みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(7点検索)】
9.《ネタバレ》 「聞いたでしょう、アイヒマンは法律に従っただけ。彼は自分で手を下していない。ただ、ユダヤ民族抹消という上からの命令に従っただけ。その証拠にアイヒマンは、自分にユダヤ人への憎悪はないと主張している。そう、彼は単なる役人なの。ホロコーストという、想像を絶する残虐行為と彼の平凡さを同列に裁くことは間違っている」――。1960年、多くのユダヤ人をガス室へと送ったナチス戦犯アイヒマンが、イスラエル諜報機関によって南米で逮捕される。すぐにイスラエルへと移送された彼は、人道に対する罪で裁判にかけられるのだった。ドイツ系ユダヤ人であり、自らも迫害された過去を持つ高名な哲学者ハンナ・アーレントは、彼の罪を冷静に見つめようと、すぐにイスラエルへと飛ぶ。「こんな残忍な怪物はすぐに処刑すべきだ!」という空気に満ち満ちたそんな裁判を傍聴していく中で、ハンナは彼が裁くに値しない凡庸な人間であるという考え方を強めていく。やがて、「ホロコーストという未曾有の悲劇を起こしたのは、彼のような人間だけではなく、ユダヤ人にもその責任の一端がある」という主張を表明すると、彼女に嵐のような批判が巻き起こるのだった……。実話を基に、ナチス戦犯であるアイヒマン裁判をあくまで冷徹に見つめた一人の女性哲学者の凛とした生き様を淡々と描いたヒューマン・ドラマ。恥ずかしながらハンナ・アーレントというこの哲学者もアイヒマン裁判もほとんど知らずに本作を鑑賞してみたのですが、これがなかなか見応えのある人間ドラマの佳品へと仕上がっておりました。とにかく、本作の主人公であるハンナ・アーレントが人間としてすこぶる魅力的!!ヘビースモーカーだった彼女が煙草をくゆらせながら(ほんと、ず~~~っとプカプカ煙草喫ってます笑)延々とディベートする姿がとにかく格好良い!!どれだけ批判に晒されようと絶対に自分の信念を曲げない鉄の女であった彼女。でも、家庭では一人の女性として夫を気遣う姿がとても印象的でした。そして、ユダヤ人でありながら、自らの感情よりも冷静な知性でもって真実を見つめようとしたハンナの姿勢は大変興味深いものでした。誰もが自分で考えることを放棄し、ただ上からの命令や時代の空気に流されてホロコーストという未曾有の悲劇を巻き起こしてしまった人類……、今回も感情に流されてアイヒマンを死刑にしてしまったら私たちは何も時代から学ばなかったことになるというハンナの思想は、徐々に右傾化する現代日本に警鐘を鳴らしているようでもあります。時代の風潮に安易に流されることなく、自分で考え判断することの重要さをあらためて教えてくれる佳品でありました。 【かたゆき】さん [DVD(字幕)] 7点(2023-10-27 08:58:20) 8.《ネタバレ》 凶悪な事件が起こったとき、人は、その犯罪者が常人には理解不能なモンスターであることを願う。もしそれが平凡などこにでもいる小市民であったならば、自分とも地続きであることになり、明日は我が身かもしれないという見たくない闇に直面せざるをえないからだ。その真理を明らかにしただけでも、アーレントの研究は、そしてこの作品は、貴重な意義がある。●終盤近くまで、アーレントは、じっと法廷を観察しているか、あるいは周囲の人たちと身近なやりとりをしているかである。わざとらしい事件は起こらない(理不尽な脅迫等はあるが、その描写も割とすっと流される)。しかしその中で主人公のスタンスは常に一貫しており、いつの間にかじわじわと意志の強さがにじみ出て、クライマックスの講演で一気に凝縮される仕掛け。見事な押し引きの呼吸、そして演出です。 【Olias】さん [DVD(字幕)] 7点(2023-05-10 00:50:03)(良:1票) 7.ナチスもの作品に見る、ごく普通の人間が戦争時にはどんな残虐な事でも淡々とやってのける恐ろしさ。実際のアイヒマンの証言模様はそこらへんの無責任社員の物言いでやはり恐ろしい。物事を自分なりに考える自分の目で確かめる感情気分だけで判断しない、小はそこらへんのオバハンの寄ってたかっての1人への悪口ヒソヒソ話、大は本作のハンナ・アーレント。彼女の知性はもとより揺るぎない態度は真似の出来ない凄みがありました。 【The Grey Heron】さん [DVD(字幕)] 7点(2021-05-07 13:20:44) 6. 第二次大戦・ドイツあたりの知識が必要。誰にでも勧められる映画ではないが、深い作品だ。 【海牛大夫】さん [インターネット(字幕)] 7点(2018-01-03 15:06:29) 5.《ネタバレ》 アイヒマンを”解り易く”糾弾しなかったことで世間から袋叩きにされるハンナ。60年当時であれば、ナチの禍々しい爪あとはまだ記憶に新しい頃だろう。ナチの幹部など吊るし上げて当然の風潮の中、ユダヤ人でありながら冷静にアイヒマン個人を観察し、悪というものの構造をひも解いた彼女の知性に驚嘆する。 ハンナが、世間がヒステリックに決め付けたような「冷酷な人間」ではないこともきちんと描かれた。病に倒れた夫を献身的に看病し、友人を失ったことには傷つく。読者からの抗議の手紙にも「傷つけたことを詫びる」ために返事を書く誠実さもある。 