心にいるが、ブライアン・クランストンの演技は強弱のさじ加減が絶妙で素晴らしかった。彼でなければここまで魅力的な映画にはならなかったかもしれないな。 【リーム555】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-12-20 18:42:14) 5.《ネタバレ》 正直見ようかどうか迷った作品。なぜなら伝記もののようなお堅い作品は娯楽ばかり求めている今の自分には向いていないと思ったからです。で、そんな精神状態で見た本作ですが、これがなかなか面白かった。純粋に映画として面白かったです。 赤狩りを題材にした映画は数多くあります。そんななか、これは割とソフトに描かれたほうかもしれません。ですが実際には共産主義というだけで財産を失い、家族を失い、無実の罪を着せられて投獄された人々がたくさんいたわけですから、恐ろしい時代だったのは間違いありません。 で、この映画の良かったところは、そんな時代背景を色濃く映しながらも、負の側面ばかりをとらえなかったところにあります。 トランボという希代の天才脚本家の壮絶ながらも輝かしい人生。あくまでそれがメインなので、ある種のサクセスストーリを見るかのようなカタルシスを感じることさえできます。 その一方で、『ローマの休日』や『スパルタカス』といった名作が生まれた背景にそんな事情があったなんて、この映画を見なければ知る由もなかったでしょう。 政治的弾圧を受け不当に投獄されながらも名作を生み続けたトランボ。 信念を貫く一方で家族を愛し、隣人を愛し続けたトランボ。 その人間の偉大な功績とそこに至るまでの軌跡を描いた物語。 私の知識不足のため、時代背景やストーリーが完璧には理解できていない可能性があるため7点とさせていただきますが、これは映画としても映画史的資料としても貴重な映像作品だと思います。 【たきたて】さん [DVD(字幕)] 7点(2021-08-18 03:24:40)(良:1票) 4.《ネタバレ》 この人は一体誰かに似ているなあと思いつつ鑑賞していましたが、漫画家(不条理日記、失踪日記)の吾妻ひでお氏にそっくりじゃないですか。芸術家気質は強いが、世の中が下手くそそうだった吾妻氏のことを時々思い出してみたりしてました。なんのこっちゃ。本作について。自分の才能を信じ切れる芸術家が最強なんじゃないでしょうか。ヘンテコな副題と、最後演説で終わらせるのがどうかとも思いましたが、面白かったです。 【なたね】さん [DVD(字幕)] 7点(2021-07-01 21:16:23) 3.《ネタバレ》 山本おさむの「赤狩り」を読んでいて、ハリウッドにおける「赤狩り」の問題に興味があったので鑑賞しました。2時間の映画なので、内容的には駆け足のような感じで、赤狩りの対象者の悲惨な顛末はそこまででてきませんが、トランボがいかに己の才能を信じ、信念を貫き、困難に打ち勝っていったかを的確に伝えていて興味深かったです。 人間がつかさどる社会ですから、独裁でない限り、どうしても「本音とたてまえ」の戦いというのは起こってしまうものだなと考えさせられました。 【TM】さん [DVD(吹替)] 7点(2020-05-10 19:48:38) 2.《ネタバレ》 エリア・カザン、ウォルト・ディズニーなど告げ口した側のことは知っていましたが、 「ハリウッド・テン」のことは殆ど知りませんでした。 題材の割には社会派映画のような深刻さも重さもないし、登場人物が混乱することもなく エンターテイメントとして観られました。 ヘレン・ミレンが憎ったらしく演じた女優でゴシップコラムニストがやけに印象に残る。 ジョン・グッドマンがバット振り回すとこはスカッとする。 ダルトン・トランボという人物をどう見せるか、これがこの映画のキモですかね。はい、大変好感を持ちました。 自分が脚本を手掛けた映画を家族と一緒に観ながら観客が笑ったりして楽しんでいるのを嬉しそうにしているトランボの表情が良いですね。 「ローマの休日」にこんな事情があったなんて・・・初めて知った次第です。 【envy】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2020-03-12 23:49:38) 1.《ネタバレ》 「ローマの休日」「スパルタカス」etc・・出てくる映画のビッグネームにトランボってこんなすごい人だったんだと驚きました。と同時に夢工場の舞台裏で、こんな政治的な波が吹き荒れてたとは、まったく知りませんでした。この映画はとても分かりやすく、ヒューマンな家庭ドラマを中心に、ハリウッドの黒歴史を描きます。結局、人の心をうつ映画などの芸術は、時代とともに変わりゆくもの(流行、ここでは流行りの思想)とは関係なく、どう生きるかってことが創り手にも大事なのだろうと思いました。 【トント】さん [DVD(字幕)] 7点(2017-08-12 20:51:51)
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