みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(7点検索)】
2.《ネタバレ》 ゴーストライター騒動渦中の佐村河内氏本人の懐に飛び込んでカメラを回せばとりあえず何かが出てくるだろう、と、あまり深く考えずに撮影を始めたような感じで、正直、あまりうまく撮れているような気もせず、さらには森監督自身、ある取材では音声を録り忘れるという、取材者にあるまじきミスを犯してしまったりもするのですが、これが偶然にも、難聴者の暮らす世界を我々に想起させる、という不思議。ホントにマイク入れ忘れたのか、それともfakeなのか? あまり適当に取材してると、「下山事件」では映画は完成せず、著作も言い訳を繰り返すばかりで中途半端な幕切れ、ってなことになっちゃったのですが。 でもそれが持ち味か。本作のあちこちに監督自身も顔を出したり口を出したり、お陰で天敵(?)新垣氏の朴訥としたヒトの良さまであぶり出してしまう。 監督は佐村河内氏を信じると言い、佐村河内氏も監督を信じると言う。そこで監督が最後に佐村河内氏に問いかける。あなたは私に何か隠してませんか、と。 その問いに対する佐村河内氏の長い沈黙は、彼の、彼なりの、誠実さを表したものと言えるでしょう。一言、否定するのは容易いこと。しかし誰だって、何らかの嘘、欺瞞、隠し事を抱えて生きているはず。それに、彼は、いや我々は、向き合ってきただろうか、と。 ところで、かつて騒動の前、NHKで佐村河内氏のドキュメンタリーが放送され(その中には騒動後に思い返すと、作曲中はカメラを拒否するというアヤしげな部分があったのだけど)、大きな反響を呼び、視聴者のリクエストに応える形で、件の交響曲1番もNHKが放送することになって、私も楽しみに録画したクチ、なんですけどね。ただ、いざ聴いてみると、ちょっと期待外れというか、どうも緊張感が持たない。正直、私の中に、ベートーヴェンでもスメタナでもない現代日本の難聴者が作る曲とはどのレベルのものだろう、と値踏みするような邪念があったのも確かだし、イージーリスニングなノリに対する心の準備も無かったし、テレビに映る聴衆の感激覚めやらぬ姿を見て、これはきっと私の側に問題があるのだろう、くらいに思ってたのでした。クラシック界には新しい波が訪れているのかもしれない…… それがこんなことになってしまって。というモヤモヤ感。それに対する答えがこの作品の中にある訳ではないし、何かが正しい方向に動き始めたのかどうかもよくわからない。ついでに言うと、交響曲の作曲にあたって誰がメロディを作ったかなんて、どうでもいいこと(他のジャンルならともかく)。スピルバーグがジュラシックパークの監督と言えるのかどうかには無頓着でも、佐村河内氏が作曲家と言えるのかには神経を尖らせ、「聾唖の作曲家」で生まれたビジネスが、今度は糾弾ビジネスに生まれ変わって、モトを取ろうとする。しょうがない面もあるけど、なんか、切ない。 佐村河内さん、今からでも遅くない、音楽の勉強は、した方がいいと思う。 【鱗歌】さん [インターネット(邦画)] 7点(2021-03-28 16:36:21)(良:1票) 1.《ネタバレ》 今までの報道や経過から想像していた佐村河内像を出ない。序盤監督が彼に「私を信じていますか」なんて問いかけ「信じています」と言わせるといった気味の悪いやりとりなんかあって驚く。目に映るものの嘘・まがまがしさがテーマの作品なので全てが意図的なものと思われるが、佐村河内氏の発言は嘘も真実も中途半端に含んでおり、信じる信じないなんてことを大真面目に問うてもあまり意味が無いように感じる。彼は筋金入りの演技性人格と思われるので虚と実がぐちゃぐちゃに混ざり合っているのだろう。演技性人格という点では監督も相当なものだが。表面上二人が低次元でかみ合っているせいかその展開に意外性はほとんどない。中盤民放テレビマンが登場して信じられないくらい嘘くさい振る舞いを見せてくれ、その卑しさに圧倒される。「あなたをおもちゃにしない」などとテキトーなことを言っているくせに、誠意があるように見せるため意志の力で目が泳がないようにしているのが見え見えで、このシーンが一番興味深かった。仕事とはいえ気の毒なことだ。相対的に佐村河内氏の方がまともな人に感じられてしまうこのシークエンスが、映画の意図を最も端的に表現した部分だろう。彼は豆乳が異常に好きだということが明らかになる不思議なエピソードも実に怪しい。あの底知れない人風のキャラは奥さんと一緒に作り上げたものではないか。というか「人形使い」ではないが、奥さんの方が本体で佐村河内氏は彼女の期待に添うように演じているだけなのではとさえ感じさせる。彼女がいなければ佐村河内氏は別のキャラで新たな人生を演じる可能性が高いと思った。試写会で「絶対に口外しないで」とアナウンスされたラストはそんなに驚くほどのものではない。これもまがまがしさ演出の一端だったのだろう。総じて今村昌平のメタドキュメンタリー「人間蒸発」の系譜という印象。 【皮マン】さん [映画館(邦画)] 7点(2017-03-06 14:13:39)(良:1票)
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