バルバラ・スコヴァの熱演もあって、ハンナ・アーレントという哲学者の生き様と当時の世相がとてもよく伝わった。 今の時代のブログ炎上どころの騒ぎではなかっただろう。しかし彼女はそんじょそこらの男たちが束になって悪口を言ってきても、ひるまずりりしく、勇者のごとく一人立つのだった。 信念を曲げないこと、発言する勇気と結果を引き受ける責任感。 こんな人がいたのだと、教えてもらった圧巻の120分であった。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-02-05 00:54:04)(良:3票) 4.人種差別を批判することと同胞への愛を訴えることは突き詰めれば同じことである。だが多くの人たちはそのことに気づかない。正義というのはどこまでも客観的であろうとすることなのかもしれない。少なくともハンナ・アーレントという聡明な思想家は一貫してそうあろうとした。愛と正義は違う。私的な場では主観的な愛に殉じても、公的な場ではただただ客観的な正義に殉ずるのみである。だからこそ彼女は「友人は愛してもユダヤ人を愛したことはない」と言ったのだろう。この映画はハンナ・アーレント哲学を紹介するものではない。批判や疎外に屈することなく自らの正義を貫いた一人の女性の生き様を描いた作品である。 【ばかぽん】さん [DVD(字幕)] 7点(2015-02-17 08:19:41) 3.《ネタバレ》 昨今イスラエルやIS国から不穏なニュースが舞い込む日々でとても重いテーマの一本でしたが見応えがありました。「一つの民族を好きになったことはない」という言葉がとても心に残りました、収容所にいた経験のある彼女の言うのだからなおさら説得力がありました。個人的には「考える」、とは程遠い、最近は「思い出す」や「思いつく」作業で目いっぱいなのですが、ハンナの「考える」はなんと天文学的な深さだったのでしょう、生命の危機すら感じていたのでしょうに絶対に屈しなかったのがすばらしいです。クルトもハイデガーもほとんど知らなかったのですが、観終えていろいろ考えさせられました。「必要悪」や「偽善」とは、、、眠れなかったです。 追伸:たばこ吸いすぎ映画No.1かも! 【HRM36】さん [DVD(字幕)] 7点(2015-01-21 17:47:31) 2.アドルフ・アイヒマンは冷酷な極悪人だったのか、それとも命令に忠実な小役人にすぎなかったのか。映画はアイヒマン裁判の実録フィルムを交えて、ハンナ・アーレントの論理を展開していく。大詰めのスピーチシーンは、誰しもがアイヒマンになりうることを指摘しているようにも思う。 【ESPERANZA】さん [映画館(字幕)] 7点(2014-02-20 19:41:19) 1.非常に静かな展開だけれど、最後の講義のシーンで一気に緊張感が頂点に。・・・うーん、これはなかなか厳しい作品です。彼女の書いた「イェルサレムのアイヒマン」を読んではいないけれど、これに激怒した人たちは結局どういう原稿だったら納得したのだろうか。恐ろしいのは、ユダヤ人の一部がナチに協力していたという裁判で明らかになった事実を書いたことが激しく批難されたという点。被害者のネガティブ要素を指摘すると過剰攻撃されるって、これ、どこかで見たことあるような・・・。アイヒマン=ナチの幹部=悪人、という構図に則った言論以外は批難される・・・、これも今でも普通にあちこちで見られる現象です。事実を冷静に指摘することが、猛烈な批難の嵐を呼び起こす・・・。最近も見ませんでしたっけ? 結局は、アイヒマンも、彼女のレポートを激しく批難した人々も同じ穴のムジナ(考えることを放棄している)。何にせよ、よからぬ出来事というのは、あらゆる立場であらゆる側面から事実を客観的にあぶりだすという作業をしないと、同じ轍を踏むことになるわけですが・・・。人間は基本的には愚かですから、そういう当たり前のことをすぐに忘れてしまいます。先日、小泉元首相が久々の記者会見で揮毫をしていました。「一行は百考に如かず」でしたっけね。考えるよりやってみろよ、ってことですが、考えないと大変なことになる、という本作を見ると、結局のところ、考えることと行動に移すことのバランスがいかに難しいかがよく分かります。考えないで言われるがまま行動するのはある意味楽ですし、でも、行動せず考えるだけの方が楽なことも多々あります。言い換えれば前者は「追従」であり、後者は「妄想」です。どちらも地に足がついていないってことで、本当の意味で「考える」人がすることではないわけです。これ、怪しげな宗教みたいなもんです。教祖の言うことを妄信し、冷静さを失って自分の世界に浸る・・・。アイヒマンも結局ヒトラー教の忠実なる信者にすぎなかった、と思えば、まさしくただの「小役人」という言葉がピッタリです。今の日本の世相も何となく考えることを放棄しているっぽい感がなくもないですが、この作品を、今の安倍信者たちにも見てもらいたいと思いました。しつこいようですが、厳しい作品でした、本当に。 【すねこすり】さん [映画館(字幕)] 7点(2013-11-17 18:21:20)(良:2票)
【点数情報】
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